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153.中古の洗濯機①(怖さレベル:★★☆)
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(怖さレベル:★★☆:ふつうに怖い話)
リユースやリサイクル、活用していますか?
SDGzが叫ばれる今、古いものを再活用する、
というのはとってもいいことですよね。
でも、キチンと気をつけていないと、
時にヒドい目に遭うこともある。
今回オレが話をするのは、
そんな中古の洗濯機によって引き起こされた、とある出来事です。
実家を出たくて、オレは都会の専門学校に進学先を選びました。
念願のひとり暮らし、と思いきや、
すでに上京して働いていた兄も社宅から出て家を探していたらしく、
それに乗じて、ふたり暮らしをすることになったんです。
「せっかく安い社宅に住めてんのに、弟とふたり暮らしでいいの?」
と聞いたところ、
「門限が厳しいから早く引っ越したかったんだよな~」
と、兄はヘラヘラ笑っていました。
兄はもともと、かなり色々ルーズでだらしがないタイプ。
楽をしたくて社宅に住んだものの、思ったより条件が厳しかったんでしょう。
新しく決めたアパートは、大学にも近く、かなりいい立地でした。
幸い兄の会社から家賃補助も出て、オレの負担はほぼなく、
親も兄がいっしょならと、安心して実家を出してくれたんです。
とはいえ、家は用意できても、
肝心の家具家電を用意しなくてはなりません。
自分たちは人のお古やら中古品を気にしないタイプだったので、
リサイクルショップを回ったり、人から譲り受けたりして、
安く調度品を整えることができました。
そして、春から兄との二人暮らしが始まりました。
とはいえ、兄は毎日、夜遅くまで帰ってこないことばかりで、
ほとんどひとり暮らしみたいなモンでしたけど。
オレの方も、田舎とは比べものにならない店の数や、
遊べる場所の多さに舞い上がってあっちこっち出かけまくっていたので、
お互い、ほとんど顔を合わせないような日々でした。
そうして、都会生活を過ごして、三ヶ月も過ぎた頃でしょうか。
真夏の寝苦しい夜。
オレはエアコンのタイマー設定をミスっていたらしく、
真夜中、ダラダラと汗をかきつつ目覚めました。
「あっつ……うわ、エアコン切れてるし……」
冷房を入れて、もう一回寝よう、と横になったものの、
なんだか、妙な音がすることに気が付きました。
ゴウン、ゴウン
聞き覚えのあるその音は、洗濯機の稼働音でした。
時計に目を向けると、時間は深夜二時。
(……兄貴か?)
オレたちが暮らしているのはアパートの角部屋かつ一階。
下の階に文句を言われる心配はないものの、
こんな時間に洗濯かよ、と呆れつつ、オレは再び眠りにつきました。
……ええ、今思えば、これが一番初めだったんですよね、あの異変の。
その次の日。
相変わらず兄とバッティングすることもなく、
大学へ行って帰って、ひとりで食事をして、夜。
その日、オレは暑さではなく、物音によって目覚めました。
「んだよ……この音……」
ゴウン、ゴウン、ゴウン
また、洗濯機が回っている。
オレは目を閉じたままその音を聞いて起き上がりかけ――
あれ? と違和感を覚えました。
兄はいつも、スーツで会社に出社します。
だから、ワイシャツと下着はセットでいくつもあって、
洗濯する頻度はだいたい三日に一度くらい。
昨日使ったのに、今日も?
と不審に思いつつ、オレは脱衣所へと向かいました。
「あれ……明かり、ついてない……?」
玄関に靴がないし、
部屋に明かりもついていません。
当然、洗濯機のある脱衣所もまっくらです。
夜中のリビングは、真夏であるにも関わらずうすら寒く、
ゴトゴトと奥から聞こえてくる音も相まって、とても不気味な雰囲気です。
急に怖くなって、リビングの照明をつけて、
テレビも点けた後、脱衣所の明かりをつけました。
洗濯機には赤いランプが点灯していて、
ゴトゴトと音を立てて回っています。
(……なんで動いてるんだ?)
