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最終章。勇者との御前試合
75話。勇者アベルのハーレムメンバーがみんなカインを好きになる
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「そうです勇者アベル。強さこそが、あなたの誇りかと思っていましたが……カイン兄様に勝つ自信が無いからと、その誇りすら捨てるのですか?」
セルヴィアもやって来て、勇者アベルに非難の眼差しを向けた。
「あ、あのお方は……まさか、黒死病から我らを救ってくださった聖女セルヴィア様じゃないか!?」
「王国の救世主ふたりが、そろってお姿を見せたぞぉおおおッ!」
人々は聖女の登場に、さらなる熱狂に包まれた。
今やセルヴィアも国中で大人気になっている。
「はぁっ!? ぼ、僕の反則負けだと!?」
勇者アベルは顔面蒼白になった。
「当然ではないですか? 国王陛下やシグルド皇帝もご覧になられるような御前試合ですよ。不正など、まかり通る訳がありません」
「そうだ。このことが大会実行委員の耳に入ったら、お前は反則負けで、あの世行きだぞ。さあ、どうする!?」
勇者アベルに課した誓約は『武術大会で、一度でも負ければ死ぬ』だ。
これは、コイツに反則を許さないための制約でもあった。
「ぐぅ……アハハハハッ。じょ、冗談! 軽いジョークってヤツさ。勇者である僕が、そんな汚い手を使うと思うかぁ?」
勇者アベルは突然、笑い出して肩を竦めた。
「……はい、あなたなら100%やりかねないと思います」
「その通りだ。この極悪人め!」
セルヴィアの冷めたツッコミに、王都の人々が一斉に同意する。
「罪を犯した事実そのものを隠蔽するつもりか? なら、誘拐された女の子は総力を上げて捜索し、大会開始の明日の昼までに必ず発見する。それでお前は終わりだ勇者アベル!」
「むぐぅ……」
俺が強気に出ると、勇者アベルは二の句がつげなくなった。
「俺たちも捜索に協力します!」
「みんなで、そのご令嬢を救出して、卑劣な勇者を地獄にたたき落としてやりましょう!」
「憲兵騎士団、出動だ! 行方不明となっている貴族令嬢がいないか確認しろ!」
「はっ!」
さらに王都の人々や憲兵騎士団までも、協力を申し出てくれた。
これは心強い。みんなで探せば、きっとその女の子は見つかるハズだ。
「アハハハハッ! そ、そうだ思い出した! 確か人相の悪い冒険者どもが、偶然、貴族令嬢をスラム街の廃墟に連れ込んでいるのを見た! 今からその場所を教えてやる! そ、それから僕を不戦勝にしろと言ったのもジョークだ! 誘拐犯と僕はまったく全然、無関係だからな!」
「ど、どこまでも見苦しい男ですね……」
セルヴィアは呆れ返っている。
「カイン兄様に、下手な罠を仕掛けるのは逆効果ですよ? 何でも有りの戦争になったら、不利なのはあなたです。この前の戦争で、大軍を擁しておきながら負けたのをお忘れですか?」
「う、うるさい黙れ聖女! 僕は神にも等しい力を持つ勇者アベルだぞ! 不正なんかしなくても、お前の婚約者をブッ殺すくらい朝飯前だ!」
勇者アベルは傲岸不遜に言い放つ。
「アハハハハッ! それに僕にはまだ奥の手が残っている。この僕に勝つなんて、たとえ神にだって不可能だ!」
奥の手? しかし、それなら人質など使ったのは解せない気がするが……
顔を引きつらせた勇者アベルからは、できればその手は使いたくないようなニュアンスを感じるな。
勇者アベルは努力をバカにし、剣の鍛錬など一切していない。
そんな男の奥の手となると、ゲーム知識に照らし合わせると、1つの最悪の仮説が浮かぶが……いや、まさかな。
「そうか、わかった。ランスロット!」
「はっ! お側に!」
俺が呼ぶと背後に燕尾服姿の執事ランスロットが現れた。
「今から、勇者アベルの言う場所に急行して、ご令嬢を救出してくれ」
「かしこまりました。それと【闇鴉《やみがらす》】を使って誘拐犯どもを拷問にかけますか? 黒幕が勇者アベルだと吐かせれば、ヤツを反則負けに追い込めます」
