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張り切りすぎる
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この日のナンバーワンも安定のマキだった。
その後3位までの人気嬢が発表されてお開きとなった。
みんなてんでに帰っていくなか、日奈子は光と共に二階の住居へと向かう。
光がカードキーで鍵を開けてくれて中に入ると、日奈子は大きく息を吐き出した。
今日1日気を張っていたからどっと疲れが押し寄せてくる。
着替えもせずにそのままリビングのソファに座り込んでしまった。
体が重たくて心地よい疲労感に包まれている。
目を閉じればすぐにでも眠ってしまいそうだ。
「そのまま寝るなよ。せめて化粧は落とせ」
光は美容意識が高い。
化粧を落とさずに寝ると肌年齢が3歳歳を取ると信じているみたいだ。
日奈子は信じていなかったけれど、肌に悪いことには違いないので素直に洗面所へ向かった。
そして顔を洗おうとしたとき、ドレスの胸元に入れてあったチップの存在を思い出した。
そうだった。
これって光に報告しなきゃいけないんだよね。
「そういえば、今日チップをもらったの」
胸元から出した一万円札をテーブルの上に置く。
「どんな客から?」
「確か、リノさんのお客さんだったと思う」
「それなら田端さんか、それとも飯塚さんだな。わかった。そのチップはお前が持ってるといい」
そう言われて日奈子はホッとして一万円札を手に取った。
マキが言っていたとおりチップは嬢本人のものになるみたいだ。
日奈子はその1万円札を持って部屋へ戻ると、本棚の上に置いておいたお守りを手に取った。
これは日奈子が一人暮らしを始める時に母親が買ってきてくれたもので、赤色の布に金色で家内安全と刺繍されているものだった。
日奈子はお守り袋を開けるとその中に一万円札をいれた。
そして元通り袋の口をしめる。
「これでよし、と」
初めてのチップはこうして大切に保管されることになったのだった。
☆☆☆
「明日、私を席につかせてくれない」
お風呂から上がって完全にオフの状態になった日奈子は決心したように光へそう言った。
テレビの深夜番組を見ていた光は視線だけを日奈子にやって「急にどうした」と聞く。
「私、今ならできそうな気がする。お客さんを楽しませることとか、満足させること」
その言葉に光はふっと鼻で笑った。
その態度に日奈子はムッとするが、次の返事を待った。
「お前にはまだ早い。楽しませるなんてそんな簡単なことじゃない」
「それはわかってるよ! だけど今日チップをもらえて自身がついたっていうかさ、やれそうな気がするんだよね」
「お見送りだけで緊張して引きつり笑いになるのにか?」
その指摘にグッと言葉を失ってしまった。
そして始めて自分が引きつり笑いになっていたことを知った。
「それも、今日1日で慣れたから大丈夫だよ」
「明日もお見送りだけだ。次のステップに進むのはまだ早い」
「でもっ……!」
日奈子はお守りの袋をギュッと握りしめる。
きっとこの自信は長くは続かない。
今のタイミングを逃せばステップアップのチャンスを逃してしまうことになる。
だけどそれをどう伝えればいいかわからない。
日奈子の自信なんて信用に値するものでもないだろうし。
考え込んでしまった日奈子を見て光が盛大なため息を吐き出した。
「まぁ、それくらいの向上心があった方がこっちとしてはありがたいか」
「え?」
「明日、短時間だけ客についてみるか。他の嬢のヘルプとして」
ヘルプは本命の嬢の横についている、いわば盛り上げ役とか脇役だ。
それでも日奈子の顔がパッと輝いた。
「本当に!?」
「あぁ、だけどヘマしたらすぐに掃除に戻ってもらう」
「わかってる! ありがとう!」
日奈子は思わずその場の勢いで光に抱きついた。
光が大きく目を見開き、硬直する。
「おい、なにを……」
「そうと決まれば早く寝なきゃね! おやすみ!」
困惑している光に気がつくこともなく、そそくさと自分の部屋へ戻っていく日奈子。
そんな日奈子の後ろ姿を見送った光は、耳まで真っ赤に染まっていたのだった。
☆☆☆
翌日の出勤が楽しみすぎて日奈子は午前中に目を覚ましてしまった。
もう1度寝ようと思って目を瞑るけれど、なかなか根付くことができずに結局目をあけてしまう。
仕方ない。
まだ随分早いけれど起きて支度を始めよう。