兄は不在で、自分も、洗濯物なんて入れてないのに。
ひとりでに動く洗濯機を前に、
オレはゆっくりと手を伸ばして――バッ、とフタを開けました。
「……なんも入ってねぇ」
中身は、からっぽでした。
ただ、半分ほど入った水だけが、グルグルと回っているだけです。
「なんだよ……故障か?」
この洗濯機は、たしか兄が知り合いから譲ってもらったもの。
側面にはいくつも傷が入っているし、型式もかなり古いタイプです。
故障となると、修理じゃなく買い替えかもなぁ、と考えつつ、
オレは洗濯機のスイッチをオフにして、あくびをしました。
さっきまでビビっていたのが、なんだかとても情けない。
オレはサッサと脱衣所とリビングの電気を消すと、
部屋に戻って、再び眠りにつきました。
……ゴウン……ゴウン……
(……またかよ)
次の日の夜。
耳につく例の音で、オレは再び目覚めました。
連日夜中にたたき起こされて、正直気分は最悪です。
今日の昼間、念の為にチェックしたときは、なんてことありませんでした。
それなのに、夜、寝静まった後に故障して動き出すというのは、
なんとも迷惑な話です。
オレはのっそりと体を起こして、脱衣所へと向かいました。
頭にあったのは、怖さより、眠りを邪魔された怒りです。
脱衣所に明かりがついていないのも、
誰もいないリビングの静けさも、もはや気になりません。
ドスドスと荒い足取りで洗濯機の前に行くと、
オレは怒りを込めて、スイッチをオフにしました。
「ったく……なんで急に故障するんだよ……!!」
しかも、こんな真夜中に。
オレはイライラと爪で洗濯機のフタを叩き、
ガバッと雑に中を開けました。
からっぽの中身と、たまっている水。
そう思っていたオレの視界に、チラ、と赤いものが映りこみました。
「……え、なんだ、これ……」
動きを止めた洗濯槽の中から、
指先で、オレはその赤いものを引き上げました。
こんな鮮やかな赤い服なんて、自分は持っていません。
兄が、一枚だけ取り忘れていたのか? と、濡れたそれを広げました。
「なんだこれ……っ、うわっ!!」
思わず、オレはそれを、洗濯槽の中に落としてしまいました。
まっ赤な布地。
それは、女性もののロングスカートだったんです。
「は……はは……ど、どうせ、兄貴の彼女の、とか、だよな……?」
おれは彼女なんていないし、
どうせ兄貴が気づかないうちに放り込んで、忘れていたに決まっている。
そもそも、兄に今彼女がいるのか、とか、
どうして赤いスカートだけが残っているのか、だとか、
そういう細かいことは考えず、おれは洗濯機のフタをパタンと閉めました。
>>
リユースやリサイクル、活用していますか?
SDGzが叫ばれる今、古いものを再活用する、
というのはとってもいいことですよね。
でも、キチンと気をつけていないと、
時にヒドい目に遭うこともある。
今回オレが話をするのは、
そんな中古の洗濯機によって引き起こされた、とある出来事です。
実家を出たくて、オレは都会の専門学校に進学先を選びました。
念願のひとり暮らし、と思いきや、
すでに上京して働いていた兄も社宅から出て家を探していたらしく、
それに乗じて、ふたり暮らしをすることになったんです。
「せっかく安い社宅に住めてんのに、弟とふたり暮らしでいいの?」
と聞いたところ、
「門限が厳しいから早く引っ越したかったんだよな~」
と、兄はヘラヘラ笑っていました。
兄はもともと、かなり色々ルーズでだらしがないタイプ。
楽をしたくて社宅に住んだものの、思ったより条件が厳しかったんでしょう。
新しく決めたアパートは、大学にも近く、かなりいい立地でした。
幸い兄の会社から家賃補助も出て、オレの負担はほぼなく、
親も兄がいっしょならと、安心して実家を出してくれたんです。
とはいえ、家は用意できても、
肝心の家具家電を用意しなくてはなりません。
自分たちは人のお古やら中古品を気にしないタイプだったので、
リサイクルショップを回ったり、人から譲り受けたりして、
安く調度品を整えることができました。
そして、春から兄との二人暮らしが始まりました。
とはいえ、兄は毎日、夜遅くまで帰ってこないことばかりで、
ほとんどひとり暮らしみたいなモンでしたけど。
オレの方も、田舎とは比べものにならない店の数や、
遊べる場所の多さに舞い上がってあっちこっち出かけまくっていたので、
お互い、ほとんど顔を合わせないような日々でした。
そうして、都会生活を過ごして、三ヶ月も過ぎた頃でしょうか。
真夏の寝苦しい夜。
オレはエアコンのタイマー設定をミスっていたらしく、
真夜中、ダラダラと汗をかきつつ目覚めました。
「あっつ……うわ、エアコン切れてるし……」
冷房を入れて、もう一回寝よう、と横になったものの、
なんだか、妙な音がすることに気が付きました。
ゴウン、ゴウン
聞き覚えのあるその音は、洗濯機の稼働音でした。
時計に目を向けると、時間は深夜二時。
(……兄貴か?)
