脱衣ゲームでカップル成立 ~史上最強の淫魔、光堕ちしてキューピッドになる~

平良野アロウ

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第六章

第192話 脱衣丁半・1 ~サッカー部の女子マネージャーVS爆乳眼鏡女教師~

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「え……何? 何が起こったの?」
「わからん……」
「お二人には、まず先日から起きていた思考の異常についてから説明致しましょうか」

 唖然とする良悟と美裕に、ルシファーは優しく声をかけた。

「思考の異常って、あの俺が仁乃に三人で付き合おうとか言い出したあの……」
「ええ、それについてです。貴方と戸田さん、細田さんの思考を操作し、あのような行動に向かわせたのは何を隠そうあの朧先生なのです」
「ちょっと、それってどういうこと!?」

 ルシファーの明かした真実に、良悟以上に美裕が食いついた。

「朧先生の正体は悪のキューピッド。世の男性に二股をかけさせようと、キューピッドの力を悪用しているのです」
「誰が悪のキューピッドですって? たとえ今は異端扱いされていても、いずれは私達のやり方がキューピッドのスタンダードになる日が来るのよ」

 割り込んできて反論したローザリアに、ルシファーはついフッと笑ってしまった。

「俺が淫魔族の在り方を変えようとした時と同じようなことを言うのだな。少し親近感が湧いたぞ。俺のしたことは結果として淫魔族にとってのメリットが大きかったから成功した。だがお前達一派のやっている人類の一夫多妻化計画はどうだ? それが天界に何のメリットがある?」
「理解できないなんて浅いわねルシファー。でもせっかくだから教えてあげる。私達の目指すものは、人類の品種改良。人類全体のスペックの底上げよ」

 勿体ぶらずに教えてくれたそれは、やたらめったらスケールのでかい話であった。壮大すぎるあまり、ルシファー以外誰もその意図にピンときていない様子だ。

「ハイスペックなイケメンに女性を集中させ、しょうもない男の遺伝子を淘汰し優れた男だけが子孫を残せるようにするの。それによってゆくゆくは人類全体のスペックが底上げされ、人類全体の幸福度も底上げされるのよ。それが天界に膨大なエネルギーをもたらし、天界が更に栄えるようになる! それこそがルナティエル様の崇高なる計画よ! いずれ全ての天使がルナティエル様に感謝しルナティエル様を敬うようになるわ!」

 ローザリアが声高々に騙ると、ルシファーは腕を組み黙って考え事をしていた。その場に一時、沈黙が流れる。
 ルシファーの脳裏に浮かんだのは、先日健吾の口から出たイケメンばかり優遇しているというルシファーへの非難であった。
 ルシファーがキューピッド活動をする上で、男女を問わず容姿の優れた人間――ひいては容姿に限らず様々な面において魅力的な人間を優遇しているのは確かな事実だ。
 幸福な恋愛関係とは双方が幸福であってこそ成立するとルシファーは考えている。魅力に乏しい人にとって、自分が魅力的な人と恋人関係になれたらそれは確かに幸せだろう。だが魅力的な人の側の立場に立てば、その関係は果たしてどうか。そういった考えがあるからこそ、たとえモテない人から非難を受けてもモテる人を優先してカップル成立させてきたのだ。

 そういった点で、ルシファーの価値観はルナティエル一派と親和性があると言える。だが決して相容れないのは、ルシファーがカップル成立を一対一に拘っている点だ。
 愛の形は人それぞれで一対多の恋愛関係があってもいいという主張もあるが、ルシファーはそうではないと考えている。一人の人間が恋愛関係として幸せにできる相手は一人だけだ。二人以上の相手と同時に恋愛しても、それぞれが中途半端になりひいては不幸にするだけだと。
 もしかしたらそれは、少年期に関わったウルスラやギガンティスへの悪感情から来るものなのかもしれない。或いはそのたった一人の相手を奪って穢してきた自分自身への悪感情からか。
 動機は何であれ、それがルシファーなりの恋愛哲学だ。ルナティエル一派との戦いは、キューピッドとしてのイデオロギー闘争の意味合いを持っている。

 だがそれ以上に、ルシファーをこの戦いに駆り出すのは自身の生徒を守ることであった。
 生徒達の築いてきた人間関係を身勝手な動機で破壊しようとするルナティエル一派は、最早淫魔と――“寝取りのルシファー”と何も変わらない。
 愛を結ぶキューピッドであると同時に、愛を守る守護者として。ルシファーはかつての己と等しい悪と対峙する。


「……その計画とやらのために良悟は二股かけさせられそうになったってこと?」
「そういうことになります」

 話を聞いていた美裕が恐る恐る尋ねると、ルシファーが答える。
 良悟は腰が引け、身震いしていた。公認の関係の下に二股交際できることには、微塵も喜びを感じていない様子だ。

「やべぇ……そんなことのために洗脳されてたって思うとマジぞっとするんだが……」
「洗脳に使われていたキューピッドの矢は私が取り除きました。これで心身への影響はもうありません」
「そうなのか?」
「ええ」

