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エレオラの結婚はひと月後と決まった。相手はまだ決まっていない。しかし叔父がなんとかして公爵令嬢にふさわしい婿を見つくろってくれるらしい。
「エレオラを世界で一番綺麗な花嫁にする。心配するな」
と神殿にやってきた叔父は頼もしく請け負ったが、エレオラは曖昧な微笑を返すしかできなかった。
ふう、とため息をついて、エレオラは神殿のステンドグラスを磨く手を止める。
エレオラが磨き粉と磨き布で掃除しているのは、大聖堂の壁一面に広がるステンドグラスだった。救世の女神が鮮やかな色ガラスで描かれ、息を呑むほど美しい。いつもなら、優しげな女神のお顔に一点の曇りもないように心を込めて拭くのだが、今日はなんだか手に力が入らなかった。
「エレオラ様、お加減が悪いのですか?」
一緒に掃除をしていたレベッカが、心配そうに見上げてくる。エレオラは微苦笑して、首を横に振ってみせた。
「いえ、平気です。心配かけてごめんなさいね」
「もうすぐエレオラ様がいなくなってしまうと思うと、とっても寂しいです。エレオラ様も寂しく思ってくださいますか?」
レベッカが両手に持つ磨き布に、ぎゅっと皺が寄った。それを見て、エレオラの胸にちくりと痛みが走る。静かに膝をついて、レベッカと視線を合わせた。握りしめられた彼女の手を自分の手のひらで優しく包み込む。薄暗い大聖堂、ステンドグラス越しに揺らめく色とりどりの光の中、泣きそうになっているレベッカの顔を覗き込んだ。
「……はい。私も寂しいんです。結婚のことを、みんな祝ってくれます。でも私は——ずっと聖女として、誰かの役に立っていたかった」
「エレオラ様……」
エレオラは唇を噛む。結婚なんて嫌だった。公爵家の繁栄のために、家同士の楔としてどこかへ嫁ぐ。それはそれで意味ある人生だろう。公爵令嬢としてのびのび育てられていたら、エレオラだってなんの疑問も持たずにそうしていたに違いない。
けれどエレオラはそういう人生を歩まなかったから。
母の慰めを真に受けて、エレオラ・エレオノーレではなく、恋知らずの聖女エレオラとして生きてきたから。
いつか胸に咲いた夢が、とうに枯れていると知っている。それでも聖女でいるのは、この十年を裏切りたくないからだ。母の非現実的な慰めがエレオラを生かしたように、聖女エレオラという虚構が誰かを救うかもしれない。たとえそれが偽りの光でも、ありもしない迎えを待ち続けたエレオラだからこそ、否定したくはなかった。
「とても寂しいし、何よりも悔しい。レベッカ、どうかあなたは……」
言いかけて、エレオラは口を閉ざした。途中で閉ざされた自分の望みを、まっさらな未来の広がっている子供のレベッカに託すのはずるい気がした。それは呪いだ、と心の隅で呟く。
レベッカの手を放す。目の奥が熱くなるのを必死におさえて、ただ聖女らしく微笑した。
「どうかあなたは、自由でいて。それだけが私の願いです。すべての聖女に、道が開けますように」
「エ、エレオラ様ぁ……」
ぷるぷる震え、今にも決壊しそうだったレベッカの動きがぴたりと止まる。くんくんと鼻をうごめかせ、鼻の付け根に皺を寄せた。
「……なんだか、へんなにおいがしませんか?」
「え?」
「動物みたいな……」
大聖堂の外から甲高い悲鳴が聞こえてきたのはそのときだった。エレオラはハッと立ち上がる。レベッカが不安そうにエレオラの膝にしがみついて、「やだ、何か怖いものが近づいてきます、いや、こわい……」と呟いた。
「レベッカ、あなたは隠し通路から逃げて」
「でも、エレオラ様を置いてなんていけません!」
「私は大丈夫だから。ね?」
聖女たちの悲鳴をかきわけて、エレオラの耳に、何か重そうなものを引きずる音と、悠然した足音がはっきり届いた。獣の腐敗臭のようなにおいが鼻をつく。異常事態が起こっているのは明白だった。
神殿は兵など持っていない。いかなる争いが起きようと、非武装の神殿には何人たりとも攻撃してはならない。代わりに神殿はどの立場の人間でも受け入れる。そう固く決まっている。万一の有事の際には、伝令が王宮まで走って保護を求めることになっていたが、それを待つ余裕があるか。
