捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ

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 アースランド帝国に到着し、マッカラン公爵家へと足を踏み入れたとき、私の心は微かに高揚していた。
 緑豊かな庭園、静寂が漂う邸内、そして気品ある装飾の数々が、国境を越えてきた異国の空気を感じさせてくれたからだ。

 門をくぐると、従者が出迎えてくれて、応接室へと案内してくれた。部屋の中を彩る調度品の数々も、ザルカンド王国とは少し趣がちがう。
 そんな違いを楽しんでいると、しばらくして現れたのは、黒髪に灰色の瞳を持つ青年――ディーン・マッカラン公爵であった。
 ディーン様は、数年前に病で父親を失い、急きょ公爵位を継承したものの、彼の若さからくる経験不足を周囲から心配されていたらしい。
 だが、皇帝が配慮して仕事の負担を減らしているおかげで、帝国の支えを受けながらなんとか領地を治めているという。

「エルザ・ローグアシュタル様ですね。ようこそ、アースランド帝国へ」

 ディーン様は静かな口調で挨拶し、穏やかな笑みを見せた。
 その端正な顔立ちはどこか孤独を纏っているようにも見える。
 私もまた、彼に深く礼をし、丁寧に答えた。

「ディーン公爵様、お目にかかれて光栄です。ザルカンド王国・ローグアシュタル公爵家より参りましたエルザと申します。僭越ながら、しばらくの間、帝国と公爵家のお力となれるよう尽力させていただきます」

 ディーン様が私の言葉を受けて小さくうなずいた。
 その目には、どこか興味深げな光が宿っているような。
 ふと、彼が自分の言葉に何を感じ取ったのかを考える。

「エルザ様、私も未熟者ですので、どうぞ遠慮なく意見をいただければ幸いです」

 ディーン様の言葉に、私は貴族らしく微笑み返す。

「私にできることがあれば、何でもお申し付けください」

 ディーン様が気遣って下さったのか、マッカラン公爵家での仕事はゆっくりと少しずつ始まっていった。
 ディーン様の補佐として公務に従事することとなり、彼の仕事ぶりを間近で見る機会が増えていく。
 ディーン様は寡黙で、どんな小さな仕事でも自分で調べるほどに熱心だった。
 公爵家の領地経営や帝国との国政関連の仕事においても真摯に取り組み、貴族や領民たちへの配慮を欠かさなかい。
 だが、ふとした瞬間に、ディーン様が抱える疲労や孤独を感じ取ることもあり、その姿に胸が痛む。
 私が役立てるとすれば、まずはその公務の負担を少しでも軽減し、ディーンが無理をしなくても済むようにすることだった。
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