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七章
宿泊者名簿No.22 毒蜘蛛構成員クロ3/8(毒蜘蛛の仕事)
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「次はあの屋敷が目標だ。これが見取り図だ。しっかり頭に叩き込んでおけよクロ」
「はい」
毒蜘蛛の構成員になったものの、やること自体は以前と大して変わらなかった。空き巣とか、そんなのだ。
ただ以前と大きく違うのは、一人の時では到底狙えなかった大きな獲物を狙うことができるようになったことだ。
羽振りの良さそうな大商人や貴族の屋敷に忍び込んで金品を奪い取る。物々しい警護がなされてる中を掻い潜って盗みを働く。
今まではそんなことができるなんて、考えもしないことだった。
大商人、貴族――そいつらは俺たちとは住む世界が違う人間だ。普段俺たちのような人間を同じ人間だと思ってねえような連中だ。
そいつらを嘲笑うかのようにして悪事を働くってのは、気分がスカッとして気持ちいいことだった。同じ盗人稼業でも、こうも違う感覚を味わえるとは新鮮だったぜ。
「クロ。お前が鍵を開けないことには始まらないんだからな。しっかり頼むぜ」
「おうよ」
上役の指示に従って動く。俺と似たような立場の下っ端連中とつるんで盗っ人稼業に精を出す。
しばらくそんな日々を送ることになった。悪人仲間にも恵まれて楽しい毎日だったぜ。
そして毒蜘蛛に入ってから一年ほど経った頃、日頃の成果が認められたのか、俺はカバキさんから呼び出されることになった。
呼び出されたのは、研究所のようなところだった。
「――ここは?」
「毒蜘蛛の施設の一つですよ。魔物の研究をしています」
「そうっすか。すげえ……」
研究所と呼ばれるそこでは、多くの魔物が飼われていた。ゴブリン、オーク、その他諸々。
毒蜘蛛は魔物すら支配しているのだ。スゲエって思ったのを、よく覚えてるぜ。
「クロ君、日頃頑張ってる君にご褒美として力をつけさせてあげますよ」
「そりゃ有難いことですが、でもどうやって?」
「簡単なことです。ここにいる魔物を殺せばいいんですよ」
カバキさんに連れられて入った部屋には、魔物の入った檻が沢山並べてあった。カバキさんはその中の一つを指して言った。
「これはローパーという魔物です。銅等級相当の魔物ですが、まあ一匹一匹はそんなに強くないですね。群れでこそ脅威を振るう魔物です」
うねうねとした気持ち悪い触手が生えてる目玉お化け――ローパー。冒険者でもねえ俺は初めて見る魔物だった。
「このローパーを十匹ほど殺させてあげます。そうすれば君はそこらへんの有象無象の冒険者より、よっぽど強くなれるでしょう」
「で、でも俺は武芸はからっきしで……。こんな化け物相手に、勝てっこないですよ?」
「なに心配はいらないですよ。とある村に伝わる特殊なポーションを使って大きさを小さくして、さらに眠らせたのを殺すだけですから。子供でもできる簡単なことです」
「そんな楽して強くなれるんですか?」
「ええ。それでもエビスの恩恵は十分に得られるんですよ。苦労してこそ報われる――エビス教の連中はそんな耳触りの良いことしか言っていませんけどもね、楽して報われることもあるんですよ」
カバキさんに促され、俺はローパーを十匹殺すことになった。
簡単なことだった。生きてる家畜を絞めるのよりも簡単だった。
こんな楽して強くなれるのかと半信半疑だったが、カバキさんの言っていることは本当だった。ローパーを一匹一匹殺す度に、俺の中に力が流れ込んでくる感覚があった。
「すげえ、身体に力が漲る!」
「それがエビス様からのご加護というやつですね」
「野生の魔物を狩ってるわけじゃねえのに強くなれるんすね……。小さくして眠らせたのを一方的に殺しただけなのに……」