恐怖に固まるレベッカを隠し通路に押し込み、エレオラは大聖堂の入り口を直視した。後ろにはステンドグラスを背負って、両手の拳を握りしめて祭壇に仁王立ちする。ここを聖女の血で汚すなら、侵入者にはふさわしい裁きが与えられるだろう。たとえエレオラの死後であっても。
ずる、ずる……と、確実な質量を持ったものが、神殿の床にこすれる音がする。
それとともに大聖堂へ近づいてくる足音は、人々が逃げ惑う喧騒や叫び声をよそに、おそろしく規則正しく刻まれる。
——やがて、大聖堂の大きな扉が、ゆっくりと開かれた。
外から眩い日光が射し込み、そこに立つ人間の姿を黒々とした不吉な影に塗り潰す。けれど、それが誰か、エレオラにはなぜか分かった。
「ヴァールハイトさま?」
「——ああ、聖女エレオラ」
答える声には甘やかな吐息が混ざっていた。ベルベットを撫でるような艶のあるそれは、恍惚として大聖堂に響く。
ばたん、と大聖堂の扉が閉ざされる。外の怒号も喧騒も、膜一枚隔てたようにくぐもって遠ざかった。
ヴァールハイトは、長椅子の間の、祭壇へ一直線に伸びる通路を歩いてくるところだった。ただ、亜麻布で包んだ大きな何かを縄でぐるぐる巻きにして、背後に引きずっている。亜麻布にはところどころ黒ずんだ汚れが滲んでいた。
今日の彼は赤い服を着ている、と思いかけて、エレオラはぎょっと身をこわばらせた。ヴァールハイトはいつも通り黒と赤の騎士服をまとっていて、腰には長剣を差していて、そしてなぜか全身血まみれだった。自分の血というわけでもなさそうで、確かな足取りでエレオラに近づいてくる。亜麻布から染み出た汚れが、床にかすれた線を描いて彼の軌跡を示す。
エレオラから数歩離れたところで、ヴァールハイトは足を止めた。息を殺して様子を窺うエレオラに、この上なく優しげな笑みを向けて、蕩けるように目を細める。今まで誰の顔にも見たことのない表情に、エレオラは肩を震わせた。
「聖女エレオラ」
「な、な、なんでしょう?」
「……ん」
「ん?」
エレオラの前にどさり、と投げ出されたのは、亜麻布に包まれた何か。間近で見るそれには、ところどころ赤黒いシミができていて、何より隠しようもなく禍々しい獣の血のにおいが漂っていて、エレオラはサーッと青ざめる。頼りなく足がよろめいた。
(まさか……嘘でしょう⁉︎)
それを指差して、おそるおそる問う。
「……これは?」
「邪竜の首だ」
「じゃりゅう」
「まったく、邪竜討伐を成した男とだけ結婚するなど、強欲な女だ。さすがに手こずったぞ。これで満足か?」
「……え? え⁉︎」
「——エレオラ」
ヴァールハイトはブーツの踵で床を踏み、硬い足音を響かせて、さらにエレオラに近づいた。話についていけず硬直するエレオラの足元に、御伽噺の騎士のように跪く。
そうして、血まみれの手袋を外した両手で、エレオラの左手を恭しく取った。
「これであなたは俺のものだ。——俺だけの聖女だ」
ひたむきにエレオラを見上げるかんばせには、冗談の気配など微塵もない。その瞳はこちらを射抜くようで、ステンドグラスに囲まれた大聖堂の中でも一際赤く輝いていた。
(これは求婚なの⁉︎ どうして⁉︎ 邪竜を殺せなんて言っていない‼︎)
わけが分からなかった。なぜ邪竜殺しなど成し遂げたのか。そもそもヴァールハイトは自分を嫌っていたのではなかったのか。
ヴァールハイトの手は大きく、力強く、エレオラを放す気は欠片もなさそうだった。
彫刻じみた静謐な輪郭を描く頬に、血飛沫が飛んでいるのが見える。大地を汚染するという邪竜の血。知らずエレオラは右手を伸ばし、頬に触れた。かすかに指先が血にかすめただけで、痺れるような痛みが走った。けれどヴァールハイトは嬉しそうに唇を緩め、エレオラの手に頭をもたせかける。
その口で、彼は言ったのだ。エレオラを聖女だと。
胸のうちに、母の声が蘇った。
——立派な聖女になりなさい。
ならば、エレオラの答えは一つだった。
「……聖女として、汝に祝福を与えます」
指先に魔力を込める。金に輝く浄化の魔法が発動して、ぶわりと風が巻き起こり、邪悪な竜の血から呪わしい魔力が消えていく。
彼が何を考えているのか、そして自分が彼をどう思っているのか、この答えが肯定になるのか否定になるのかすら、エレオラ自身にも分からない。ただヴァールハイトはとびきり幸福そうに、エレオラの左手に口づけた。
