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「おい、これ割れないよな?! お前の手が下に在ってもくっそ怖いんだけど!!」
『割れぬ』
「ホントかよ……? それ信じるからなマジで」
先刻あの何とも言えない不思議な感覚から抜け出すために勢いよく光るシャボン玉に触れた所、一瞬だけクラッと意識が遠退き、気が付けば光るシャボン玉に包まれプカプカと浮いていた。
勿論自分がその状況を認識した瞬間に驚きの声を上げようとしたけれど、時を同じくして自分の目に映った”外”が物凄く衝撃的で一気に全て吹っ飛び声すら出て来ないまましばし放心。訳が判らなさ過ぎて頭の中が宇宙にでも飛んで行ったのかと思うくらいだった。
で、全く以て理解が出来ない光景にただただ放心の最中にアシュマルナから、アシュマルナが原寸大である事、ここが自身の仕事部屋である事を教えられた。
そう、目に映ったのは巨大なアシュマルナの顔で……。まあ、理解した途端ギャーッ?!だのワーッ!?だの何やってんだー!!!って一頻り騒ぐよねっていう。
そして、その驚きも一旦落ち着いたのが現在。
色取り取りの花が咲き誇るファンタジー世界にありがちな神殿っぽい場所に区画分けされた池みたいなのが何個かあり、空中にはアンティーク調の鏡がいっぱい浮かんでいる空間にてアシュマルナの手のひらの上、多分3メートル(体感)くらいで俺もプカプカと浮いている。
遥か下の地面(?)が見えない様にという配慮なのかシャボン玉の下に手を添えてくれているけれど、割れたら真っ逆さまに落ちるんじゃないかという恐怖はある訳で……
「――あ、でも割れても自分で浮かべばいいだけか」
俺ってば魔法で空中浮遊出来るんだった。それなら何も怖がる事はないな、うん。
どうも生前基準では有り得なさ過ぎる状況だと『解決策→魔法』に辿り着くのも早いかもしれない。全部そっちにブチ込んでしまえ的に。思考停止。
『そもそも割れるという物ではない。それに実際には体は持って来ておらぬからな』
「え?」
『意識だけ連れて来た。割れた所で落ちていくものなど無い』
「何言ってんだコイツ」
おい、説明不足だぞパパ。うっかり心の声が駄々洩れになっちゃっただろうが。こればかりはちゃんと説明してくれ。
『あの入れ物はここに対応しておらぬ』
「うん?」
入れ物って俺の(現在の)体の事?考えられるのはそれしかないからそうなんだろうけども。
「対応? ……してないから、意識だけ抜き出したって事?」
『そうだな。そうした事に他にも理由はあるが、それは知らなくて良い』
「う、うん」
知らなくていい事は多分俺が知りたくない余計な事なんだろうからスルーしてその他を訊くと、光るシャボン玉は簡単に言えば”ここ”で俺の意識が過ごしやすい様に、ちゃんと体がある様に俺に見せる役割及び転送装置みたいな物だそうで。
意識を連れてくる云々は実際には夢を見せている様な感じらしく、俺が”ここ”で特別何かが出来る訳でもないそう。出来る事はアシュマルナの仕事を眺めるかまったりお茶でも飲んで喋るかくらいっぽい。実際飲めはしないんだろうけど。
自分の体が見える見えないに関しては夢扱いなんで、見えても見えなくてもって話だけど、見えた方が有難いかな。気分的に。
「で、今回はそれがうまくいくか実験の為に連れて来た、と?」
『まあ、そんな所か』
「ふーん」
光るシャボン玉の仕様については判った。判ったが。
「これに至った経緯は?」
そもそも、そこだよ、そこ!と何かが出来る訳でもないらしいのに何故だとアシュマルナに訊ねてみれば
『当初は考えていなかったが、お前には必要かもしれぬと思ったまでだ』
「必要?」
『変わるものに心を痛め目を背けたくなり、変わらぬものを求める時もあろうかと思ってな』
「うん??」
そういう時に俺が自分の意志でいつでもここに来れる様に、あの空き部屋に光るシャボン玉を置いておくと。あの部屋、本当は違う使い方をしたかったっぽいけどこっちを優先したらしい。ふむ?