「この世の仕組みというのはそういうものだからですよ。野生じゃない魔物を嬲り殺してもエビスの加護は得られる。魔物どころか人間を殺しても加護は得られる。ただそれは不都合な真実だから、エビス教のお偉いさんによって伏せられているというだけのことです。知っている人間は知っていることですよ。貴族の中には、子飼いの冒険者に強い魔物を捕らえさせ弱らせ、それを成人の証として自分の子に与えるのだそうです。我が子に独り立ちする力をつけさせるためにね。過保護なことですが」
「へえそんなことが……」
「それと似たようなことを君は今やったわけですね」
この世界の真実なんて、今まで知る由もなかったし深く考えたこともなかった。カバキさんは何でも知っていて、それを俺に教えてくれた。
「これは言わば毒蜘蛛構成員にとっての成人の儀ですよ。君はこれで一人前の構成員になったと言える。これからも組織のために精一杯働いてもらいますよ?」
「はい勿論です!」
カバキさんから力を与えてもらい、俺は強くなった。今ならあの冒険者の野郎――ヨミトにも負ける気がしなかった。
「早速ですが、君に新しい仕事を頼みたいんですが」
「何でも言ってくだせえ。何でもします」
「では付いて来てください」
カバキさんの後に付いていくと、そこにはヘンテコな形をした置物が沢山あった。
「これは?」
「君は初めて見るんですか。これはポーターといって、転移魔法が使える魔道具ですよ」
「転移魔法……すげえ」
「今から実体験させてあげますよ」
転移魔法が使える魔道具なんて何百ゴルゴンかかるかわからねえような高価なシロモノだ。研究施設にはそれが大量に置いてあった。世界各地の毒蜘蛛の拠点と繋がっているらしかった。
そのポーターという転移装置を使い、俺はカバキさんと共に、とある場所へと向かうことになった。
「ここは毒蜘蛛の重要な施設の一つです」
「へ? 茸……ですか?」
そこは広い洞窟のような場所だった。多くの木片が並べられ、そこには禍々しい色をした茸がびっしりと生えていた。
そして頭が茸の形をしている小人の亜人たちが、せっせと働いていた。死んだ目――奴隷の目をしながら。
「ええ茸です。といっても、見た通り普通の茸ではないですね。この茸は加工すると強力な媚薬の原料になるんですよ。そのまま食べても多少は効果がある。お一つ食べてみますか?」
カバキさんが手に取った茸は見るからにヤバいものだった。
「いや……遠慮しておきます」
「ふふ賢明ですね」
俺が断ると、カバキさんは愉快そうにくつくつと笑った。
「この茸頭の亜人たちはなんなんです?」
「我々が拉致した茸人族の人たちですよ。村を襲い、男たちは皆殺しにし、扱い易い女だけを連れてきたんです。君と似たような奴隷印を施してあります」
村を滅ぼしてそこの村人を大量に奴隷にするなんてとんでもねえことだ。悪さの規模がでかすぎる。流石は毒蜘蛛だと思った。痺れるぜ。
「奴隷の茸人族たちは、この指輪を持つ者の言うことは何でも聞くようになっています。この指輪を預けましょう。君にここの管理を任せることにします。一年ほど勤め上げてください」
「わかりました。ありがとうございます」
カバキさんは俺に茸人族たちを操る指輪を授けてくれた。俺は奴隷大農園の管理者に一気に上り詰めたのであった。
「茸人族たちは殺さない程度に楽しんでいいですよ。小人の女なんて普通は楽しめませんが、君のスキルを使えば簡単でしょう?」
カバキさんはそう言ってニヤリと笑い、ポンと俺の肩を叩いたのであった。
「――今日からここの管理人になったクロだ。挨拶代わりの親睦会といこうや。茸女ども、全員、服を脱げ!」
俺は着任早々、茸人族の奴隷たちにそう宣言した。上下関係は徹底的に身体に教え込まないといけないと思ったからな。
「うぅ……」
「また犯されるのぉ……」
「いやぁ……」
カバキさんから渡された指輪の力は絶大で、五百人くらいいた奴隷たちは一斉に服を脱ぎ始めた。口では抵抗するものの、身体は俺の言うとおりに動いていた。
それからはお楽しみだった。茸臭い亜人とはいえ、五百人もの女を次々に楽しめるなんて男冥利に尽きると思ったぜ。
毒蜘蛛の一員にならなきゃ茸人族の女とやることもなかっただろうし、こんないっぺんに大勢の女とやることもなかっただろうな。
(毒蜘蛛最高! 一生この組織で働いてやるぜ!)