そう決めてベッドから降りてリビングへ向かう。
当然、光はまだ眠っているようだ。
大きな音を立てないようにそっと洗面所へむかって温かいお湯で顔を洗う。
鏡にうつる自分の顔を確認してみると、少し口角が上がって自然と笑っているのがわかった。
今日始めてお客さんにつくことができる。
それが嬉しくて仕方ない。
でも、自分がこんな風にキャバクラの仕事を楽しみに感じるなんて、思ってもいなかった。
接客業は未経験だし不安と緊張しかないと思っていた。
それがチップをもらったことでここまで自分が変わるとは思ってもいなかった。
日奈子は鼻歌交じりに寝癖をなおして軽く化粧をした。
ノアールへ出るときには専用のメークをしないといけないから、今は簡単にファンデーションをつけるだけだ。
リビングへ戻り、まだ朝ごはんを作るにも早い時間だと確認すると、日奈子は雑巾を持って再び脱衣所へ向かった。
お湯で雑巾を濡らしてよく絞ってからリビングの壁をふき始める。
料理は全然していないようなのに、掃除はちゃんと行き届いているのが不思議だった。
日奈子が壁を拭き掃除してみてもほとんど汚れはつかない。
「どうやって掃除してるんだろう」
疑問に感じながらも一通りの拭き掃除を終えるころにはほどよく体が温まっていた。
外は寒々しい景色を加速させているけれど、こうして体を動かしていれば部屋の中なら暖房がいらないくらいだ。
続けて朝食作りに取り掛かった。
昨日食材を買い込んできたから、お味噌汁と鮭を焼く。
予約炊飯にしていたご飯はホカホカに炊きあがっていた。
「うーん、いい匂い」
炊きたてのご飯をかき混ぜながら日奈子はご満悦だ。
やがて鮭も焼けて準備が整った。
それでもまだ少し時間が早いようで光は起きてこない。
仕事で疲れている光を起こすわけにもいかず、日奈子はひとまず先に食べ始めることにした。
せっかく作ったのにご飯やおかずが冷めたらもったいない。
「これくらいの料理なら、まだ作れそう」
ネギをたっぷりいれたお味噌汁を飲んで日奈子は呟く。
お味噌の量もちょうどよかった。
長らくそこから離れていても、1度手で覚えたものはそう簡単には忘れないのかもしれない。
日奈子が半分ほど朝食を食べ終えたタイミングで、光が起き出してきた。
「なんだ、今日はやけに豪華だな」
「お腹へっちゃって」
日奈子が照れくさそうに答える。
今日も食欲は満点だった。
それにしてもごく普通の朝食を見て豪華だなんて、光は普段朝ごはんを食べないんだろうか。
「なんだ、掃除までしたのか?」
普段よりもピカピカに磨き上げられた室内を見て光も気がついたみたいだ。
「早く寝たら早く目が覚めちゃって、やることなかったから、つい」
「嬢として働くのは体力がいる。出勤前にこんなことしなくていいのに」
「でも私居候だし」
初任給をもらえるまではタダでここに暮らさせてもらうことになるんだ。
できるこがあるのなら、やっておきたいと思うのは当然のことだった。
だけど光は呆れたようなため息を吐き出した。
「出勤前にしっかり休憩しておくことだな」
「わかったわよ」
日奈子は渋々と言った様子で頷いたのだった。
☆☆☆
休憩しろと言われてもやはり気持ちが落ち着かなくてなかなかジッといれいられない。
少しはマキたちの接客の様子を見てきたし、お酒の継ぎ方やタバコの火の付け方などは光から教わっている。
それらを頭の中で何度も思い出して自分でライターの火をつけたり消したりして練習した。
「最初からうまくいくわけがないんだから、そんなに気合を入れるな」
と、出勤時間ギリギリまで釘を刺されてしまったくらいだ。
といっても、ヒナの最初の仕事はやはり掃除からだ。
他の嬢たちが出勤してくる前にある程度店内を綺麗にしておかないといけない。
「ヒナさんは仕事熱心ですね」
ボーイがヒナの仕事っぷりを見て関心したように声をかけてきた。
「今の私にはこれくらいのことしかできないもの」
その上居候ときている。
少しでも自分の存在意味を見出したくて、熱心にもなるというものだ。
「だけど水仕事はほどほどにしておかないと、手荒れが悪化しますよ」
ボーイはそう言うとヒナにハンドクリームを手渡してきた。
自分の指先を見てみると、起きてから部屋の掃除をして店内の掃除もしているため荒れが悪化しているのがわかった。
「ありがとう、全然気が付かなかった」
そう言ってありがたくハンドクリームを使わせてもらった。
