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4章。聖王都の攻略
37話。聖者ヨハン、堕ちるところまで堕ちる
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【聖者ヨハン視点】
「う、裏切り者ぉ! この私を……聖教会を裏切り、魔王の配下となるとは……地獄の業火に焼かれよぉおおおッ!」
私はよろめきながらも、必死に回復魔法を腹部にかけます。早く止血しなければ、命に関わります。
ま、まさか、まだ城内に裏切り者が潜んでいたとは……
「我々を見捨てて、ご自分だけコレット様と逃げだそううとしたヨハン様も、立派な裏切り者ではないですか? 魔王カイ様は、こうなることを見越して、私にコレット様の護衛を任されたのです」
なっ……私の行動が、カイに完全に読まれていた?
屈辱に、私は歯軋りしました。
「ええっと、あなたは、カイの配下なのですか……?」
「ハッ! 聖女コレット様のお噂は耳にしております。ご自分の敵すら救おうとした立派なお方だと。あなた様の手を汚す必要はありません。聖者ヨハンは、私が討ちます。そうすれば、私は【魔将軍】に取り立ててもらえるんだ!」
裏切り者の騎士隊長は、喜々として剣を構えました。
「舐めるなぁ! 私は聖者ヨハン。神に選ばれし、神の代弁者です。この私が、この私が、こんなところで死ぬなど……神に対する冒涜以外の何物でもありません!」
私は【閃光】の魔法を、騎士隊長に放ちます。
目を焼く強烈な光に相手が怯んだ隙に、部屋の外に飛び出しました。
腹の傷が深く、回復に時間がかかっています。今は、とにかく時間を稼がなくては……
「聖者ヨハン様! お父様がお呼びですわ。すぐに聖堂騎士団を率いて、魔王軍の迎撃に出て欲しいと!」
その時、息を切らせて私の目の前やってきたのは、この国の王女アンジェリカ様でした。まだ14歳の金髪碧眼のかわいらしい少女です。
「くはッ! これは運が向いてきましたよ!」
「きゃあッ!? えっ、な、何をなさるのですか?」
私は王女を羽交い締めにし、短剣をその首筋に突き付けました。
「ヨハン殿、ご自分が何をしているのか、わかっているのですか!?」
追いかけてきたコレットが、絶句しました。
「もちろんです。王女様のお命を助けたれば、コレット様、大人しく私とご同行願えますか? そこの裏切り者の騎士隊長! あなたは自害しなさい」
「......はぁ? 私は今や魔王カイ様の配下。姫君の命より、魔王様の命令を優先します。っていうか、お前のパワハラにはうんざりしていたんだよ、ヨハン!」
騎士隊長は私に個人的か恨みがあったようで、ためらいなく剣を振り上げました。
「ダメです! 姫様の身を危険にさらしては……!」
「なっ、しかし、コレット様!?」
それをコレットが身を挺して止めてくれました。
くくくっ、コレットとアンジェリカ王女は、仲の良い友人ですからね。
ああっ、麗しきかな友情! 必ず止めてくれると信じていましたよ。
「判決死刑! 【聖矢(ホーリーアロー)】!」
騎士隊長の心臓を、私は光の矢で貫きました。
ヤツは死体となって崩れ、コレットも余波で床に転がります。
「きゃああああッ! いやぁあああ!」
「まったく血を見るのに慣れていない姫君は、これだから困りますね。耳障りです。黙りなさい」
泣き喚くアンジェリカ王女の首を短剣で浅く突いてやると、彼女は大人しくなりました。白い首筋に血の線が流れ、コレットも顔色を失います。
「くくくっ、この私を殺す覚悟はあっても、ご友人を死なせる覚悟は無いでしょう? さあ、私のエスコートを受けていただきますよ、コレット様」
「……姫様に刃を向けたあなたは重罪人です。カイだけでなく、聖王国からも追われる立場になりますよ」
