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魔力回路を作りましょう
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今までの話をまとめると、カナは男好きで急に姿を消した。
そこから導き出される結論は一つだ。
「いなくなったのはどっかの男についていったからか?」
「あまり言いたくはないけれど…否定は出来ないわね」
ミサキは悔しそうに唇を噛みしめる。
「あのっ、先輩っ。カナは危ない目に会っていないでしょうかっ」
もしそうだとしても自業自得だと思うのだが、タエはやはりいい子だ。
「彼女が魔力回路師なら心配はないと思うぞ」
相手の回路を弄って、魔力を失わせることだって出来る。
それで自分だけ魔力を使えれば…結果は目に見えている。
「それよりも、そろそろだよな?」
数キロ先からモンスターの気配を感じる。
犬よりも大きい影が複数だ。
「凄いです先輩!」
「ありがとう。サクラ、ミサキ。回路を作るぞ」
二人の顔が強張った。
そういえば、なぜこの三人は魔力を宿していなかったんだ?
カナがいなくても、魔法屋に行けば回路は作れる。
女の子だけのパーティなら護身の意味も含めて常に魔力を宿しておくのが普通だ。
「えっと…私たちはどうすれば?」
サクラは顔を赤らめると、下を向いた。
ミサキは無言のままで唇を噛みしめると、睨みつけてくる。
あーそういうことか…。
「そのまま立っていてくれればいいよ」
「「え?」」
ほっとしたような、驚いたような声が上がった。
「もしかして、服を脱げって言うと思ってた?」
魔法屋では、特殊な器具を使って回路を作る。
その効果を高めるために、店では決められた服を着る。
例えば水着だ。太ももから下も、二の腕から先も、首から上もすべて露出される。
しかも、従業員のほとんどは男と来ている。
向こうにその気がなくても、嫌な視線を感じるのは仕方のないことだ。
救いがあるとすれば、水着はワンピース型で、腹が隠れていることぐらいだろうか?
「言われると思ってた」
サクラはあっさりと答えた。
「男の前で肌を晒したくないんだろ?
というか、タエが回路を作る時に、服を脱げなんて言ったことないだろ?」
個人差はあるが、ある程度の距離にいればわざわざ触れなくても回路の管理は出来る。
「言われてたよ」
「言われたわね」
「言われました」
はい?
予想外の返事に思考が停止した。
おいおい、本当にカナは魔力回路師なのか?
もし彼女が女好きならまだ分かる。
直接体に触れるために、力を使うことを口実に脱がせることだってありえる。
実際にそうして、毎日女の体を弄りまわっているやつもいる。
だが、カナは男好きと聞いている。
男を脱がしてあわよくば…なら分かるが、女同士では何も起こらないはずだ。起こらないよな?
「ま、まあいいや…とりあえず魔力回路師は直接触れなくて力を使えるから、もし同じことを言われたら気をつけろよ。特に相手が男だったらな」
彼女たちが最初に出会ったのがあいつじゃなくてよかった…。
今頃全員真っ裸でベッドの上だっただろうな。
「ありがとう、先輩さん」
「へーアンタみたいのもいるのね。本当に男なの?」
サクラはともかく、さっきまで冷たかったミサキの視線も和らいだ。
少しは警戒が薄れたようだ。
「それじゃあさっそくやるから…コネクト」
体内の魔力を細い線にすると、地面を通じて二人に触れた。
これは…すごいな。
回路を作れば魔力を使えるようになる。
だが、魔力の質には個人差がある。
これまで勇者や凶悪犯罪者を見て来たことがあるが、この二人の潜在能力は段違いだ。
特にサクラ。ほぼ全身が魔力で満たされていて、体のシルエットが見えないほどだ。
これは回路師の腕がもろに試される。
腕力特化にすることも、足技特化にすることも、魔法特化にすることも出来る。
これは、実際に戦いを見ながら調整した方がよさそうだ。
「サクラは剣使いでよかったよな?」
「そうだよ」
「分かった。とりあえずスピードとパワー型にしておく。最初は違和感があるかもしれないけど戦闘中にチューニングするから」
「お願いします」
次はミサキだ。
彼女は魔具使いと聞いている。
「使うのは盾とボウガンって聞いたことがあるけど、合っているか?」
「そうよ」
「オッケー。こっちも途中でチューニングするから最初は我慢してくれ。あと、それ以外に持っている魔具があったら自由に使ってくれて構わない。都度合わせるから」
「そんなことが出来るの?」
気づけば、ミサキは真ん前に立っていた。
タエは同じ距離にいたことはあるが、背が高い分ミサキの方が顔が近い。
彼女の眼鏡越しに見える瞳は、好奇心で輝いてた。
「燃費が悪すぎて使ったことがないのとかあるんだけど使えるの?」
「ああ、大丈夫だ」
「近接系も?」
「いいけど、ミサキの魔力はそっち向けじゃないな。あーでも、ウルフ相手ぐらいなら大丈夫か」
警戒どころか、急に距離が近づきすぎじゃないか?
