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【閑話】カレン・コードバン ~邂逅~
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私、カレン・コードバンは子爵令嬢として生を受け、8歳になると寄親であるオールデン侯爵家で行儀見習いを兼ね、侍女としての仕事を教えてもらいつつ当時4歳だった侯爵家の次男である侯爵家ご子息のセドリック様のお世話係として仕え、8歳になられたセディ様が第一王子で王太子との呼び声の高いアレクシス殿下の側近候補として登城されるようになるとセディ様付きの侍女として共に登城を許されるようになりました。
セディ様と私がお城での振舞いにも慣れてきたある日、いつものようにサロンでお待ちしていると、王太子殿下がとても可愛らしい、まるでお伽噺のお姫様か妖精かと見紛うばかりの少女を伴って来られました。
「この数か月、共に過ごしたことで君たちのことは信用できると判断した。だから特別に僕のシャルを紹介するよ」
そう言うと殿下の後ろで恥ずかしそうにしていた『シャル』様がおずおずとしながらも私達の前に出てこられ、その年齢には似つかわしくない程に完璧なカーテシーでご挨拶をされました。
「はじめまして。わたくしはアレクおにいさまのいとこにあたります、シャルロット・モンローともうします。どうぞよろしくおねがいします」
所作は勿論、言葉もしっかりとしていて、かなりの小柄ながら殿下と同じ歳かひとつ下ぐらいなのだろうと思っていたのですが、聞けばまだ5歳だという。殿下より3つも年下でこんなに完璧な仕上がり…。もしかしてシャルロット様は本当に人間ではないのかもしれないと当時13歳になったばかりの私は本気で思っていたものです。
「シャルロットお嬢様の所作は本当にお美しくていらっしゃいますね」
シャルロット様と初めてお逢いしてから1年が過ぎようとしていた頃には、私はオールデン侯爵家からの後押しもあり王家よりシャルロット様の専属侍女としての内定を頂き、セディ様が殿下の側近としての執務を本格的に習い始めるまでの2年間は侯爵家での仕事の引継ぎと専属侍女としての仕事、王族に仕える者としての基本的なマナー、更には高位貴族と同程度の教育を受けながらセディ様とシャルロット様、お二人の侍女として王城で暮らすことも決まりました。
本来ならシャルロット様の専属侍女候補として私だけが王城の使用人棟にお部屋を頂く予定でしたが、アレクシス殿下のお口添えもありセディ様にも執務室を兼ねた部屋が与えられ、私はセディ様とシャルロット様、どちらの部屋にも近い一室を与えられました。
…というのも、シャルロット様が王城で暮らしている理由なのですが、私がセディ様と共に殿下の元へ訪れるようになった少し前、シャルロット様はご両親を不慮の事故で亡くされ、母方の伯母上に当たられる側妃様に引き取られたのですが、シャルロット様は時々…いえ、本当は毎晩、悪い夢を見られているのか泣き叫び、さらに深い眠りについてはまたはらはらと涙を流すという夜を送っているのです。
はじめのうちは側妃様が、そして間もなくアレクシス殿下がずっと添い寝をなさっておいででしたが、城内であるにもかかわらずどこかの無礼者によって発せられた心無い言葉をシャルロット様が耳にしてしまい、側妃様や殿下が悪く言われてはいけないと思い添い寝を断るようになったのだとか。
家族に愛され、両親が健在で、なんなら兄弟姉妹がいて、たまにはけんかもするし叱られることもあるだろう同じ年頃の子供なら、怖いことや悲しいことがなくてもたまには甘えて両親に添い寝をしてもらうこともあるような歳なのだ。ましてやとても辛く悲しい出来事が未だ胸の内に住み着いているのだ。それでも自分を心配してくれて引き取ってくれた伯母上や優しい従兄にこれ以上心配をかけないようにと昼には精一杯明るく笑っているのだ。そんなシャルロット様に対する軽はずみな発言でシャルロット様のお耳とお心を汚すなんて許されていいはずがない!私は人生で初めて、誰かを…名前すら知らないような人を『憎い』と思ったのです。
そして思わず侍女長と側妃様にシャルロット様に添い寝をして差し上げたいのだと、出過ぎた真似をしてしまったのです。
「シャルロットのことを大事に思ってくれているのね。ありがとう。私からもお願いするわ。シャルは自分の辛さより周りにいる私達の幸せを優先してしまうの。だから自分が辛い、悲しい、なんて言ってしまうと私達が悲しむと思って我慢してしまうのよ。そして『大丈夫』って言っちゃうの。勿論原因になった慮外者の言葉なんて気にすることないって言ったんだけど、精一杯の笑顔で『大丈夫。私を甘やかし過ぎです』なんて言われたら……」
