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事故の詳細
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「ところで、どうしてそんなに『幽霊鬼ごっこ』に関心を持っているの?」
自転車で移動しながら私は榎本さんに質問した。
「だって、今まさにあなたたちが巻き込まれてるんでしょう?」
そう聞かれてすぐには返事ができなかった。
どうして知っているのか、驚きで言葉が続かない。
「そんなに驚くことじゃないよ。普段図書室で見たことのない子が、いきなり私に話かけてきたんだもん。それで『幽霊鬼ごっこ』のことを聞いてきたんだから、なにかあったのかなって思うじゃん」
「そっか。うん、榎本さんの考える通りだよ。私たち、幽霊鬼ごっこに巻き込まれてるの。だけど、詳しく説明はできない。説明しようとしたら喉から言葉が出なくなるんだよね」
図書室で榎本さんに鬼について説明しようとしたときのことを思い出す。
あの時、喉の奥にある言葉が誰かの手によって押し込められてしまったような、そんな感覚があった。
「それじゃ、誰にも相談できてないの?」
「うん……。どうにか調べてはいるんだけどね」
驚いている榎本さんにそう答えた。
榎本さんは関心したように頷いている。
「それで、実際に森慎吾が出てきたの?」
「それは……」
由紀が説明しようとして中途半端に言葉が途絶えた。
見ると戸惑った表情を浮かべている。
これも、他の人には伝えられなくなっているみたいだ。
「わかった。話せないってことはそういうことなんだよね?」
「うん」
由紀は頷くのが精一杯だ。
それから自転車をこいで10分くらいで市立図書館に到着した。
中に入るとしっかり冷房がきいていて、汗がすーっと引いていくのを感じる。
炎天下の中ずっと自転車で移動していた私達は一旦席に座って落ち着くことにした。
「そういえば昨日は倉田さんに会えたの?」
ふと思い出したように榎本さんが聞いてきた。
「うん。森慎吾とはそれほど仲良くなかったって。だけど川での事故についてなにかあったんじゃないかって、教えてくれた」
「そっか。じゃあ、私が調べてたのと同じところまで来てたんだね」
榎本さんは1人で調べているはずだけれど、すごい情報収集力を持っているみたいだ。
元々怖い話が好きみたいだから、そういう仲間が多いのかも知れない。
「それじゃ、その川の事故について調べてみようか」
榎本さんが立ち上がったので、私と由紀もその後をついていった。
だけど郷土資料の本棚を通り過ぎてしまった。
「どこへ行くの?」
由紀が声をかけると榎本さんが含み顔で振り向いた。
「紙の資料を調べるのは時間がかかるから、パソコンを借りるんだよ」
そう言ってカウンターまで行くと、図書館司書の女性が笑顔で受け答えしている。
元々顔見知りなのか、笑い声が聞こえてきた。
「はい。これから1時間パソコンを借りれることになったから、行こう」
榎本さんの手には(1)と書かれたクリアファイルが持たれている。
これは1番のパソコンの使用許可を取ったという証明になるらしい。
「すごいね。パソコンの貸し出しがあるなんて、知らなかった」
「目立たない場所に置いてあるから、知ってる人が少ないんだよ。いつ来ても待ち時間なく使えるから、便利だよ」
学校の図書室だけじゃなく市立図書館にもよく来ているようで関心する。
榎本さんについて図書館の奥のスペースへ向かうと、そこに衝立で仕切られただけのパソコンスペースがあった。
全部で3台あるけれど、誰も使っていない。
榎本さんはその一番右側のパソコンの前に座った。
慣れた様子でキーボードを叩いて、10年前の川の事故についての記事を検索する。
「ほら、出てきた」
すぐに何件かヒットして、そのひとつの表示させる。
「キズナ川で小学生流され、死亡。死んだのは森慎吾くん、11歳」
榎本さんが記事の内容を読み上げていく。
私と由紀はかたずを飲んで記事を見つめた。
画面上にはカラー写真で森慎吾の写真も貼られていて、それは間違いなく放課後に出てくる幽霊で間違いなかった。