「今はこれでいいかもしれないけど、お客さんにつくようになったら指先まで綺麗にしておかないと、嫌がる人もいます」
そう言われてヒナはハッとした。
もしかして光はそういうことも気にして、掃除なんてしなくていいと言ったのかもしれない。
マキの指先のことを思い出すと、確かに自分とは段違いで綺麗だ。
タバコに火をつける練習をしていたからわかる。
お客さんから見たら、荒れた手でタバコに火をつけられたり、お酌されるのは嫌かもしれない。
「そうだよね、気をつける」
☆☆☆
そしてとうとうその時がやってきた。
ボーイと共に並んで立ち、雑用をこなしていたところへ光がやってきた。
「ヒナ。3番テーブルにつけるか?」
そう聞かれてヒナはガバッと顔を上げた。
「は、はい!」
答えながら3番テーブルへ視線を向けると、そこにはおとなしそうな男性客がひとりで座っていた。
「あれ、誰もついてないんですか?」
「今他の嬢たちは手が離せないんだ。でも……」
光はそこまで言って不安そうな表情をヒナへ向けた。
ヒナがいきなり1人で席について大丈夫か、心配しているのがわかる。
ヒナは背筋を伸ばして満面の笑みを浮かべてみせた。
「大丈夫です! できます!」
「他の嬢が空くまでほんの10分間だ。その時間だけ話をつないでくれればいい」
たった10分なら、きっと大丈夫。
見たところおとなしそうな人だし、変に絡まれればすぐにボーイが来てくれるはずだ。
「わかりました」
ヒナは大きく頷いて3番テーブルへと向かったのだった。
「はじめまして、ヒナです」
教えられた通り、席へ座る前にお客さんよりも目を位置を低くして挨拶する。
その時に両手で自分の名刺を差し出した。
男性客はヒナを見てニッコリと笑うと両手で丁寧に名刺を受け取ってくれた。
それだけでホッとする。
お客さんの中には嬢の名刺も受け取らず、目を合わせない人がいるという。
少なくてもこの人はそういうタイプじゃないようだ。
「隣、いいですか?」
「もちろん、どうぞ」
男性が少し横へ避けてくれたので、ヒナはそこに座った。
お客さんとの距離は離れているのに、緊張で心音が相手に聞こえてしまうんじゃないかと不安になった。
そんな緊張をごまかしつつ、お客さんに温かいおしぼりを渡す。
「ありがとう。ヒナちゃんだっけ? 見たことない顔だね。新人さん?」
「は、はい! 今日始めて席について、それで……」
しどろもどろになって説明するヒナにお客さんは優しく微笑む。
「それじゃ僕がヒナちゃんの1番最初のお客さん?」
「そうです!」
「それは光栄だなぁ。それじゃ少しいいお酒をいれなきゃいけないかな」
「い、いえ、そんな」
申し訳無さから思わず拒否してしまいそうになり、思いとどまる。
ここはお客さんに甘えて高いお酒を入れてもらった方がいいんだっけ。
カズもそうしていたよね?
迷っている間にお客さんは勝手にお酒を注文してしまった。
「僕はね、釣りが大好きなんだ」
「釣り、ですか?」
「うん。子供の頃からよくおやんい連れて行かれてさ、川釣りも海釣りも趣味で毎週行ってるくらいなんだ」
「すごいですね! お上手なんですか?」
「そうでもないけどね。時々自家用ボートを出すときもある」
その言葉にヒナは目を丸くした。
自家用ボートを持っているなんて、やっぱりこの人もかなりのお金もちなんだろう。
全然そんな雰囲気ではないけれど、着ているスーツは上等なものだとわかる。
それからもお客さんは釣りの話を続けた。
ヒナは時折相槌を打ちながらも、よくわからない話題についていくので精一杯だ。
「ヒナちゃんは水族館とか行く?」
「あ、水族館なら時々行きますよ」
やっと自分でもりかいできる話題になったと思ってヒナの表情が和らぐ。
「水族館ってすごいんだよ。それぞれの魚の生態に合わせて環境を作っていてね……」
と、思ったらすぐに興味のない話題へと移ってしまった。
このお客さんはとにかく釣りの話と魚の話がしたいみたいだ。
ヒナは助けを求めるように周囲を見回す。
約束の10分はとうに過ぎているけれど、先輩たちが3番テーブルに来てくれる気配もない。
時間が長引いているんだろう。
ヒナの顔から次第に笑みが消えていく。
「ヒナちゃん聞いてる?」
興味のない話が長々と続いてついに眠気を感じはじめたとき、お客さんが顔を覗き込んできた。
「き、聞いてますよ」
慌てて返事をして、ふと目の前のグラスが空になっていることに気がついた。
いつの間に!
