婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ

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偽りの理想

四十三話 崩れゆく地盤

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 フェリクス王子とアレクシス王太子の不穏な会話を背に、私は王宮の廊下を歩いていた。

(……あの二人、何か仕掛けてくる気ね)

 王家の権威を振りかざし、私を従わせようとしていたが、そんなものに屈するつもりはない。
 むしろ――彼らの思惑を先回りして潰してしまえばいい。

 そう考えながら歩いていると、不意に背後から足音が近づいてきた。

「やあ、セシリア」

「……リカルド?」

 振り向くと、リカルド・エインズワースの姿があった。
 彼は、幼いころから仲良くしてくれていた友人だ。
 アレクシス王太子に婚約破棄された後も、ずっと味方でいてくれた。

「お前の噂、もう広まってるぞ」

「……え?」

 リカルドは軽く肩をすくめながら、私の隣に並んだ。

「“セシリア・バートレイ嬢、フェリクス王子との婚約を拒否し、王家に反旗を翻す”ってな」

「……随分と話が歪んでるわね」

 私は呆れたように溜息をついた。

 王家に”反旗”? 冗談じゃない。
 私はただ、望まない婚約を断っただけ。

「まあ、王子たちがそんな風に仕立てたんだろうな」

「王子たちの力を誇示するために、私を”逆賊”のように扱う……そういうこと?」

「そういうことだ」

 リカルドの表情が僅かに険しくなる。

「正直、フェリクスもアレクシスも焦ってるんだろうな」

「焦ってる?」

「ああ。お前が王家の意向を拒否したことで、“王族の絶対性”に疑問を持つ連中が出始めてる」

 リカルドは辺りを見回し、周囲に誰もいないことを確認してから続けた。

「それに……フェリクス王子の裏の動き、かなり危うくなってきてるみたいだぜ」

「……どういうこと?」

 リカルドは少し声を潜めた。

「俺の情報網によると、フェリクス王子が手を組んでる裏勢力の中に、すでに”寝返った者”が出てる」

「寝返った?」

「ああ。王子の計画が失敗する可能性が高いと見て、別の派閥に情報を流してるって話だ」

(……なるほど)

 フェリクス王子は表向きは理想を掲げているが、実際には多くの”危険な取引”をしてきた。
 それが今になって、彼自身の足元を揺るがせている。

「つまり……王子は自分の周囲から崩され始めてるってこと?」

「そういうことだ。だが、まだ完全には落ちてない」

 リカルドは真剣な眼差しで私を見つめる。

「セシリア、お前はどう動く?」

 私は一瞬考え、静かに微笑んだ。

「決まってるじゃない。とどめを刺すわ」

 硬く拳を握りしめながら。
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