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御曹司のやんごとなき恋愛事情.85
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時差の関係で、日本が夜九時を回る頃、ニューヨークは朝の八時を迎える。
この半年の間、ニューヨークの始業時間に合わせるため、日中は通常の業務、そして夜十時からはニューヨークとネットミーティングが開始されるというハードスケジュールをこなしてきた。
そんな訳で、俊介と栗本が自宅に帰るのは毎晩十二時近くだ。
そんな毎日は慌ただしく過ぎ去り、いよいよ来週ニューヨークに発つ。
本人である俊介はもう気分はニューヨークに行っているといっても過言ではないくらい、準備万端だ。
むしろ、そんな俊介を付かず離れずの距離で見ている優子の方が自分の気持ちの処し方を持て余していた。
日本を発つ前に、俊介からもう一度何かしらのアクションがあるかもしれないと・・・、誘われれば断るつもりでいるくせに、期待しているという矛盾。
本当に自分の気持ちが一番ままならないと優子は思うのだった。
「もうすぐ桑原君、ニューヨークに行くんだろう?優子、本当は寂しいんじゃない」
伊波が優子の変化に気づかないはずがなかった。
「な、なんで私が・・・。二人ともいい大人なんだから」
「そうは言っても、君は彼の教育係だったんでしょ?言わばもう一人の母親のようなものだったんじゃない?」
母親・・・。
俊介が自分をあんなにも慕うのは、淋しかったとき甘えられなかった母の愛情を求めてのものなのだろうか・・・。
「もうそれも随分昔の話よ。俊介坊ちゃんは、今では副社長としてすっかり立派になったわ」
「ふうん、それならニューヨークに行ったら、またさぞかし成長して帰ってくるんだろうね」
優子の胸にズキンと痛みが走る。
「・・・きっとそうでしょうね」
「やっぱり何だか寂しそうだ」
伊波は優子のことをそっと抱きしめた。
「・・・気のせいよ」
こんな時自分は誰の目線で話したらいいのか分からない。
元教育係、元秘書、かつての恋人、そして今は彼の部下・・・。
どれもが優子であることは事実だが、ここにきて俊介のことを考えるとき、やはり自分はかつての恋人として俊介を見ていることに気づかされる。
なぜなら、それ以外、彼がニューヨークに行ってしまうことをこんなにも悲しむ理由がないからだ。
それが分かったからと言って、何も変わらないのに・・・。
そして、もう一つの気がかりは、栗本だった。
彼女の優秀さは、優子の想像以上だった。
しかし、元クラブのママという職業柄、栗本の本心が分からない。
優子や俊介に協力的だと感じる一方で、裏で何か企んでいるように感じてしまうのはなぜだろう。
栗本は俊介と常に行動を共にするはずで、二人の間に何かが起りはしないかと、自分で栗本を俊介の秘書にしておきながら、優子は二人のことが気になって仕方がないのだ。
そんな風に激しく揺れ動いている優子のことを、伊波は優しく見守ってくれている。
それはとてもありがたいことではあるが、同時に生まれる感情はやはり罪悪感だった。
伊波が優しければ優しいほど、優子の胸は痛んだ。
いよいよ明日が出発の日となった。
俊介は本社の上層部の社員たちに挨拶をすませた。
その挨拶も、今の時代を反映してかごく軽いものだった。
何しろあちらに行ったとしても、ネットで毎日の様に顔を合わせることが可能なのだから、今生の別れの様な挨拶などもはや必要ないのだ。
次の日、俊介と栗本はあっけなくニューヨークに旅立っていった。
この半年の間、ニューヨークの始業時間に合わせるため、日中は通常の業務、そして夜十時からはニューヨークとネットミーティングが開始されるというハードスケジュールをこなしてきた。
そんな訳で、俊介と栗本が自宅に帰るのは毎晩十二時近くだ。
そんな毎日は慌ただしく過ぎ去り、いよいよ来週ニューヨークに発つ。
本人である俊介はもう気分はニューヨークに行っているといっても過言ではないくらい、準備万端だ。
むしろ、そんな俊介を付かず離れずの距離で見ている優子の方が自分の気持ちの処し方を持て余していた。
日本を発つ前に、俊介からもう一度何かしらのアクションがあるかもしれないと・・・、誘われれば断るつもりでいるくせに、期待しているという矛盾。
本当に自分の気持ちが一番ままならないと優子は思うのだった。
「もうすぐ桑原君、ニューヨークに行くんだろう?優子、本当は寂しいんじゃない」
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「な、なんで私が・・・。二人ともいい大人なんだから」
「そうは言っても、君は彼の教育係だったんでしょ?言わばもう一人の母親のようなものだったんじゃない?」
母親・・・。
俊介が自分をあんなにも慕うのは、淋しかったとき甘えられなかった母の愛情を求めてのものなのだろうか・・・。
「もうそれも随分昔の話よ。俊介坊ちゃんは、今では副社長としてすっかり立派になったわ」
「ふうん、それならニューヨークに行ったら、またさぞかし成長して帰ってくるんだろうね」
優子の胸にズキンと痛みが走る。
「・・・きっとそうでしょうね」
「やっぱり何だか寂しそうだ」
伊波は優子のことをそっと抱きしめた。
「・・・気のせいよ」
こんな時自分は誰の目線で話したらいいのか分からない。
元教育係、元秘書、かつての恋人、そして今は彼の部下・・・。
どれもが優子であることは事実だが、ここにきて俊介のことを考えるとき、やはり自分はかつての恋人として俊介を見ていることに気づかされる。
なぜなら、それ以外、彼がニューヨークに行ってしまうことをこんなにも悲しむ理由がないからだ。
それが分かったからと言って、何も変わらないのに・・・。
そして、もう一つの気がかりは、栗本だった。
彼女の優秀さは、優子の想像以上だった。
しかし、元クラブのママという職業柄、栗本の本心が分からない。
優子や俊介に協力的だと感じる一方で、裏で何か企んでいるように感じてしまうのはなぜだろう。
栗本は俊介と常に行動を共にするはずで、二人の間に何かが起りはしないかと、自分で栗本を俊介の秘書にしておきながら、優子は二人のことが気になって仕方がないのだ。
そんな風に激しく揺れ動いている優子のことを、伊波は優しく見守ってくれている。
それはとてもありがたいことではあるが、同時に生まれる感情はやはり罪悪感だった。
伊波が優しければ優しいほど、優子の胸は痛んだ。
いよいよ明日が出発の日となった。
俊介は本社の上層部の社員たちに挨拶をすませた。
その挨拶も、今の時代を反映してかごく軽いものだった。
何しろあちらに行ったとしても、ネットで毎日の様に顔を合わせることが可能なのだから、今生の別れの様な挨拶などもはや必要ないのだ。
次の日、俊介と栗本はあっけなくニューヨークに旅立っていった。
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