ヒナは慌ててグラスに新しい飲み物をついだ。
お客さんは「ありがとう」と、ひとこと言って美味しそうにそれを飲み干す。
よかった。
怒っていないみたいだ。
ヒナは気合を入れ直してお客さんの話しに耳を傾ける。
けれど同じような釣りの話ばかりをされてどうしても眠気が出てきてしまう。
ヒナはどうするべきか必死に頭をフル回転させた。
そして思い出したのはヒナの人生物語だった。
今私はヒナという人物を演じているのだ。
そう思うとスッと背筋が伸びた。
そして悲壮感がひしひしと体の内側から溢れ出してくる。
突然雰囲気の変わったヒナにお客さんが困惑した表情を浮かべた。
その瞬間、会話も途切れる。
今だ!
ヒナは思い切って自分から口を開いた。
「実は私、施設育ちなんです」
「え? そうなの?」
突然の告白にお客さんが驚いている。
ヒナは視線を下へ向けて悲しんでいる様子を演出した。
お客さんも黙って次の言葉を待ってくれている。
「そうなんです。傷心の顔も知らずに育ったの」
「そ、そうだったんだ。それは、大変だったね」
同情的な表情になったお客さんに対してヒナは悲しそうに頷いた。
「施設の環境もひどくて、お兄さんやお姉さんによくイジメられてたの。見ての通り私って小さくて貧弱でしょう? だから、さんざんターゲットにされてきたの」
「イジメか……」
お客さんがしかめっ面をしてお酒をグイッと飲み干した。
ヒナはタイミングを見計らって新しいお酒をつぐ。
お客さんは更にそれも飲み干して、新しいボトルを注文してくれた。
よし、イイ感じじゃない!?
どんどん酒が進むお客さんを見てヒナは自分の物語をどんどん披露していく。
「だけどこのノアールで仕事をしはじめて思ったんです。私はまだ頑張れるって」
すべて話し終えたヒナはふぅと大きくため息を吐き出した。
お客さんはさっきから無言でお酒を飲んでいる。
もう、ヒナの方を見てもいなかった。
心做しか不機嫌そうに見えるのは気のせいだろうか?
いや、でもちゃんと聞いてくれていたし……。
沈黙の時間が続いたとき、「遅くなってごめんねぇ!」と、他の嬢がやってきた。
ヒナはそっと立ち上がる。
「あれ、どうしたの?」
お気に入りの嬢が席へやってきても反応を見せない男性客に嬢がヒナへ視線を向けた。
ヒナは首を傾げて「どうされましたか?」と、男性客の方へ質問した。
すると男性客はようやく顔をあげて苦笑いをうかべ「いや……別になんでもないよ」と、気を取り直すように言ったのだった。
☆☆☆
「自分のことばかり話してどうする! あの客、完全に引いてたぞ!!」
男性客への接客はうまくいった。
そう思っていたヒナはすぐさま光に休憩室に呼び出され、説教を受けていた。
「え、でもあのお客さんちゃんと聞いてくれてたし……」
「ちゃんと聞いてたのは最初だけだろ! 後半はずっと酒を飲んでるだけで全然楽しそうじゃなかったじゃないか!」
そう言われればそうかもしれない。
ヒナは自分の話をすることで夢中になって、相手のことをよく見ていなかったのだ。
「それに、ああいう話はお客さんに話をふられて始めてするものだ。自分から不幸自慢してどうする!!」
げんこつが落ちてきそうな剣幕にヒナはビクリと縮こまる。
「そ、そんなの知らなくてっ」
「だからお前にはまだ早いって言ったんだ! 別のお客さんだったら怒って帰ってたかもしれないんだぞ!」
そう言われてゾッとした。
お気に入りの嬢が来る前に怒って帰らせてしまうなんて、絶対にやってはいけないことだ。
あのお客さんがヒナの話しに根気強く付き合ってくれたからこそ、嬢が戻ってくる時間まで店にいてくれたことになる。
ようやく、自分がしでかしてしまったことに気がついてヒナは青ざめた。
「わ、私、あのお客さんに謝ってくる」
「もうやめとけ」
店へ戻ろうとしなヒナを光は引き止めた。
そして大きなため息を吐き出す。
「お気に入りの嬢が機嫌を直したところなんだ。お前が出ていけばまた機嫌が悪くなるかもしれない」
光の冷たい言葉にヒナはなにも言えなくなってしまったのだった。
その後3位までの人気嬢が発表されてお開きとなった。
みんなてんでに帰っていくなか、日奈子は光と共に二階の住居へと向かう。
光がカードキーで鍵を開けてくれて中に入ると、日奈子は大きく息を吐き出した。