「エレオラを世界で一番綺麗な花嫁にする。心配するな」
と神殿にやってきた叔父は頼もしく請け負ったが、エレオラは曖昧な微笑を返すしかできなかった。
ふう、とため息をついて、エレオラは神殿のステンドグラスを磨く手を止める。
エレオラが磨き粉と磨き布で掃除しているのは、大聖堂の壁一面に広がるステンドグラスだった。救世の女神が鮮やかな色ガラスで描かれ、息を呑むほど美しい。いつもなら、優しげな女神のお顔に一点の曇りもないように心を込めて拭くのだが、今日はなんだか手に力が入らなかった。
「エレオラ様、お加減が悪いのですか?」
一緒に掃除をしていたレベッカが、心配そうに見上げてくる。エレオラは微苦笑して、首を横に振ってみせた。
「いえ、平気です。心配かけてごめんなさいね」
「もうすぐエレオラ様がいなくなってしまうと思うと、とっても寂しいです。エレオラ様も寂しく思ってくださいますか?」
レベッカが両手に持つ磨き布に、ぎゅっと皺が寄った。それを見て、エレオラの胸にちくりと痛みが走る。静かに膝をついて、レベッカと視線を合わせた。握りしめられた彼女の手を自分の手のひらで優しく包み込む。薄暗い大聖堂、ステンドグラス越しに揺らめく色とりどりの光の中、泣きそうになっているレベッカの顔を覗き込んだ。
「……はい。私も寂しいんです。結婚のことを、みんな祝ってくれます。でも私は——ずっと聖女として、誰かの役に立っていたかった」
「エレオラ様……」
エレオラは唇を噛む。結婚なんて嫌だった。公爵家の繁栄のために、家同士の楔としてどこかへ嫁ぐ。それはそれで意味ある人生だろう。公爵令嬢としてのびのび育てられていたら、エレオラだってなんの疑問も持たずにそうしていたに違いない。
けれどエレオラはそういう人生を歩まなかったから。
母の慰めを真に受けて、エレオラ・エレオノーレではなく、恋知らずの聖女エレオラとして生きてきたから。
いつか胸に咲いた夢が、とうに枯れていると知っている。それでも聖女でいるのは、この十年を裏切りたくないからだ。母の非現実的な慰めがエレオラを生かしたように、聖女エレオラという虚構が誰かを救うかもしれない。たとえそれが偽りの光でも、ありもしない迎えを待ち続けたエレオラだからこそ、否定したくはなかった。
「とても寂しいし、何よりも悔しい。レベッカ、どうかあなたは……」
言いかけて、エレオラは口を閉ざした。途中で閉ざされた自分の望みを、まっさらな未来の広がっている子供のレベッカに託すのはずるい気がした。それは呪いだ、と心の隅で呟く。
レベッカの手を放す。目の奥が熱くなるのを必死におさえて、ただ聖女らしく微笑した。
「どうかあなたは、自由でいて。それだけが私の願いです。すべての聖女に、道が開けますように」
「エ、エレオラ様ぁ……」
ぷるぷる震え、今にも決壊しそうだったレベッカの動きがぴたりと止まる。くんくんと鼻をうごめかせ、鼻の付け根に皺を寄せた。
「……なんだか、へんなにおいがしませんか?」
「え?」
「動物みたいな……」
大聖堂の外から甲高い悲鳴が聞こえてきたのはそのときだった。エレオラはハッと立ち上がる。レベッカが不安そうにエレオラの膝にしがみついて、「やだ、何か怖いものが近づいてきます、いや、こわい……」と呟いた。
「レベッカ、あなたは隠し通路から逃げて」
「でも、エレオラ様を置いてなんていけません!」
「私は大丈夫だから。ね?」
聖女たちの悲鳴をかきわけて、エレオラの耳に、何か重そうなものを引きずる音と、悠然した足音がはっきり届いた。獣の腐敗臭のようなにおいが鼻をつく。異常事態が起こっているのは明白だった。
神殿は兵など持っていない。いかなる争いが起きようと、非武装の神殿には何人たりとも攻撃してはならない。代わりに神殿はどの立場の人間でも受け入れる。そう固く決まっている。万一の有事の際には、伝令が王宮まで走って保護を求めることになっていたが、それを待つ余裕があるか。
恐怖に固まるレベッカを隠し通路に押し込み、エレオラは大聖堂の入り口を直視した。後ろにはステンドグラスを背負って、両手の拳を握りしめて祭壇に仁王立ちする。ここを聖女の血で汚すなら、侵入者にはふさわしい裁きが与えられるだろう。たとえエレオラの死後であっても。
