脱衣ゲームでカップル成立 ~史上最強の淫魔、光堕ちしてキューピッドになる~

平良野アロウ

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第六章

第212話 脱衣すごろく・6

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 刃と佐奈が領域を去り、サイコロは誠の手に渡っていた。
 誠は六の目を上に向けたまま、そっと手放しまっすぐに床へ落とす。このゲームではサイコロの投げ方に規定が無く、前回のこのペアの手番でも綾芽が出目を操作するための特殊な投げ方をしたが何も注意はされなかった。
 今回の誠の投げ方はそれ以上に露骨なものであるが、ルシファーは黙認。別に注意してもよかったのだが、今は余計な体力を使いたくなかったというのが本音だ。
 サイコロは狙い通り六の目を出す。自分達が一番前にいる限り、誠が綾芽の裸体を隠す壁になれる。だからこそできる限り大きな目を出さねばならないのだ。
 他のペアを大きく引き離して着いたマスにて、お題の文が展開。それをルシファーが高々と読み上げた。

「出ました! 『男子が女子の胸の谷間に十秒間顔を押し付ける』です!」
「おい待て、ふざけんな」

 とびきり大サービスなお題の出現に、その恩恵を受けられる立場の誠はかえって焦る。一歩前に出て、ルシファーに抗議の姿勢だ。

「いいか吉田はな……」
「待って、いいの藤林君」

 が、綾芽がそれを制止したことに誠は苦虫を噛み潰したような顔。

「何でだよ吉田、お前は……」
「いいの。藤林君になら」

 綾芽はそう言うと、色っぽい黒のブラに包まれた胸元に両手を当て、顔を置きやすくするため乳房を軽く左右に開く。

「いや……俺がやらなきゃお前がより辛い目に遭うことはわかってる。でもお前にそういうことを強いるあいつには一言言ってやらないと」
「大丈夫」

 誠の顔をじっと見上げる瞳は、強い意志を宿したもの。かつてのおどおどした彼女からは考えられないような――いや、誠は以前にもこのような目を見たことがある。
 初めて二人で出かけたあの日、胸を目立たせるように鞄をたすき掛けにしてきた時の彼女と同じ目。

 綾芽はこんな大きすぎる胸を持ってしまったばっかりに、色々と嫌な目に遭ってきた。人から胸をじろじろ見られたり、胸のことについて言及されたりするのには強い嫌悪感がある。
 だからこそ誠はその綾芽の気持ちを慮って、極力彼女の胸を見ないようにしてきた。
 だけど綾芽は、好きな人へのアピールにならそのHカップを、自慢の武器として使ってもいいと思っていた。だからこそ、普段だったら絶対にやらないパイスラをデートの時に限ってだけは解禁した。
 そして今もまた、その爆乳の谷間に誠を誘う。

「……わかった。心を無にして、できるだけ何も意識せずにやるから」
(そうじゃないんだけどな)

 綾芽がそう思いはしても口に出さないでいると、誠は覚悟を決めて谷間へと鼻から突っ込んだ。
 瞬間、顔を包み込むのはたまらぬ柔らかさ。どんな高級クッションでさえもそれには及ばない、柔の極地。それと同時に甘い香りが鼻腔をくすぐり、未だかつてない快感へと誘う。
 硬派ぶっている誠もこれには何も抗うことができず、ただその天へと昇る心地を堪能するばかり。

(これが吉田のおっぱい……)

 実は既にこれを直に揉んだこともあるのだが、その時の記憶はルシファーによって消されている。そのため今回が初めて触れるのが当人の認識だ。
 綾芽の鼓動が次第に早くなるのを肌で感じ、胸のときめきが止まらない二人の気持ちはシンクロしていた。

「そこまで! お題達成です!」
(もうお終いかよ!)