あの日カバキさんに出会ってしまった時は一巻の終わりだと思ったが、世の中わからねえもんだ。
逆に一巻の始まりだったなんてな。毒蜘蛛に入ってからというもの、俺の人生、やっと始まったって思えたくらいだ。
それからというもの、茸人族の女奴隷たちの管理をしながら毎日ヤバい茸を生産し、余裕があれば茸人族の村跡地の開発を行うことになった。
「――よし今日の業務も終了。お前ら、縮小ポーション用意してあるから、楽しんでいいぞ。茸人族の女で遊びな」
「流石クロさん、新任の管理人殿は器が大きいぜ!」
「例の薬も用意してある分は使っていいぞ。カバキさんから定期的に使って効果を確かめろって言われてるからな。ただし、与えすぎて女を壊すなよ。貴重な労働力なんだからな」
「わかってます! へへ、それじゃ早速……」
施設の部下にも楽しみを分けてやる。ちゃんと部下にもお裾分けしてやるのが、上司の嗜みだからな。
「そんじゃ気持ちよくなる薬飲ませてやんよ、茸ちゃん」
「やめっ、やめてっ、うあっ、ああん、ああっ♡」
部下たちが薬を飲ませる。すると茸人族の女たちはトロトロに蕩けた表情で自ら踊り狂うようになった。
(くく、自分たちが育ててる茸のせいで淫売になっちまうとは哀れなもんだぜ)
薬のおかげで茸人族の女たちは色狂いとなり喘ぎ乱れる。その嬌声は毎夜のように響くこととなった。
そうして茸農場の管理人としての立場を謳歌することしばらく。ひたすら茸を栽培して出荷し続け、農場の仕事もすっかり板についてきた頃のことだ。
「――学術ギルドの調査員だと?」
「へい。それと同行する冒険者が茸人族の村跡地に向かってるようです。物見からの報告です」
部下の男がそんな報告を上げてきたのだった。
「そうか。カバキさんからあの跡地は整備して再利用しろって言われてるのに、こりゃちと不味いな」
どうやら茸人族たちは近隣の人間集落とかなり密な交流があったらしい。茸人族たちを奴隷にした後、毒蜘蛛は度々離間工作をやったらしいのだが、それでも村の連中はずっと茸人族たちのことを気にし続けていたのだそうだ。
それでついには直接乗り込んでくるらしかった。
(俺の手には余るな。カバキさんに言ってなんとかしてもらうしかねえか)
判断に困った俺はカバキさんに助力を頼むことにしたのだった。報告・連絡・相談は組織で働く上で重要なことだぜ。
「ではこの指輪を使ってください。ここにいるローパー二十匹の支配権が付与されています。上手く使って対処してください」
「はい。ご助力感謝しますカバキさん」
「クロ君、ギルドが乗り込んでくるようなら村跡地の開発は当分後回しでいいですよ。瓦礫を防衛陣地として上手く活用し、乗り込んでくる冒険者を始末してください。ああ、娼婦か男娼として売れそうな冒険者がいたら捕らえて調教してくださいね。名のある冒険者の奴隷は裏市場で高値がつきますので」
「わかりました」
俺の求めに、カバキさんは迅速に対応してくれた。いつぞやに行ったのと同じ研究所で、俺は魔物とそれを操る指輪を頂戴することになった。
(いつでもこいよ冒険者ども。このクロ様が潰してやるぜ!)