 そう言われても、いまいち腑に落ちない良悟であった。

「それで戸田美裕さんには、これから奴を倒すためのゲームのプレイヤーになって頂きます。私にはあなた方をあの手の輩による被害から守護する術があります。しかしそれを付与するための条件が、私の主催するゲームの参加者になって頂くこと。これは魔法の儀式のようなもので、絶対に必要な手順なのです。そしてそのゲームとは奴を無力化し倒す手段にもなります」
「……わかりました。協力します」
「待って美裕、信用して大丈夫なのか? 羽の色的にはこっちが悪者っぽいぞ。あっちの子に至ってはもろに悪魔の羽だし……」

 ローザリアが純白の天使の翼であるのに対し、ルシファーの翼は漆黒。そしてリリムは蝙蝠のような黒い皮膜の翼となっている。見た目の印象は明らかに悪役側だ。

「でも朧先生の言ってることは明らかにおかしい。だから私は、ルシファーさんを信用しようと思う」
「……わかった。俺は美裕の選択を信じるよ」
「では、早速始めましょうか。今回のゲームは丁半。カップの中でサイコロを振り、その目の合計が丁、即ち偶数か半、即ち奇数かを当てるシンプルなゲームです」

 ルシファーの右手にカップ、左手に二つのサイコロが現れる。時代劇でもお馴染み、和風ギャンブルの定番である。
 それに合わせて、リリムはその場で魔法による早着替え。今回のコスチュームは、丁半賭博といえばこちら。白い晒しを巻いた薄い胸を惜しげもなく見せつける、着崩した和装の壺振りコスだ。

「こちらのリリムが壺振りを担当致します。奇数回は戸田さん、偶数回はローザリアが丁半どちらに賭けるかを宣言し、その後もう一方のプレイヤーは自動的にそれと逆側に賭ける形となります。カップを開けて結果が出たら、外した側は服を一回分脱がなければなりません。脱ぐ部位はトップス、ボトムス、ブラジャー、ショーツの四ケ所。トップス、ボトムスを脱ぐ際にはそれぞれ上半身ブラジャー一枚、下半身ショーツ一枚になるまで脱がなければなりません。四回脱いだ時点で敗北となり、ゲーム終了です」
「え、ちょっと待って。服脱ぐって……」
「参加を表明した以上、取り消しはできませんのであしからず」

 今更後悔してももう遅かった。肝心な所を後から説明するあくどい男である。

「ローザリアが勝てば、ルナティエル一派の綿環市内での活動を全面的に黙認致しましょう。ですが戸田さんが勝った場合、ローザリアにはおしおきを受けて頂きます。なお、ローザリアに関してもこのゲームが終わるまでここからは出られないのであしからず」
「へぇ、私にも相応のメリットを用意してくれるわけね」
「勝てさえすれば、な。ではリリム、サイコロを」
「はーい!」

 リリムは可愛く手を挙げて返事すると、ルシファーからカップとサイコロを受け取った。リリムの前には、リリムの腰の辺りの高さの円形テーブルが現れた。
 リリムはカップの中にサイコロを転がして入れ、軽く振ってテーブルに伏せる。

「では美裕ちゃん、丁か半か、張った張った!」
「……とは言っても所詮運ゲーでしょ? だったらまあ……丁が偶数で半が奇数だったよね? じゃあ、とりあえず丁で」

 リリムがカップを開けると、サイコロの目は三と六。合計は九だ。

「残念半でした」
「え……」

 負けたら脱がされるとは言ったが、あくまでもルシファーが敵を倒すために仕組んだゲーム。良悟も美裕も、ルシファーが出目を操作して無傷で勝てると高を括っていた。それが最初からいきなり外れ。美裕はついルシファーの顔を見た。

「ではルールに沿って、戸田さんは服を脱いで下さい」
「ホントに脱ぐの?」
「ルールですから」
「なあ美裕、もしかしてあのルシファーって奴、敵とグルだったんじゃないか?」
「その可能性もありそうな気はしてきたけど……」

 そう疑うのも無理はない。リリムがそれに反論しようとするが、ルシファーが制止した。

「ちなみに脱がない場合、私の魔法で強制的に脱がせます」
「わかった、自分で脱ぐから!」

 美裕は慌てて体操服を脱ぎ、パステルグリーンのキャミソール姿に。一旦ルシファーの方を見て「これで勘弁して」と訴えるような視線を送るがルシファーが首を横に振るので、渋々ながらキャミソールを脱いだ。
 まあまあ平均的なサイズの胸を覆うのは白と水色のストライプ、俗に言う縞ブラ。若干子供っぽい印象を感じさせるものだ。

(ああー……今日に限って彼氏に見せるのとか全く意識してない下着で……)
(やっば……美裕のブラめっちゃ可愛い)

 美裕が一番恥ずかしさを感じたのはそこであるが、当の良悟には好感触。
 実のところ、良悟が美裕の下着姿を見るのはこれが初めて。彼はイケメンといえども童貞であり、彼女の下着の破壊力は強烈であった。