今日1日気を張っていたからどっと疲れが押し寄せてくる。
着替えもせずにそのままリビングのソファに座り込んでしまった。
体が重たくて心地よい疲労感に包まれている。
目を閉じればすぐにでも眠ってしまいそうだ。
「そのまま寝るなよ。せめて化粧は落とせ」
光は美容意識が高い。
化粧を落とさずに寝ると肌年齢が3歳歳を取ると信じているみたいだ。
日奈子は信じていなかったけれど、肌に悪いことには違いないので素直に洗面所へ向かった。
そして顔を洗おうとしたとき、ドレスの胸元に入れてあったチップの存在を思い出した。
そうだった。
これって光に報告しなきゃいけないんだよね。
「そういえば、今日チップをもらったの」
胸元から出した一万円札をテーブルの上に置く。
「どんな客から?」
「確か、リノさんのお客さんだったと思う」
「それなら田端さんか、それとも飯塚さんだな。わかった。そのチップはお前が持ってるといい」
そう言われて日奈子はホッとして一万円札を手に取った。
マキが言っていたとおりチップは嬢本人のものになるみたいだ。
日奈子はその1万円札を持って部屋へ戻ると、本棚の上に置いておいたお守りを手に取った。
これは日奈子が一人暮らしを始める時に母親が買ってきてくれたもので、赤色の布に金色で家内安全と刺繍されているものだった。
日奈子はお守り袋を開けるとその中に一万円札をいれた。
そして元通り袋の口をしめる。
「これでよし、と」
初めてのチップはこうして大切に保管されることになったのだった。
☆☆☆
「明日、私を席につかせてくれない」
お風呂から上がって完全にオフの状態になった日奈子は決心したように光へそう言った。
テレビの深夜番組を見ていた光は視線だけを日奈子にやって「急にどうした」と聞く。
「私、今ならできそうな気がする。お客さんを楽しませることとか、満足させること」
その言葉に光はふっと鼻で笑った。
その態度に日奈子はムッとするが、次の返事を待った。
「お前にはまだ早い。楽しませるなんてそんな簡単なことじゃない」
「それはわかってるよ! だけど今日チップをもらえて自身がついたっていうかさ、やれそうな気がするんだよね」
「お見送りだけで緊張して引きつり笑いになるのにか?」
その指摘にグッと言葉を失ってしまった。
そして始めて自分が引きつり笑いになっていたことを知った。
「それも、今日1日で慣れたから大丈夫だよ」
「明日もお見送りだけだ。次のステップに進むのはまだ早い」
「でもっ……!」
日奈子はお守りの袋をギュッと握りしめる。
きっとこの自信は長くは続かない。
今のタイミングを逃せばステップアップのチャンスを逃してしまうことになる。
だけどそれをどう伝えればいいかわからない。
日奈子の自信なんて信用に値するものでもないだろうし。
考え込んでしまった日奈子を見て光が盛大なため息を吐き出した。
「まぁ、それくらいの向上心があった方がこっちとしてはありがたいか」
「え?」
「明日、短時間だけ客についてみるか。他の嬢のヘルプとして」
ヘルプは本命の嬢の横についている、いわば盛り上げ役とか脇役だ。
それでも日奈子の顔がパッと輝いた。
「本当に!?」
「あぁ、だけどヘマしたらすぐに掃除に戻ってもらう」
「わかってる! ありがとう!」
日奈子は思わずその場の勢いで光に抱きついた。
光が大きく目を見開き、硬直する。
「おい、なにを……」
「そうと決まれば早く寝なきゃね! おやすみ!」
困惑している光に気がつくこともなく、そそくさと自分の部屋へ戻っていく日奈子。
そんな日奈子の後ろ姿を見送った光は、耳まで真っ赤に染まっていたのだった。
☆☆☆
翌日の出勤が楽しみすぎて日奈子は午前中に目を覚ましてしまった。
もう1度寝ようと思って目を瞑るけれど、なかなか根付くことができずに結局目をあけてしまう。
仕方ない。
まだ随分早いけれど起きて支度を始めよう。
そう決めてベッドから降りてリビングへ向かう。
当然、光はまだ眠っているようだ。
大きな音を立てないようにそっと洗面所へむかって温かいお湯で顔を洗う。
鏡にうつる自分の顔を確認してみると、少し口角が上がって自然と笑っているのがわかった。
今日始めてお客さんにつくことができる。
