上 下
10 / 14

10.(*)

しおりを挟む
名前を呼ぶとそのまま手を引かれ、昼間と同じように膝の上に抱き込まれた。

「また寂しそうな顔してるな」

「それは……」

「俺じゃあ慰めにならないか?」

そんなことない。

黙って首を振り、ジュードの背に両腕を回しす。
出会ったばかりなのにジュードには甘えてばかりだ。

「ミヤ……もう少し、ここに居たい。いいか?」

こくんと頷くと、良かったと言って耳に口付けられた。熱い口唇に身体が震える。

「んッーー」

僕の反応を確認しながら、ジュードはキスを下に落として行く。耳朶を食まれ、首筋を吸い上げられ、鎖骨を舐められると我慢出来なくなり甘ったる声を上げてしまった。

「ひゃぁんーーん、ん……」

慰めるってこういうこと?
ジュードの真意が分からない。でも、心地良い人肌に抗う気は起きない。

「ジュー、ド……」

どこまでするの? という問いは声にならなかった。
羞恥と僅かな期待に潤む瞳でジュードの深い紺色を見つめる。

「ミヤ」

熱に浮かされたような低い声。返事しようと開いた口を塞がれた。口唇をやわやわと甘く噛まれ、吸い上げられる。
ジュードから与えられる熱と刺激に翻弄され、腰が徐々に重くなって行く。

このままではさすがにまずい。本当に止まれなくなる。

「ジュード……もう……」

背中に回していた腕を解き、ジュードの胸を押す。

これ以上はーー

「嫌か?」

「そう、じゃないけど……」

「ミヤ……帰りたくない」

僕だって帰って欲しくないけど。

いい大人だから告白してお付き合いしてから、なんて拘りがあるわけじゃないけど。

でも。

「部屋をまだ片付けてないから。その……今夜は……」

「手伝う。それがダメならうちへ連れて帰りたい」

「ええっと……」

「ミヤに寂しい思いをして欲しくないんだ」

その言葉に胸を締めつけられた。

ジュードには同情や慰めで触れて欲しくない。
ジュードとするならこんな慰めてもらった流れとかじゃなくて、ちゃんと向き合いたい。こんな中途半端な気持ちでしたくない。

気持ちがジュードに向き始めているのが分かる。だからこそ、今はまだ。
ちゃんと元カレのことを整理してから、寂しいからとか慰めるとかそういうことじゃなく、ジュードのことだけを考えてしたい。

辿々しくそう伝えると、ジュードは少しだけ残念そうな顔したけど、分かったと言って解放してくれた。

「ミヤの気持ちが落ち着くまで待つ。がっついてすまなかった」

そう言ってジュードは僕を膝から下ろし、立ち上がった。出入り口までの短い距離を並んで歩く。

「……いえ、僕こそ。あの、本当に嫌とかじゃないですし」

「……そんな帰れなくなるような顔をしないでくれ。必死に我慢してるんだ」

勘弁してくれとばかりにジュードは片手で顔を覆った。

「すみません……」

「明日、出勤前にも寄っていいか?」

「はい……朝ごはん作って待ってます」

楽しみにしてる、と僕の頬にキスをし、ジュードは帰って行った。

しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...