そして村跡地に防衛陣地を整備し、のこのことやって来た冒険者たちを始末することになったのだった。
「はい」
毒蜘蛛の構成員になったものの、やること自体は以前と大して変わらなかった。空き巣とか、そんなのだ。
ただ以前と大きく違うのは、一人の時では到底狙えなかった大きな獲物を狙うことができるようになったことだ。
羽振りの良さそうな大商人や貴族の屋敷に忍び込んで金品を奪い取る。物々しい警護がなされてる中を掻い潜って盗みを働く。
今まではそんなことができるなんて、考えもしないことだった。
大商人、貴族――そいつらは俺たちとは住む世界が違う人間だ。普段俺たちのような人間を同じ人間だと思ってねえような連中だ。
そいつらを嘲笑うかのようにして悪事を働くってのは、気分がスカッとして気持ちいいことだった。同じ盗人稼業でも、こうも違う感覚を味わえるとは新鮮だったぜ。
「クロ。お前が鍵を開けないことには始まらないんだからな。しっかり頼むぜ」
「おうよ」
上役の指示に従って動く。俺と似たような立場の下っ端連中とつるんで盗っ人稼業に精を出す。
しばらくそんな日々を送ることになった。悪人仲間にも恵まれて楽しい毎日だったぜ。
そして毒蜘蛛に入ってから一年ほど経った頃、日頃の成果が認められたのか、俺はカバキさんから呼び出されることになった。
呼び出されたのは、研究所のようなところだった。
「――ここは?」
「毒蜘蛛の施設の一つですよ。魔物の研究をしています」
「そうっすか。すげえ……」
研究所と呼ばれるそこでは、多くの魔物が飼われていた。ゴブリン、オーク、その他諸々。
毒蜘蛛は魔物すら支配しているのだ。スゲエって思ったのを、よく覚えてるぜ。
「クロ君、日頃頑張ってる君にご褒美として力をつけさせてあげますよ」
「そりゃ有難いことですが、でもどうやって?」
「簡単なことです。ここにいる魔物を殺せばいいんですよ」
カバキさんに連れられて入った部屋には、魔物の入った檻が沢山並べてあった。カバキさんはその中の一つを指して言った。
「これはローパーという魔物です。銅等級相当の魔物ですが、まあ一匹一匹はそんなに強くないですね。群れでこそ脅威を振るう魔物です」
うねうねとした気持ち悪い触手が生えてる目玉お化け――ローパー。冒険者でもねえ俺は初めて見る魔物だった。
「このローパーを十匹ほど殺させてあげます。そうすれば君はそこらへんの有象無象の冒険者より、よっぽど強くなれるでしょう」
「で、でも俺は武芸はからっきしで……。こんな化け物相手に、勝てっこないですよ?」
「なに心配はいらないですよ。とある村に伝わる特殊なポーションを使って大きさを小さくして、さらに眠らせたのを殺すだけですから。子供でもできる簡単なことです」
「そんな楽して強くなれるんですか?」
「ええ。それでもエビスの恩恵は十分に得られるんですよ。苦労してこそ報われる――エビス教の連中はそんな耳触りの良いことしか言っていませんけどもね、楽して報われることもあるんですよ」
カバキさんに促され、俺はローパーを十匹殺すことになった。
簡単なことだった。生きてる家畜を絞めるのよりも簡単だった。
こんな楽して強くなれるのかと半信半疑だったが、カバキさんの言っていることは本当だった。ローパーを一匹一匹殺す度に、俺の中に力が流れ込んでくる感覚があった。
「すげえ、身体に力が漲る!」
「それがエビス様からのご加護というやつですね」
「野生の魔物を狩ってるわけじゃねえのに強くなれるんすね……。小さくして眠らせたのを一方的に殺しただけなのに……」
「この世の仕組みというのはそういうものだからですよ。野生じゃない魔物を嬲り殺してもエビスの加護は得られる。魔物どころか人間を殺しても加護は得られる。ただそれは不都合な真実だから、エビス教のお偉いさんによって伏せられているというだけのことです。知っている人間は知っていることですよ。貴族の中には、子飼いの冒険者に強い魔物を捕らえさせ弱らせ、それを成人の証として自分の子に与えるのだそうです。我が子に独り立ちする力をつけさせるためにね。過保護なことですが」
