ノケモノ黒魔術師のやり直し。勇者に裏切られ、命と愛する者を奪われた俺、過去に戻ってすべてを取り戻します!

こはるんるん

文字の大きさ
35 / 46
4章。聖王都の攻略

35話。【預言】を破り、聖王都の大結界を破壊する

しおりを挟む
 俺は5つの関所を難なく突破し、軍を進めた。

『こんなところまで、わざわざやってくるとは、ご苦労なことですね。聖女コレット様の大結界は決して破壊できぬというのに!』

 聖王都の城壁が見える丘までやってくると、聖者ヨハンの姿が上空に写し出された。
 支配者の言葉を民に伝えるための投影魔法だ。
 増幅されたヨハンの声が、響いてくる。

『闇属性では光属性に決して勝てない。これが神の定めた絶対なる摂理です! 魔王カイ、貴様がどれほど強大な闇の力を振るおうとも、無意味と知るが良いですね? クハハハハハッ!』
「ぬっ! 言わせておけば……!」

 嫌味ったらしいヨハンの笑いに、グリゼルダが眉根を寄せた。
 大結界に覆われた城壁は、聖なる輝きを放っている。1週目の世界で、魔王グリゼルダがどうやっても突破できなかった鉄壁の守りだ。

「さて、ソイツはどうかな……?」

『……なに? ふっ、魔王カイ、貴様が用意した内通者は、私の【預言】スキルで、すでに見破って全員拘束していますよ? 神に愛され、その言葉を賜ることのできるこの私に! 【預言】で未来のすべてを見通すことのできるこの私に勝つことなど不可能です!』

 聖者ヨハンが勝ち誇る。
 その時、王城より煙が噴き上がった。
 俺が【従魔の契約】で寝返らせた内通者が、王城に放火したのだ。

『なにぃいい!? ま、まさか、まだ城内に、魔王に寝返った者がいたのですか!? そんなバカな!?』

 ヨハンは驚愕に顔を引きつらせた。
 よほど、意外だったようだ。

「なにを驚いているんだ? 【預言】のスキルは、未来のすべてを見通すじゃなかったのか?」
『ぐぅ……!?』
「【預言】は、「72時間に1度、お前の知りたい未来の事象が伝えられる』スキルだ。このスキルの弱点は預言内容に人物名が、決して現れないことだ」
『な、なぜソレを……!?』

 1週目の世界で、ヨハンは【預言】で神から得たというメッセージを、勇者パーティに共有していた。
 そのメッセージにはひとつの特徴があった。
 具体的な人物名が決して出てこないことだ。

 例えば『○○日に勇者が現れる』と出る。だが、その勇者が誰なのかは、わからない。
 今回の場合は、『王城内に魔王への裏切り者が複数潜んてでいる』とでも、出ていたのだろう。
 なら、裏をかくことができる。

「俺の策を見破ったつもりでいたのか? 裏切り者を複数用意して、もし捕まった場合、そいつ等に吐いて良い裏切り者の名前を教えるだけで、お前の【預言】スキルは十分に抑えこめる」

 【従魔の契約】で配下にした者と、俺は精神的な繋がりができており、念話(テレパシー)で意思疎通することができた。

『なっ!? ま、まさか……私は貴様の手の平の上で、踊らされていたと?』
「お前は【預言】スキルに絶対の信頼を置いているからな。【預言】に沿って行動すれば、失敗は無いと思い込んでいるだろう?」

 未来を知ることができるが故の落とし穴だ。
 危険な未来を回避できたと安心してしまって、潜んでいるリスクを見落とす。

 俺は聖王都攻めの下準備として、5人ほど【従魔の契約】で内通者を作っておいた。魔族領に偵察に来ていたヨハンの手の者を、こちらに寝返らせたのだ。

 このうちの3人をワザと捕らえさせることで、ヨハンに俺の策を見破ったと安心させた。
 そうすればヨハンは、内通者の有無とは別の情報を得るために【預言】スキルを使うだろう。

(良くやったぞ、マテオ。お前には【魔将軍】の地位を与える。城から脱出しろ)
(はっ! ありがたき幸せにございます、魔王様!)

