脱衣ゲームでカップル成立 ~史上最強の淫魔、光堕ちしてキューピッドになる~

平良野アロウ

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第六章

第193話 脱衣丁半・2

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 一度目のリリムのイカサマを、ローザリアは指摘しつつもあえて見逃した。その上で二度目のイカサマはしっかりと証拠を突き付けて咎めた。
 その結果ローザリアにとって有利なルールへの変更を、ルシファーから引き出した。完全にローザリアの狙い通りの展開だ。
 カップとサイコロを手渡されたローザリアは、点差では自分が負けている状況にも拘らず不敵な笑みを見せる。
 サイコロをよく観察した後カップに軽く転がして入れ、テーブルに伏せた。カップの中では、カタカタとサイコロの動く音。
 キューピッドは弓矢を扱う関係上、矢の軌道を操るための念動力に長ける。事前にサイコロに聖なる力を付与した上で、カップの中で操作し狙った面を上に向けるのである。

「私は半に賭けるわ」

 ローザリアは白々しくそう言うとカップを開けた。サイコロの目は一と二。賭けは当たりだ。

「はい私の勝ち。これで同点ね。ルールでしょう? 早く脱ぎなさい」

 ルールで認められているからとバレバレのイカサマを使って勝った上で、威圧的な態度を美裕に向ける。
 ローザリアを見つめる美裕の瞳が揺れた。何かイカサマをしているであろうことはわかっていても、普通の人間である美裕にその手口を見抜く能力は無い。
 だがそれ以上に、ルシファーの裏切りとも取れるこの状況が美裕の胸を締め付けた。

「なあ美裕、やっぱりあのルシファーって奴……」
「そうじゃないって思いたいけど……」

 美裕はハーフパンツを下ろし、水色と白の縞パンを露にする。完全な下着姿となった美裕は、良悟の視線を感じて掌をお尻に当てた。
 胸もお尻も平均的なサイズの、特別スタイルが良いわけでなければ貧相なわけでもないプロポーションだ。

「美裕のパンツ……その、可愛いな」
「う、うるさいなーもう。こんなとこでそんなもの褒めないでよ!」

 美裕の認識では彼氏にお見せするのが憚られる子供っぽい下着のつもりであったが、良悟的には全然有り。
 ちょっと嬉しい気持ちになった反面、こんな所で下着褒めるのは空気読めてないというのがガチの本音である。


「では五戦目と参りましょう」

 美裕にカップとサイコロが手渡される。ここで外せばいよいよ下着を脱がねばならない状況が来て、否が応でも緊張させられる。
 当然美裕は魔法等の異能の類いは使えないし、かといってイカサマの技術も持ってはいない。正々堂々二分の一の運ゲーに賭けざるを得ない立場だ。
 しかも相手はイカサマで確実に当てることができるため、ここで外してブラを失えば次で即座にショーツも奪われると言っていい。ここで確実に当てなければ、どうやったって勝機は無いのである。
 幸いにも同点で自分が先攻という立場上、ここから両者とも当て続けた場合最終的に自分の勝ちとなる。それが唯一の勝ち筋だ。
 美裕は祈りながら、サイコロをカップに入れる。

『聞こえますか戸田美裕さん』

 突然、美裕の脳裏に声がルシファーの響いた。

『賭けは丁です。テーブルの裏にボタンがあります。それを軽く押して下さい』

 テレパシーで伝えられたメッセージは、イカサマの指示。果たして信じてよいものか、美裕の緊張が走る。
 とりあえず右手でカップを持ちながら左手でテーブルの裏を探ると、確かにそこには硬貨サイズの円形ボタンが一つ付いていた。
 美裕はボタンを半分ほど押すと同時に喋り始める。

「私はとりあえず、えーっと、じゃあ、丁で」

 ボタンを押した途端にカップの中のサイコロが動き出したので、その音を掻き消すように美裕は喋っていた。そうやって引き伸ばした上で、サイコロの動きが止まったのを確認すると丁への賭けを宣言。
 右手に掴んだカップを上げると、サイコロの目はどちらも五。見事当たりだ。

