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4章。5億人の美少女から神と崇められる

52話。国の陰の支配者となる

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一年後――

『ルカ様、獣人王が新生アルビオン共和国の属国となりたいと申し出てきました。殊勝な心掛けと言いたいところですが、ふざけたことに貢ぎ物が粗大ゴミばかりです。
 貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ! と返事したいと思いますが、よろしいでしょうか?』

「そんなことをしたら、戦争になるでしょうが!? お受けしますと、返事しろ」

 薬屋バルリングで店番をしながら、ボクはイルティアに通信魔法で指示を飛ばす。
 ボクは美少女の姿ではなく、元の少年の姿に戻っていた。

 アナスタシア姫の力のおかげでボクの【変身】スキルは進化を果たした。過去にキスした相手に、いつでも変身、変身の解除ができるようになったのだ。

 おかげでボクの望みであった家族と静かに暮らす生活が手に入った。
 アナスタシア姫には、いくら感謝してもしきれない。

 苦手だった魔法も、素で通信魔法だけは使えるように特訓した。

『それでは獣人王に舐められてしまいます。外交では舐められたらお終いです。
 そうですね……従属の証に貴国のミスリル鉱山の採掘権をよこせ。とマイルドに伝えることにします。
 ふふふっ、ルカ様の世界制覇にまた一歩近づきますね』

「何度も言っているけど、ボクは世界征服するつもりなんて、これっぽっちもないからな!」

 ボクは頭を抱える。
 アルビオン王国は、ボクの改革によって共和制に移行した。

 そこまでは良かったのだが、国家元首を決める投票で、ボクはぶっちぎりの一位になってしまい、王に即位せねばならなくなった。

 アルビオン王家の血を引く者は、権力の座につけないと法律で決めたのだが……
 ミリアが『ルカお姉様は王家の者ではありません!』と強引な理屈で通してしまったのだ。

 仕方なく、イルティアに影武者として女王役を演じてもらい、国の方針に関する重要なことだけボクが判断を下すような体制にした。

 この一年で、イルティアの持つ複製版『魔王の魔導書』の解読が進み、ボクにはめられた呪いの腕輪も外すことができた。

 複製版の魔導書には、所有者を魔王にしてしまうような恐ろしい力はない。
 おかげて暗黒属性魔法の解析が進み、新生アルビオン共和国の国力増強に役立っている。

 周辺国家が、次々に従属や同盟を求めてきている一因だった。
 
『何をおっしゃいますか! ルカ様に支配されるという最大の喜びを、すべての種族と国家に与える。これぞ愛。これぞ慈悲。これぞ絶対的な救済に他なりません!
 なにとぞ、このイルティアに世界のすべてを献上せよと御命令を!』

「いや、その考えは絶対におかしい! 侵略戦争は絶対にしない。これが新生アルビオン共和国の基本方針だ!」

『イルティアお姉様! ルカお兄様が困惑されているでしょう!? あなたは影武者に過ぎないんですよ。分を越えた進言は止めて下さい!』
 
 宰相となったミリアが割り込んで来た。ティアルフィ公爵家はルカ女王を助けた忠臣として、中央に返り咲いていた。

『ルカお兄様ご安心を! イルティアお姉様の手綱はしっかり握っておきますので。それよりも、私とお兄様の婚姻の日取りを決めましょう!』

「それは……まだ早い!」

 ミリアと結婚などしたら、バリバリの権利者になってしまう。
 ボクは表舞台に立つ気はない。とにかく、理由を付けてミリアの求婚から逃げ回っていた。

『それでは、久ぶりにデートしましょう! 速攻で仕事を終らせて……いえ、魔王領の調査という名目で、今からオーダンに行きますから!』

『それなら私も同行するわ! 久しぶりにルカ様にお会いしたいです。夜には、なにとぞお情けを頂戴したく存じます!』
 
 イルティアもそんなことを言ってきた。
 お情けというのは王侯貴族の言葉で、抱いて欲しいという意味らしい。

『はあ!? イルティアお姉様! ルカお兄様の妃である私の前で、お兄様を誘惑するなんて、ゆ、ゆ、許せない……!』

『ふんっ。私は勇者の血脈を伝えるという神聖な義務があるのよ? それをわかって言っているのかしら!?
 そもそもあんたは、まだ妃じゃないでしょ!』

 通信魔法越しに喧嘩するふたりの少女。
 あまりにうるさいので、ため息混じりに通信を切った。

「お兄ちゃん、また女王様や宰相様とお話していたの?」

 店のバックヤードから、コレットが回復薬の補充を持ってやって来る。
 この一年で、妹はさらに美しく成長していた。

「うん。なんか疲れた……」

「宰相様たちって人の話を聞かないから、ほどほどにね。お兄ちゃんは、私と結婚するだって、いくら言っても聞いてくれないんだもん。そうだ、お茶を淹れてあげるね」

 ボクはコレットとも結婚するつもりはないのだが……
 義理とはいえ妹と結婚するなんて、おかしいだろう。

 お茶を淹れてくれるのは、ありがたいので、いただくとしよう。

 その時、店の扉が開いて、お客がやって来た。
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