ヤンチャな御曹司の恋愛事情

星野しずく

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御曹司のやんごとなき恋愛事情.96

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「優子、俺、今日はどうしても行きたいところがあるんだ」

 俊介の場合はだいたい、”どうしても”やら”絶対”という言葉がくっついていて、そのあとに続くのはもうほぼ決定事項なのだ。



「どこですか?」

「動物園!」

「動物園ですか?」

 俊介の口から出てくる単語だとはにわかに思えない。



「やっぱ、デートって言ったら遊園地とか動物園だろう?」

 ああ、なるほど・・・。

 俊介はいわゆる定番に憧れているのだ。



「ユニバーサルスタジオはシンガポールで経験済みだから、今度は動物園。な、いいだろ?」

「べつにかまいません・・・」

 優子だって本当は俊介のように、思い切りはしゃいでしまいたかった。

 それなのに自分ときたら、まだ澄ました顔をしているのだから、本当に素直じゃない。

 優子はファミレスに来るだけのつもりで、えらくラフな格好で来てしまったが、俊介も同じようなもので、二人はそのまま動物園に向かうことにした。



 園内を散策する間、二人はずっと手を握っていた。

 二十五歳と三十五歳のいい大人が、それだけで十分にときめいているなどと、誰が思うだろうか。

 今だけ・・・、誰からも後ろ指を指されない恋人同士・・・。

 優子は嬉しいのに、うっかり気を抜くと泣いてしまいそうで、感情のコントロールが大変だ。



 人気の動物以外は待ち時間なしで見ることができたが、それでも広大な敷地は一日かけてようやく一回りできるくらいの大きさがある。

 俊介はまだまだいけそうな様子だったが、優子を気遣い午後三時には園を出た。

「楽しかったな~。サルって餌食べるとき可愛いよな」

 帰りのタクシーで俊介は興奮気味に話し続けた。



「夕食はどうします?私が作ったものがよければ、スーパーに寄りますが」

「今日は優子も疲れただろ?そうだな、ラーメンが食べたい。優子、うまいラーメン屋知らないか?」

「そんな急に言われても・・・。だいたい、何ラーメンがいいんですか?」

「トンコツ!」

 そんな二人の会話を聞くともなしに聞いていた運転手さんが急に話しかけて来た。



「お客さん、この近くでしたら、うまい豚骨ラーメンの店知ってますよ」

「え、本当?じゃあ、そこまでお願い」

「かしこまりました」

「いいんですか?」

「何言ってんだ、美味い店はタクシー運転手に聞けって言うことわざがあるだろう?」

「そんなものはありません」

 こんなに楽しくてバチが当たるんじゃないかと思うくらい、二人には貴重な時間が過ぎていった。



「ラーメン、ちゃんと美味かったな」

「そうですね」

 マンションのソファでくつろぎながら、他愛ない話をした。

 俊介は優子の頭を自分の肩にもたれかけさせた。



「疲れたか?」

「いいえ・・・、とっても楽しかったです」

「そうか・・・、よかった」

 俊介は優子の髪を優しく撫でた。

 俊介は優子の顔を覗き込むと、そっとキスをした。



「好きだよ・・・、優子」

「坊ちゃん・・・」

 私も・・・、とはまだ言えない・・・。

 勇気のない自分・・・。



「汗かいたし、風呂入ろうかな」

「じゃあ、お湯張ってきますね」

「ああ、頼む」

 俊介は優子が入れたコーヒーをすすった。
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