「ではローザリア、服を……」

 ルシファーがそう言おうとした時だった。ローザリアは不意を突くように手を伸ばし、テーブル上のサイコロを掴んだ。が、持ち上げようにもサイコロはテーブルから離れない。まるで吸い付いたように、テーブルとぴったりくっついているのだ。
 美裕は慌ててボタンから指を離した。途端、サイコロは普通にテーブルから離れる。

「へぇ、そういうこと。サイコロに磁石仕込んでたんだ。案外と理科教師らしいこともするのね」
「理科教師?」
「……そういうことをやっていたこともあるというだけの話です」

 良悟から尋ねられたルシファーは、とりあえず適当にはぐらかす。
 ローザリアはサイコロを指先でくるくる回しながら、くすくす笑ってイカサマの手口について推測したものを解説し始めた。

「テーブル側には電磁石が入れてあって、テーブル裏のボタンを押せば電気が流れサイコロの磁石を仕込んだ面が下を向くようになっている。これで合ってるかしら?」
(バレた……私がボタンから指を離さなかったせいだ)

 ルシファー渾身のトリックも一発で見破られた。美裕は焦りに目を泳がせる。

「最初に魔法でのイカサマを見せて、イカサマをするなら魔法でとまず思い込ませる。その上で実際はサイコロとテーブルに仕込まれた科学トリックを使い、魔力反応の出ないイカサマで私を欺く……そのつもりだったんでしょう?」
「ご名答。なかなか洞察力があるじゃないか」

 更に言えば、最初リリムに壺振りを任せたのも策略の内である。ルシファーがバレバレのイカサマをすれば、わざとバラして何かを誘っているのが丸わかりだ。だがそれがリリムであれば、拙いやり方でも違和感は出ない。
 しかしそうやって策を巡らせても、ほんの些細なミスがそれを無に帰した。自らピンチを招いてしまった美裕は、ぐっと拳を握って悔しさを滲ませる。
 するとそこに、良悟はすっと美裕を抱き寄せる。

「大丈夫だ美裕、少なくとも今回は美裕の勝ちになるんだ。イカサマがバレたって関係無いってルシファーさんも言ってたろ」
「あら、今回に関してはそうとも言い切れないわよ」

 良悟のフォローを断ち切るように、ローザリアは声を高くして言う。

「サイコロとテーブルにギミックを仕込んだのはルシファーでしょう? 壺振り以外がサイコロに干渉してはいけないルールに違反してるんじゃなくって?」
「仕掛けを操作したのは戸田さんだ。よってそのルールには違反していない」

 が、ルシファーは即座に反論。しかしローザリアも負けじと食ってかかる。

「今回ばかりは認められないわ。切り札のつもりだったイカサマがバレたから強引に勝ちを認めさせようだなんて、格好悪いんじゃなくって?」
「では改めてルールを復唱しようか。壺振りはイカサマが可能だが、他のプレイヤーがサイコロに干渉することは不可。他のプレイヤーが、だ。ゲームマスターの俺がサイコロに干渉してはいけないルールなど無い」
「詭弁だわ!」

 唖然とするローザリア。確かにルシファーはルール変更の説明の際「プレイヤーが」と言った。
 これはあくまでローザリアを倒すためのゲーム。言わば一方的な処刑に等しいのだ。公平な勝負など、最初からする気は無いのである。

「ではルールに従って脱いでもらうぞ」

 有無を言わさず、ルシファーは強制脱衣を選択。ローザリアのブラがパチンと外れると共に、いきなり消滅。溢れ出したGカップの胸がばるんと跳ねた。目を見開いた良悟の脛を、美裕が蹴る。

「くっ……卑怯者め。正義の味方ぶっても所詮卑賤な淫魔だとよくわかる」
「人を守るためには手段など選んではいられんのでな。さあ、お前が壺振りをやる番だ。さっさとやれ」

 ローザリアは左腕で胸を隠しながら、無言のまま右手でカップを受け取る。腕からはみ出た乳輪が良悟の目線をそわそわさせされ、美裕の情緒もそわそわさせられた。
 ローザリアは、サイコロの入ったカップを覗き込みながらじっと考え込んでいた。

