君に何度でも恋をする

明日葉

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第4章 さいかい

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どこかで話をしよう


 そう言ったのは自分だったけれど、はた、と思い当たった。
 それは、それではだめなんじゃないか。



 翔は、自分が何も知らないことを認めて、電話をかける。
 尚にかければ、弓削か速水に聞けと、言われた。土師でもいい、と。連絡先が確実にわかるのは速水で、だから、速水に聞いた。








 そういえば、隼人が部活が始まる前に仕事を終わらせるように頑張ると、言っていたなと思い出す。
 夕方、花音にメッセージを送れば、少しして既読がついて、返事が来た。


「大丈夫ですよ。定時、少し過ぎたくらいであがれます」



 だから、定時少し前に、駐車場に車を入れた。
 本当に、少し過ぎたくらいで花音が出てくる。降りようとする前に、小走りにやってきて、助手席の窓から覗かれた。
 思わず笑顔になるのがわかる。運転席側から手を伸ばして助手席側の扉を開けて招き入れれば、少し照れたような顔で乗り込んできた。
「すみません、ありがとうございます。お願いします」
「何言ってるの。お疲れさま」
 思わずくしゃり、とその髪を撫でれば、くしゃっとされた髪を撫でて戻す仕草で、目を逸らされた。
 まずこの照れ屋、なんとかしないと。




「どこに行くんです?」
「あー、うん。仕事、本当に平気?」
「それは大丈夫です。資料が集まり切らなくて、もうできること今日はなかったので」
 昨日も、通夜があって定時で上がっているはず。そう思って聞くけれど花音がため息混じりに言うので、本当にやりようがないのだろうな、と納得して。
 それから、花音の問いに翔は様子を伺いながら答えた。



「花音のうちで、みんなで食べようと思って」
「え?」
「オレは花音が好きなんだけど」
「!」
 一応、ものすごく勇気を振り絞った言葉を、さらっと言っている風に口にしてみれば、案の定花音が固まった。
 その、少し距離を置くようにドア側に無意識に体をずらすのは、傷つくからやめてほしいと思いながら、さりげなく、さりげなく、と呪文のように胸の内で唱えながら続きを言う。
「でも、花音だけじゃなくて、隼人や、日向や日和と、家族になりたい。一緒にいたい。その話をするのに、花音とだけ話をするのは、違うから」
「…子どもですよ?」
「子どもだから、だよ。それに、隼人はそんなに、子どもじゃない」


 あれ?反応が。


 と、前を向いて運転していると分からない無言の、しかも身動ぎもないしん、とした時間に不安になって、スピードを緩めながら、翔は花音の様子を伺うように視線を向けた。



 その瞬間。




 なんとも言えない表情で、俯きがちな花音の顔に浮かんでいた、今まで見たことのない表情。



 幸せ?嬉しい?安堵?



 なんだろう。その表情は、何を言っているんだろう。



 ただ、悪い言葉は全く連想できない表情で。







 普段だったら、その表情を今後の演技のために身につけようなんて、とっさに思ってしまうような、本当に心に響く、沁みる表情は。
 その時の翔にとってはそんなことを思い浮かべる余裕もないくらいに、泣きたくなるくらいに、そのまま自分の中にしまってしまいたい顔をしていて。




 ハンドルを握っていなければ、本人の気持ちなんか無視して、抱きしめて、抱きしめるだけじゃ済まないだろうと思えるくらい、舞い上がった。







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