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4章。聖王都の攻略
36話。聖者ヨハン、カイの策にはまり重傷を負う
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【聖者ヨハン視点】
「ま、まさか大結界が破壊されるとは……! こうなったら、一刻も早く逃げなくてはなりませんね」
王城で火災が発生し、守備兵が対応に追われていました。
聖女の大結界は決して破れないと高を括っていた王城の者たちは、泡を喰っています。
「聖者ヨハン殿! 魔王軍が城壁を越えてきていますぞ! こ、こんなことは、あなたの預言にはなかったのでは……!? どう責任を取るおつもりですか!?」
「ええい、邪魔です!」
私は行く手を遮った大臣のひとりを、突き飛ばしました。大臣は頭を柱に叩きつけられて昏倒しますが、知ったことではありません。
私は聖女コレットを幽閉した部屋の扉を、勢いよく開けました。
「くくくっ、【時の聖女】さえ手元にあれば、まだ私にはチャンスがある! こんな国など、どうなってもよろしい!」
「……やはり、この騒ぎはカイが来たのですね!」
コレットは強い輝きに満ちた目を私に向けました。
大結界を展開することを強要された彼女は、すっかりやつれていましたが、希望を取り戻したようです。
「私を連れて逃げるつもりでしょうけど、そうはいきません。私はここで、あの人を待ちます!」
「あなたの意思など関係ありませんよ、【時の聖女】様。あなたは、ただ私に利用されるだけの道具に過ぎません。そう、繰り返し教育して差し上げたでしょう? また痛い目に合いたいのですか?」
私はあざ笑いました。
自由意思の一部を奪う【聖縛鎖(ホーリーチェイン)】の魔法をかけられたコレットは、激痛に耐えかね、実に従順になってくれました。
気丈に振る舞っていても、しょせん人間は痛みには屈するしかないのです。
「さあ、来なさい。時間がありません。勇者アレスを迎撃に向かわせていますが、あの魔王カイのことだ。いつここにやってくるか、わかりませんからね」
2週目の世界に入っているという優位性は、やはりかなりのモノだと痛感させられました。
単純な戦闘能力の高さだけでなく、私の能力や性格まで知りつくされているとなると、マトモにやりあっても勝ち目はありません。
しかし、聖女コレットが人質となっていれば、さすがに手を出せないでしょう。
「お断りします。【聖壁(ホーリー・ウォール)】!」
コレットの腕を掴もうとすると、光の障壁が出現し、私を弾き飛ばしました。
「なにぃいい!?」
まさかこの娘、激痛に苛まれながらも、光魔法を使ったのですか?
そんなことは、不可能なハズ……!
「『魔王カイと戦うことに全面的に協力せよ。利敵行為の一切を禁じる』それが、ヨハン殿が私にかけた【聖縛鎖(ホーリーチェイン)】の制約です。今の状況がおわかりですか? あなたは、味方を見捨てて、反魔王の旗頭である私に逃げろとおっしゃっています」
凛とした様子で、コレットは私を睨みつけました。
「魔王が迫ってきているというのに、自分だけ逃げだそうとする裏切り者の聖者ヨハン。聖王国軍の勝利のため、私がこの場にてあなたを断罪します!」
「ちっ……! 小賢しい小娘が!」
まさか、私が強要した制約に、このような落とし穴があろうとは……うかつでした。
敵前逃亡する私を処罰するのは、利敵行為には当たらないのです。
「聖者である私を断罪するとは、片腹痛いですね! いいでしょう。では力尽くでも……」
「【七星牙】(セプテントリオン)!」
「なッ!?」
コレットの手から、7つの光の矢が同時に放たれました。流星のごとく飛来した光の矢は、私の魔法障壁を紙のように貫いて、身体をえぐります。
「ぎゃあああッ!? こ、こんな高度な光魔法を、いつの間にぃいいい!?」
激痛にのたうちながらも、私は必死に回復魔法を自身にかけます。
「あなたのおかげですよ、ヨハン殿。あなが、昼夜関係なく、大結界を展開することを命じてくれたおかげで、私は急激にレベルアップできたのです」
くっ……教皇の手が直接届かない場所で、【時の聖女】を育てようとした私の計画が、裏目に出るとは。
おのれ、小娘めぇえええ!