ずる、ずる……と、確実な質量を持ったものが、神殿の床にこすれる音がする。
それとともに大聖堂へ近づいてくる足音は、人々が逃げ惑う喧騒や叫び声をよそに、おそろしく規則正しく刻まれる。
——やがて、大聖堂の大きな扉が、ゆっくりと開かれた。
外から眩い日光が射し込み、そこに立つ人間の姿を黒々とした不吉な影に塗り潰す。けれど、それが誰か、エレオラにはなぜか分かった。
「ヴァールハイトさま?」
「——ああ、聖女エレオラ」
答える声には甘やかな吐息が混ざっていた。ベルベットを撫でるような艶のあるそれは、恍惚として大聖堂に響く。
ばたん、と大聖堂の扉が閉ざされる。外の怒号も喧騒も、膜一枚隔てたようにくぐもって遠ざかった。
ヴァールハイトは、長椅子の間の、祭壇へ一直線に伸びる通路を歩いてくるところだった。ただ、亜麻布で包んだ大きな何かを縄でぐるぐる巻きにして、背後に引きずっている。亜麻布にはところどころ黒ずんだ汚れが滲んでいた。
今日の彼は赤い服を着ている、と思いかけて、エレオラはぎょっと身をこわばらせた。ヴァールハイトはいつも通り黒と赤の騎士服をまとっていて、腰には長剣を差していて、そしてなぜか全身血まみれだった。自分の血というわけでもなさそうで、確かな足取りでエレオラに近づいてくる。亜麻布から染み出た汚れが、床にかすれた線を描いて彼の軌跡を示す。
エレオラから数歩離れたところで、ヴァールハイトは足を止めた。息を殺して様子を窺うエレオラに、この上なく優しげな笑みを向けて、蕩けるように目を細める。今まで誰の顔にも見たことのない表情に、エレオラは肩を震わせた。
「聖女エレオラ」
「な、な、なんでしょう?」
「……ん」
「ん?」
エレオラの前にどさり、と投げ出されたのは、亜麻布に包まれた何か。間近で見るそれには、ところどころ赤黒いシミができていて、何より隠しようもなく禍々しい獣の血のにおいが漂っていて、エレオラはサーッと青ざめる。頼りなく足がよろめいた。
(まさか……嘘でしょう⁉︎)
それを指差して、おそるおそる問う。
「……これは?」
「邪竜の首だ」
「じゃりゅう」
「まったく、邪竜討伐を成した男とだけ結婚するなど、強欲な女だ。さすがに手こずったぞ。これで満足か?」
「……え? え⁉︎」
「——エレオラ」
ヴァールハイトはブーツの踵で床を踏み、硬い足音を響かせて、さらにエレオラに近づいた。話についていけず硬直するエレオラの足元に、御伽噺の騎士のように跪く。
そうして、血まみれの手袋を外した両手で、エレオラの左手を恭しく取った。
「これであなたは俺のものだ。——俺だけの聖女だ」
ひたむきにエレオラを見上げるかんばせには、冗談の気配など微塵もない。その瞳はこちらを射抜くようで、ステンドグラスに囲まれた大聖堂の中でも一際赤く輝いていた。
(これは求婚なの⁉︎ どうして⁉︎ 邪竜を殺せなんて言っていない‼︎)
わけが分からなかった。なぜ邪竜殺しなど成し遂げたのか。そもそもヴァールハイトは自分を嫌っていたのではなかったのか。
ヴァールハイトの手は大きく、力強く、エレオラを放す気は欠片もなさそうだった。
彫刻じみた静謐な輪郭を描く頬に、血飛沫が飛んでいるのが見える。大地を汚染するという邪竜の血。知らずエレオラは右手を伸ばし、頬に触れた。かすかに指先が血にかすめただけで、痺れるような痛みが走った。けれどヴァールハイトは嬉しそうに唇を緩め、エレオラの手に頭をもたせかける。
その口で、彼は言ったのだ。エレオラを聖女だと。
胸のうちに、母の声が蘇った。
——立派な聖女になりなさい。
ならば、エレオラの答えは一つだった。
「……聖女として、汝に祝福を与えます」
指先に魔力を込める。金に輝く浄化の魔法が発動して、ぶわりと風が巻き起こり、邪悪な竜の血から呪わしい魔力が消えていく。
彼が何を考えているのか、そして自分が彼をどう思っているのか、この答えが肯定になるのか否定になるのかすら、エレオラ自身にも分からない。ただヴァールハイトはとびきり幸福そうに、エレオラの左手に口づけた。
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