婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ

文字の大きさ
42 / 54
偽りの理想

四十二話 拒否

しおりを挟む
 翌日、私は王宮へ向かった。

 フェリクス王子からの婚約を正式に断るために。

 王宮の謁見室に通されると、そこにはフェリクス王子だけでなく、元婚約者……アレクシス王太子の姿もあった。

「ようこそ、セシリア嬢」

 フェリクス王子は微笑みを浮かべながら、椅子から立ち上がる。

「お会いできて光栄です」

 アレクシス王太子も口元に余裕のある笑みを浮かべた。

(嫌な予感しかしない……)

 彼らは私の意志を確認する前から、既に何かを企んでいる雰囲気だった。

「今日は大事な話があると伺いましたが?」

 フェリクス王子が促すように尋ねる。

 私は深く息を吸い、はっきりと告げた。

「フェリクス王子、あなたとの婚約をお受けすることはできません」

 その瞬間、室内の空気が一変した。

 フェリクス王子の表情が一瞬だけ強張る。
 だが、すぐに作り笑いを浮かべた。

「……なるほど。しかし、もう一度よく考えたほうがいいのでは?」

「考えた上での結論です」

 私がきっぱりと返すと、フェリクス王子の目が細まった。

「君が私の婚約を断るということは……私の敵に回る、ということになるが?」

「脅しのつもりですか?」

「いや、ただの忠告だよ」

 フェリクス王子は微笑みながらも、冷たい視線を向けてきた。

(やっぱり、思った通りね……)

 彼は自分が拒まれることを想定していなかったのだろう。
 だからこそ、“敵”という言葉を使った。

 すると、今まで黙っていたアレクシス王太子が口を開いた。

「セシリア嬢、君は少し勘違いをしているのではないか?」

「……何をでしょうか?」

「君が今ここで婚約を断ろうとも、結局は王家の意向には逆らえないということだ」

 アレクシス王太子はゆったりと椅子にもたれかかりながら、余裕の表情を浮かべた。

「私とフェリクスはどちらも王位継承権を持つ立場だ。そして、我々の決定は王宮の方針そのものでもある」

「つまり?」

「つまり――君に拒否権などない」

 アレクシス王太子は冷たく笑う。

 まるで私の意思など最初から関係ないかのように。

(……そういうことね)

 彼らは自分たちが”王族”であることを盾に、私を従わせようとしているのだ。

 けれど――。

「残念ですが、私は王家の犬ではありません」

 私は一歩前に出て、二人の王子を見据えた。

「王家の意向がどうであれ、私は自分の意思を貫きます」

「……随分と強気だな」

 フェリクス王子の声が低くなる。

「王家に盾突けば、どうなるか分かっているのか?」

「分かっていますよ。でも、それを恐れて従うほど私は弱くありません」

 私は微笑んだ。

 それは、彼らへの宣戦布告でもあった。

「この話はもう終わりです。それでは、失礼いたします」

 私は軽く礼をして、堂々と謁見室を後にした。

***

「……随分と舐められたものだな」

 セシリアが去った後、フェリクス王子は低く呟いた。

 アレクシス太子も不機嫌そうに唇を噛む。

「このままでは終わらせん。王家の威厳に泥を塗るような真似はさせない」

「そうだな……彼女には少し”礼儀”を教えてやる必要がある」

 二人の王子の目に、暗い光が宿る。

 しかし、彼らは知らなかった。

 すでに自分たちの足元が崩れ始めていることを――。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

恩知らずの婚約破棄とその顛末

みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。 それも、婚約披露宴の前日に。 さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという! 家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが…… 好奇にさらされる彼女を助けた人は。 前後編+おまけ、執筆済みです。 【続編開始しました】 執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。 矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。

『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』

鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」 幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された 公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。 その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、 彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。 目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。 だが、中身は何ひとつ変わっていない。 にもかかわらず、 かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、 「やり直したい」とすり寄ってくる。 「見かけが変わっても、中身は同じです。 それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」 静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。 やがて彼女に興味を示したのは、 隣国ノルディアの王太子エドワルド。 彼が見ていたのは、美貌ではなく―― 対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。 これは、 外見で価値を決められた令嬢が、 「選ばれる人生」をやめ、 自分の意思で未来を選び直す物語。 静かなざまぁと、 対等な関係から始まる大人の恋。 そして―― 自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。 ---

【完結】実兄の嘘で悪女にされた気の毒な令嬢は、王子に捨てられました

恋せよ恋
恋愛
「お前が泣いて縋ったから、この婚約を結んでやったんだ」 婚約者である第一王子エイドリアンから放たれたのは、 身に覚えのない侮蔑の言葉だった。 10歳のあの日、彼が私に一目惚れして跪いたはずの婚約。 だが、兄ヘンリーは、隣国の魔性の王女フローレンスに毒され、 妹の私を「嘘つきの悪女」だと切り捨てた。 婚約者も、兄も、居場所も、すべてを奪われた私、ティファニー16歳。 学園中で嘲笑われ、絶望の淵に立たされた私の手を取ったのは、 フローレンス王女の影に隠れていた隣国の孤高な騎士チャールズだった。 「私は知っています。あなたが誰よりも気高く、美しいことを」 彼だけは、私の掌に刻まれた「真実の傷」を見てくれた。 捨てられた侯爵令嬢は、裏切った男たちをどん底へ叩き落とす! 痛快ラブ×復讐劇、ティファニーの逆襲が始まる! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

妹と違って無能な姉だと蔑まれてきましたが、実際は逆でした

黒木 楓
恋愛
 魔力が優れていた公爵令嬢の姉妹は、どちらかが次の聖女になることが決まっていた。  新たな聖女に妹のセローナが選ばれ、私シャロンは無能な姉だと貴族や王子達に蔑まれている。  傍に私が居たからこそセローナは活躍できているも、セローナは全て自分の手柄にしていた。  私の力によるものだとバレないよう、セローナは婚約者となった王子を利用して私を貶めてくる。  その結果――私は幽閉されることとなっていた。  幽閉されて数日後、ある魔道具が完成して、それによって真実が発覚する。  セローナが聖女に相応しくないと発覚するも、聖女の力を継承したから手遅れらしい。  幽閉しておいてセローナに協力して欲しいと私に貴族達が頼み始めるけど、協力する気は一切なかった。

婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました

神村 月子
恋愛
 貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。  彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。  「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。  登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。   ※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...