「へえそんなことが……」
「それと似たようなことを君は今やったわけですね」
この世界の真実なんて、今まで知る由もなかったし深く考えたこともなかった。カバキさんは何でも知っていて、それを俺に教えてくれた。
「これは言わば毒蜘蛛構成員にとっての成人の儀ですよ。君はこれで一人前の構成員になったと言える。これからも組織のために精一杯働いてもらいますよ?」
「はい勿論です!」
カバキさんから力を与えてもらい、俺は強くなった。今ならあの冒険者の野郎――ヨミトにも負ける気がしなかった。
「早速ですが、君に新しい仕事を頼みたいんですが」
「何でも言ってくだせえ。何でもします」
「では付いて来てください」
カバキさんの後に付いていくと、そこにはヘンテコな形をした置物が沢山あった。
「これは?」
「君は初めて見るんですか。これはポーターといって、転移魔法が使える魔道具ですよ」
「転移魔法……すげえ」
「今から実体験させてあげますよ」
転移魔法が使える魔道具なんて何百ゴルゴンかかるかわからねえような高価なシロモノだ。研究施設にはそれが大量に置いてあった。世界各地の毒蜘蛛の拠点と繋がっているらしかった。
そのポーターという転移装置を使い、俺はカバキさんと共に、とある場所へと向かうことになった。
「ここは毒蜘蛛の重要な施設の一つです」
「へ? 茸……ですか?」
そこは広い洞窟のような場所だった。多くの木片が並べられ、そこには禍々しい色をした茸がびっしりと生えていた。
そして頭が茸の形をしている小人の亜人たちが、せっせと働いていた。死んだ目――奴隷の目をしながら。
「ええ茸です。といっても、見た通り普通の茸ではないですね。この茸は加工すると強力な媚薬の原料になるんですよ。そのまま食べても多少は効果がある。お一つ食べてみますか?」
カバキさんが手に取った茸は見るからにヤバいものだった。
「いや……遠慮しておきます」
「ふふ賢明ですね」
俺が断ると、カバキさんは愉快そうにくつくつと笑った。
「この茸頭の亜人たちはなんなんです?」
「我々が拉致した茸人族の人たちですよ。村を襲い、男たちは皆殺しにし、扱い易い女だけを連れてきたんです。君と似たような奴隷印を施してあります」
村を滅ぼしてそこの村人を大量に奴隷にするなんてとんでもねえことだ。悪さの規模がでかすぎる。流石は毒蜘蛛だと思った。痺れるぜ。
「奴隷の茸人族たちは、この指輪を持つ者の言うことは何でも聞くようになっています。この指輪を預けましょう。君にここの管理を任せることにします。一年ほど勤め上げてください」
「わかりました。ありがとうございます」
カバキさんは俺に茸人族たちを操る指輪を授けてくれた。俺は奴隷大農園の管理者に一気に上り詰めたのであった。
「茸人族たちは殺さない程度に楽しんでいいですよ。小人の女なんて普通は楽しめませんが、君のスキルを使えば簡単でしょう?」
カバキさんはそう言ってニヤリと笑い、ポンと俺の肩を叩いたのであった。
「――今日からここの管理人になったクロだ。挨拶代わりの親睦会といこうや。茸女ども、全員、服を脱げ!」
俺は着任早々、茸人族の奴隷たちにそう宣言した。上下関係は徹底的に身体に教え込まないといけないと思ったからな。
「うぅ……」
「また犯されるのぉ……」
「いやぁ……」
カバキさんから渡された指輪の力は絶大で、五百人くらいいた奴隷たちは一斉に服を脱ぎ始めた。口では抵抗するものの、身体は俺の言うとおりに動いていた。
それからはお楽しみだった。茸臭い亜人とはいえ、五百人もの女を次々に楽しめるなんて男冥利に尽きると思ったぜ。
毒蜘蛛の一員にならなきゃ茸人族の女とやることもなかっただろうし、こんないっぺんに大勢の女とやることもなかっただろうな。
(毒蜘蛛最高! 一生この組織で働いてやるぜ!)