(ああ言ってきた以上、ルシファーはまた魔法でサイコロに介入してくる可能性はある。魔力反応を感じたら私の術でカウンターするか……いやここは更に保険をかけて)

 ローザリアはルシファーに顔を向ける。

「磁石のイカサマ、私にも使わせてもらっていいかしら?」
「ああ、構わんよ」

 ルシファーが逆に怪しいほどあっさり承諾すると、テーブルは百八十度回転した。ローザリアは体を屈めてテーブルの下を覗き込む。ギミック作動のボタンは一つしか無く、先程までは美裕の側にあった。だからテーブルを回転させてローザリアの側に持ってきたのである。

「じゃあ私は丁に賭けるわ」

 ボタンを押し込み、カップを伏せてローザリアは言う。カップの中からはカタカタとサイコロの動く音がした。
 二つのサイコロはどちらも二の面に磁石が仕込まれており、テーブルに仕込んだ電磁石を作動させることでそれが下を向く。それによって二と反対側にある五の面が上を向き、合計十の丁が完成する。ローザリアはそう読んでいた。
 勝利を確信しながら、カップを持ち上げる。命運を示すサイコロの目は――

「五と……四!? どういうこと!?」

 その結末は、想像だにしないものであった。確実に五が出る仕掛けで、まさかの四。即ち合計九となり、半である。
 ローザリアは目玉が飛び出そうな調子で驚愕を露にしていた。無理もない、これで敗北が確定するのだから。

「い、一体どんな手を……」

 サイコロをじっとよく観察したところ、四の目が出ている方のサイコロには側面にもう一つ四の目が。そして上にある四の目の中央には薄っすらと、黒い丸が消えた痕跡のような線が。
 ローザリアがそれに気付いた瞬間だった。まるで鉄砲に打ち出されたかのように二つのサイコロが跳ね上がり、天井に当たって砕け散った。あまりにダイナミックな証拠隠滅に、ローザリアも美宏も良悟もリリムも唖然。
 電磁石は逆方向に電気を流せば磁石の極も逆になる。そしてそのスイッチは、ルシファーが握っていた。それによって斥力を発生させサイコロを打ち上げたのである。

 魔法を使わずして五の面の中央の丸を消して四にした。ローザリアはそこまではわかった。だがそれ以上のことまでは理解できなかった。
 一方の美裕は、ローザリアよりはそれを理解していた。先程の五戦目、ルシファーからテレパシーで送られたイカサマの指示には続きがあったのだ。

『聞こえますか戸田美裕さん。賭けは丁です。テーブルの裏にボタンがあります。それを軽く押して下さい。ただし、決して奥まで押し込まず半分ほどで止めて下さい』

 ローザリアはボタンを奥まで押し込んだ。だからこうなったのだ。
 そして実際の手口はこうだ。二つのサイコロのうち片方は、普通に磁石を二の面に仕込んだだけである。だがもう一つは、それに加えて五の面にもギミックを仕込んでいた。
 五つの黒い丸のうち、外側の五つは通常通り外側にペイントしたもの。だが中央の一つだけは、その部分を透明にして内側の色を透かすように作っていたのだ。五の面の内側には黒い砂鉄が仕込まれており、それを透かしていたのが中央の丸だったわけである。
 テーブル側の電磁石は、磁力を二段階に調節できるようになっていた。ボタンを奥まで押し込むことで強い磁力を発生させた場合のみ、この砂鉄のギミックは作動するのだ。
 強い磁力に反応した砂鉄は下の膜を突き破って二の面裏の磁石に付着。表面の透明部裏から砂鉄が無くなったことにより黒い丸が消え五を四に変えたというわけだ。

「ではルールに沿って服を脱いでもらうぞ」

 ルシファーがそう言った途端ローザリアはビクッとし、美裕は良悟の目を掌で塞いだ。
 ローザリアのショーツが弾け飛び、髪と同じ色をした長方形の陰毛が姿を見せる。ついでにロープを出現させて亀甲縛りに拘束しておいた。