それが嬉しくて仕方ない。
でも、自分がこんな風にキャバクラの仕事を楽しみに感じるなんて、思ってもいなかった。
接客業は未経験だし不安と緊張しかないと思っていた。
それがチップをもらったことでここまで自分が変わるとは思ってもいなかった。
日奈子は鼻歌交じりに寝癖をなおして軽く化粧をした。
ノアールへ出るときには専用のメークをしないといけないから、今は簡単にファンデーションをつけるだけだ。
リビングへ戻り、まだ朝ごはんを作るにも早い時間だと確認すると、日奈子は雑巾を持って再び脱衣所へ向かった。
お湯で雑巾を濡らしてよく絞ってからリビングの壁をふき始める。
料理は全然していないようなのに、掃除はちゃんと行き届いているのが不思議だった。
日奈子が壁を拭き掃除してみてもほとんど汚れはつかない。
「どうやって掃除してるんだろう」
疑問に感じながらも一通りの拭き掃除を終えるころにはほどよく体が温まっていた。
外は寒々しい景色を加速させているけれど、こうして体を動かしていれば部屋の中なら暖房がいらないくらいだ。
続けて朝食作りに取り掛かった。
昨日食材を買い込んできたから、お味噌汁と鮭を焼く。
予約炊飯にしていたご飯はホカホカに炊きあがっていた。
「うーん、いい匂い」
炊きたてのご飯をかき混ぜながら日奈子はご満悦だ。
やがて鮭も焼けて準備が整った。
それでもまだ少し時間が早いようで光は起きてこない。
仕事で疲れている光を起こすわけにもいかず、日奈子はひとまず先に食べ始めることにした。
せっかく作ったのにご飯やおかずが冷めたらもったいない。
「これくらいの料理なら、まだ作れそう」
ネギをたっぷりいれたお味噌汁を飲んで日奈子は呟く。
お味噌の量もちょうどよかった。
長らくそこから離れていても、1度手で覚えたものはそう簡単には忘れないのかもしれない。
日奈子が半分ほど朝食を食べ終えたタイミングで、光が起き出してきた。
「なんだ、今日はやけに豪華だな」
「お腹へっちゃって」
日奈子が照れくさそうに答える。
今日も食欲は満点だった。
それにしてもごく普通の朝食を見て豪華だなんて、光は普段朝ごはんを食べないんだろうか。
「なんだ、掃除までしたのか?」
普段よりもピカピカに磨き上げられた室内を見て光も気がついたみたいだ。
「早く寝たら早く目が覚めちゃって、やることなかったから、つい」
「嬢として働くのは体力がいる。出勤前にこんなことしなくていいのに」
「でも私居候だし」
初任給をもらえるまではタダでここに暮らさせてもらうことになるんだ。
できるこがあるのなら、やっておきたいと思うのは当然のことだった。
だけど光は呆れたようなため息を吐き出した。
「出勤前にしっかり休憩しておくことだな」
「わかったわよ」
日奈子は渋々と言った様子で頷いたのだった。
☆☆☆
休憩しろと言われてもやはり気持ちが落ち着かなくてなかなかジッといれいられない。
少しはマキたちの接客の様子を見てきたし、お酒の継ぎ方やタバコの火の付け方などは光から教わっている。
それらを頭の中で何度も思い出して自分でライターの火をつけたり消したりして練習した。
「最初からうまくいくわけがないんだから、そんなに気合を入れるな」
と、出勤時間ギリギリまで釘を刺されてしまったくらいだ。
といっても、ヒナの最初の仕事はやはり掃除からだ。
他の嬢たちが出勤してくる前にある程度店内を綺麗にしておかないといけない。
「ヒナさんは仕事熱心ですね」
ボーイがヒナの仕事っぷりを見て関心したように声をかけてきた。
「今の私にはこれくらいのことしかできないもの」
その上居候ときている。
少しでも自分の存在意味を見出したくて、熱心にもなるというものだ。
「だけど水仕事はほどほどにしておかないと、手荒れが悪化しますよ」
ボーイはそう言うとヒナにハンドクリームを手渡してきた。
自分の指先を見てみると、起きてから部屋の掃除をして店内の掃除もしているため荒れが悪化しているのがわかった。
「ありがとう、全然気が付かなかった」
そう言ってありがたくハンドクリームを使わせてもらった。
「今はこれでいいかもしれないけど、お客さんにつくようになったら指先まで綺麗にしておかないと、嫌がる人もいます」
そう言われてヒナはハッとした。
