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第4章。迷いの森のエルフとボス討伐マラソン

44話。ウッドゴーレムを倒して新スキルをゲット

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 道の左右から見上げるような木造の巨人──ウッドゴーレムたちが雪崩を打って襲いかかってきた。
 彼らは木に擬態していたのだ。その腕には、連射式ボウガンが装着されている。

「すみません、カイン兄様! 結界の影響で、精霊たちの声が聞こえにくくなっていました!」
「いや、良く教えてくれたセルヴィア!」

 幻惑の結界は、五感だけなく魔法的な感覚も狂わすのだ。
 見れば、ここら一帯の木々はすべて待ち伏せしていたウッドゴーレムだった。ここは、侵入者を撃退するための必殺の狩り場だ。

「おいでなさい【死霊騎士団《デスナイツ》】!」
「はっ!」

 アンジェラがさっそく死霊騎士たちを召喚する。
 首無し騎士であるガウェインが、ウッドゴーレムに強烈な斬撃を浴びせた。

「ぬっ!?」

 しかし、ウッドゴーレムは瞬時に再生し、何事も無かったように、ガウェインに拳を打ち下ろしてくる。

「ウッドゴーレムの特徴は、高い防御力と再生能力だ! 火属性攻撃以外は、有効じゃないぞ!」
「では、【アルビドゥス・ファイヤー】の出番ですね!」
「火属性攻撃? なら【冥火連弾《ヘルファイア》】よ!」

 俺の指示に、ふたりの少女は瞬時に応えてくれた。
 
 火炎攻撃でおもしろいように大量のウッドゴーレムを撃破していく。弱点さえ把握できていれば、どんな敵でも怖くはない。

「はぁあああああッ!」

 俺は縦横無尽に駆け回り、ウッドゴーレムを次々に両断した。

 【デス・ブリンガー】×【デス・ブリンガー】×【黒月の剣】

 攻撃力4倍の効果は、【黒月の剣】の闇属性力にも上乗せされ、ウッドゴーレムは闇の炎に蝕まれて一撃で焼滅していく。

「ちょっとカイン、あなた生命力(HP)1で無茶苦茶よ!」

 アンジェラは暗黒系スキルに造詣が深いようで、俺の行為に唖然としていた。

「えっ!? 兄様、【強化回復薬《エクスポーション》】を!」
「ありがとう、このままで大丈夫だ!」

 セルヴィアの忠告を無視して、俺は敵を斬りまくる。

 ウッドゴーレムは推定レベル30だが鈍重で、敏捷性を鍛えまくったレベル48の俺には、まず攻撃が当たらない。

 それに、このまま敵を撃破し続ければ……

『生命力(HP)1の状態で、50体以上の敵を倒しました。

 おめでとうございます!
 スキル【起死回生】を習得しました。
 生命力(HP)1の状態になると、敏捷性が100%アップします!』

 狙い通り、新スキル【起死回生】を入手できた。
 俺の身は、雷のごとき速度となり、怒涛の勢いで、ウッドゴーレムを斬り滅していく。

『レベルが49に上がりました!
 レベルが50に上がりました!
 レベルが51に上がりました!』

 いいぞ。動きの遅いウッドゴーレムは【起死回生】のスキルを発動させた俺にとって、良い経験値稼ぎの相手だ。

 この勢いで、もっともっとレベルを上げて……レベル99の勇者を屠れる領域にまで、手を届かせてやる。

「カイン兄様、いくら何でも無茶です! 死んでしまいますよ!」

 セルヴィアが悲痛な声で訴えた。

「また、この地を侵略する気か人間!?」

 その時、弓を構えたエルフたちが飛び出してきた。
 ウッドゴーレムでは、埒が明かないと思ったのだろう。
 
「待って! 俺はアルビオン王国の貴族カイン・シュバルツだ。エルフと争うつもりもない!」

 すぐさま俺は剣を収めて、両手を上げた。
 セルヴィアを守れるように、彼女の近くまで後退する。

「何者であろうと、我らの領域を犯せば死あるのみ!」

 エルフたちは完全に殺気立っていた。 

「お待ちなさい、あなたたち! 森に作られた、この道。この力はまさに【世界樹の聖女】様によるものよ!」

 ひときわ目を引く美女が、エルフたちを叱咤しつつ現れた。
 その容姿には見覚えがあった。

「族長のセリーヌ殿ですか!? 14年前に皇帝ジークフリートに奪われたあなたの娘、アンジェラを連れてきました!」
「「なっ!?」」

 戸惑いの声が、両陣営から上がった。

「ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさい! あの人が、私のお母様だというの?」
「瞳の色がアンジェラと同じ紫だろう? 紫眼はエルフでも人間でも希少で、偶然の一致はまず有り得ない!」
「そんな……ッ!」

 アンジェラが息を飲んで目を見開く。

「なぜ、私が族長のセリーヌだと!? それにジークフリートが、アンジェラを自ら手放す訳が無いわ!」

 セリーヌが威嚇するように弓を構える。

「まさかアンジェラを使って、私たちを皆殺しにしようというの!? あなたがジークフリートの手先ではないという証拠を見せなさい!」

 ま、まいったな。

 アンジェラをセリーヌに引き合わせれば、セリーヌは感激してくれるだろうと思っていたが、ことはそう単純では無かったようだ。

 その時、伸びた草花が、エルフたちの弓を絡め取った。

「なにぃ!? こ、この力はまさか、本当に!?」

 エルフたちの間に衝撃が走る。

「待ってください。私は【世界樹の聖女】セルヴィアです。カイン兄様は、私の婚約者にしてアルビオン王国を救った英雄です。皇帝の思惑とは無関係であること、あなた方に決して危害を加えないことを、私が保証します!」
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