「ふんっ。どうせ、この国は魔王カイによって滅ぼされます。なにより、私は2週目の世界に行けさえすれば、後のことなど、どうでも良いですからね? 必要となれば、王女様を殺すことにもためらいはありません」
「……ひっ」
アンジェリカ王女は小さな悲鳴を噛み殺しました。
「しかし、コレット様が大人しく従ってくだされば。私を2週目の世界に連れて行ってくだされば、王女様のお命を助けて差し上げても良いですよ? なにしろ、私は慈悲深い聖者ですからね。クハハハハッ!」
「くぅ……ッ!」
コレットは悔しさに唇を噛み締めました。
「そら、ハイ。と素直に頷きなさい。ではないと、このかわいい王女様の指を一本一本、切り落としていきますよ? なに、ご安心ください。聖者の力をもってすれば、すぐに回復! 何回でも拷問が楽しめますからね」
「あぁああああっ、た、助けてコレット……」
アンジェリカ王女は、ボロボロと大粒の涙をこぼします。いいですね。実に保護欲をそそられる姿です。
「ああっ、王女様は、もう心が折れてしまわれたようです。これでは、実際に拷問を始めたら、心が壊れてしまうかも知れませんね? おかわいそうに、ご友人に見捨てられてしまうとは……」
「ひ、卑怯者! あなたには人の心はないのですか、聖者ヨハン!」
「クハハハッ! そんなモノに囚われるから、あなたは2度も屈するのですよ、コレット様? 良いことを教えてあげましょう。正義は勝つのです。勝った者が正義なのです!」
勝利の笑い声を上げた私を、飛来した黒い雷が叩きました。
「はぎゃああああッ!?」
全身が痺れ、思わず王女の身体を手放してしまいます。
「コレットぉおおお!」
アンジェリカ王女は大泣きしながら、コレットに抱き着きました。
「おのれぇえええ! 何者ですか、この聖者ヨハンの邪魔をするのは!?」
「ヨハン、そんなに2週目の世界に行きたいのか。それなら、俺が連れて行ってやる」
目の前の空間が歪み、銀髪の少女を連れた魔王カイが姿を現しました。
バ、バカな。魔王カイは軍勢の先頭に立って、聖王国軍と戦っているハズ。いくら何でも、やってくるのが早すぎます。
「カイ!?」
コレットが歓喜の声を上げました。
「う、裏切り者ぉ! この私を……聖教会を裏切り、魔王の配下となるとは……地獄の業火に焼かれよぉおおおッ!」
私はよろめきながらも、必死に回復魔法を腹部にかけます。早く止血しなければ、命に関わります。
ま、まさか、まだ城内に裏切り者が潜んでいたとは……
「我々を見捨てて、ご自分だけコレット様と逃げだそううとしたヨハン様も、立派な裏切り者ではないですか? 魔王カイ様は、こうなることを見越して、私にコレット様の護衛を任されたのです」
なっ……私の行動が、カイに完全に読まれていた?
屈辱に、私は歯軋りしました。
「ええっと、あなたは、カイの配下なのですか……?」
「ハッ! 聖女コレット様のお噂は耳にしております。ご自分の敵すら救おうとした立派なお方だと。あなた様の手を汚す必要はありません。聖者ヨハンは、私が討ちます。そうすれば、私は【魔将軍】に取り立ててもらえるんだ!」
裏切り者の騎士隊長は、喜々として剣を構えました。
「舐めるなぁ! 私は聖者ヨハン。神に選ばれし、神の代弁者です。この私が、この私が、こんなところで死ぬなど……神に対する冒涜以外の何物でもありません!」
私は【閃光】の魔法を、騎士隊長に放ちます。
目を焼く強烈な光に相手が怯んだ隙に、部屋の外に飛び出しました。
腹の傷が深く、回復に時間がかかっています。今は、とにかく時間を稼がなくては……
「聖者ヨハン様! お父様がお呼びですわ。すぐに聖堂騎士団を率いて、魔王軍の迎撃に出て欲しいと!」
その時、息を切らせて私の目の前やってきたのは、この国の王女アンジェリカ様でした。まだ14歳の金髪碧眼のかわいらしい少女です。
「くはッ! これは運が向いてきましたよ!」
「きゃあッ!? えっ、な、何をなさるのですか?」
私は王女を羽交い締めにし、短剣をその首筋に突き付けました。