なんだかよく判んないけどソランツェの同伴は可能なのは有難い。なんだかよく判んないけど。
『変わるものの終わりは時の流れの中に紛れさせるのもよかろうという話だ』
「あ……」
あー……そっか。
俺を見ながらあの穏やかな優しい表情で話すアシュマルナを見て何が言いたいかが判った。
昨日の俺のライアスの事に対する発言から、アシュマルナなりに考えてくれたんだろう。ライアスに限らずアルミオやイルムとか他の人達は俺達と”違う”から……。
『何もする事は出来ぬが廻る様を見る事は出来るからな』
++++++
『戻るぞ』
声を掛けられて返事をする前に、俺の意識は例の空き部屋に残していた体へと戻っていた。
いつものサイズのアシュマルナに横抱きにされていた状態で驚いたが、それに対して俺が何かを言う事もその間も無くすぐに下ろしてくれた。あー、原寸大より今のサイズが落ち着く。
つーか、向こうに行っている間はこの体の状態はどうなってんだろう。まあ、変な事になってなけりゃ別にいいんだけど。
「ありがとな」
今回は実験なのでこちら側の時を止めていたそうだから大丈夫だけど、実際は時の流れの違う向こう側に体感で数時間も居れば戻った時に全てが知らないものに様変わりしているのが現実。
鈍くさせる、とでも言えばいいのか、それが俺にとって良いのか悪いのか現時点では判らないし、用意してくれたこれを本当に使うか使わないかも判らないけど、ただただ虚ろで不安定だった俺を知っているから心配してくれたのかな思うと”見てくれている”事が嬉しくて、
『どうあってもお前は私の可愛い愛子……』
やはり変えられぬのだ、と撫でられる頬もやっぱり嫌じゃなかった。
『割れぬ』
「ホントかよ……? それ信じるからなマジで」
先刻あの何とも言えない不思議な感覚から抜け出すために勢いよく光るシャボン玉に触れた所、一瞬だけクラッと意識が遠退き、気が付けば光るシャボン玉に包まれプカプカと浮いていた。
勿論自分がその状況を認識した瞬間に驚きの声を上げようとしたけれど、時を同じくして自分の目に映った”外”が物凄く衝撃的で一気に全て吹っ飛び声すら出て来ないまましばし放心。訳が判らなさ過ぎて頭の中が宇宙にでも飛んで行ったのかと思うくらいだった。
で、全く以て理解が出来ない光景にただただ放心の最中にアシュマルナから、アシュマルナが原寸大である事、ここが自身の仕事部屋である事を教えられた。
そう、目に映ったのは巨大なアシュマルナの顔で……。まあ、理解した途端ギャーッ?!だのワーッ!?だの何やってんだー!!!って一頻り騒ぐよねっていう。
そして、その驚きも一旦落ち着いたのが現在。
色取り取りの花が咲き誇るファンタジー世界にありがちな神殿っぽい場所に区画分けされた池みたいなのが何個かあり、空中にはアンティーク調の鏡がいっぱい浮かんでいる空間にてアシュマルナの手のひらの上、多分3メートル(体感)くらいで俺もプカプカと浮いている。
遥か下の地面(?)が見えない様にという配慮なのかシャボン玉の下に手を添えてくれているけれど、割れたら真っ逆さまに落ちるんじゃないかという恐怖はある訳で……
「――あ、でも割れても自分で浮かべばいいだけか」
俺ってば魔法で空中浮遊出来るんだった。それなら何も怖がる事はないな、うん。
どうも生前基準では有り得なさ過ぎる状況だと『解決策→魔法』に辿り着くのも早いかもしれない。全部そっちにブチ込んでしまえ的に。思考停止。
『そもそも割れるという物ではない。それに実際には体は持って来ておらぬからな』
「え?」
『意識だけ連れて来た。割れた所で落ちていくものなど無い』
「何言ってんだコイツ」
