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偽りの理想
四十八話 王子、絶望へ
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「……アレクシス王太子殿下、これは一体どういうことですか?」
重苦しい沈黙の中、国王が静かに問いかけた。
王宮会議の場には、王族、貴族、そして重臣たちが居並ぶ。彼らの視線は、一人の男へと集中していた。
――アレクシス王太子。
彼の手には、自らの署名が記された密約の書状が握られている。
「ま、待ってください、陛下!」
アレクシス王太子は必死に弁明しようとするが、その声はどこか震えていた。
「これは何者かが私を陥れるために用意した偽の書状です! 私はフェリクス王子の不正には一切関与しておりません!」
「……ほう、そう言い切れますか?」
グレン公爵が冷ややかに言葉を投げる。
「では、この書状に記された取引内容について、王太子殿下は全く知らないと?」
「そ、それは……」
「ならば、この取引の現場にいた証人たちをお呼びしましょうか?」
その言葉に、アレクシス王太子の顔が一気に青ざめた。
まさか――。
「証人……?」
「ええ。王太子殿下が国外商会と会談を持った際、実際に場にいた商会の関係者、そして王宮の記録官がいます」
「……っ!」
血の気が引く。
密約の証拠が流出しただけでなく、現場にいた人間まで証人として立てられるとは――。
まるで、すべてが仕組まれていたかのように。
(……あの女!!)
アレクシス王太子の頭に、セシリアの姿が浮かぶ。
フェリクス王子の転落から、自分の追い詰められる流れまで、すべてが彼女の策略だったのではないか。
「アレクシス、私は失望した」
国王の静かな声が響いた。
「お前には次期国王としての自覚があると信じていたが……王家を利用し、不正に手を染めていたとはな」
「ち、違います! 私は……私はただ……!」
「王太子の称号は、もはやお前にはふさわしくない。」
国王のその言葉が、アレクシス王太子の人生を決定づけた。
「……え?」
「アレクシス、お前を王太子の座から解任する。」
その瞬間、王宮会議の場は静まり返った。
誰もが息を呑み、アレクシス王太子の絶望に満ちた顔を見つめる。
「そ、そんな……」
「それだけではない」
国王はさらに言葉を続ける。
「お前が関与していた不正について、徹底的に調査を行う。そして、場合によっては処罰も考えねばならん」
「……っ!」
アレクシス王太子の膝が崩れ落ちた。
――未来の王として生きるはずだった男が、今やただの罪人として裁かれようとしている。
***
「いやぁ、すごいもんだな」
王宮の外、リカルドが愉快そうに笑った。
「フェリクス王子も見事に潰れたが、アレクシス王太子もここまで見事に転がり落ちるとはな」
「当然の結果よ」
私は優雅に微笑んだ。
「王太子の称号を剥奪されたアレクシスに、もう味方はいないわ。フェリクス王子を切り捨てたせいで、彼を支えていた貴族たちも離れるでしょうね」
「ざまぁってやつだな」
リカルドは肩をすくめる。
「さて、これで一つの区切りがついたわね」
私は王宮の方を振り返る。
――アレクシス王太子の悲鳴が、まだ聞こえてくるようだった。
重苦しい沈黙の中、国王が静かに問いかけた。
王宮会議の場には、王族、貴族、そして重臣たちが居並ぶ。彼らの視線は、一人の男へと集中していた。
――アレクシス王太子。
彼の手には、自らの署名が記された密約の書状が握られている。
「ま、待ってください、陛下!」
アレクシス王太子は必死に弁明しようとするが、その声はどこか震えていた。
「これは何者かが私を陥れるために用意した偽の書状です! 私はフェリクス王子の不正には一切関与しておりません!」
「……ほう、そう言い切れますか?」
グレン公爵が冷ややかに言葉を投げる。
「では、この書状に記された取引内容について、王太子殿下は全く知らないと?」
「そ、それは……」
「ならば、この取引の現場にいた証人たちをお呼びしましょうか?」
その言葉に、アレクシス王太子の顔が一気に青ざめた。
まさか――。
「証人……?」
「ええ。王太子殿下が国外商会と会談を持った際、実際に場にいた商会の関係者、そして王宮の記録官がいます」
「……っ!」
血の気が引く。
密約の証拠が流出しただけでなく、現場にいた人間まで証人として立てられるとは――。
まるで、すべてが仕組まれていたかのように。
(……あの女!!)
アレクシス王太子の頭に、セシリアの姿が浮かぶ。
フェリクス王子の転落から、自分の追い詰められる流れまで、すべてが彼女の策略だったのではないか。
「アレクシス、私は失望した」
国王の静かな声が響いた。
「お前には次期国王としての自覚があると信じていたが……王家を利用し、不正に手を染めていたとはな」
「ち、違います! 私は……私はただ……!」
「王太子の称号は、もはやお前にはふさわしくない。」
国王のその言葉が、アレクシス王太子の人生を決定づけた。
「……え?」
「アレクシス、お前を王太子の座から解任する。」
その瞬間、王宮会議の場は静まり返った。
誰もが息を呑み、アレクシス王太子の絶望に満ちた顔を見つめる。
「そ、そんな……」
「それだけではない」
国王はさらに言葉を続ける。
「お前が関与していた不正について、徹底的に調査を行う。そして、場合によっては処罰も考えねばならん」
「……っ!」
アレクシス王太子の膝が崩れ落ちた。
――未来の王として生きるはずだった男が、今やただの罪人として裁かれようとしている。
***
「いやぁ、すごいもんだな」
王宮の外、リカルドが愉快そうに笑った。
「フェリクス王子も見事に潰れたが、アレクシス王太子もここまで見事に転がり落ちるとはな」
「当然の結果よ」
私は優雅に微笑んだ。
「王太子の称号を剥奪されたアレクシスに、もう味方はいないわ。フェリクス王子を切り捨てたせいで、彼を支えていた貴族たちも離れるでしょうね」
「ざまぁってやつだな」
リカルドは肩をすくめる。
「さて、これで一つの区切りがついたわね」
私は王宮の方を振り返る。
――アレクシス王太子の悲鳴が、まだ聞こえてくるようだった。
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