あの日カバキさんに出会ってしまった時は一巻の終わりだと思ったが、世の中わからねえもんだ。
逆に一巻の始まりだったなんてな。毒蜘蛛に入ってからというもの、俺の人生、やっと始まったって思えたくらいだ。
それからというもの、茸人族の女奴隷たちの管理をしながら毎日ヤバい茸を生産し、余裕があれば茸人族の村跡地の開発を行うことになった。
「――よし今日の業務も終了。お前ら、縮小ポーション用意してあるから、楽しんでいいぞ。茸人族の女で遊びな」
「流石クロさん、新任の管理人殿は器が大きいぜ!」
「例の薬も用意してある分は使っていいぞ。カバキさんから定期的に使って効果を確かめろって言われてるからな。ただし、与えすぎて女を壊すなよ。貴重な労働力なんだからな」
「わかってます! へへ、それじゃ早速……」
施設の部下にも楽しみを分けてやる。ちゃんと部下にもお裾分けしてやるのが、上司の嗜みだからな。
「そんじゃ気持ちよくなる薬飲ませてやんよ、茸ちゃん」
「やめっ、やめてっ、うあっ、ああん、ああっ♡」
部下たちが薬を飲ませる。すると茸人族の女たちはトロトロに蕩けた表情で自ら踊り狂うようになった。
(くく、自分たちが育ててる茸のせいで淫売になっちまうとは哀れなもんだぜ)
薬のおかげで茸人族の女たちは色狂いとなり喘ぎ乱れる。その嬌声は毎夜のように響くこととなった。
そうして茸農場の管理人としての立場を謳歌することしばらく。ひたすら茸を栽培して出荷し続け、農場の仕事もすっかり板についてきた頃のことだ。
「――学術ギルドの調査員だと?」
「へい。それと同行する冒険者が茸人族の村跡地に向かってるようです。物見からの報告です」
部下の男がそんな報告を上げてきたのだった。
「そうか。カバキさんからあの跡地は整備して再利用しろって言われてるのに、こりゃちと不味いな」
どうやら茸人族たちは近隣の人間集落とかなり密な交流があったらしい。茸人族たちを奴隷にした後、毒蜘蛛は度々離間工作をやったらしいのだが、それでも村の連中はずっと茸人族たちのことを気にし続けていたのだそうだ。
それでついには直接乗り込んでくるらしかった。
(俺の手には余るな。カバキさんに言ってなんとかしてもらうしかねえか)
判断に困った俺はカバキさんに助力を頼むことにしたのだった。報告・連絡・相談は組織で働く上で重要なことだぜ。
「ではこの指輪を使ってください。ここにいるローパー二十匹の支配権が付与されています。上手く使って対処してください」
「はい。ご助力感謝しますカバキさん」
「クロ君、ギルドが乗り込んでくるようなら村跡地の開発は当分後回しでいいですよ。瓦礫を防衛陣地として上手く活用し、乗り込んでくる冒険者を始末してください。ああ、娼婦か男娼として売れそうな冒険者がいたら捕らえて調教してくださいね。名のある冒険者の奴隷は裏市場で高値がつきますので」
「わかりました」
俺の求めに、カバキさんは迅速に対応してくれた。いつぞやに行ったのと同じ研究所で、俺は魔物とそれを操る指輪を頂戴することになった。
(いつでもこいよ冒険者ども。このクロ様が潰してやるぜ!)
そして村跡地に防衛陣地を整備し、のこのことやって来た冒険者たちを始末することになったのだった。
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