もしかして光はそういうことも気にして、掃除なんてしなくていいと言ったのかもしれない。
マキの指先のことを思い出すと、確かに自分とは段違いで綺麗だ。
タバコに火をつける練習をしていたからわかる。
お客さんから見たら、荒れた手でタバコに火をつけられたり、お酌されるのは嫌かもしれない。
「そうだよね、気をつける」
☆☆☆
そしてとうとうその時がやってきた。
ボーイと共に並んで立ち、雑用をこなしていたところへ光がやってきた。
「ヒナ。3番テーブルにつけるか?」
そう聞かれてヒナはガバッと顔を上げた。
「は、はい!」
答えながら3番テーブルへ視線を向けると、そこにはおとなしそうな男性客がひとりで座っていた。
「あれ、誰もついてないんですか?」
「今他の嬢たちは手が離せないんだ。でも……」
光はそこまで言って不安そうな表情をヒナへ向けた。
ヒナがいきなり1人で席について大丈夫か、心配しているのがわかる。
ヒナは背筋を伸ばして満面の笑みを浮かべてみせた。
「大丈夫です! できます!」
「他の嬢が空くまでほんの10分間だ。その時間だけ話をつないでくれればいい」
たった10分なら、きっと大丈夫。
見たところおとなしそうな人だし、変に絡まれればすぐにボーイが来てくれるはずだ。
「わかりました」
ヒナは大きく頷いて3番テーブルへと向かったのだった。
「はじめまして、ヒナです」
教えられた通り、席へ座る前にお客さんよりも目を位置を低くして挨拶する。
その時に両手で自分の名刺を差し出した。
男性客はヒナを見てニッコリと笑うと両手で丁寧に名刺を受け取ってくれた。
それだけでホッとする。
お客さんの中には嬢の名刺も受け取らず、目を合わせない人がいるという。
少なくてもこの人はそういうタイプじゃないようだ。
「隣、いいですか?」
「もちろん、どうぞ」
男性が少し横へ避けてくれたので、ヒナはそこに座った。
お客さんとの距離は離れているのに、緊張で心音が相手に聞こえてしまうんじゃないかと不安になった。
そんな緊張をごまかしつつ、お客さんに温かいおしぼりを渡す。
「ありがとう。ヒナちゃんだっけ? 見たことない顔だね。新人さん?」
「は、はい! 今日始めて席について、それで……」
しどろもどろになって説明するヒナにお客さんは優しく微笑む。
「それじゃ僕がヒナちゃんの1番最初のお客さん?」
「そうです!」
「それは光栄だなぁ。それじゃ少しいいお酒をいれなきゃいけないかな」
「い、いえ、そんな」
申し訳無さから思わず拒否してしまいそうになり、思いとどまる。
ここはお客さんに甘えて高いお酒を入れてもらった方がいいんだっけ。
カズもそうしていたよね?
迷っている間にお客さんは勝手にお酒を注文してしまった。
「僕はね、釣りが大好きなんだ」
「釣り、ですか?」
「うん。子供の頃からよくおやんい連れて行かれてさ、川釣りも海釣りも趣味で毎週行ってるくらいなんだ」
「すごいですね! お上手なんですか?」
「そうでもないけどね。時々自家用ボートを出すときもある」
その言葉にヒナは目を丸くした。
自家用ボートを持っているなんて、やっぱりこの人もかなりのお金もちなんだろう。
全然そんな雰囲気ではないけれど、着ているスーツは上等なものだとわかる。
それからもお客さんは釣りの話を続けた。
ヒナは時折相槌を打ちながらも、よくわからない話題についていくので精一杯だ。
「ヒナちゃんは水族館とか行く?」
「あ、水族館なら時々行きますよ」
やっと自分でもりかいできる話題になったと思ってヒナの表情が和らぐ。
「水族館ってすごいんだよ。それぞれの魚の生態に合わせて環境を作っていてね……」
と、思ったらすぐに興味のない話題へと移ってしまった。
このお客さんはとにかく釣りの話と魚の話がしたいみたいだ。
ヒナは助けを求めるように周囲を見回す。
約束の10分はとうに過ぎているけれど、先輩たちが3番テーブルに来てくれる気配もない。
時間が長引いているんだろう。
ヒナの顔から次第に笑みが消えていく。
「ヒナちゃん聞いてる?」
興味のない話が長々と続いてついに眠気を感じはじめたとき、お客さんが顔を覗き込んできた。
「き、聞いてますよ」
慌てて返事をして、ふと目の前のグラスが空になっていることに気がついた。
いつの間に!