 天国の終わりを告げる、ルシファーの無情な一言。十秒という時間は、それを堪能するにはあまりにも短かった。さながら、続きは付き合ってからやれと言わんばかりに。
 そして顔を離して我に返った誠は、格好つけて綾芽に言ったことと真っ向から相反する自身の行いを酷く恥じた。とても人様には見せられないニヤケ面は即座に真顔に戻ったが、俯いた顔を上げられず綾芽と目を合わせられなかった。

 脱衣者を決めるサイコロは、綾芽の手に握られる。宏美と奈々に、緊張が走った。脱落に王手を掛けられるのは果たしてどちらか。
 ころんと投げられたサイコロが示したのは、奈々であった。嫌だという気持ちを全力で伝える「ええー!」の声が、領域の天井に響いた。

「では宮原さん、脱いで頂きましょう」
「やだやだやだやだ!」
「先程脱落された三鷹さんはちゃんと最後まで全部脱がれましたよ」
「うー……じゃあ男子みんな目つぶってて! ほら藤木も!」
「もうつぶってるよ!」

 粗相をしないか不安で仕方がない壮一は、佐奈が最後の一枚を脱ぐ時から現在に至るまでずっと目をつぶりっぱなしであった。その上で両手で耳まで塞ぎ、完全防備は万端。
 その状態で程なくして、壮一は奈々に肩を叩かれた。

「ちょっと、聞いてるの藤木! あんたがサイコロ振る番だよ!」
「ご、ごめん」

 手で塞いでいた耳元で叫ばれて、ようやく気付く。奈々によってサイコロを手に持たされた壮一は、目をつぶったままそれを無造作に投げた。

「あ、やった六だ! 行くよ藤木」
「待って、俺目つぶって……」

 すると奈々は壮一の手を取って歩き出した。今の壮一にとっては、好きな子に手を握られただけでも結構ヤバい状況だ。
 奈々に手を引かれ、暗闇の中をおぼつかない足取りで進む壮一。その途中には、純一と宏美を追い抜かねばならないポイントがあった。当然、二人の姿は壮一には見えていない。
 純一はそっと宏美の腕を引き、歩く二人が宏美にぶつからないようにした。なお、その間純一は奈々の裸体をがっつり見ており宏美に手首をつねられた。

「藤木ストップ、着いたよ」

 可愛い盲導犬の指示で壮一は足を止める。目をつぶっていても、瞼越しの明るさで足元が光ったことはわかった。

「出ました! 今回のお題は……『お互いパートナーの股間にタッチ』です!」
「え」

 始めはゆるいお題だったこのゲームだが、奥に進む毎に本性を現したかのようにお題が過激なものになっていく。
 先程の誠と綾芽がそうであったように、今回もまた性的部位への直接的な接触を伴うものだ。

「いや待って、今あたし……」
「成功の条件は、互いが同時に相手の股間に触れている状態が一瞬でも認められればOKです。なお、自分から触れなければ成功とみなされません。相手の手を取って触れさせるのはNGとなります」
「そうじゃなくってさ!」

 奈々の発言を遮るようにルシファーが説明を続けると、奈々はそこから更に反論。

「今あたしこんなんだよ!? こんな状態で触られたら……」
「まあそれは仕方がないと割り切りましょう。どの道これに失敗したら脱落ですからね」

 ルシファーの冷たく突き放す言葉に、奈々の落胆の声が漏れた。
 こんな状態とはどんな状態か、壮一の中で悶々とした考えが膨らむ。

「……藤木、目開けて」
「え」

 もしかしてこんな時にまでいつものようにからかってるのでは、と壮一は一瞬思ってしまった。

「さっきの話聞いてたでしょ? あんたの方から触ってくれないと失敗扱いになるんだから。目開けてくれないとちゃんと触れないじゃない」
「あ……そう、だね」

 しっかりと納得できる理由を示されて、壮一は同意するしかない。
 恐る恐る、壮一は瞼を上げた。好きな女の子のおっぱいという衝撃に、果たして自分は耐えられるのか。
 そしてその瞳に映る光景に、壮一は言葉を失った。
 奈々はAAカップの白無地ブラを、しっかりと着けていた。その代わりに肌を晒すのは下半身。ショーツを脱ぎ捨てて、両手を股間に当てて前を隠している。
 こんな状態で触られたらというのはつまり、パンツ越しではなく直に触れられることになるという意味だったのだ。

「な、何で下から……」
「だって、それは……」

 奈々は言葉を濁すも、その理由は大方察せる。あまりにも小さすぎる胸を晒すくらいなら下の方がマシだからだ。ましてやあんなHカップの化け物と同じ空間にいるなら尚更である。

「い、いいからやるよ! 一瞬でいいって言ったんだから、ホントに一瞬で終わらせるから!」
「え、本当にいいの? だって直に……」
「どの道負けたら全裸なんだからやるしかないでしょ!」
「わかってるけど……本当にいいの? 嫌じゃないの!?」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ! それに藤木になら……とにかく一瞬だけで済むんだからさっさと終わらせよ! 一番恥ずかしいのはあたしなんだから!」
「わかったよ、わかった」