「あなたを倒せば、【聖縛鎖(ホーリーチェイン)】の呪いも解けます……覚悟してください」
コレットは静かな怒りを込めて言い放ちます。
「くくくっ、それは私を殺すということですか? 敵にさえ手を差し伸べるお優しい聖女様にそんなことができますかね?」
私はメガネを押しながら、ほくそ笑みました。
「……できます。私の愚かさが、カイと聖王国軍の衝突という災厄を招いてしまいました。カイの『聖者ヨハンは信用ならない』という言葉を信じていれば、こんなことには……!」
コレットは決意をあらわにした目で、私を射抜きました。
「あなたを生かしておけば、もっと大勢の人が命を落とし、不幸になるでしょう。2週目の世界を目指す、あなたにとってこの世界の人々など、どうでも良いかも知れませんが……私もカイも、あなたに利用されて殺された人々も、みんな生きているのですよ?」
「世迷い言を。この聖者ヨハンに……聖堂騎士団を束ね、数々の悪魔や異端者を狩ってきたこの私に、あなたごとき小娘が本気で勝てると思っているのですか?」
私はコレットを威圧しました。
しかし、コレットは毛ほどの動揺も見せませんでした。
「……勝てます。私はあなたを殺すことにためらいはありませんが、あなたは私を殺すことはできない。違いますか?」
「ちっ! 生意気な小娘ですね」
図星でした。
魔王カイならともかく、たかが15歳の小娘に、こうまで翻弄されるとは、屈辱以外のなにものでもありません。
仕置きも兼ねて、コレットを半殺しにして連れ出すしかありませんね。
多少強くなったとはいえ、しょせんは虫も殺したことが無いようなお嬢様。戦闘経験なら、私の方が圧倒的に上です。格の違いを思い知らせてやりましょう。
「聖者ヨハン様! 大変です、聖王陛下が至急、参上せよと!」
その時、聖堂騎士団の騎士隊長のひとりが、やってきました。
魔王カイの討伐に向かわせたものの、部隊を全滅させて逃げ帰ってきた情けない男です。
「今はそれどころではありません。ちょうど良かった、あなたも加勢しなさい! 聖女様がご乱心され、私を殺そうとしているのです!」
「ハッ! 加勢いたします。聖女コレット様に」
騎士隊長は私の腹にロングソードを突き刺しました。
へっ……?
「ぎゃ、ぎゃあああッ、痛い、痛い! 血が、私の血がぁああああ!?」
「あ、あなたは……?」
「申し遅れました聖女コレット様。私は魔王カイ様より【魔王軍の幹部】のクラスを賜った、あのお方の忠実なる下僕です。あなた様を守るように仰せつかっています」
騎士隊長は唖然とするコレットに、うやうやしくお辞儀しました。
「ま、まさか大結界が破壊されるとは……! こうなったら、一刻も早く逃げなくてはなりませんね」
王城で火災が発生し、守備兵が対応に追われていました。
聖女の大結界は決して破れないと高を括っていた王城の者たちは、泡を喰っています。
「聖者ヨハン殿! 魔王軍が城壁を越えてきていますぞ! こ、こんなことは、あなたの預言にはなかったのでは……!? どう責任を取るおつもりですか!?」
「ええい、邪魔です!」
私は行く手を遮った大臣のひとりを、突き飛ばしました。大臣は頭を柱に叩きつけられて昏倒しますが、知ったことではありません。
私は聖女コレットを幽閉した部屋の扉を、勢いよく開けました。
「くくくっ、【時の聖女】さえ手元にあれば、まだ私にはチャンスがある! こんな国など、どうなってもよろしい!」
「……やはり、この騒ぎはカイが来たのですね!」
コレットは強い輝きに満ちた目を私に向けました。
大結界を展開することを強要された彼女は、すっかりやつれていましたが、希望を取り戻したようです。
「私を連れて逃げるつもりでしょうけど、そうはいきません。私はここで、あの人を待ちます!」
「あなたの意思など関係ありませんよ、【時の聖女】様。あなたは、ただ私に利用されるだけの道具に過ぎません。そう、繰り返し教育して差し上げたでしょう? また痛い目に合いたいのですか?」
私はあざ笑いました。
自由意思の一部を奪う【聖縛鎖(ホーリーチェイン)】の魔法をかけられたコレットは、激痛に耐えかね、実に従順になってくれました。
気丈に振る舞っていても、しょせん人間は痛みには屈するしかないのです。
「さあ、来なさい。時間がありません。勇者アレスを迎撃に向かわせていますが、あの魔王カイのことだ。いつここにやってくるか、わかりませんからね」
2週目の世界に入っているという優位性は、やはりかなりのモノだと痛感させられました。
単純な戦闘能力の高さだけでなく、私の能力や性格まで知りつくされているとなると、マトモにやりあっても勝ち目はありません。
しかし、聖女コレットが人質となっていれば、さすがに手を出せないでしょう。
「お断りします。【聖壁(ホーリー・ウォール)】!」
コレットの腕を掴もうとすると、光の障壁が出現し、私を弾き飛ばしました。
「なにぃいい!?」
まさかこの娘、激痛に苛まれながらも、光魔法を使ったのですか?