「ではローザリアさん、丁か半か、張った張った!」
「じゃあ私は丁でいいわ」

 美裕が脱いでいる間に準備を進め、二戦目が始まる。
 ローザリアがカップの中の透視を試みていたことに、ルシファーは気付いていた。だがカップにかけられた魔法が、透視を無効化しているのだ。
 だがカップの中では、カタカタと微かに音がしたのがローザリアには聞こえていた。一度止まったサイコロが、明らかに中で再び動いている。しかもリリムの魔力を感じており、魔法で動かしていることは明らかだった。透視は無効化できても、念動力による操作は可能な設計なのだ。
 そしてカップが開く。サイコロの目は五と六だ。

「残念半でしたー!」

 煽り散らした腹立つ顔をしながらローザリアを指差し、リリムが高らかに言う。

「イカサマよ! その小娘が魔法で動かしたことには気付いてるんだから!」
「イカサマなんかしてないもん! そんなに言うなら証拠見せてよ証拠ー! ほらルールなんだからさっさと脱いでよ!」

 しらばっくれた上で進行を急かすリリムに、ローザリアは舌打ち。

「……このクソガキ。まあ、今回は見逃してあげる。でも次は無いわよ」

 不服そうな顔をしつつも、とりあえず今回は認める模様。しかし彼女が決してただあっさりと折れたわけではないことは間違いない。次にどんな動きをしてくるか、ルシファーは警戒心を強める。
 だがその前に、まずはお楽しみの脱衣である。
 ローザリアは白いブラウスを脱ぎ捨て、ブラジャーを露にした。赤紫色に薔薇の刺繍が入った色っぽいブラだが、それ以上に目を引くのはド迫力のGカップ。リリムとのサイズ差は最早天と地ほど。
 良悟はついそちらに目が行き、美裕に耳を引っ張られた。

「では三戦目と参りましょう。リリム」
「はーい」
「二度も同じイカサマが通用すると思わないことね」

 意気揚々とサイコロを振ろうとするリリムに、ローザリアが釘を刺した。しかしリリムはそれに怯むことなく、鼻歌まじりにサイコロを振る。
 美裕は今度はイカサマで当てさせてくれるよねとルシファーに視線を送る。

「では美裕ちゃん、丁か半か、張った張った!」
「じゃあ、とりあえず半で」

 美裕がそう言った途端、リリムの魔力反応をローザリアはまた感じ取った。
 カップを開けると、サイコロの目は三と四。美裕はほっと胸を撫で下ろす。

「正解は~半! おめでとう美裕ちゃん!」
「待ちなさい」

 瞬間、ローザリアは三の目が出たサイコロを奪い取った。

「このサイコロ、三が二つあるわ。貴方魔法でサイコロの目を書き換えたでしょう」

 ローザリアがリリムに突き付けたサイコロは、本来二の目がある面も三の目になっている。
 本来二の目が出て四と合わせて丁になるはずが、リリムは魔法で二の目の中央に黒い丸を一つ付け足して三にし、半と偽った。
 しかし側面にある本当の三の目がローザリアに見える位置に来ていたため、このイカサマは容易くバレてしまったのである。

「どどどどーしよう先生!? バレちゃったよぉ!」
「ふーむ」

 焦り顔でツインテールをぴこぴこさせながら聞いてくるリリムに、ルシファーは顎に手を当て考える素振り。

「ではこうしましょううか。リリムはここで壺振りを降板し、四回戦からはローザリアと戸田さんが交互にサイコロを振る形にします。その際壺振りはイカサマが可能ですが、他のプレイヤーがサイコロに干渉することは不可。イカサマをしていることやその手口が他の者にバレたとしてもカップを開けた時点で出た目がどんな形であろうと構わず適用されます。まあつまり今回リリムがイカサマで出した半の目はそのまま適用され、今回は戸田さんの勝ちとして処理。その代わり次回でローザリアは聖なる力を用いたものを含むあらゆるイカサマが許される、ということです」
「待って、私イカサマの技術なんて……」
「いいわ、受けましょう」

 ルシファーの提案を美裕が止めようとするも、ローザリアが遮り承諾した。

「まあ、ただ同じイカサマを繰り返しているだけでは芸がありませんからね。先程のリリムもサイコロの操作と目の書き換えと、それぞれ違った内容にしていました。そこでイカサマの手口がバレた場合、そのイカサマを同じプレイヤーは再度使用できないことにしましょう。相手プレイヤーはそれを真似て使うことが可能ですがね」
「ええ、構わないわ。尤も私の術を人間が使うことは不可能だろうけど」
「わかった。ではローザリア、まずは服を脱いでもらおう」
「ええ、わかったわ」

 今度は抵抗することもなく、ローザリアはスカートを下ろした。ブラとセットになった薔薇のショーツは、大変色っぽく思春期男子には目の毒だ。

「宜しい。では四回戦、新ルールで再開と行こう」

 ローザリアの前に、カップとサイコロが手渡された。ローザリアはニヤリと口元を緩める。
 対してルシファーは、ポーカーフェイスのままただじっとローザリアの手つきを見つめていた。

(さて、ルナティエル一派のお手並み拝見といこうか)
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