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第19話・恨みは晴らせない
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「エリナ、今日は随分と早いじゃない。父上とミカレンは?」
私は帰ってきたエリナを見て、優しく聞いた。
「ああ…今日はあまり気分が良くないので、先に帰ってきました。父上と母上はまだしばらく帰ってこないと思います。」
エリナは疲れた顔をしていて、どうやら体調不良は本当らしい。
「そっか、体調には気をつけないとね、未来の王妃様がそう簡単に倒れてはいけないからね」
「うん、ちょっと疲れただけだから、私は先にねますね」
そういったエリナは、ゆっくりと寝室へ向かっていた。
「…うん、しっかり休んでね」
「…さようなら、エリナ」
私はエリナが部屋に入っていくのを静かに見届け、そして小さな声でそう付け加えた。人をゾッとさせるほどの笑みを見せながら。
そして私は理由をつけて近くの従者を下がらせ、それからゆっくりとコーヒーを一杯楽しんだ。
それから30分、時は来た。私は自分の寝室へ戻り、戸棚から鋭い刃物を取り出し、袖に隠して、音をたてないよう気をつけながらエリナの寝室へと向かった。ベッドの上のエリナは心地よい眠りについていて、降り注ぐ月の光が彼女をより一層無邪気で可愛く感じさせた。エリナは未来の王妃生活を夢見ているのでしょう。その証拠に寝ている時までほんの僅かだが幸せそうに微笑んでいる。
「あなたは幸せなのでしょうね。」
「不幸になるのは、私だから!!」
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!
沸騰する心の声が湧き出し、全ての悲しみと痛みが怒りとなって、私の決定を促した。
私は右手でそっと刃を引き出し、彼女の頚動脈に狙いを定め、左手で彼女の口を塞ぐ準備をしていた。
私は刃を振り下ろた。細長い刃はエリナの細い首を深く貫いた。
「!…」
エリナは悲鳴の一つすらあげられず、ただ怯えた目で私をじっと見ていた。
エリナがどんなにあがこうと、私に塞がれた口から声を漏らすことは出来なかった。
私は手を休めることなく、刃を引き抜いては力を込めてもう一度刺し込み、これを何度も繰り返していた。
エリナの瞳が縮み、全身から力が失われ、徹底的に息の根が止まるまで、私は手を止めなかった。
気づけば、私は血まみれになり、服も髪も顔も両手も、どこもかしこもが忌々しい血に染められて、滴るほどだった。
ああ、私は…ついにエリナをやった。今度こそ隠しようがない、疑う余地もなく死罪ね。
突然寝室のドアが開けられた。
「エリナ、あなた大丈夫っ…!?」
自分の娘を見ようとドアを開けたミカレンは、部屋の中の状況に驚いて反応できなかった。
「あら、ちょうどいいところにきたわねミカレン」
「あなたさえいなきゃ、父上は私をおいて再婚なんてしなかった!」私は怒り狂って叫び、そのままミカレンに飛びかかった。
「リリっ!?」ミカレンが気づいたときには、既に首に刃を突き立てていた。
「全てはあなたのせいなのよミカレン!あなたさえいなければ!」
「キャァァァァ!」ミカレンの悲鳴は屋敷中に響き渡る中、逃げ惑うミカリンの髪の毛を掴み、引きずり戻して、右手の刃をミカレンに差し込んだ。
苦痛で顔を歪ませたミカレンは辛うじて最後の言葉を言った。
「どう…して…」言い終わる前にミカレンは永遠に沈黙した。
ミカレンの体は無力に倒れ、血の滴が床に流れ、次第に絨毯を真っ赤に染め上げていく。
「そう…全部あなたたちのせい、あなたたちさえ突然現れなきゃ、私もこんなことをしなくてよかった…」
「そうよ…全てあなたたちが」私はミカレンの死体と血まみれた自分の両手を見ながら、恍惚の中ブツブツと独り言をつぶやいた。
「リリス…これは一体、どういうことだ…」
また別の声が聞こえて来て、顔をあげてみると、父上が驚きながら私を見ていた。
「ハっ…最後は父上なのか…」
「そう…父上も、あなたも同じよ、私はあなたを許すわけにはいかない!あなたさえミカレンを娶らなきゃ!」私は狂ったように刃を持ち上げ、父上に斬りかかった。
「よせ!や!?」
父上の叫びは私の動きを止められなかった。私は狂ったように刃を父上の体に突き続けた。突くたびに父上の顔が苦痛で歪んでいく。でも私はただただこの作業を全てが静かになるまで繰り返した。
周りから音が消え、世界も色を失い、醜い赤と、私の制御できない息遣いと笑い声だけが残った。
「ハハハ…ハハハハ…」
3人の死体を見て、私はつい大声を出して笑いだした。それは悲しみかそれとも喜びかは、自分にも分からないが、ただそのまま笑い続けていた…
これで終わり、全てが終わった…
そう…そうよ…
一番幸せになるべきなのは私のはずなのに!?
