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1年後。俺と美桜は桜が咲く時期に合わせて、結婚式を挙げた。桜が見える式場で、満開の桜を背にウェディングドレスを身にまとった美桜は最高に美しかった。
家族・友達・職場の仲間……たくさんの人達の祝福のもと、俺たちは晴れて夫婦となった。人生の晴れ舞台ともいえる結婚式場で笑う美桜は、最高に幸せそうだった。そして、その中にいる俺自身も、最高に幸せだった。ずっと、美桜の幸せを願って、美桜を幸せにするために、俺は彼女に尽くしてきた。美桜さえ幸せならば、それでいいと思っていた。自分の幸せなんて二の次だと考えていた。
だけど、こうして俺の隣で幸せそうに笑う美桜を見て思う。彼女の笑顔が、考え方が、俺にくれる言葉が、ぬくもりが、俺の心を満たしてくれて、最高に幸せな人生を歩むために必要なのだな、と。
今この瞬間……いや、俺が美桜とともに生きている限り、一番幸せなのは、間違いなく、この俺なのだ。
結婚式を挙げた翌日。俺と美桜は、またあの展望台へ桜を見に来ていた。昨日の結婚式場でも、綺麗な満開な桜を見たが、やはりこの寂しい展望台から二人だけで見る満開の桜が一番綺麗だ。
「結婚式、最高だったね」
結婚式の余韻をかみしめるように、美桜は静かに言った。今日はそよ風が気持ちいい、そんな穏やかな気候だった。
「あぁ。最高の式だった」
桜の木々がゆらゆらと、風を受けて揺れる。
「私、綺麗だった?」
「もちろん」
「ふふ、最高に?」
そう言って美桜は、俺の顔を覗き込むようにして、試すように笑った。たぶん美桜は、俺がどういう言葉で返すのか、わかっているのだろう。
「最高に」
「だよね」
「と、思っていたけどね」
俺のその言葉に、美桜はふふ、といたずらっぽく笑った。
「まだ、足りない?」
美桜のその言葉に、俺は彼女が求めている言葉を返す。
「うん。美桜が散るにはまだ早い」
「ウェディングドレスを着た私が最高に綺麗だって、言ってなかったっけ?」
「1年前はね。でも、実際にウェディングドレスを着た美桜を見て、綺麗だなって思って」
「うん」
「その先も見たくなった」
「その先?」
わかってるくせに、と思いながら、俺は視線を目の前に広がる満開の桜へと移した。
「今度はここに、俺たちの子どもも一緒に連れて来よう。家族で一緒に見る桜は、そして家族に囲まれる美桜は、もっと綺麗だよ」
「あはは、気が早いんじゃないの?」
美桜も笑いながら、展望台から見える桜景色へと視線をやる。そして、両手をあげて大きく伸びをした。
「あーあ、大樹はどんどんワガママになっていくね。私も自分のことワガママだと思ってるけど、大樹の方がワガママだよ。私は最高に幸せだって思ってるのに、大樹はまだ足りない、まだ足りないって。私を散らせてくれない」
そう悪態をつきながらも、美桜は嬉しそうだった。
「何言ってんだ。残される俺の気持ちも考えないで、散ろうとしていた美桜の方がよっぽどワガママだろ」
「あはは、それもそう」
「美桜はまだ満開じゃない。満開なのは今じゃない。俺は、満開の桜が見たいんだよ。ワガママで欲張りだからな」
「じゃあ、今年も散るのはやめておく」
「あぁ」
優しい風が吹き、その風に乗せられてきた桜の花びらが美桜の手の甲に舞い落ちた。俺は、その桜の花びらと一緒に美桜の手を優しく握った。
「さ、帰ろうか」
「うん!あ、帰りに桜ラテと、桜ケーキ買って帰ろ!」
「桜チョコはいいのか?」
「それも!」
今年の桜も、もう少ししたらすべて散ってしまうのだろう。だけど、また来年ここに来れば、新しい花が芽吹き、また満開の桜を見ることができる。