 そうは言っても、射精の不安が付き纏い本心からは同意し辛いのが本音。
 この不安感は女子には理解できない。好きな人の前であまりに惨めな姿を晒すのは、死にも等しい屈辱だ。

 そんな壮一の気持ちはさておき、壮一が同意したことで奈々は躊躇いながらも、恥ずかしい場所から手をどかした。
 彼女の陰毛は薄くまばら。処理しているのではなく、天然で薄い方である。
 奈々の顔はみるみるうちに、茹で上がったように赤くなっていった。羞恥に耐えられなくなった彼女は、早くお題を終わらせて隠したいと慌てて壮一の股間に手を伸ばす。
 指先が触れた瞬間、硬くなったそれは力強く脈動した。我慢の決壊。男性特有の液体が、パンツの中へと漏れ出た。つい先程これと似た光景を見たばかりであるルシファーは、ちょっと不愉快なデジャヴを感じてしまった。
 絶望の嗚咽が壮一の口から漏れる。当然だ、好きな女の子の前で失態を晒してしまったのだから。
 対する奈々は暫し言葉を失っていたが、やがて状況を理解して一言。

「え……出ちゃったって、こと?」

 引き攣った顔は、不快感を示すもの。男性の生理現象に知識の乏しい高校一年生の処女なのだ、無理もない反応である。
 終わったと思った瞬間頭の中が真っ白になった壮一は「あ、あ……」と言葉にならない声を発するのみ。

「えー、ところで藤木君が宮原さんの股間に触れていないので、今回のお題は失敗となります。宮原さん、最後の一枚を脱いで下さい」

 と、そこでルシファーの一声。それは壮一にとっての助け舟でもあった。一旦空気を割ってくれたことで、パニックになっていた頭の中がリセットされて我に返った。

「あ、待って宮原! その……ごめん!」
「え、何?」
「俺、エロいと感じるとすぐに出ちゃう体質で……宮原にだけは知られたくなかったけど……」
「それ言ったらあたしだって!」

 奈々は背中に手を回したかと思うと、ブラを外して脱ぎ捨て薄っぺらな胸を露に。

「こんなまっ平な上に乳首の色黒いし! これだけは藤木に見せたくなかったから!」

 それは想像を絶する平坦さであった。全く無いわけじゃないと言える程度にはあるんでしょ、という反論すら許さない。それに加えて本人の言葉通り乳首の色素が濃いため、残念な胸という見た目の印象が非常に強くなっている。
 見せたくないと言いながら自ら脱いで見せたのは、勿論それがルールだからというのもある。だがそれ以上に、人に知られたくなかったコンプレックスを不意の事故で晒してしまった壮一に、奈々にとってのそれをあえて打ち明けることでのフォローの意味合いが強い。傷の舐め合いに近いやり方だが、今の奈々にはこうすることしか考えつかなかった。

「あ、大丈夫、俺、小さくても気にしないし、むしろ好きだから……」
「ん、そうなんだ」

 壮一なりの精一杯のフォローだ。
 お互い非常に気まずい状態。相手の目を見ることができず、かといって俯けば片や精液の染み出た、もう片や一糸纏わぬ股間が目に入る。

「ん……で、さあ! 藤木はあたしのこと、好きってことでいいんだよね!?」
「え、あ、うん」
「そっか! じゃあ両想いだね!」

 今にも火を噴きそうなほど真っ赤な顔に、裏返った声。今度は奈々の方がパニックに陥っているのは見て明らかだ。壮一は何か気の利いた言葉を返そうという素振りはするものの、何て言ったらいいのかぱっと思い浮かばずおろおろしている様子。
 ならば当然、ここはこの男の出番である。

「カップル成立、おめでとうございまーす!」

 ダッシュで寄ってきたルシファーに二人が驚いたのも束の間、早速紋章が刻まれる。

「では宮原さんには服をお返し致します。それと藤木君にも替えのパンツとズボン、それにティッシュを用意しておきました」
「あ、どうも……」

 臨機応変な親切対応に、壮一はありがたいやら恥ずかしいやら。
 当然着替える際には下半身裸になるわけだが、その際に奈々にはがっつり見られた。こちらも奈々のを見ている分、何も文句を言うことはできなかった。
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