私こそが一番幸せになるべきでしょう!?
なんでみんなしてその平民の出の卑しい女ばかりみるの!?
私は一体…エリナの何に勝てないの!?
そう、悪いのは私ではない、私はただいつも真面目に頑張ってきただけなのに、なんで結局不幸になるの、なんでみんな私を追い詰めるの!?
それからどれぐらい経ったのか分からないが、ただ突然目の前が暗くなって、周りのものが一瞬で全部消えた。
カン!
裁判長は力強くガベルを叩き、鳴らした音が私の意識を呼び戻した。
振り返ってみると、私は既に手錠をかけられ、法廷で膝をついていた。そしてエリナとミカレンと父上が、法廷に出て私を見ていた。
「そんな…ありえ…ない」
「確かに、あなたたちを殺したはずなのに…」
呆然となった私は彼らを見ながら、呟いた。
「リリス、あなたは公爵令嬢でありながら、薄情で残忍に自らの肉親への謀殺を企むことは、まさしく暴虐の所業。我メニア王国太子として今この場であなたを死刑に処する!」
目の前に突然、カシリア王子が凍りつくほど冷たい目で私を睨み、宣告した。
「デ…ッンカ?」
「違うのです殿下、これは私のせいなのではなく…どうか話を聞いてっ…」
私は涙を流しながら命乞いをして、貴族の礼儀などとうの昔に忘れていた。
「話は地獄でいくらでもしてろ。ナミス、やれ!」
殿下は私に時間を恵んではくれなかった。
「はっ、かしこまりました、殿下。」
ナミスはゆっくりと私に近づきながら、腰から刀を抜き出した。
「いや…殺さないで…」
「黙れ!」
ナミスは何一つ躊躇なく刀を振り上げて私に斬りかかった。
私は全力で後ろへ退くが、刃物を持った痩せた小柄な老婦人に退路を阻まれた。
「公爵の子よ、無闇に動くでないぞ。うっかりで死なれては惜しいからのう」
老婦人は顔を歪め、悪魔のような笑い声でケラケラと笑いながら、私の首に載せた刀を力ずくで首に刺し込んだ。
「イヤァ!!」
私は全身の力を振り絞り、大声で叫んだ。
目に映ったのは、見慣れた部屋と、懐かしい母の匂い。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
あまりの恐怖で息が荒くなり、窒息寸前のように、大きく息をしていた。
夢…だったの?