ヒナは慌ててグラスに新しい飲み物をついだ。
お客さんは「ありがとう」と、ひとこと言って美味しそうにそれを飲み干す。
よかった。
怒っていないみたいだ。
ヒナは気合を入れ直してお客さんの話しに耳を傾ける。
けれど同じような釣りの話ばかりをされてどうしても眠気が出てきてしまう。
ヒナはどうするべきか必死に頭をフル回転させた。
そして思い出したのはヒナの人生物語だった。
今私はヒナという人物を演じているのだ。
そう思うとスッと背筋が伸びた。
そして悲壮感がひしひしと体の内側から溢れ出してくる。
突然雰囲気の変わったヒナにお客さんが困惑した表情を浮かべた。
その瞬間、会話も途切れる。
今だ!
ヒナは思い切って自分から口を開いた。
「実は私、施設育ちなんです」
「え? そうなの?」
突然の告白にお客さんが驚いている。
ヒナは視線を下へ向けて悲しんでいる様子を演出した。
お客さんも黙って次の言葉を待ってくれている。
「そうなんです。傷心の顔も知らずに育ったの」
「そ、そうだったんだ。それは、大変だったね」
同情的な表情になったお客さんに対してヒナは悲しそうに頷いた。
「施設の環境もひどくて、お兄さんやお姉さんによくイジメられてたの。見ての通り私って小さくて貧弱でしょう? だから、さんざんターゲットにされてきたの」
「イジメか……」
お客さんがしかめっ面をしてお酒をグイッと飲み干した。
ヒナはタイミングを見計らって新しいお酒をつぐ。
お客さんは更にそれも飲み干して、新しいボトルを注文してくれた。
よし、イイ感じじゃない!?
どんどん酒が進むお客さんを見てヒナは自分の物語をどんどん披露していく。
「だけどこのノアールで仕事をしはじめて思ったんです。私はまだ頑張れるって」
すべて話し終えたヒナはふぅと大きくため息を吐き出した。
お客さんはさっきから無言でお酒を飲んでいる。
もう、ヒナの方を見てもいなかった。
心做しか不機嫌そうに見えるのは気のせいだろうか?
いや、でもちゃんと聞いてくれていたし……。
沈黙の時間が続いたとき、「遅くなってごめんねぇ!」と、他の嬢がやってきた。
ヒナはそっと立ち上がる。
「あれ、どうしたの?」
お気に入りの嬢が席へやってきても反応を見せない男性客に嬢がヒナへ視線を向けた。
ヒナは首を傾げて「どうされましたか?」と、男性客の方へ質問した。
すると男性客はようやく顔をあげて苦笑いをうかべ「いや……別になんでもないよ」と、気を取り直すように言ったのだった。
☆☆☆
「自分のことばかり話してどうする! あの客、完全に引いてたぞ!!」
男性客への接客はうまくいった。
そう思っていたヒナはすぐさま光に休憩室に呼び出され、説教を受けていた。
「え、でもあのお客さんちゃんと聞いてくれてたし……」
「ちゃんと聞いてたのは最初だけだろ! 後半はずっと酒を飲んでるだけで全然楽しそうじゃなかったじゃないか!」
そう言われればそうかもしれない。
ヒナは自分の話をすることで夢中になって、相手のことをよく見ていなかったのだ。
「それに、ああいう話はお客さんに話をふられて始めてするものだ。自分から不幸自慢してどうする!!」
げんこつが落ちてきそうな剣幕にヒナはビクリと縮こまる。
「そ、そんなの知らなくてっ」
「だからお前にはまだ早いって言ったんだ! 別のお客さんだったら怒って帰ってたかもしれないんだぞ!」
そう言われてゾッとした。
お気に入りの嬢が来る前に怒って帰らせてしまうなんて、絶対にやってはいけないことだ。
あのお客さんがヒナの話しに根気強く付き合ってくれたからこそ、嬢が戻ってくる時間まで店にいてくれたことになる。
ようやく、自分がしでかしてしまったことに気がついてヒナは青ざめた。
「わ、私、あのお客さんに謝ってくる」
「もうやめとけ」
店へ戻ろうとしなヒナを光は引き止めた。
そして大きなため息を吐き出す。
「お気に入りの嬢が機嫌を直したところなんだ。お前が出ていけばまた機嫌が悪くなるかもしれない」
光の冷たい言葉にヒナはなにも言えなくなってしまったのだった。
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