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レノアの章
女神の託宣
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国が亡びる夢を見た。その発端はある王子の愚行だった。
結婚前に彼の婚約者の公爵令嬢が孕んだ。まだ学生の身分で。
王子は叱られることを恐れその父親は自分ではないと言い張った。
王妃はそれを信じ息子の婚約者を酷い言葉で罵った。
結果令嬢は絶望を味わい大きな腹を抱えてある日首を吊った。
動かなくなった彼女の胎から取り出された赤子は王子の髪と目の色をしていた。
赤子の亡骸を抱え令嬢の父は王宮に乗り込み、娘の婚約者だった王子と娘を売女と罵った王妃を殺害した。
その後公爵は捕えられ処刑されたが、民や貴族から王族に信頼が戻ることはなかった。
他国へ逃げ延びた公爵家の人間が大量の兵を連れ王家を滅ぼしに来るのはそれから数年後のことだった。
「……嫌な夢」
そうシンプルな感想を呟いて私は起床した。これまでどれだけの回数この悪夢を見たか分からない。
不快でしかない夢だが、重要なものであるということも私、レノアは理解していた。聖女の持つ能力の一つ予知夢だ。
女神は私に「阻止せよ」というつもりでこの夢を見せていたのだろう。
そんなことを考えながら身支度を終えた。聖女という身分になると身支度に人の手を借りるのが当たり前らしいが私はそれを断った。
人に触られるのは嫌いだ。もっといってしまえば人に近づかれるのも。
そんな人間嫌いの私が数年間とはいえ貴族や王族と一緒に学校生活を送っていたことにびっくりする。
それもすべて国の滅亡を阻止する為だった。この国の王子と婚約している貴族令嬢。それは人に訊けばすぐに判明した。
アイリスフィア・エリアル公爵令嬢。
美貌、身分、評判共に完璧な御令嬢で王族の結婚相手に全く問題ない淑女。そう聞かされた。
白百合のように貞淑だと噂されるような御令嬢が学生の立場で婚約者相手とはいえ妊娠などするだろうか。
念の為私は学生という身分を利用して彼女に近づき、親しくなった。彼女を知れば知るほど悪夢の結末が有り得ないと思うようになる。
アイリスフィア公爵令嬢は貴族の中でも高位の立場にありながら傲慢なところが一切なかった。
常に正しく優しく清らかで、彼女こそ聖女の呼び名に相応しいのではないかと私は思った。
けれどそのように完璧な彼女に私はある日汚点を見つけた。
ある日、学び舎ということも忘れ、まるで酌女のようにアイリスフィア様を侍らせようとする男を見かけた。
それに困った顔をしながらも彼女は相手を強く拒めないようだった。公爵令嬢である彼女がそのようになる相手など数人もいない。
公爵令嬢の婚約者は王家の人間だった。夢の中の出来事が現実になりそうな悪寒に纏わりつかれながら私は二人を遠くから見つめる。
ジルク第二王子は欲望を隠さず、その癖幼い子供のようにアイリ様に纏わりついていた。
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「……嫌な夢」
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そんなことを考えながら身支度を終えた。聖女という身分になると身支度に人の手を借りるのが当たり前らしいが私はそれを断った。
人に触られるのは嫌いだ。もっといってしまえば人に近づかれるのも。
そんな人間嫌いの私が数年間とはいえ貴族や王族と一緒に学校生活を送っていたことにびっくりする。
それもすべて国の滅亡を阻止する為だった。この国の王子と婚約している貴族令嬢。それは人に訊けばすぐに判明した。
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白百合のように貞淑だと噂されるような御令嬢が学生の立場で婚約者相手とはいえ妊娠などするだろうか。
念の為私は学生という身分を利用して彼女に近づき、親しくなった。彼女を知れば知るほど悪夢の結末が有り得ないと思うようになる。
アイリスフィア公爵令嬢は貴族の中でも高位の立場にありながら傲慢なところが一切なかった。
常に正しく優しく清らかで、彼女こそ聖女の呼び名に相応しいのではないかと私は思った。
けれどそのように完璧な彼女に私はある日汚点を見つけた。
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それに困った顔をしながらも彼女は相手を強く拒めないようだった。公爵令嬢である彼女がそのようになる相手など数人もいない。
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