側妃様が寂しそうにそう仰って、侍女長も「貴女はシャルロットお嬢様の侍女であるのはもちろんですが、時には姉として寄り添って差し上げなさい」と仰いました。
そうして私はシャルロット様の専属侍女という立場を得ることができたのです。
セディ様と私がお城での振舞いにも慣れてきたある日、いつものようにサロンでお待ちしていると、王太子殿下がとても可愛らしい、まるでお伽噺のお姫様か妖精かと見紛うばかりの少女を伴って来られました。
「この数か月、共に過ごしたことで君たちのことは信用できると判断した。だから特別に僕のシャルを紹介するよ」
そう言うと殿下の後ろで恥ずかしそうにしていた『シャル』様がおずおずとしながらも私達の前に出てこられ、その年齢には似つかわしくない程に完璧なカーテシーでご挨拶をされました。
「はじめまして。わたくしはアレクおにいさまのいとこにあたります、シャルロット・モンローともうします。どうぞよろしくおねがいします」
所作は勿論、言葉もしっかりとしていて、かなりの小柄ながら殿下と同じ歳かひとつ下ぐらいなのだろうと思っていたのですが、聞けばまだ5歳だという。殿下より3つも年下でこんなに完璧な仕上がり…。もしかしてシャルロット様は本当に人間ではないのかもしれないと当時13歳になったばかりの私は本気で思っていたものです。
「シャルロットお嬢様の所作は本当にお美しくていらっしゃいますね」
シャルロット様と初めてお逢いしてから1年が過ぎようとしていた頃には、私はオールデン侯爵家からの後押しもあり王家よりシャルロット様の専属侍女としての内定を頂き、セディ様が殿下の側近としての執務を本格的に習い始めるまでの2年間は侯爵家での仕事の引継ぎと専属侍女としての仕事、王族に仕える者としての基本的なマナー、更には高位貴族と同程度の教育を受けながらセディ様とシャルロット様、お二人の侍女として王城で暮らすことも決まりました。
本来ならシャルロット様の専属侍女候補として私だけが王城の使用人棟にお部屋を頂く予定でしたが、アレクシス殿下のお口添えもありセディ様にも執務室を兼ねた部屋が与えられ、私はセディ様とシャルロット様、どちらの部屋にも近い一室を与えられました。
…というのも、シャルロット様が王城で暮らしている理由なのですが、私がセディ様と共に殿下の元へ訪れるようになった少し前、シャルロット様はご両親を不慮の事故で亡くされ、母方の伯母上に当たられる側妃様に引き取られたのですが、シャルロット様は時々…いえ、本当は毎晩、悪い夢を見られているのか泣き叫び、さらに深い眠りについてはまたはらはらと涙を流すという夜を送っているのです。
はじめのうちは側妃様が、そして間もなくアレクシス殿下がずっと添い寝をなさっておいででしたが、城内であるにもかかわらずどこかの無礼者によって発せられた心無い言葉をシャルロット様が耳にしてしまい、側妃様や殿下が悪く言われてはいけないと思い添い寝を断るようになったのだとか。
家族に愛され、両親が健在で、なんなら兄弟姉妹がいて、たまにはけんかもするし叱られることもあるだろう同じ年頃の子供なら、怖いことや悲しいことがなくてもたまには甘えて両親に添い寝をしてもらうこともあるような歳なのだ。ましてやとても辛く悲しい出来事が未だ胸の内に住み着いているのだ。それでも自分を心配してくれて引き取ってくれた伯母上や優しい従兄にこれ以上心配をかけないようにと昼には精一杯明るく笑っているのだ。そんなシャルロット様に対する軽はずみな発言でシャルロット様のお耳とお心を汚すなんて許されていいはずがない!私は人生で初めて、誰かを…名前すら知らないような人を『憎い』と思ったのです。
そして思わず侍女長と側妃様にシャルロット様に添い寝をして差し上げたいのだと、出過ぎた真似をしてしまったのです。
「シャルロットのことを大事に思ってくれているのね。ありがとう。私からもお願いするわ。シャルは自分の辛さより周りにいる私達の幸せを優先してしまうの。だから自分が辛い、悲しい、なんて言ってしまうと私達が悲しむと思って我慢してしまうのよ。そして『大丈夫』って言っちゃうの。勿論原因になった慮外者の言葉なんて気にすることないって言ったんだけど、精一杯の笑顔で『大丈夫。私を甘やかし過ぎです』なんて言われたら……」
側妃様が寂しそうにそう仰って、侍女長も「貴女はシャルロットお嬢様の侍女であるのはもちろんですが、時には姉として寄り添って差し上げなさい」と仰いました。
そうして私はシャルロット様の専属侍女という立場を得ることができたのです。
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