オレたちが暮らしているのはアパートの角部屋かつ一階。
下の階に文句を言われる心配はないものの、
こんな時間に洗濯かよ、と呆れつつ、オレは再び眠りにつきました。
……ええ、今思えば、これが一番初めだったんですよね、あの異変の。
その次の日。
相変わらず兄とバッティングすることもなく、
大学へ行って帰って、ひとりで食事をして、夜。
その日、オレは暑さではなく、物音によって目覚めました。
「んだよ……この音……」
ゴウン、ゴウン、ゴウン
また、洗濯機が回っている。
オレは目を閉じたままその音を聞いて起き上がりかけ――
あれ? と違和感を覚えました。
兄はいつも、スーツで会社に出社します。
だから、ワイシャツと下着はセットでいくつもあって、
洗濯する頻度はだいたい三日に一度くらい。
昨日使ったのに、今日も?
と不審に思いつつ、オレは脱衣所へと向かいました。
「あれ……明かり、ついてない……?」
玄関に靴がないし、
部屋に明かりもついていません。
当然、洗濯機のある脱衣所もまっくらです。
夜中のリビングは、真夏であるにも関わらずうすら寒く、
ゴトゴトと奥から聞こえてくる音も相まって、とても不気味な雰囲気です。
急に怖くなって、リビングの照明をつけて、
テレビも点けた後、脱衣所の明かりをつけました。
洗濯機には赤いランプが点灯していて、
ゴトゴトと音を立てて回っています。
(……なんで動いてるんだ?)
兄は不在で、自分も、洗濯物なんて入れてないのに。
ひとりでに動く洗濯機を前に、
オレはゆっくりと手を伸ばして――バッ、とフタを開けました。
「……なんも入ってねぇ」
中身は、からっぽでした。
ただ、半分ほど入った水だけが、グルグルと回っているだけです。
「なんだよ……故障か?」
この洗濯機は、たしか兄が知り合いから譲ってもらったもの。
側面にはいくつも傷が入っているし、型式もかなり古いタイプです。
故障となると、修理じゃなく買い替えかもなぁ、と考えつつ、
オレは洗濯機のスイッチをオフにして、あくびをしました。
さっきまでビビっていたのが、なんだかとても情けない。
オレはサッサと脱衣所とリビングの電気を消すと、
部屋に戻って、再び眠りにつきました。
……ゴウン……ゴウン……
(……またかよ)
次の日の夜。
耳につく例の音で、オレは再び目覚めました。
連日夜中にたたき起こされて、正直気分は最悪です。
今日の昼間、念の為にチェックしたときは、なんてことありませんでした。
それなのに、夜、寝静まった後に故障して動き出すというのは、
なんとも迷惑な話です。
オレはのっそりと体を起こして、脱衣所へと向かいました。
頭にあったのは、怖さより、眠りを邪魔された怒りです。
脱衣所に明かりがついていないのも、
誰もいないリビングの静けさも、もはや気になりません。
ドスドスと荒い足取りで洗濯機の前に行くと、
オレは怒りを込めて、スイッチをオフにしました。
「ったく……なんで急に故障するんだよ……!!」
しかも、こんな真夜中に。
オレはイライラと爪で洗濯機のフタを叩き、
ガバッと雑に中を開けました。
からっぽの中身と、たまっている水。
そう思っていたオレの視界に、チラ、と赤いものが映りこみました。
「……え、なんだ、これ……」
動きを止めた洗濯槽の中から、
指先で、オレはその赤いものを引き上げました。
こんな鮮やかな赤い服なんて、自分は持っていません。
兄が、一枚だけ取り忘れていたのか? と、濡れたそれを広げました。
「なんだこれ……っ、うわっ!!」
思わず、オレはそれを、洗濯槽の中に落としてしまいました。
まっ赤な布地。
それは、女性もののロングスカートだったんです。
「は……はは……ど、どうせ、兄貴の彼女の、とか、だよな……?」
おれは彼女なんていないし、
どうせ兄貴が気づかないうちに放り込んで、忘れていたに決まっている。
そもそも、兄に今彼女がいるのか、とか、
どうして赤いスカートだけが残っているのか、だとか、
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