そんなことは、不可能なハズ……!
「『魔王カイと戦うことに全面的に協力せよ。利敵行為の一切を禁じる』それが、ヨハン殿が私にかけた【聖縛鎖(ホーリーチェイン)】の制約です。今の状況がおわかりですか? あなたは、味方を見捨てて、反魔王の旗頭である私に逃げろとおっしゃっています」
凛とした様子で、コレットは私を睨みつけました。
「魔王が迫ってきているというのに、自分だけ逃げだそうとする裏切り者の聖者ヨハン。聖王国軍の勝利のため、私がこの場にてあなたを断罪します!」
「ちっ……! 小賢しい小娘が!」
まさか、私が強要した制約に、このような落とし穴があろうとは……うかつでした。
敵前逃亡する私を処罰するのは、利敵行為には当たらないのです。
「聖者である私を断罪するとは、片腹痛いですね! いいでしょう。では力尽くでも……」
「【七星牙】(セプテントリオン)!」
「なッ!?」
コレットの手から、7つの光の矢が同時に放たれました。流星のごとく飛来した光の矢は、私の魔法障壁を紙のように貫いて、身体をえぐります。
「ぎゃあああッ!? こ、こんな高度な光魔法を、いつの間にぃいいい!?」
激痛にのたうちながらも、私は必死に回復魔法を自身にかけます。
「あなたのおかげですよ、ヨハン殿。あなが、昼夜関係なく、大結界を展開することを命じてくれたおかげで、私は急激にレベルアップできたのです」
くっ……教皇の手が直接届かない場所で、【時の聖女】を育てようとした私の計画が、裏目に出るとは。
おのれ、小娘めぇえええ!
「あなたを倒せば、【聖縛鎖(ホーリーチェイン)】の呪いも解けます……覚悟してください」
コレットは静かな怒りを込めて言い放ちます。
「くくくっ、それは私を殺すということですか? 敵にさえ手を差し伸べるお優しい聖女様にそんなことができますかね?」
私はメガネを押しながら、ほくそ笑みました。
「……できます。私の愚かさが、カイと聖王国軍の衝突という災厄を招いてしまいました。カイの『聖者ヨハンは信用ならない』という言葉を信じていれば、こんなことには……!」
コレットは決意をあらわにした目で、私を射抜きました。
「あなたを生かしておけば、もっと大勢の人が命を落とし、不幸になるでしょう。2週目の世界を目指す、あなたにとってこの世界の人々など、どうでも良いかも知れませんが……私もカイも、あなたに利用されて殺された人々も、みんな生きているのですよ?」
「世迷い言を。この聖者ヨハンに……聖堂騎士団を束ね、数々の悪魔や異端者を狩ってきたこの私に、あなたごとき小娘が本気で勝てると思っているのですか?」
私はコレットを威圧しました。
しかし、コレットは毛ほどの動揺も見せませんでした。
「……勝てます。私はあなたを殺すことにためらいはありませんが、あなたは私を殺すことはできない。違いますか?」
「ちっ! 生意気な小娘ですね」
図星でした。
魔王カイならともかく、たかが15歳の小娘に、こうまで翻弄されるとは、屈辱以外のなにものでもありません。
仕置きも兼ねて、コレットを半殺しにして連れ出すしかありませんね。
多少強くなったとはいえ、しょせんは虫も殺したことが無いようなお嬢様。戦闘経験なら、私の方が圧倒的に上です。格の違いを思い知らせてやりましょう。
「聖者ヨハン様! 大変です、聖王陛下が至急、参上せよと!」
その時、聖堂騎士団の騎士隊長のひとりが、やってきました。
魔王カイの討伐に向かわせたものの、部隊を全滅させて逃げ帰ってきた情けない男です。
「今はそれどころではありません。ちょうど良かった、あなたも加勢しなさい! 聖女様がご乱心され、私を殺そうとしているのです!」
「ハッ! 加勢いたします。聖女コレット様に」
騎士隊長は私の腹にロングソードを突き刺しました。
へっ……?
「ぎゃ、ぎゃあああッ、痛い、痛い! 血が、私の血がぁああああ!?」
「あ、あなたは……?」
「申し遅れました聖女コレット様。私は魔王カイ様より【魔王軍の幹部】のクラスを賜った、あのお方の忠実なる下僕です。あなた様を守るように仰せつかっています」
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