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七章
宿泊者名簿No.22 毒蜘蛛構成員クロ2/8(巨悪との出会い)
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「カバキさん、シメますか?」
「ええお願いしますよ」
目の前の男たち――特に糸目の男は、ただならぬ雰囲気を持っていた。本物の毒蜘蛛――雰囲気からして間違いなかった。
(やべえっ、捕まったら殺される!)
当然、俺はすぐにスキルを発動して逃げ出した。身体を小さくさせ、普通の人間では到底通れないような隙間を潜り抜けて逃げる。
「何っ!?」
一瞬にして俺の姿が消えたので、取り巻きの男たちは一様に焦り出していた。
(へっ、思わずビビっちまったが余裕じゃねえか!)
毒蜘蛛っていっても大したことねえ。俺様のスキルにかかれば出し抜ける。
そう思ったのだが……。
「へえ。君、面白いスキルを持ってるようですねぇ」
俺の姿を見失ったというのに優男だけは焦った風はなく、面白そうに微笑んでいた。
「クルール出番ですよ」
「おまかせくだせえカバキさん。逃がしやしませんよ。俺様の鼻からは、誰も逃げられやしねえ」
逃げられると思ったのだが、考えが甘かった。奴らの内の一人に犬人族の男がいやがった。
犬人族は鼻が利く。ただでさえそうだというのに、その男は何かしらの優れたスキルでも持っているのか、さらに鼻が利くようだった。
「――おらっ、大人しくしやがれ!」
「ぐがああっ!?」
全力で逃げたのだが、すぐに追いつかれることになった。
「これで逃げられねえぜ」
「ぎぃがぁああッッ!? あ、足がぁああッ!」
「足だけじゃねえぜ」
「ぐあああッッ」
捕まってすぐに手足の骨を折られて逃げられなくなる。
「組織の名を騙ったんだ、これで済むと思うなよ」
「ひぃぎいぃいいいッ」
それからというもの、顔面が変形するくらいボコボコにされ、奴らの隠れ家と思しき場所に拉致されることになった。
(こ、殺されるッ!)
もう一巻の終わりだと思った。内臓でも抜かれるのか、人体実験でもされるのか。
「ふふ、君のスキル、ここで殺すには少しばかり惜しい気がしますねえ」」
震え上がる俺に対し、糸目の男は恐ろしいほど冷たい笑みを向けながら顔を近づけてきた。
「クロ君、君に選択肢をあげましょう。我々の手足となって働くか、それともここで死ぬか。選ばせてあげますよ」
「た、助けてくれるのか!?」
「君の選択次第ですよ。我々の手足となって働くのなら生かしてあげましょう。悪いようにはしません。今よりも楽しい思いをさせてあげますよ。例えば、冒険者なんかに負けない強い身体に作り変えてあげる――なんてこともできますよ?」
「っ!?」
糸目の男――カバキさんの言葉はすっと俺の心の奥底に入ってきた。
彼の薄っすらと開いた瞼の先にある目は、俺の心の奥底の願望を見透かしているかのようだった。
(冒険者よりも強くなれる? この俺が、本当にそんなことがあり得るのか?)
薄気味悪かったが、その提案はとても魅力的だったし、他に選択肢などなかった。
「わかった何でもやる! だから殺さないでくれ!」
「そうですか。ではそのスキル、我々のために大いに揮ってください。これは通過儀礼ですよ。耐えてくださいね」
「うぐぅっ、ぐああああ!」
カバキさんは俺の肩に焼き鏝のようなものを押し当ててきた。鏝が外されると、蜘蛛の形をした刺青のようなものが浮かび上がっては消えた。
「はぁはぁ、これはいったい?」
「魔道具ですよ。ギルド奴隷に刻みつけられてるものと似たようなものです。これで貴方は我々に従うしかなくなった」
「毒蜘蛛は、ギルドが持ってるような神器ともいうべき魔道具を持ってるのか?」
「それが我々毒蜘蛛の持つ力ですよ」
カバキさんはそう言うと小さく笑った。
なんか格好良かった。至高の悪って感じがして痺れた。
(酷い目に遭ったが俺も毒蜘蛛の一員になれたのか。へへ)
奴隷になっちまったのは正直いただけなかったが、それ以上に毒蜘蛛の一員になれたってことが嬉しかった。こいつらに付いて行けば、もっと楽しい毎日が送れると思った。
「では貴方はもう我々の仲間だ。癒してさしあげましょう」
カバキさんはポーションを取り出すと、俺の身体にぶっかけてくれた。傷はみるみる癒えていった。
大怪我を一瞬で直すなんて貴重なポーションに違いない。それを簡単に使い捨てることができるなんて、毒蜘蛛の連中はやっぱり凄い。化け物だ。
「カバキといいます。これからよろしくお願いしますよ」
俺とカバキさんの初めての出会いはそのようなものだった。
こうして俺の毒蜘蛛構成員としての生活が始まっていったのであった。
「ええお願いしますよ」
目の前の男たち――特に糸目の男は、ただならぬ雰囲気を持っていた。本物の毒蜘蛛――雰囲気からして間違いなかった。
(やべえっ、捕まったら殺される!)
