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第4章。迷いの森のエルフとボス討伐マラソン

51話。ダンジョン攻略でレベル上げ&闇の軍勢を作り

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「カインの情報通り、このダンジョン最下層に巣食っているリザードマンはかなり強いわね。ドンドン、私のレベルが上がっているわ」

 アンジェラは上機嫌だった。
 先行させた【死霊騎士団《デスナイツ》】が、最下層に巣食っている魔物たちを虱潰しに撃破してくれてくれている。

 死霊騎士たちの方が敵よりレベルが低いが、統率された集団戦術と、鍛え抜かれた剣技のおかげて、レベル差を覆せていた。

 おかげで、俺たちは楽に進むことができる。

「まさか使役しているアンデッドが魔物を倒すと、アンジェラ皇女に経験値が入るのですか?」
「それが【死霊使い】の利点だな。入手できる経験値は通常の10分の1にまで減少するんだけど」

 おかげでアンジェラのレベルは現在60だった。俺たちの中では一番レベルが高い。

 さらに、死霊騎士たちも経験値が獲得できるので、このダンジョン攻略を通して、【死霊騎士団《デスナイツ》】のレベルは平均40オーバーとなるだろう。

「私の下僕も増えるし、一石三鳥ね」

 アンジェラが手をかざすと即死魔法である【獄炎鳥(ごくえんちょう)】の黒い小鳥が放たれる。それが【死霊騎士団《デスナイツ》】を突破して、アンジェラに襲いかかってきたリザードマンの息の根を止めた。

 ダンジョン最下層は、ミスリル装備で武装した変異種のリザードマンの巣窟だった。
 ボスモンスターである黒竜は、リザードマンたちの信仰対象であるらしい。

「さあ、新たなる我が下僕よ。あなたもカインに忠誠を誓いなさい」
「はっ。カイン・シュバルツ様に忠誠を誓います」

 死んだリザードマンは起き上がり、俺に臣下の礼を取ってきた。
 
「うん、よろしく頼む」

 魔物にかしずかれると、何か魔王にでもなったような感じがするな。
 魔物の軍勢を指揮するというのも、おもしろい。

「ひぎゃああああッ!? カ、カイン様、コレ、本当に殴り倒さないとイケナイんですかぁ!?」

 後方で、ソフィーが絶叫を上げていた。
 ソフィーの周囲にはワラワラと【骸骨戦士《スケルトンウォリアー》】が集まっていた。アンジェラが召喚したB級のアンデッドだ。

「そうだが? 相手は無抵抗だし、スケルトン系は打撃武器に弱いから、楽勝だと思うけど?」
「そそそ、そうなんですけどぉおおおッ!? 見た目が怖いんですよ!」

 ソフィーにはミスリルロッドを装備させてあるので打撃攻撃力は十分だ。

 ソフィーには安全な後方でレベル18の【骸骨戦士《スケルトンウォリアー》】を倒しまくってもらい、まずはレベル20になることをノルマにしていた。
 時間はなるべく、効率的に使わないといけない。

「でも、こんな強力な魔物が巣食っているダンジョンが、シュバルツとフェルナンドの領地の境い目にあったんですね。両家の領民の安全のためにも、このダンジョンは絶対にクリアしましょう」
「そうだなセルヴィア……増え過ぎた変異リザードマンが食料を求めてダンジョンから這い出てくることもあるだろうし」

 それを考えても、このダンジョンを攻略する意義は大きかった。

「カイン、【死霊騎士団《デスナイツ》】が、ボス部屋を発見したわ。そこに至るまでのルート上のトラップは、すべてワザと引っかかることで解除したわよ」

 アンジェラが得意そうに報告してくる。
 アンデッドならではのトラップ解除方法だった。アンデッドには、毒も麻痺も呪いも効かない。

「ありがとう、さすがだな」
「当然よ。私はカインの護衛ですもの」

 アンジェラは俺の左腕を取って、なにか甘えるように寄り添ってきた。

「そう言えばセルヴィアはレベル40程度だったわよね。黒竜のレベルは推定70。危険過ぎるわ。ボスの討伐は私とカインに任せて、あなたはゆっくり休んでいたら?」

 すると、セルヴィアも対抗するかのように俺の右腕を取って、しがみついてきた。

「むっ。私とカイン兄様は、決して離れ離れにならないと誓い合った婚約者同士です。そんなことをするハズが無いです」
「ちょ!? セルヴィア、胸が……ッ!」

 ふたりの少女の柔らかい感触を押し付けられて、俺はタジタジになってしまう。

「ドラゴンは火炎耐性があるのよ。あなたの能力とは相性最悪ではなくて?」
「くぅ……」

 痛いところを突かれて、セルヴィアはうめいた。

「私だって【世界樹の聖女】の力を使いこなす特訓をしています。【アルビドゥス・ファイヤー】だけが、私の武器ではありません。カイン兄様のお役にちゃんと立って見せます」

 いじらしく告げるセルヴィアには、何か考えがあるようだった。

「俺の指示した訓練以外にも、何か特訓をしていのか?」
「はい、カイン兄様。先日、エルフの【迷いの森】に滞在した際、珍しい効能を持つ植物を発見しました。これを召喚して操る練習をしています。大量にぶつければ、きっとドラゴンにも通用するハズです」
「そうか、偉いなセルヴィアは!」
「えへへっ」

 俺のためにがんばってくれているのが愛おしく感じられて、俺はセルヴィアの頭を撫でる。
 セルヴィアは幸せそうな笑顔を見せた。

「むっ……私の方が役に立っているのに」

 すると、なぜかアンジェラは頬をムスっと膨らませる。
 不満げなその呟きは小さくて、良く聞き取れなかった。

「あれ? もしかして、アンジェラも頭を撫でて欲しいのか? 子供だな」
「ち、違うわよ! べ、別にうらやましくなんて、無いんだからね……!」

 軽い冗談のつもりで言ったら、アンジェラは顔を真っ赤にして、ソッポを向いてしまった。
 子供扱いされて、怒ったのか? そんなにムキにならなくても良いのにな。

「おわぁあああッ! やりましたよカイン様! すごい経験値が入って一気にレベルアップ! って、痛い!?」

 レベル上げに励んでいるソフィーが、歓声を上げると同時に転んでいた。

「……あ、あの人、ホントに大丈夫なんですか、兄様? 聞けば習得しているデバフ魔法はひとつだけとか?」
「ああっ、レベル20くらいになれば魔力量も上がって、ソフィーはかなり安定したデバフ運用が可能になる。頼もしいな」

 俺はソフィーに声をかける。

「ソフィー、レベル20になれたら、今度は弱っているリザードマンにトドメを刺して、一気にレベル30以上を目指そう!」
「ひぇええええッ!?」
「お、鬼のような猛特訓ね」

 アンジェラが感嘆のため息を吐いた。
 そうこうしながら、やがて俺たちはボス部屋に到着するのだった。
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