おい、説明不足だぞパパ。うっかり心の声が駄々洩れになっちゃっただろうが。こればかりはちゃんと説明してくれ。
『あの入れ物はここに対応しておらぬ』
「うん?」
入れ物って俺の(現在の)体の事?考えられるのはそれしかないからそうなんだろうけども。
「対応? ……してないから、意識だけ抜き出したって事?」
『そうだな。そうした事に他にも理由はあるが、それは知らなくて良い』
「う、うん」
知らなくていい事は多分俺が知りたくない余計な事なんだろうからスルーしてその他を訊くと、光るシャボン玉は簡単に言えば”ここ”で俺の意識が過ごしやすい様に、ちゃんと体がある様に俺に見せる役割及び転送装置みたいな物だそうで。
意識を連れてくる云々は実際には夢を見せている様な感じらしく、俺が”ここ”で特別何かが出来る訳でもないそう。出来る事はアシュマルナの仕事を眺めるかまったりお茶でも飲んで喋るかくらいっぽい。実際飲めはしないんだろうけど。
自分の体が見える見えないに関しては夢扱いなんで、見えても見えなくてもって話だけど、見えた方が有難いかな。気分的に。
「で、今回はそれがうまくいくか実験の為に連れて来た、と?」
『まあ、そんな所か』
「ふーん」
光るシャボン玉の仕様については判った。判ったが。
「これに至った経緯は?」
そもそも、そこだよ、そこ!と何かが出来る訳でもないらしいのに何故だとアシュマルナに訊ねてみれば
『当初は考えていなかったが、お前には必要かもしれぬと思ったまでだ』
「必要?」
『変わるものに心を痛め目を背けたくなり、変わらぬものを求める時もあろうかと思ってな』
「うん??」
そういう時に俺が自分の意志でいつでもここに来れる様に、あの空き部屋に光るシャボン玉を置いておくと。あの部屋、本当は違う使い方をしたかったっぽいけどこっちを優先したらしい。ふむ?
なんだかよく判んないけどソランツェの同伴は可能なのは有難い。なんだかよく判んないけど。
『変わるものの終わりは時の流れの中に紛れさせるのもよかろうという話だ』
「あ……」
あー……そっか。
俺を見ながらあの穏やかな優しい表情で話すアシュマルナを見て何が言いたいかが判った。
昨日の俺のライアスの事に対する発言から、アシュマルナなりに考えてくれたんだろう。ライアスに限らずアルミオやイルムとか他の人達は俺達と”違う”から……。
『何もする事は出来ぬが廻る様を見る事は出来るからな』
++++++
『戻るぞ』
声を掛けられて返事をする前に、俺の意識は例の空き部屋に残していた体へと戻っていた。
いつものサイズのアシュマルナに横抱きにされていた状態で驚いたが、それに対して俺が何かを言う事もその間も無くすぐに下ろしてくれた。あー、原寸大より今のサイズが落ち着く。
つーか、向こうに行っている間はこの体の状態はどうなってんだろう。まあ、変な事になってなけりゃ別にいいんだけど。
「ありがとな」
今回は実験なのでこちら側の時を止めていたそうだから大丈夫だけど、実際は時の流れの違う向こう側に体感で数時間も居れば戻った時に全てが知らないものに様変わりしているのが現実。
鈍くさせる、とでも言えばいいのか、それが俺にとって良いのか悪いのか現時点では判らないし、用意してくれたこれを本当に使うか使わないかも判らないけど、ただただ虚ろで不安定だった俺を知っているから心配してくれたのかな思うと”見てくれている”事が嬉しくて、
『どうあってもお前は私の可愛い愛子……』
やはり変えられぬのだ、と撫でられる頬もやっぱり嫌じゃなかった。
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