気がついた時にはベッドに横になっていたが、冷や汗がパジャマと髪の毛に染み込んでいた。
…強く深く息を吸って、自分を落ち着かせようとした。
ところが幾ら気持ちを整理しても、夢の中の光景が脳内に焼き付いていた。
父上やミカレン、エリナを殺めるとは…ね
こんなにも醜くて残忍非道なやり方、
もしかしたら、それこそが私の心の奥底にあるもの。
今までずっと「リリス」の輝きに隠されていた暗い一面。
そして真の、私の願い。
この複雑な感情は、自分にも整理できない…
悲しみか怒りか我慢の限界かそれとも単なる八つ当たりか。
何も悲しむことはない。私は尊き公爵の家に生まれ、愛してくれる父母がいて、幸せな生活を暮らしてきた。
ミカレンが嫁に来てからも、一家の雰囲気はとても良く、悲しむことなど何もなかった。
怒ることもなかった。ミカレンの責任をとった父上も、全てを隠したミカレンも、十数年も平民生活をさせられたエリナも、全てにおいて憎むべきことはなかった。
あえて言えば、憎いのは私自身になるのかも。
そんな心の狭い、責任を他人に押し付けるだけの自分。
そして、自ら母親を殺した、この私。
私は帰ってきたエリナを見て、優しく聞いた。
「ああ…今日はあまり気分が良くないので、先に帰ってきました。父上と母上はまだしばらく帰ってこないと思います。」
エリナは疲れた顔をしていて、どうやら体調不良は本当らしい。
「そっか、体調には気をつけないとね、未来の王妃様がそう簡単に倒れてはいけないからね」
「うん、ちょっと疲れただけだから、私は先にねますね」
そういったエリナは、ゆっくりと寝室へ向かっていた。
「…うん、しっかり休んでね」
「…さようなら、エリナ」
私はエリナが部屋に入っていくのを静かに見届け、そして小さな声でそう付け加えた。人をゾッとさせるほどの笑みを見せながら。
そして私は理由をつけて近くの従者を下がらせ、それからゆっくりとコーヒーを一杯楽しんだ。
それから30分、時は来た。私は自分の寝室へ戻り、戸棚から鋭い刃物を取り出し、袖に隠して、音をたてないよう気をつけながらエリナの寝室へと向かった。ベッドの上のエリナは心地よい眠りについていて、降り注ぐ月の光が彼女をより一層無邪気で可愛く感じさせた。エリナは未来の王妃生活を夢見ているのでしょう。その証拠に寝ている時までほんの僅かだが幸せそうに微笑んでいる。
「あなたは幸せなのでしょうね。」
「不幸になるのは、私だから!!」
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!
沸騰する心の声が湧き出し、全ての悲しみと痛みが怒りとなって、私の決定を促した。
私は右手でそっと刃を引き出し、彼女の頚動脈に狙いを定め、左手で彼女の口を塞ぐ準備をしていた。
私は刃を振り下ろた。細長い刃はエリナの細い首を深く貫いた。
「!…」
エリナは悲鳴の一つすらあげられず、ただ怯えた目で私をじっと見ていた。
エリナがどんなにあがこうと、私に塞がれた口から声を漏らすことは出来なかった。
私は手を休めることなく、刃を引き抜いては力を込めてもう一度刺し込み、これを何度も繰り返していた。
エリナの瞳が縮み、全身から力が失われ、徹底的に息の根が止まるまで、私は手を止めなかった。
気づけば、私は血まみれになり、服も髪も顔も両手も、どこもかしこもが忌々しい血に染められて、滴るほどだった。
ああ、私は…ついにエリナをやった。今度こそ隠しようがない、疑う余地もなく死罪ね。
突然寝室のドアが開けられた。
「エリナ、あなた大丈夫っ…!?」
自分の娘を見ようとドアを開けたミカレンは、部屋の中の状況に驚いて反応できなかった。
「あら、ちょうどいいところにきたわねミカレン」
「あなたさえいなきゃ、父上は私をおいて再婚なんてしなかった!」私は怒り狂って叫び、そのままミカレンに飛びかかった。
「リリっ!?」ミカレンが気づいたときには、既に首に刃を突き立てていた。
「全てはあなたのせいなのよミカレン!あなたさえいなければ!」
「キャァァァァ!」ミカレンの悲鳴は屋敷中に響き渡る中、逃げ惑うミカリンの髪の毛を掴み、引きずり戻して、右手の刃をミカレンに差し込んだ。
苦痛で顔を歪ませたミカレンは辛うじて最後の言葉を言った。
「どう…して…」言い終わる前にミカレンは永遠に沈黙した。
ミカレンの体は無力に倒れ、血の滴が床に流れ、次第に絨毯を真っ赤に染め上げていく。
「そう…全部あなたたちのせい、あなたたちさえ突然現れなきゃ、私もこんなことをしなくてよかった…」
「そうよ…全てあなたたちが」私はミカレンの死体と血まみれた自分の両手を見ながら、恍惚の中ブツブツと独り言をつぶやいた。
「リリス…これは一体、どういうことだ…」
また別の声が聞こえて来て、顔をあげてみると、父上が驚きながら私を見ていた。
「ハっ…最後は父上なのか…」
「そう…父上も、あなたも同じよ、私はあなたを許すわけにはいかない!あなたさえミカレンを娶らなきゃ!」私は狂ったように刃を持ち上げ、父上に斬りかかった。
「よせ!や!?」
父上の叫びは私の動きを止められなかった。私は狂ったように刃を父上の体に突き続けた。突くたびに父上の顔が苦痛で歪んでいく。でも私はただただこの作業を全てが静かになるまで繰り返した。
周りから音が消え、世界も色を失い、醜い赤と、私の制御できない息遣いと笑い声だけが残った。
「ハハハ…ハハハハ…」
3人の死体を見て、私はつい大声を出して笑いだした。それは悲しみかそれとも喜びかは、自分にも分からないが、ただそのまま笑い続けていた…
これで終わり、全てが終わった…
そう…そうよ…
一番幸せになるべきなのは私のはずなのに!?
