蒼き臨界のストルジア

夜神颯冶

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海から来た少女

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『大丈夫よ』

いつか見た記憶の彼方かなたの母親のぼやけた顔が
忘れていたその声が鮮明せんめいによみがえった。

その幻影げんえい輪郭りんかく徐々じょじょにはっきりしてくる。

「母さん・・・ 」

その顔が輪郭りんかくがじょじょにぞうむすぶと、
そこには不思議そうに僕を見つめる幼女の
顔があった。

『大丈夫?』

人間、死期が近付くと、
昔の幻影が見えると言うが、
忘れていた記憶の残像の母に会えるとは
思ってなかった。

僕は幻でも母に会わせてくれた彼女に
感謝した。

「ありがとう」

彼女は戸惑とまどったよううつむき、無表情でうなづいた。

『うん』

多分人生のあさい彼女には、
その方法がわからないのだろうと思った。

人との距離が。

その温もりのかわしかたが。

なんだ僕と同じじゃないか。

無表情に固まった彼女の表情を見て、
急に親近感がわいた。

僕は好きな子にちょっかいを出す 男心 おとこごころが、
少しわかった。

僕はいたずらぽく彼女に話しかける。

「お礼に僕は君を守る」

『えっ?』

キョトンとした彼女に僕は続けた。

「僕は君を守る。君は僕を守る。
      約束      」

そう言って小指を出した。

彼女は僕を真似まねる様に小指をたてると、
僕の顔をのぞき見た。

『約束?』

小指をたてたまま、
不思議そうに僕を見つめる彼女。

『約束?
 契約けいやくじゃなくて?』

「そう約束。
 契約じゃなくて約束。
 約束は契約より重いんだよ」

彼女は少し考えてからうなづいた。

『ピーピーとキーキーにも、
 同じ約束するならいいよ 』

「うん約束する」

そう言って逡巡しゅんじゅんする彼女に微笑ほほえむ。

「日本では約束する時はこうするんだ」

そう言って彼女の指と指を絡めた。

びくんとする彼女に僕は微笑み、
約束の言葉を告げる。

「指切りげんまん嘘ついたら
 針千本ハリセンボンの~ます。
 指切った!」

彼女は不思議そうに自分の指と僕を見て、
『ハリセンボン飲むの?』そうたずねた。

彼女が言ってるのは、
多分動物のハリセンボンだけど、
僕はまあいいかと思いうなづいた。

「約束やぶったらハリセンボン飲まないと
 いけないんだよ」

彼女は途端とたんに痛そうに口をすぼめると、
涙目で僕をにらんだ。

『うん。やぶらない』

そのとき船体に「キューキュー」と言う、
ひときわ大きな声が鳴り響いた。
 
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