当然、俺はすぐにスキルを発動して逃げ出した。身体を小さくさせ、普通の人間では到底通れないような隙間を潜り抜けて逃げる。
「何っ!?」
一瞬にして俺の姿が消えたので、取り巻きの男たちは一様に焦り出していた。
(へっ、思わずビビっちまったが余裕じゃねえか!)
毒蜘蛛っていっても大したことねえ。俺様のスキルにかかれば出し抜ける。
そう思ったのだが……。
「へえ。君、面白いスキルを持ってるようですねぇ」
俺の姿を見失ったというのに優男だけは焦った風はなく、面白そうに微笑んでいた。
「クルール出番ですよ」
「おまかせくだせえカバキさん。逃がしやしませんよ。俺様の鼻からは、誰も逃げられやしねえ」
逃げられると思ったのだが、考えが甘かった。奴らの内の一人に犬人族の男がいやがった。
犬人族は鼻が利く。ただでさえそうだというのに、その男は何かしらの優れたスキルでも持っているのか、さらに鼻が利くようだった。
「――おらっ、大人しくしやがれ!」
「ぐがああっ!?」
全力で逃げたのだが、すぐに追いつかれることになった。
「これで逃げられねえぜ」
「ぎぃがぁああッッ!? あ、足がぁああッ!」
「足だけじゃねえぜ」
「ぐあああッッ」
捕まってすぐに手足の骨を折られて逃げられなくなる。
「組織の名を騙ったんだ、これで済むと思うなよ」
「ひぃぎいぃいいいッ」
それからというもの、顔面が変形するくらいボコボコにされ、奴らの隠れ家と思しき場所に拉致されることになった。
(こ、殺されるッ!)
もう一巻の終わりだと思った。内臓でも抜かれるのか、人体実験でもされるのか。
「ふふ、君のスキル、ここで殺すには少しばかり惜しい気がしますねえ」」
震え上がる俺に対し、糸目の男は恐ろしいほど冷たい笑みを向けながら顔を近づけてきた。
「クロ君、君に選択肢をあげましょう。我々の手足となって働くか、それともここで死ぬか。選ばせてあげますよ」
「た、助けてくれるのか!?」
「君の選択次第ですよ。我々の手足となって働くのなら生かしてあげましょう。悪いようにはしません。今よりも楽しい思いをさせてあげますよ。例えば、冒険者なんかに負けない強い身体に作り変えてあげる――なんてこともできますよ?」
「っ!?」
糸目の男――カバキさんの言葉はすっと俺の心の奥底に入ってきた。
彼の薄っすらと開いた瞼の先にある目は、俺の心の奥底の願望を見透かしているかのようだった。
(冒険者よりも強くなれる? この俺が、本当にそんなことがあり得るのか?)
薄気味悪かったが、その提案はとても魅力的だったし、他に選択肢などなかった。
「わかった何でもやる! だから殺さないでくれ!」
「そうですか。ではそのスキル、我々のために大いに揮ってください。これは通過儀礼ですよ。耐えてくださいね」
「うぐぅっ、ぐああああ!」
カバキさんは俺の肩に焼き鏝のようなものを押し当ててきた。鏝が外されると、蜘蛛の形をした刺青のようなものが浮かび上がっては消えた。
「はぁはぁ、これはいったい?」
「魔道具ですよ。ギルド奴隷に刻みつけられてるものと似たようなものです。これで貴方は我々に従うしかなくなった」
「毒蜘蛛は、ギルドが持ってるような神器ともいうべき魔道具を持ってるのか?」
「それが我々毒蜘蛛の持つ力ですよ」
カバキさんはそう言うと小さく笑った。
なんか格好良かった。至高の悪って感じがして痺れた。
(酷い目に遭ったが俺も毒蜘蛛の一員になれたのか。へへ)
奴隷になっちまったのは正直いただけなかったが、それ以上に毒蜘蛛の一員になれたってことが嬉しかった。こいつらに付いて行けば、もっと楽しい毎日が送れると思った。
「では貴方はもう我々の仲間だ。癒してさしあげましょう」
カバキさんはポーションを取り出すと、俺の身体にぶっかけてくれた。傷はみるみる癒えていった。
大怪我を一瞬で直すなんて貴重なポーションに違いない。それを簡単に使い捨てることができるなんて、毒蜘蛛の連中はやっぱり凄い。化け物だ。
「カバキといいます。これからよろしくお願いしますよ」
俺とカバキさんの初めての出会いはそのようなものだった。
こうして俺の毒蜘蛛構成員としての生活が始まっていったのであった。
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