ある幸せな家庭ができるまで

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第二章:妊娠編

ツンデレ

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「ごめんなさいロゼッタさん。本当にライザックは何も悪くないんで、あまり怒らないでやって」
「んん? でも妊娠中の君をこんなとこまで連れて来て、あまつさえこんな催しにまで巻き込んだのはライザックだろう!?」

 怒れるロゼッタさんを宥めるように俺が事の次第を彼に説明すると、ロゼッタさんは瞳をハロルド様の方に向けた。そちらには俺達の声は聞こえていないのだろう、相変わらずハロルド様は口元を扇子で隠しこちらを遠くから眺めていた。

「伯父様が私の味方だと言ったのはそういう意味か。まんまと当て馬として利用されたのは私の方なのだね」

 あれ? そうなる?

「ミレニア、君もこの子の妊娠知っていたのだね」

 気付けば、少し離れた場所にミレニアさんとバートラム様が俺達を見守る様に立っていて、ロゼッタさんの言葉にミレニアさんは「まぁ、一緒に住んでいますので……」とそっぽを向いた。

「おかしいと思っていたんだよ、ミレニアはそもそも昔からお嫁さんは貰う方で自分がお嫁さんになる事は絶対にないって断言していたし、獣人国に婚約者がいるというのも聞いている。なのに私と君がライザックを巡って戦うと聞いた途端にそこに参戦してきたと聞いた時には耳を疑った。正直、君よりミレニアの方がよほど手強いライバルになるだろうなと思っていたら、何故か君達仲良さそうだし、変だなとは思っていたんだ」
「それはまぁ、無茶な争いごとで腹の子が流れたら後味が悪いでしょう? 私はカズの腹の中に子供がいる事は知っているのだから……」
「ミレニアさん」

 ちょっと今俺、泣きそうなんだけど……ミレニアさんは俺の妊娠が判明してからも『望まれていない、生むべきじゃない』って散々酷い事も言った癖に、その実俺の心配してくれてたんだ? 裁縫対決の時、ちょっとそうかな? って思ったけど、ミレニアさんってやっぱり優しいんじゃん! いつもツンツンしてる癖に滅茶苦茶俺のこと心配してくれてんじゃん!

「この人自分が妊夫だって自覚がまるでないし、ハロルド様に嫌われてる自覚もない、いつもこっちがどれだけハラハラ冷や冷やしながら見守ってるかなんて全く分かってないんですから! ライザックはライザックでどこまでも能天気で、大丈夫だ問題ないって……問題は大ありだって言うんですよ!! 今回の件にしても何か裏がありそうだと思っていたら案の定だし、私はここ最近ずっと胃痛が治まりませんよ!」

 悲痛な叫びのミレニアさん。あれ? ミレニアさん今そんな感じなんだ? それってもしかして俺達のせい? なんか全然気付いてなくて、ごめんなさい。

「ミレニー、やっぱりお前執事向いてないって、そんなにいつもカリカリしてたらいずれ体調壊すぞ? 諦めて俺のとこに嫁に来いって、な?」
「うるさい、バート! 私の胃痛の原因のひとつにはお前の存在も含まれている! 私の体調を気にかけてくれるのなら、お前こそさっさと国へ帰れ!」

 「つれないな」とバートラム様がミレニアさんの脇で苦笑う。なんだかホントにおかしいの。

「ん? その方は確かゲストの……?」
「私の名はバートラム・ベアード、ズーランド国の大使で独身なものですから今回の催しにお誘いいただいたようですね。以後お見知りおきをロゼッタ・オーランドルフ殿。ついでに私がミレニアの婚約者ですよ」
「わ! そうなんだ! とすると、バートラム様がミレニアのお嫁さん? あれ? でも今、自分のとこに嫁に来いって言った? あれ?」

 今度はミレニアさんがとても渋い表情で「こいつはただの背後霊です」って……さすがに今はそれ通じないんじゃないかな?

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