血と死神と女子高生

橘スミレ

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第二十話 前日

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 あの後姉さんはもも、メロン、パイナップルのゼリーを二口ずつ食べた。血液しか口にすることができなかったあの姉さんが、ゼリーを食べることができたのだ。
 ちなみに姉さんは二口ずつ食べただけでお腹いっぱいになってしまったので残りは死神ちゃんが食べた。
「ありがとう。おいしかったよ」
 姉さんが幸せそうに笑っている。
「よかった。また、作るね」
 死神ちゃんは守れるかわからない約束をした。
「お皿洗ってくるわ」
 死神ちゃんはそう言って立ち上がり、キッチンへ向かう。
 姉さんはしばらくごろごろと寝転がっていたが、ふと思い立ったように死神ちゃんのところへ行き後ろからハグした。
「どうしたの?」
「なんでも無い」
 姉さんは死神ちゃんの肩に顔を埋めている。仲の良い姉妹のような恋人のような行動だ。
「なら姉さんは病み上がりだし、早く寝た方がいいんじゃない?」
「そうね。死神ちゃん、ありがとう。大好きよ」
 姉さんはそう言って、横から死神ちゃんの頬ににキスをした。顔を真っ赤にした死神ちゃんを置いて、姉さんは寝室へと立ち去ってしまった。
「姉さん……」
 しばらくの間、死神ちゃんはその場を動けなかった。

「あ! 姉さんに死体の処理方法聞くの忘れてたわ……」
 ようやく落ち着いた死神ちゃんが気づくも、もう遅い。すでに姉さんは夢の中だ。
「明日こそ姉さんに聞かないとね……」
 死体はすでに腐敗が始まっている。ひとまず魂を回収し、届けることにした。

「ここを曲がって……あったわ! はやく回収場の人に渡さなきゃ」
 死神ちゃんは駆け足で移動する。回収場は混み合っている。死神ちゃんはしぶしぶ列に並んで順番を待つ。
「今日のです」
「受け取りました。そういえば例の件、調子はどうですか?」
 受付の女性が問う。何かと噂になっているようだ。
「なんとか行けそうです」
「それは良かった。頑張ってくださいね」
「はい! ありがとうございます」
 受付の女性に見送られながら死神ちゃんは部屋へ帰った。

 寝室では姉さんが静かに眠っていた。ぐっすり眠っており、ちょっとやそっとやおきそうにない。
 死神ちゃんはそっと姉さんの傷んだ髪に口付けをした。感想している唇を指先で撫でると急に明日が怖くなった。
 姉さんに布団を掛け直し、猫のように音を立てず息すら止めて部屋から出て、ゆっくりと扉を閉める。そのままそっとリビングまで歩き、ソファに寝転がって、ようやく息を吐き出した。
「大丈夫。きっと上手くいく。大丈夫、大丈夫」
 死神ちゃんは自分に言い聞かせるようにいう。
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