桜の木がある限り、毎年桜は咲くことができるのだから。
家族・友達・職場の仲間……たくさんの人達の祝福のもと、俺たちは晴れて夫婦となった。人生の晴れ舞台ともいえる結婚式場で笑う美桜は、最高に幸せそうだった。そして、その中にいる俺自身も、最高に幸せだった。ずっと、美桜の幸せを願って、美桜を幸せにするために、俺は彼女に尽くしてきた。美桜さえ幸せならば、それでいいと思っていた。自分の幸せなんて二の次だと考えていた。
だけど、こうして俺の隣で幸せそうに笑う美桜を見て思う。彼女の笑顔が、考え方が、俺にくれる言葉が、ぬくもりが、俺の心を満たしてくれて、最高に幸せな人生を歩むために必要なのだな、と。
今この瞬間……いや、俺が美桜とともに生きている限り、一番幸せなのは、間違いなく、この俺なのだ。
結婚式を挙げた翌日。俺と美桜は、またあの展望台へ桜を見に来ていた。昨日の結婚式場でも、綺麗な満開な桜を見たが、やはりこの寂しい展望台から二人だけで見る満開の桜が一番綺麗だ。
「結婚式、最高だったね」
結婚式の余韻をかみしめるように、美桜は静かに言った。今日はそよ風が気持ちいい、そんな穏やかな気候だった。
「あぁ。最高の式だった」
桜の木々がゆらゆらと、風を受けて揺れる。
「私、綺麗だった?」
「もちろん」
「ふふ、最高に?」
そう言って美桜は、俺の顔を覗き込むようにして、試すように笑った。たぶん美桜は、俺がどういう言葉で返すのか、わかっているのだろう。
「最高に」
「だよね」
「と、思っていたけどね」
俺のその言葉に、美桜はふふ、といたずらっぽく笑った。
「まだ、足りない?」
美桜のその言葉に、俺は彼女が求めている言葉を返す。
「うん。美桜が散るにはまだ早い」
「ウェディングドレスを着た私が最高に綺麗だって、言ってなかったっけ?」
「1年前はね。でも、実際にウェディングドレスを着た美桜を見て、綺麗だなって思って」
「うん」
「その先も見たくなった」
「その先?」
わかってるくせに、と思いながら、俺は視線を目の前に広がる満開の桜へと移した。
「今度はここに、俺たちの子どもも一緒に連れて来よう。家族で一緒に見る桜は、そして家族に囲まれる美桜は、もっと綺麗だよ」
「あはは、気が早いんじゃないの?」
美桜も笑いながら、展望台から見える桜景色へと視線をやる。そして、両手をあげて大きく伸びをした。
「あーあ、大樹はどんどんワガママになっていくね。私も自分のことワガママだと思ってるけど、大樹の方がワガママだよ。私は最高に幸せだって思ってるのに、大樹はまだ足りない、まだ足りないって。私を散らせてくれない」
そう悪態をつきながらも、美桜は嬉しそうだった。
「何言ってんだ。残される俺の気持ちも考えないで、散ろうとしていた美桜の方がよっぽどワガママだろ」
「あはは、それもそう」
「美桜はまだ満開じゃない。満開なのは今じゃない。俺は、満開の桜が見たいんだよ。ワガママで欲張りだからな」
「じゃあ、今年も散るのはやめておく」
「あぁ」
優しい風が吹き、その風に乗せられてきた桜の花びらが美桜の手の甲に舞い落ちた。俺は、その桜の花びらと一緒に美桜の手を優しく握った。
「さ、帰ろうか」
「うん!あ、帰りに桜ラテと、桜ケーキ買って帰ろ!」
「桜チョコはいいのか?」
「それも!」
今年の桜も、もう少ししたらすべて散ってしまうのだろう。だけど、また来年ここに来れば、新しい花が芽吹き、また満開の桜を見ることができる。
桜の木がある限り、毎年桜は咲くことができるのだから。
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