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第三章
穏やかな夕食
しおりを挟む「お父様に紹介がまだだったんだけど…………ソフィアを紹介するわね」
私は大事な事を忘れていた、ソフィアをお父様に紹介していない事に気付いて、向かいに座っているソフィアの名前を呼んだ。するとソフィアは自分で立ち上がり、お父様のところに行って自己紹介をし始める。
「……ソフィアです。オリビアさまにお名前をいただきました」
「ああ、ジョセフィーヌのお義母様の名だね!そうか~~きっとお義母様が君たちを守ってくれたのかもしれないね。君によく似合っているよ」
お父様はそんな事を言いながら、目を細めて笑っている…………お祖母様が……そんな風に考えた事もなくて、ちょっぴりジーンとしてしまう。
「ソフィアっていうんだね。……君はどうしたい?」
「わたしは……オリビアさまのおやくに立ちたいです」
「?役に立ちたいという事はオリビアに仕えたいという事?侍女なら足りてるけど君がなりたいのなら……」
お父様は自然と疑問に思った事を聞いているだけなのだろうけど、私はそんなつもりではなかったので慌てて訂正する。
「ち、違いますわ!……その…………家族として迎えたいのです……」
「あ、そういう事か!うんうん、姉妹ね。いいんなじゃない?私が反対する理由はないし、遠縁の子供を引き取ったって事にすれば大丈夫でしょう」
お父様の許可が下りて、喜びのあまりソフィアと抱き合う。
「王都の屋敷の方も賑やかになるね。ソフィア、よろしく」
「あ……よろしく、おねがいします」
そう言ってソフィアはお父様に頭を下げた。
「偉い、偉い!オリビアの小さい頃を見ているみたいだね~素敵な淑女になれるように王都に帰ったら沢山お勉強しないとね」
お父様はソフィアにウィンクし、両手に握りこぶしを作りながら「がんばります!」と決意表明をするソフィア…………和やかな雰囲気のまま応接間の時間は過ぎていった。
∞∞∞∞
その日の夕食はお父様とヴィル、ソフィア、マリーにロバートも一緒に皆でとる事にした。
こんなに賑やかな夕食は初めてかもしれない…………この世界に転生して、色々な事が目まぐるしく起きたから、とても穏やかで楽しいわ。
「お父様、王都に帰る前に少し領地でやりたい事があって……それをしてから帰る形でもいいかしら?」
「そこまで急いでいないから大丈夫だよ。やりたい事っていうのは?」
「えっと…………ここに来てからずっと行ってみたいと思っていたのだけど……公衆浴場に行ってみたくて」
いわゆる温泉ってやつよね。ここの湯はどういう効能があるかは分からないけど、ここに来たからには帰る前に一度入っておきたい。
「なっ……公衆浴場は皆が入る場所だ。オリビアを皆が見るなど…………」
「男女は分かれているわよね?」
「そ、それはそうだが…………ブツブツ…………」
殿下が何かもにょもにょと言っているけど、よく聞こえなかったのでスルーする事にしよう。皆がいなければいいのかしら?
「夜ならいいんじゃない?だいたい領民は皆朝に入って、身を綺麗にしてから仕事をするものだから夜は誰もいないと思うよ。夕方から貸し切りの看板でも立てておけば大丈夫じゃないかな」
お父様がそう言ってくれたので、私は顔を輝かせる。隣でヴィルが何かを言っているのを無視して決定してしまった。
「じゃあ、明日はオルビスやテレサも来るし、皆で公衆浴場に行きましょう!」
ソフィアは拍手をしてくれて、マリーは「いいですね!」と言って笑顔で同意してくれる。
「…………ではオリビアが行くなら私も行かねばならないな…………」
「……ヴィルは行きたくなさそうだったから、待っていてくれてもいいのよ?」
笑顔でそう言うとショックを受けた顔をする。最近は犬のように感じてしまう自分がいるわ……いけない、これでもこの国の王太子なのよね。ちょっと気安くし過ぎてるかしら。
「冗談よ、一緒に行きましょう。皆で行った方が楽しいものね」
「やはり私がいた方がいいという事だな」
「…………もう!すぐそれなんだからっ」
ははっと笑うヴィルの姿をお父様が見て笑っている。ヴィルがこんな風に笑う姿は小説の中でも記憶にないし、いつもエフェクトがかかった俺様王太子だから珍しいのかも。
明日、オルビスとテレサが来たらさっそく二人も誘いましょう。子供たちも来たら皆一緒に入ればいいわね!ソフィアも喜ぶし……そんな事を考えていたら、ますます明日が楽しみになったのだった。
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