「下流まで流されて見つかったとき、周りには文房具も一緒にあったんだって。森慎吾はなにかの原因で川にカバンを落としてしまって、それを拾うために自分から川に入ったって書かれてる」
「川にカバンが落ちた……?」
その記事に違和感があって私は首を傾げる。
男子生徒同士でふざけあって川になにかを投げ入れることはあると思う。
だけど、森慎吾はおとなしい性格だったようだし、毎日使わなきゃいけないカバンをふざけて落とすことはなさそうだ。
「やっぱり、イジメなのかな?」
イジメがあったのかもしれないという憶測が、一気に現実味を帯びてくる。
「そこまでは書かれてないからわからないなぁ。川に流されたことも、事故だったって書かれてるし」
「流されたことは事故だったかもしれないけど、カバンが川に落ちたのはイジメが原因だったのかも」
私は早口で言った。
「どうしてそう思うの?」
「それは……実は昨日の幽霊鬼ごっこで……」
そこまで言って言葉が詰まった。
直人が森慎吾を挑発したときのことを説明したいけれど、できない。
言葉がでなくなった私を見て榎本さんは察したように頷いた。
「この事件についてなにか触れたの? それで、幽霊からの反応があった?」
その質問に私と由紀は同時に頷いた。
そのとおりだ。
「それっていい反応? 悪い反応?」
「それが……怒らせちゃって」
緑鬼が制御を失ったように拳を振り下ろしていた光景が思い出される。
「怒らせた? まさか、幽霊を挑発するようなことを言ったの?」
「そうだね。そうだったかもしれない」
直人が昨日森慎吾へ向けて放った言葉はとても攻撃的だった。
「そんなことしちゃダメだよ。どんな幽霊でも話を聞いて欲しくて無念を晴らしたくて出てきてるんだから、まずは寄り添わなくちゃ」
「寄り添うって、そんなことができるの?」
由紀が聞くと、榎本さんは大きく頷いた。
「もちろん。だって、幽霊と接触できるなんて特別な存在なんだもん。相手の気持ちを聞いてあげることだって、きっとできるよ」
「森慎吾の気持ちを聞いてあげるってことだね?」
「そうだよ。だから次に幽霊鬼ごっこが始まったときには、挑発するんじゃなくて、話を聞いてみてあげて」
自転車で移動しながら私は榎本さんに質問した。
「だって、今まさにあなたたちが巻き込まれてるんでしょう?」
そう聞かれてすぐには返事ができなかった。
どうして知っているのか、驚きで言葉が続かない。
「そんなに驚くことじゃないよ。普段図書室で見たことのない子が、いきなり私に話かけてきたんだもん。それで『幽霊鬼ごっこ』のことを聞いてきたんだから、なにかあったのかなって思うじゃん」
「そっか。うん、榎本さんの考える通りだよ。私たち、幽霊鬼ごっこに巻き込まれてるの。だけど、詳しく説明はできない。説明しようとしたら喉から言葉が出なくなるんだよね」
図書室で榎本さんに鬼について説明しようとしたときのことを思い出す。
あの時、喉の奥にある言葉が誰かの手によって押し込められてしまったような、そんな感覚があった。
「それじゃ、誰にも相談できてないの?」
「うん……。どうにか調べてはいるんだけどね」
驚いている榎本さんにそう答えた。
榎本さんは関心したように頷いている。
「それで、実際に森慎吾が出てきたの?」
「それは……」
由紀が説明しようとして中途半端に言葉が途絶えた。
見ると戸惑った表情を浮かべている。
これも、他の人には伝えられなくなっているみたいだ。
「わかった。話せないってことはそういうことなんだよね?」
「うん」
由紀は頷くのが精一杯だ。
それから自転車をこいで10分くらいで市立図書館に到着した。
中に入るとしっかり冷房がきいていて、汗がすーっと引いていくのを感じる。
炎天下の中ずっと自転車で移動していた私達は一旦席に座って落ち着くことにした。
「そういえば昨日は倉田さんに会えたの?」
ふと思い出したように榎本さんが聞いてきた。
「うん。森慎吾とはそれほど仲良くなかったって。だけど川での事故についてなにかあったんじゃないかって、教えてくれた」
「そっか。じゃあ、私が調べてたのと同じところまで来てたんだね」
