史上最強の料理人(物理)~役立たずと言われパーティを追放されましたが、元帝国最強騎士なのは内緒です~

枯井戸

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懐かしのヴィルヘルム

閑話 嘘と方便

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「──なんでウソついたの」


 カミールがガレイトを見上げて言う。
 ガレイトは困ったように頭を掻いた。


「なんでウソついたの、おじさん」

「……聞いてくれ、カミール」

「きいてるよ」

「カミールにイヤな思いをさせたのは悪いと思ってる。だが、それは決してカミールを騙そうとしているわけじゃないんだ」

「じゃあ、どういうこと?」

「ど、どういう……? ……そうだな、もし本当のことを話せば、悪戯にカミールを混乱させてしまかもしれない、と思ったんだ」

「……なにいってるか、わからないんだけど」

「──だよな。私もさっぱりだ。どういうことなんですか、ガレイトさん」


 イルザードはカミールの両肩に手を置くと、ニヤニヤと楽しそうにガレイト見た。


「くっ、覚えておけよ……! いいか、カミール。仮にもし、俺が騎士団の団長だと打ち明けたら、カミールはどう思う?」

「どうも思わないよな? カミール少年?」

「どうもおもわないけど……」

「う、嘘をつけ! 嘘を! イルザードも余計なことを言うんじゃない!」

「ガレイトさんじゃないんですから、少年が嘘をつくわけないじゃないですか。なあ? カミール少年?」

「……ウソじゃないし」


 ガレイトは無言でイルザードを指さす。
 イルザードは「ははは……」と笑うと、そのままカミールから離れていった。
 ガレイトはため息をつくと、その場にしゃがみ込み、カミールと視線の高さを合わせる。


「……さっきの、カミールの言葉の真偽はともかく、あの時の俺は、カミールに余計な情報は与えるべきじゃないと思ったんだ」

「どういうこと?」

「あの時、俺たちはイカダを一生懸命作っていただろう?」

「うん」

「つまり、島を出られるかどうか、大事な時だったんだ。……だから俺は、カミールにはイカダ作りに集中してほしかったんだよ」

「イカダに……」

「そう。イルザードが騎士であると知ったとき、カミールの顔には少なからず、動揺の色が浮かんでいた……ように見えた」

「ぼくが……」

「そのうえ、俺の正体を知ってしまったら、とてもじゃないけど集中できなくなる……と、俺は考えたんだ。だから、あえて言わなかった」

「じゃあ、ぼくのために……?」

「いいや、みんなのために、だ。カミール」

「そうなんだ……だから、ウソをついたんだね……」

「いや、俺は、嘘はついていないぞ」

「え?」

「もう何度か聞いていると思うが、俺の今の肩書きは料理人だ」

「ほんとうに……?」

「ああ、まだ見習いだがな。騎士だったのは過去の俺だ」

「りょうりにん……」

「だから……カミール。騎士だった・・・ことを、隠していたことについては、あやま──」

「ううん、いい。……なんとなく、そのりゆうも、わかったきがする」

「カミール……」

「だから、はやくつくれるといいね、おいしいりょうり!」

「……ああ。ありがと──」

「だって、おじさんのりょうり、すごくまずいし!」

「……そっか。だよな……まずいよな……」
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