 俺は念話で、放火を成功させた内通者【粛清者(パージィス)】のマテオを労った。
 念じれば、俺はいつでも直属の配下と会話できる。
 生への執着の強いマテオは、俺に切り捨てられなかったことを喜んでいるようだ。

『……や、やはり貴様は、2週目の世界に入っているのですか!? それは1週目の私から得た情報か!?』

 ヨハンは狼狽をあらわにした。

『何を、どこまで知っているのです!?』

 自分だけが、未来を知っている。他人の知り得ない情報を知っている。そんな優位性を崩されて、ヨハンは声を震わせた。
 無論、そんなことを親切に教えてやる義理はない。
 さて、ここからが本番だ。

「闇属性で光属性に打ち勝つには、2倍の力を要する。【属性相克】については、もちろん知ってるさ。それが単なる出力の問題に過ぎないこともな!」
 
 俺はマテオに、神器が設置されている近くの部屋に放火するように指示していた。
 聖女の大結界は、神器によって増幅されて聖王都全体を包んでいる。神器そのものを破壊することは難しくとも、コレットと神器を繋ぐ魔力回路を損傷させることができれば、大結界は弱まるハズだ。

「おおっ、やったぁ! 大結界の輝きが弱まったのじゃ!」

 グリゼルダが輝きの減衰した城壁を指差した。
 魔王軍から歓声が上がる。

「よし、エルザ。頼むぞ」
「……わかった。【リミッター解除】!」

 男装したエルザが前に出て、切り札となるスキルを発動した。

「はぁあああああーッ!」

 そのまま、疾風怒濤の勢いで、エルザは丘を駆け降りて行く。加速、加速、加速──!

「【魔剣召喚】!」

 エルザの手には、俺の武器である魔剣ティルフィングが握られた。
 【従魔の契約】を通して、エルザには【魔剣召喚】【斬撃強化Lv50】【闇属性強化Lv10】のスキルを貸し与えていた。

 【斬撃強化Lv50】は、斬撃の威力を100%強化するスキル。【闇属性強化Lv10】は、闇属性攻撃の威力を10%強化するスキルで、これらのふたつの効果は重複する。
 つまり、エルザの魔剣の攻撃力は、110%も上昇していた。

 ここにさらに、【リミッター解除】によるステータス値の3倍上昇と、エルザの持つ【魔法剣士】系スキルの攻撃力上昇効果が上乗せされる。

「砕け散れぇええええ【黒炎斬(こくえんざん)】!」

 勢いに乗ったエルザは大地を蹴って跳躍すると、魔剣に大量の魔力を流し込む。魔剣がまとう黒炎が爆発的に膨れ上がった。

「斬ッ!」

 大結界が城壁ごと、縦に真っ二つに斬り裂かれた。轟音と共に、難攻不落の城壁が崩れ落ちる。

『バ、バカなぁああああ!? 聖女の大結界が!?』

 上空のヨハンの映像も、ほとばしる魔力の余波で吹き飛んだ。
 現在の俺では、コレットの大結界を破壊できるかは、微妙だった。

 だが、俺よりも剣術に優れた【魔法剣士】のエルザに魔剣を与えれば、確実に突破できると考えた。
 なによりエルザは、この場で敵を引き付ける陽動役だ。

「エルザのスキル【闇属性強化Lv10】を【MPドレインLv5】に付け替える。エルザ、あとは俺のフリをして、魔剣で死ぬまで戦い続けろ」

 噴煙がもうもうと立ち込める中、俺はグリゼルダと共に聖王都内に突入する。
 
「ぐ……っ! ふぇええええ!? わ、わかったよ!」

 エルザは涙声になりながら、承諾した。
 
「我こそは、魔王カイ! 聖女の大結界は、この魔剣ティルフィングに屈したぞぉおおお!」

 魔剣を掲げ、エルザは我こそは魔王だと宣言する。
 魔王軍の鬨の声が、それを後押しした。

 スキル【リミッター解除】の反動で、エルザのステータス値は5分後には半分に激減する。
 魔王カイの影武者として、これから聖王国軍の猛攻撃を一身に受けるエルザが生き残れる確率は、まず無いに等しいだろう。

 エルザ、俺のために、せいぜいその生命を捧げてくれよ。

『聖女の大結界を破壊し、魔王軍を聖王都に侵攻させました。おめでとうございます。歴史に残る大悪事です!【イヴィル・ポイント】3000を獲得しました!』

『聖女の大結界を破壊したことにより、隠しスキル【光耐性】が修得可能になりました!』
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~

仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。  そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。   しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。   ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。   武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」  登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。   これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...