「さて、では戸田さんと小高君には天使の加護を。これでお二人は悪のキューピッドは勿論、淫魔や人間の性犯罪者から被害を受けることもなくなりました。戸田さんには服もお返しします」

 美裕は自分の下腹部が光ったことに驚いたものの、それはそれとしてすぐに服を受け取って着直した。その間良悟はうずうずしながらもローザリアと逆の方向を向いていた。

「小高良悟!」

 すると突然ローザリアが名を呼んだので、良悟はビクリ。一瞬振り向きそうになったが美裕の手前堪えた。

「貴方本当に彼女一人でいいの!? 男なら沢山の女と同時に付き合いたいって思わないの!? 想像してみなさいよ、自分が美裕と仁乃を一緒に侍らせているところを! それが男のロマンでしょ!」
「ちょっおま何言ってんの!?」

 ローザリアに食ってかかろうとするリリムを、ルシファーが止める。
 良悟は背を向けたまま、静かに話し始めた。

「……そんな不誠実な付き合い方はしない。仁乃の気持ちに気付いてたのは本当だよ。けど俺にとって仁乃は友達で、俺が恋愛として好きになったのは美裕だから。俺はちゃんと美裕を大切にしていきたい」
「そんな綺麗事を……」
「既に答えは出ている。見苦しいぞローザリア」

 ルシファーが声を低くして責めると、ローザリアは言葉を詰まらせた。
 美裕が体操服を着終えたのを確認すると、ルシファーは二人を元の世界に戻した。
 残されたローザリアは、恨めしそうにルシファーを見る。

「私にこんなことをして、ルナティエル様が黙ってないわ」
「元よりルナティエルも倒すつもりだからな。リリム、そいつへのお仕置きはお前に任せるぞ」
「りょ!」

 ルシファーは何か急いでいるように、早々に領域から出ていった。
 可愛く敬礼したリリムは、早速油性ペンをポンと出現させる。

「貴様何だそのペンは。私をどうする気だ!? ま、まさか太腿に正の字を……」

 その想像に反して、リリムのペンはローザリアの顔面に向かっていた。

「はい、鏡」
「このクソガキ! 何で顔に皺描いた!?」
「そっちのがダメージ大きそうだと思ってー」

 クソガキの悪戯心は、ローザリアの想像を凌駕していた。



 綿環高校。良悟と美裕は、何事も無かったように部活に戻っていた。
 リリムにお仕置きを任せたルシファーは魔力を研ぎ澄ませ、校内全域に探知のアンテナを張る。
 このタイミングでローザリアが動いたわけ。それはルシファーが領域内でローザリアに対処している間に、ルナティエルかもう一人の手下が別の生徒に矢を打ち込む作戦――即ち囮だった可能性である。
 それがわかっていても、ルシファーは生徒を守るために戦わざるを得ないのだ。一先ずローザリアについては一件落着したが、この後に控えた本命がまだ残っているかもしれない。まずは矢を刺された生徒を探さなくては。
 だが不思議なことに、校内のどこからもキューピッドの矢の反応は感じられなかった。

(……誰も矢を刺されていない? まさかルナティエルはずっと校長室で手下とまぐわっていただけだというのか?)


 校長室。校長の机に四つん這いになった青紫色の髪の小柄な女性天使の尻にルナティエルは何度も腰を打ち付け、人間には聞こえることのないパンパン音が校長室に響き渡っていた。だがその音に紛れて、別のパンという音が何度もしたことを知る者はいない。
 左手で手下の腰を掴みながら、右手に掴むのはリボルバー式の拳銃――ルナティエル専用に改造したキューピッドの弓である。その銃口からは煙が上がっており、その弾丸は既に放たれていることを示していた。

(ローザリアは囮の役目を無事果たしてくれたようだ。ルシファーは探知魔法を使っているようだが、弾丸サイズの極小の矢は見つけられまい。クク……明日ルシファーの悔しがる顔が目に浮かぶよ)
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