「ヨハン殿、ご自分が何をしているのか、わかっているのですか!?」
追いかけてきたコレットが、絶句しました。
「もちろんです。王女様のお命を助けたれば、コレット様、大人しく私とご同行願えますか? そこの裏切り者の騎士隊長! あなたは自害しなさい」
「......はぁ? 私は今や魔王カイ様の配下。姫君の命より、魔王様の命令を優先します。っていうか、お前のパワハラにはうんざりしていたんだよ、ヨハン!」
騎士隊長は私に個人的か恨みがあったようで、ためらいなく剣を振り上げました。
「ダメです! 姫様の身を危険にさらしては……!」
「なっ、しかし、コレット様!?」
それをコレットが身を挺して止めてくれました。
くくくっ、コレットとアンジェリカ王女は、仲の良い友人ですからね。
ああっ、麗しきかな友情! 必ず止めてくれると信じていましたよ。
「判決死刑! 【聖矢(ホーリーアロー)】!」
騎士隊長の心臓を、私は光の矢で貫きました。
ヤツは死体となって崩れ、コレットも余波で床に転がります。
「きゃああああッ! いやぁあああ!」
「まったく血を見るのに慣れていない姫君は、これだから困りますね。耳障りです。黙りなさい」
泣き喚くアンジェリカ王女の首を短剣で浅く突いてやると、彼女は大人しくなりました。白い首筋に血の線が流れ、コレットも顔色を失います。
「くくくっ、この私を殺す覚悟はあっても、ご友人を死なせる覚悟は無いでしょう? さあ、私のエスコートを受けていただきますよ、コレット様」
「……姫様に刃を向けたあなたは重罪人です。カイだけでなく、聖王国からも追われる立場になりますよ」
「ふんっ。どうせ、この国は魔王カイによって滅ぼされます。なにより、私は2週目の世界に行けさえすれば、後のことなど、どうでも良いですからね? 必要となれば、王女様を殺すことにもためらいはありません」
「……ひっ」
アンジェリカ王女は小さな悲鳴を噛み殺しました。
「しかし、コレット様が大人しく従ってくだされば。私を2週目の世界に連れて行ってくだされば、王女様のお命を助けて差し上げても良いですよ? なにしろ、私は慈悲深い聖者ですからね。クハハハハッ!」
「くぅ……ッ!」
コレットは悔しさに唇を噛み締めました。
「そら、ハイ。と素直に頷きなさい。ではないと、このかわいい王女様の指を一本一本、切り落としていきますよ? なに、ご安心ください。聖者の力をもってすれば、すぐに回復! 何回でも拷問が楽しめますからね」
「あぁああああっ、た、助けてコレット……」
アンジェリカ王女は、ボロボロと大粒の涙をこぼします。いいですね。実に保護欲をそそられる姿です。
「ああっ、王女様は、もう心が折れてしまわれたようです。これでは、実際に拷問を始めたら、心が壊れてしまうかも知れませんね? おかわいそうに、ご友人に見捨てられてしまうとは……」
「ひ、卑怯者! あなたには人の心はないのですか、聖者ヨハン!」
「クハハハッ! そんなモノに囚われるから、あなたは2度も屈するのですよ、コレット様? 良いことを教えてあげましょう。正義は勝つのです。勝った者が正義なのです!」
勝利の笑い声を上げた私を、飛来した黒い雷が叩きました。
「はぎゃああああッ!?」
全身が痺れ、思わず王女の身体を手放してしまいます。
「コレットぉおおお!」
アンジェリカ王女は大泣きしながら、コレットに抱き着きました。
「おのれぇえええ! 何者ですか、この聖者ヨハンの邪魔をするのは!?」
「ヨハン、そんなに2週目の世界に行きたいのか。それなら、俺が連れて行ってやる」
目の前の空間が歪み、銀髪の少女を連れた魔王カイが姿を現しました。
バ、バカな。魔王カイは軍勢の先頭に立って、聖王国軍と戦っているハズ。いくら何でも、やってくるのが早すぎます。
「カイ!?」
コレットが歓喜の声を上げました。
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