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 アシュマルナの用は済んだっぽいのでパパッと転移でダイニングまで戻ってから、俺が今悩んでいる事を俺の頭上付近でふよふよ浮くアシュマルナに訊いてみる。

「鍛錬場と演習場造りたいんだけど、演習場をどんな感じにすればいいのかなって思ってんだよな」

 見た目も何も拘らず単純に作るなら、漫画とかで出て来る舞台?バトルステージ?みたいなのをポンと出してと簡単だけど、悩みどころは付加的なもの。
 ソランツェ達が派手な魔法使っても壊れたりしない様にしたいのと、ソランツェの相手にライアスは可哀想だからそこら辺をどうにかしたいってやつ。

「能力のバランス取る為にライアスには開始からオートで強化魔法かけたり、反対にソランツェ弱体化させるとかってちょっと考えたけど」

 ソランツェは興味深いとか言って受け入れそうだけど、ライアスのプライド的にはどうなんだとも思うし元々ソランツェとやりたくないって言ってるしな。そもそもソランツェって俺の能力の影響受けてるから弱体化なんて出来るのか不明だし。能力的にも俺がソランツェの相手するってのが一番良いんだろうが、そんな選択肢は一切無い。どうあっても絶対に。

「ふわっとしてる言い方だけど、なんつーか良さげな戦闘訓練が出来る仕様にしたいんだよな」
『ふむ』

 何かいいアイディア無いか?と促してみれば

『魔物でも用意すればよかろう』
「は?」

 いや、何言ってんの。

「魔物?」
 
 魔物って用意出来るものなの……か?いや、アシュマルナなら問答無用で出来るだろうけども?

『まあ、実物でなくとも幻でいいだろう』
「幻?」
『各々の力量に合わせて調整しやすい』
「あー……」

 ゲームでよくあるストーリーの進行具合に合わせたレベルの敵しかフィールド上に出てこなかったり中ボスもそんな感じみたいなやつ?違う?
 いや、でも、それはいいかもしれない。

「肩慣らしの雑魚から実力拮抗、ちょい苦戦するみたいな段階的難易度設定にしておけば良さそう――って、ソランツェはほぼ無敵だしちょっと考えるけども……」

 あと、ソランツェには関係ないけどライアスに訓練で大怪我とかはして欲しくないと思うので、ダメージ受けた時の痛みも幻覚みたいに、戦闘中は感じはするけど実際には無傷っていう感じ……一試合終わる度に回復させて、というよりリセットっつーか、なかった事に出来る設定にしたい。
 なんていうか、演習場自体を幻?幻覚……幻惑?幻想?……えーっと、全部まとめて言えそうな似た感じのやつ、なんかあったよな?

「なんだっけ、仮想空間って感じ? 仮想現実? で、ソランツェ達も幻の体っていうか、さっきの俺みたいな意識だけで動いてる様な感じにしたら良さそうかも」

 演習場自体を仮想空間で作ったら、魔法も遠慮なく使えるし、設定次第で色々出来ると思う。
 幻の体なら俺の能力の影響で「訓練とは?ほぼ無敵なのに??」状態なソランツェを、本来の能力値に調出来るから訓練してるって感じをちゃんと味わわせてあげられるだろうし、ソランツェがどうしてもライアスと戦いたいって言う場合にも、ソランツェに合わせた能力値調整したライアスの幻で我慢してもらえばいいかもしれないし。うん、良い事ばかりかも。

「どうよ? いける?」
『ああ』

 俺の質問に好きにやれば良いって感じで俺の頭を撫でてるけどそうじゃない。抗議の意味も込めて撫でる手をガシッと掴んでブンブン振り回してみるもニコニコ。むむむ。まあ、俺のするに任せて腕を振り回されてるアシュマルナもちょっと面白いけど~~~

「問題は俺に”そういう設定の仮想空間”って創れるのかって事をだな?」
『問題ない』
「――補完してくれるって事でOK?」

 返事の代わりにニコって笑ったっつー事は、OKって事だな。よし。










++++++










「という事で、出来ました」
「そうか」
「はい」

 謎物体ハウスを上方向に増築して、どう見てもほぼトレーニングジムな”鍛錬場”と酸素カプセルみたいなカプセルベッドを設置した”演習場”を造ったので二人へお披露目。

 トレーニングマシンの『負荷物足りないんじゃないの問題』は個人に見合った負荷が自動判別されて魔法による負荷が入る設定って事にした。
 一つ一つ使い方を軽く説明してあげると、初めは見慣れぬ物ばかりでいまいち反応が薄かった二人が微妙にそわそわしてて早く使いたそう。好きなんだな……鍛錬。

「見た事も無い物ばかりだが中々面白そうだ」
「実際に使ってみるのが楽しみですね」
「ああ」

 すぐにでもトレーニング始めたそうな二人には悪いが、まだあるのでお待ち頂きたい。こっちも気に入ってくれると信じてるぞ。

「あとは演習場なんだけど」

 鍛錬場の隣に造った部屋に二人を案内する。移動中、俺に向けられるライアスの視線には「お前本当に作ったのかよ」みたいな意味がある気がする。大丈夫だから任せろ。お前はちゃんと生きられるから!

 ここなんだけど、と鍛錬場の隣の部屋に続くドアを開ける。
 ”仮想空間に行ける”目的のカプセルベッドを三つ並べてあるだけの、鍛錬場と比べると狭い部屋。

「演習場?」
「ここがですか?」

 どう見たって演習場とは言えない場所に、二人ともコイツ何言ってんだ?っていう予想通りな反応なので、ここにあるのは戦闘訓練が出来る仮想の空間へ行ける魔道具だと説明。困った時の魔道具扱い。いやあ、便利。何でもかんでも魔道具って言えばいい。うん。程度も内容も違うがこの世界の人達が何でもかんでも魔法で済まそうとする気持ちが判ってきたかもしれない。へへっ。

「ここに寝ると自動的に仮想空間へ行ける様になってるんだ。 まあ、実際やってみる方が判り易いよな」

 ソランツェの分は1番、ライアスは2番とベッドを設定してあって二人に各々カプセルベッドに入る様に促して、自分も乗り込む。俺はとりあえず3番。説明用。

「横になったら目を閉じてルーム0へ移動って言えば移動するから」
「ああ、判った」
「はい」

 ルーム0は複数名用。二人でタッグを組んで練習したいって場合にはここ。ルーム1,2,3はベッドと連携した個人用として設定しておいた。

「アシュマルナはそのまま来れるんだよな?」

 二人が指示通りにしたのを確認した後、俺が二人に説明しているのを何も言わず後ろに付いてきてただ見ていたアシュマルナにも一応声をかける。

『うむ』
「よし、じゃあルーム0へ!」




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