「ぐっ! ジジイ、てめぇ……!」
勇者アベルがランスロットを睨みつける。
そういえば、勇者アベルはランスロットに剣の勝負で負けた因縁があるのだったな。
「いや、それには及ばない。勇者アベルを試合で正々堂々とブチのめして優勝する。最初から、そう決めているんだ」
「最初から……そうでごさいましたな。王都武術大会で優勝するために剣を教えて欲しい──1年前、カイン坊ちゃまは、私にそうおっしゃられましたな」
顔を上げたランスロットは、眩しいモノでも見るように目を細めた。
「あの時から、だいぶ状況は変わったけど、俺の志は変わっていない。セルヴィアとの幸せな人生を手に入れるために完全勝利を目指す。それが俺の信念だ。不戦勝など、論外だ」
「はっ、ご立派でございます! まさにカイン坊ちゃまこそ、騎士の鑑! どうか勇者めを打ち破って、本懐を遂げられてくださいませ!」
ランスロットが俺に頭を下げる。
すると、爆発的な歓声と拍手が鳴り響いた。
「カイン様こそ、やっぱり【真の英雄】だ!」
「明日の試合、がんばってください! 王都の民は、いえ、王国と帝国の民すべてが、カイン様を応援しています!」
「カイン・シュバルツ様ばんざーい!」
う、うん? なんかみんなが異様に熱狂しているけど……
「卑劣な勇者アベルを正々堂々と打ち破る! やっぱり、カイン兄様はスゴイです!」
セルヴィアが顔を尊敬に輝かせていた。
「かっこいい! 薄汚い勇者アベルなんかとは、格が違うわ! 不戦勝など論外だなんて、痺れちゃう!」
「伝説の騎士ランスロット様が忠誠を捧げるに相応しいお方だわ!」
勇者アベルの元ハーレムメンバーたちが目をハートにして押しかけてきた。
「えっ、いや、これは俺がセルヴィアとのトゥルーエンドに至るために必要だからで。別に正々堂々と戦って勝つのが好きとか、そういう訳じゃないんだけど……!」
みんなの勘違いを訂正しようとするも、声援に掻き消されてできなかった。
「カイン坊ちゃま、ご立派でございますぞぉおおお! まさに騎士道精神の体現者ぁああああッ!」
勘違いしたランスロットが涙を流して抱き着いてくる。む、むさ苦しい。
約3時間後には、誘拐された女の子は無事保護された。
これで、明日の試合に集中できるな。
セルヴィアもやって来て、勇者アベルに非難の眼差しを向けた。
「あ、あのお方は……まさか、黒死病から我らを救ってくださった聖女セルヴィア様じゃないか!?」
「王国の救世主ふたりが、そろってお姿を見せたぞぉおおおッ!」
人々は聖女の登場に、さらなる熱狂に包まれた。
今やセルヴィアも国中で大人気になっている。
「はぁっ!? ぼ、僕の反則負けだと!?」
勇者アベルは顔面蒼白になった。
「当然ではないですか? 国王陛下やシグルド皇帝もご覧になられるような御前試合ですよ。不正など、まかり通る訳がありません」
「そうだ。このことが大会実行委員の耳に入ったら、お前は反則負けで、あの世行きだぞ。さあ、どうする!?」
勇者アベルに課した誓約は『武術大会で、一度でも負ければ死ぬ』だ。
これは、コイツに反則を許さないための制約でもあった。
「ぐぅ……アハハハハッ。じょ、冗談! 軽いジョークってヤツさ。勇者である僕が、そんな汚い手を使うと思うかぁ?」
勇者アベルは突然、笑い出して肩を竦めた。
「……はい、あなたなら100%やりかねないと思います」
「その通りだ。この極悪人め!」
セルヴィアの冷めたツッコミに、王都の人々が一斉に同意する。
「罪を犯した事実そのものを隠蔽するつもりか? なら、誘拐された女の子は総力を上げて捜索し、大会開始の明日の昼までに必ず発見する。それでお前は終わりだ勇者アベル!」
「むぐぅ……」
俺が強気に出ると、勇者アベルは二の句がつげなくなった。
「俺たちも捜索に協力します!」
「みんなで、そのご令嬢を救出して、卑劣な勇者を地獄にたたき落としてやりましょう!」
「憲兵騎士団、出動だ! 行方不明となっている貴族令嬢がいないか確認しろ!」
「はっ!」
さらに王都の人々や憲兵騎士団までも、協力を申し出てくれた。
これは心強い。みんなで探せば、きっとその女の子は見つかるハズだ。
