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 大満足の食事を終えた後、満たされた腹を抱え椅子に座りボーッと燃え続ける炭を眺める。


 改めて、すごい事態に巻き込まれてしまったもんだなと考える。
 あれが無ければ俺は今、元々の目的地のキャンプ場にいるんだなと始まり、本当は父さんと行くはずだったんだろうと続き、父さんどうして……と泣きそうになって来たのに気付いて慌てて片付けを始める。

 もしやと思い使った調理器具や皿に対して「洗浄」と念じてみれば油汚れもスッキリと綺麗になる。
 あと、車内のゴミ箱で出来るなら俺も魔法で出来るのではと、ゴミやまだ燃えていた炭に「消滅」を念じると成功したのでかなり早く片付けが終わった。まほうってしゅごい。


 片付けも終わったので、気持ちが沈む様な事を考えなくていい様にシャワーを浴びて早めに寝ると決める。
 馬車後方の観音開き出来るドアを開けポータブル浴槽を出して外に設置。中に入った上で簡易シャワーを引っ張り出して浴びる。排水は魔法が頑張ってくれる。便利!
 面倒臭いしこんな所で見られる心配は無いだろうとシャワーテントを使わずにいたが、全裸で野外は開放的過ぎた。次からはちゃんとしようと思う。
 着替えは恐る恐るTシャツと短パンにしてみたら変化なかったので寝る時のみは許されている模様。釈然としないが余計な事を言ってもっと酷い格好にさせられたらたまらないので受け入れる。いのちだいじに。


 寝るためにバンクベッドに上がろうとして気付く。シャワーを浴びている間にそこがアシュマルナにより魔改造され空間が広がっておりサイドテーブルとキングサイズベッドが置いてあった。ただのロフト部屋……。
 確かにバンクベッドは天井まで余裕が少ないから圧迫感があって、後々不満が出る可能性あったとはいえここまでするのか。絶対文句言わせないマン。
 有り難いんだけど、なんだかなあと思いつつベッドに入って寝心地良さそうだと横になった瞬間寝落ちして朝だった。
 起きた時一瞬意味がわからなかったよ。寝付く前に色々考えなくてよかったけどさ、このベッド怖い、怖いよ。




++++++




 すごすごと下へ降りて「洗浄」「乾燥」しておいた例の服に着替えている時に、前よりも肌が白くなっている事と爪とか手先がめちゃくちゃ綺麗になっている事に気付いたが、もう諦めた。
 段々神々しくなっていく俺は一体どこへ向かうのか。この先の道中嫌な予感しかしない。


 気を取り直して、朝食を作る。
 IHコンロにフライパンを置いてスイッチオン。少量の油を入れ熱し卵を二つ割り入れ空いたスペースにベーコンと悩んだがウインナーを置き、ごく少量の水を入れて蓋をする。
 その間にバゲットをスライスする。昨日切って半端になってたバゲットは一本分に復活していた。ついでに昨日の肉も冷蔵庫内に復活していたのを確認。気にしたら負け。
 水が無くなるくらいに蓋を開ければ綺麗な目玉焼きの完成。
 袋入りのカットサラダを盛った皿に移し空いたスペースでウインナーをもう少し焼く。
 それも皿に移したら軽くフライパンを拭きバゲット入れて焼く。トースターが無いのでこれで。
 ドレッシングにバター・粒マスタードやケチャップなんかも用意し、あとはマグカップにインスタントコーヒーを入れ魔法でお湯を入れれば朝食は完成。
 車内だけは異世界感無いなと思いながら淡々と食べる。食べ終わったら魔法で綺麗にして片付け終了。



「さて、そろそろ出発してみるか」

 でも、馬車とか運転どうするんだろう、というか外に御者台が無かった気がすると思い出した。
 車内前方にはフロントガラスもそのままのキャンピングカーの運転席があるので、一応、そこに移動してみるとカーナビが起動し『目的地を設定してください』と表示された。

「いや、町の名前とか知らんし」

 近くの町の冒険者ギルドに行けって事だったので冒険者ギルドで施設検索かけてみたら、百キロほど先にあるララタスという町が一番近かったのでそこに設定。
 設定すると『出発しますか? はい・いいえ  自動運転 オン・オフ』と出てきたので「はい」と「オン」を選ぶと馬車が勝手に進み出した。

 何でもありだな、アシュマルナ……。
 ここまでくるとこの先何か変な事でもさせられるんじゃないだろうかと戦々恐々とするも、あいつプライド高いからただ俺に文句言わせたくないだけだろうなと思い直す。



「まずは冒険者登録か……」

 目の前に広がる見慣れない景色を見ながら呟く。
 身分証のためとはいえ冒険者とはなんだかおかしな事になったもんだ。
 でもまあ、俺の目的はただの旅行で宝探しとか冒険する訳じゃないし……、いいかな。


「よし、のんびり楽しんで行こう!」


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