私こそが一番幸せになるべきでしょう!?
なんでみんなしてその平民の出の卑しい女ばかりみるの!?
私は一体…エリナの何に勝てないの!?
そう、悪いのは私ではない、私はただいつも真面目に頑張ってきただけなのに、なんで結局不幸になるの、なんでみんな私を追い詰めるの!?
それからどれぐらい経ったのか分からないが、ただ突然目の前が暗くなって、周りのものが一瞬で全部消えた。
カン!
裁判長は力強くガベルを叩き、鳴らした音が私の意識を呼び戻した。
振り返ってみると、私は既に手錠をかけられ、法廷で膝をついていた。そしてエリナとミカレンと父上が、法廷に出て私を見ていた。
「そんな…ありえ…ない」
「確かに、あなたたちを殺したはずなのに…」
呆然となった私は彼らを見ながら、呟いた。
「リリス、あなたは公爵令嬢でありながら、薄情で残忍に自らの肉親への謀殺を企むことは、まさしく暴虐の所業。我メニア王国太子として今この場であなたを死刑に処する!」
目の前に突然、カシリア王子が凍りつくほど冷たい目で私を睨み、宣告した。
「デ…ッンカ?」
「違うのです殿下、これは私のせいなのではなく…どうか話を聞いてっ…」
私は涙を流しながら命乞いをして、貴族の礼儀などとうの昔に忘れていた。
「話は地獄でいくらでもしてろ。ナミス、やれ!」
殿下は私に時間を恵んではくれなかった。
「はっ、かしこまりました、殿下。」
ナミスはゆっくりと私に近づきながら、腰から刀を抜き出した。
「いや…殺さないで…」
「黙れ!」
ナミスは何一つ躊躇なく刀を振り上げて私に斬りかかった。
私は全力で後ろへ退くが、刃物を持った痩せた小柄な老婦人に退路を阻まれた。
「公爵の子よ、無闇に動くでないぞ。うっかりで死なれては惜しいからのう」
老婦人は顔を歪め、悪魔のような笑い声でケラケラと笑いながら、私の首に載せた刀を力ずくで首に刺し込んだ。
「イヤァ!!」
私は全身の力を振り絞り、大声で叫んだ。
目に映ったのは、見慣れた部屋と、懐かしい母の匂い。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
あまりの恐怖で息が荒くなり、窒息寸前のように、大きく息をしていた。
夢…だったの?
気がついた時にはベッドに横になっていたが、冷や汗がパジャマと髪の毛に染み込んでいた。
…強く深く息を吸って、自分を落ち着かせようとした。
ところが幾ら気持ちを整理しても、夢の中の光景が脳内に焼き付いていた。
父上やミカレン、エリナを殺めるとは…ね
こんなにも醜くて残忍非道なやり方、
もしかしたら、それこそが私の心の奥底にあるもの。
今までずっと「リリス」の輝きに隠されていた暗い一面。
そして真の、私の願い。
この複雑な感情は、自分にも整理できない…
悲しみか怒りか我慢の限界かそれとも単なる八つ当たりか。
何も悲しむことはない。私は尊き公爵の家に生まれ、愛してくれる父母がいて、幸せな生活を暮らしてきた。
ミカレンが嫁に来てからも、一家の雰囲気はとても良く、悲しむことなど何もなかった。
怒ることもなかった。ミカレンの責任をとった父上も、全てを隠したミカレンも、十数年も平民生活をさせられたエリナも、全てにおいて憎むべきことはなかった。
あえて言えば、憎いのは私自身になるのかも。
そんな心の狭い、責任を他人に押し付けるだけの自分。
そして、自ら母親を殺した、この私。
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