「アハハハハッ! そ、そうだ思い出した! 確か人相の悪い冒険者どもが、偶然、貴族令嬢をスラム街の廃墟に連れ込んでいるのを見た! 今からその場所を教えてやる! そ、それから僕を不戦勝にしろと言ったのもジョークだ! 誘拐犯と僕はまったく全然、無関係だからな!」
「ど、どこまでも見苦しい男ですね……」
セルヴィアは呆れ返っている。
「カイン兄様に、下手な罠を仕掛けるのは逆効果ですよ? 何でも有りの戦争になったら、不利なのはあなたです。この前の戦争で、大軍を擁しておきながら負けたのをお忘れですか?」
「う、うるさい黙れ聖女! 僕は神にも等しい力を持つ勇者アベルだぞ! 不正なんかしなくても、お前の婚約者をブッ殺すくらい朝飯前だ!」
勇者アベルは傲岸不遜に言い放つ。
「アハハハハッ! それに僕にはまだ奥の手が残っている。この僕に勝つなんて、たとえ神にだって不可能だ!」
奥の手? しかし、それなら人質など使ったのは解せない気がするが……
顔を引きつらせた勇者アベルからは、できればその手は使いたくないようなニュアンスを感じるな。
勇者アベルは努力をバカにし、剣の鍛錬など一切していない。
そんな男の奥の手となると、ゲーム知識に照らし合わせると、1つの最悪の仮説が浮かぶが……いや、まさかな。
「そうか、わかった。ランスロット!」
「はっ! お側に!」
俺が呼ぶと背後に燕尾服姿の執事ランスロットが現れた。
「今から、勇者アベルの言う場所に急行して、ご令嬢を救出してくれ」
「かしこまりました。それと【闇鴉《やみがらす》】を使って誘拐犯どもを拷問にかけますか? 黒幕が勇者アベルだと吐かせれば、ヤツを反則負けに追い込めます」
「ぐっ! ジジイ、てめぇ……!」
勇者アベルがランスロットを睨みつける。
そういえば、勇者アベルはランスロットに剣の勝負で負けた因縁があるのだったな。
「いや、それには及ばない。勇者アベルを試合で正々堂々とブチのめして優勝する。最初から、そう決めているんだ」
「最初から……そうでごさいましたな。王都武術大会で優勝するために剣を教えて欲しい──1年前、カイン坊ちゃまは、私にそうおっしゃられましたな」
顔を上げたランスロットは、眩しいモノでも見るように目を細めた。
「あの時から、だいぶ状況は変わったけど、俺の志は変わっていない。セルヴィアとの幸せな人生を手に入れるために完全勝利を目指す。それが俺の信念だ。不戦勝など、論外だ」
「はっ、ご立派でございます! まさにカイン坊ちゃまこそ、騎士の鑑! どうか勇者めを打ち破って、本懐を遂げられてくださいませ!」
ランスロットが俺に頭を下げる。
すると、爆発的な歓声と拍手が鳴り響いた。
「カイン様こそ、やっぱり【真の英雄】だ!」
「明日の試合、がんばってください! 王都の民は、いえ、王国と帝国の民すべてが、カイン様を応援しています!」
「カイン・シュバルツ様ばんざーい!」
う、うん? なんかみんなが異様に熱狂しているけど……
「卑劣な勇者アベルを正々堂々と打ち破る! やっぱり、カイン兄様はスゴイです!」
セルヴィアが顔を尊敬に輝かせていた。
「かっこいい! 薄汚い勇者アベルなんかとは、格が違うわ! 不戦勝など論外だなんて、痺れちゃう!」
「伝説の騎士ランスロット様が忠誠を捧げるに相応しいお方だわ!」
勇者アベルの元ハーレムメンバーたちが目をハートにして押しかけてきた。
「えっ、いや、これは俺がセルヴィアとのトゥルーエンドに至るために必要だからで。別に正々堂々と戦って勝つのが好きとか、そういう訳じゃないんだけど……!」
みんなの勘違いを訂正しようとするも、声援に掻き消されてできなかった。
「カイン坊ちゃま、ご立派でございますぞぉおおお! まさに騎士道精神の体現者ぁああああッ!」
勘違いしたランスロットが涙を流して抱き着いてくる。む、むさ苦しい。
約3時間後には、誘拐された女の子は無事保護された。
これで、明日の試合に集中できるな。
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