婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ

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偽りの理想

四十二話 拒否

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 翌日、私は王宮へ向かった。

 フェリクス王子からの婚約を正式に断るために。

 王宮の謁見室に通されると、そこにはフェリクス王子だけでなく、元婚約者……アレクシス王太子の姿もあった。

「ようこそ、セシリア嬢」

 フェリクス王子は微笑みを浮かべながら、椅子から立ち上がる。

「お会いできて光栄です」

 アレクシス王太子も口元に余裕のある笑みを浮かべた。

(嫌な予感しかしない……)

 彼らは私の意志を確認する前から、既に何かを企んでいる雰囲気だった。

「今日は大事な話があると伺いましたが?」

 フェリクス王子が促すように尋ねる。

 私は深く息を吸い、はっきりと告げた。

「フェリクス王子、あなたとの婚約をお受けすることはできません」

 その瞬間、室内の空気が一変した。

 フェリクス王子の表情が一瞬だけ強張る。
 だが、すぐに作り笑いを浮かべた。

「……なるほど。しかし、もう一度よく考えたほうがいいのでは?」

「考えた上での結論です」

 私がきっぱりと返すと、フェリクス王子の目が細まった。

「君が私の婚約を断るということは……私の敵に回る、ということになるが?」

「脅しのつもりですか?」

「いや、ただの忠告だよ」

 フェリクス王子は微笑みながらも、冷たい視線を向けてきた。

(やっぱり、思った通りね……)

 彼は自分が拒まれることを想定していなかったのだろう。
 だからこそ、“敵”という言葉を使った。

 すると、今まで黙っていたアレクシス王太子が口を開いた。

「セシリア嬢、君は少し勘違いをしているのではないか?」

「……何をでしょうか?」

「君が今ここで婚約を断ろうとも、結局は王家の意向には逆らえないということだ」

 アレクシス王太子はゆったりと椅子にもたれかかりながら、余裕の表情を浮かべた。

「私とフェリクスはどちらも王位継承権を持つ立場だ。そして、我々の決定は王宮の方針そのものでもある」

「つまり?」

「つまり――君に拒否権などない」

 アレクシス王太子は冷たく笑う。

 まるで私の意思など最初から関係ないかのように。

(……そういうことね)

 彼らは自分たちが”王族”であることを盾に、私を従わせようとしているのだ。

 けれど――。

「残念ですが、私は王家の犬ではありません」

 私は一歩前に出て、二人の王子を見据えた。

「王家の意向がどうであれ、私は自分の意思を貫きます」

「……随分と強気だな」

 フェリクス王子の声が低くなる。

「王家に盾突けば、どうなるか分かっているのか?」

「分かっていますよ。でも、それを恐れて従うほど私は弱くありません」

 私は微笑んだ。

 それは、彼らへの宣戦布告でもあった。

「この話はもう終わりです。それでは、失礼いたします」

 私は軽く礼をして、堂々と謁見室を後にした。

***

「……随分と舐められたものだな」

 セシリアが去った後、フェリクス王子は低く呟いた。

 アレクシス太子も不機嫌そうに唇を噛む。

「このままでは終わらせん。王家の威厳に泥を塗るような真似はさせない」

「そうだな……彼女には少し”礼儀”を教えてやる必要がある」

 二人の王子の目に、暗い光が宿る。

 しかし、彼らは知らなかった。

 すでに自分たちの足元が崩れ始めていることを――。
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