榎本さんは1人で調べているはずだけれど、すごい情報収集力を持っているみたいだ。
元々怖い話が好きみたいだから、そういう仲間が多いのかも知れない。
「それじゃ、その川の事故について調べてみようか」
榎本さんが立ち上がったので、私と由紀もその後をついていった。
だけど郷土資料の本棚を通り過ぎてしまった。
「どこへ行くの?」
由紀が声をかけると榎本さんが含み顔で振り向いた。
「紙の資料を調べるのは時間がかかるから、パソコンを借りるんだよ」
そう言ってカウンターまで行くと、図書館司書の女性が笑顔で受け答えしている。
元々顔見知りなのか、笑い声が聞こえてきた。
「はい。これから1時間パソコンを借りれることになったから、行こう」
榎本さんの手には(1)と書かれたクリアファイルが持たれている。
これは1番のパソコンの使用許可を取ったという証明になるらしい。
「すごいね。パソコンの貸し出しがあるなんて、知らなかった」
「目立たない場所に置いてあるから、知ってる人が少ないんだよ。いつ来ても待ち時間なく使えるから、便利だよ」
学校の図書室だけじゃなく市立図書館にもよく来ているようで関心する。
榎本さんについて図書館の奥のスペースへ向かうと、そこに衝立で仕切られただけのパソコンスペースがあった。
全部で3台あるけれど、誰も使っていない。
榎本さんはその一番右側のパソコンの前に座った。
慣れた様子でキーボードを叩いて、10年前の川の事故についての記事を検索する。
「ほら、出てきた」
すぐに何件かヒットして、そのひとつの表示させる。
「キズナ川で小学生流され、死亡。死んだのは森慎吾くん、11歳」
榎本さんが記事の内容を読み上げていく。
私と由紀はかたずを飲んで記事を見つめた。
画面上にはカラー写真で森慎吾の写真も貼られていて、それは間違いなく放課後に出てくる幽霊で間違いなかった。
「下流まで流されて見つかったとき、周りには文房具も一緒にあったんだって。森慎吾はなにかの原因で川にカバンを落としてしまって、それを拾うために自分から川に入ったって書かれてる」
「川にカバンが落ちた……?」
その記事に違和感があって私は首を傾げる。
男子生徒同士でふざけあって川になにかを投げ入れることはあると思う。
だけど、森慎吾はおとなしい性格だったようだし、毎日使わなきゃいけないカバンをふざけて落とすことはなさそうだ。
「やっぱり、イジメなのかな?」
イジメがあったのかもしれないという憶測が、一気に現実味を帯びてくる。
「そこまでは書かれてないからわからないなぁ。川に流されたことも、事故だったって書かれてるし」
「流されたことは事故だったかもしれないけど、カバンが川に落ちたのはイジメが原因だったのかも」
私は早口で言った。
「どうしてそう思うの?」
「それは……実は昨日の幽霊鬼ごっこで……」
そこまで言って言葉が詰まった。
直人が森慎吾を挑発したときのことを説明したいけれど、できない。
言葉がでなくなった私を見て榎本さんは察したように頷いた。
「この事件についてなにか触れたの? それで、幽霊からの反応があった?」
その質問に私と由紀は同時に頷いた。
そのとおりだ。
「それっていい反応? 悪い反応?」
「それが……怒らせちゃって」
緑鬼が制御を失ったように拳を振り下ろしていた光景が思い出される。
「怒らせた? まさか、幽霊を挑発するようなことを言ったの?」
「そうだね。そうだったかもしれない」
直人が昨日森慎吾へ向けて放った言葉はとても攻撃的だった。
「そんなことしちゃダメだよ。どんな幽霊でも話を聞いて欲しくて無念を晴らしたくて出てきてるんだから、まずは寄り添わなくちゃ」
「寄り添うって、そんなことができるの?」
由紀が聞くと、榎本さんは大きく頷いた。
「もちろん。だって、幽霊と接触できるなんて特別な存在なんだもん。相手の気持ちを聞いてあげることだって、きっとできるよ」
「森慎吾の気持ちを聞いてあげるってことだね?」
「そうだよ。だから次に幽霊鬼ごっこが始まったときには、挑発するんじゃなくて、話を聞いてみてあげて」
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