壁は無くなったどころか、俺の方にめり込んできているようだ。
「むー」
可愛らしいうめき声が聞こえ、背中に何かが当たった。
あーうん、タエ、だな。
「あのーミサキさん、それぐらいにしておかないと内紛が起こりますよ」
「え?あ、あ、あああ、ご、ごめんなさいっ、私ったらついテンションがあがりすぎてっ、ごめんっ、タエっ」
顔を真っ赤にすると、口をパクパクとさせながら離れていき、タエに向かって何度も何度も謝る。
しっかりしているように見えて、抜けていることもあるみたいだ。
「ふふふ、可愛いでしょ、ミサキ」
「そうだな…って、何を言わせるんだよ」
「思ったことを聞いただけだよ」
「それを言ったら、サクラだって十分可愛いぞ?」
見た目は凛としているのに、話してみると親近感がある。
「もっと堅物だと思っていたよ」
「そんなことはないよ。それに、私たちの中で一番しっかりしているのはタエだよ」
「嘘だろ?」
俺の目に映るのは、必死に謝るミサキの前で、ほっぺたを膨らませてそっぽをむくタエの姿だ。
「どこがしっかりしているんだ?」
首をかしげる俺に、サクラは笑顔を向けるだけだった。
そこから導き出される結論は一つだ。
「いなくなったのはどっかの男についていったからか?」
「あまり言いたくはないけれど…否定は出来ないわね」
ミサキは悔しそうに唇を噛みしめる。
「あのっ、先輩っ。カナは危ない目に会っていないでしょうかっ」
もしそうだとしても自業自得だと思うのだが、タエはやはりいい子だ。
「彼女が魔力回路師なら心配はないと思うぞ」
相手の回路を弄って、魔力を失わせることだって出来る。
それで自分だけ魔力を使えれば…結果は目に見えている。
「それよりも、そろそろだよな?」
数キロ先からモンスターの気配を感じる。
犬よりも大きい影が複数だ。
「凄いです先輩!」
「ありがとう。サクラ、ミサキ。回路を作るぞ」
二人の顔が強張った。
そういえば、なぜこの三人は魔力を宿していなかったんだ?
カナがいなくても、魔法屋に行けば回路は作れる。
女の子だけのパーティなら護身の意味も含めて常に魔力を宿しておくのが普通だ。
「えっと…私たちはどうすれば?」
サクラは顔を赤らめると、下を向いた。
ミサキは無言のままで唇を噛みしめると、睨みつけてくる。
あーそういうことか…。
「そのまま立っていてくれればいいよ」
「「え?」」
ほっとしたような、驚いたような声が上がった。
「もしかして、服を脱げって言うと思ってた?」
魔法屋では、特殊な器具を使って回路を作る。
その効果を高めるために、店では決められた服を着る。
例えば水着だ。太ももから下も、二の腕から先も、首から上もすべて露出される。
しかも、従業員のほとんどは男と来ている。
向こうにその気がなくても、嫌な視線を感じるのは仕方のないことだ。
救いがあるとすれば、水着はワンピース型で、腹が隠れていることぐらいだろうか?
「言われると思ってた」
サクラはあっさりと答えた。
「男の前で肌を晒したくないんだろ?
というか、タエが回路を作る時に、服を脱げなんて言ったことないだろ?」
個人差はあるが、ある程度の距離にいればわざわざ触れなくても回路の管理は出来る。
「言われてたよ」
「言われたわね」
「言われました」
はい?
予想外の返事に思考が停止した。
おいおい、本当にカナは魔力回路師なのか?
もし彼女が女好きならまだ分かる。
直接体に触れるために、力を使うことを口実に脱がせることだってありえる。
実際にそうして、毎日女の体を弄りまわっているやつもいる。
だが、カナは男好きと聞いている。
男を脱がしてあわよくば…なら分かるが、女同士では何も起こらないはずだ。起こらないよな?
「ま、まあいいや…とりあえず魔力回路師は直接触れなくて力を使えるから、もし同じことを言われたら気をつけろよ。特に相手が男だったらな」
彼女たちが最初に出会ったのがあいつじゃなくてよかった…。
今頃全員真っ裸でベッドの上だっただろうな。
「ありがとう、先輩さん」
「へーアンタみたいのもいるのね。本当に男なの?」
サクラはともかく、さっきまで冷たかったミサキの視線も和らいだ。
少しは警戒が薄れたようだ。
「それじゃあさっそくやるから…コネクト」
体内の魔力を細い線にすると、地面を通じて二人に触れた。
これは…すごいな。
回路を作れば魔力を使えるようになる。
だが、魔力の質には個人差がある。
これまで勇者や凶悪犯罪者を見て来たことがあるが、この二人の潜在能力は段違いだ。
特にサクラ。ほぼ全身が魔力で満たされていて、体のシルエットが見えないほどだ。
これは回路師の腕がもろに試される。
腕力特化にすることも、足技特化にすることも、魔法特化にすることも出来る。
これは、実際に戦いを見ながら調整した方がよさそうだ。
「サクラは剣使いでよかったよな?」
「そうだよ」
「分かった。とりあえずスピードとパワー型にしておく。最初は違和感があるかもしれないけど戦闘中にチューニングするから」
「お願いします」
次はミサキだ。
彼女は魔具使いと聞いている。
「使うのは盾とボウガンって聞いたことがあるけど、合っているか?」
「そうよ」
「オッケー。こっちも途中でチューニングするから最初は我慢してくれ。あと、それ以外に持っている魔具があったら自由に使ってくれて構わない。都度合わせるから」
「そんなことが出来るの?」
気づけば、ミサキは真ん前に立っていた。
タエは同じ距離にいたことはあるが、背が高い分ミサキの方が顔が近い。
彼女の眼鏡越しに見える瞳は、好奇心で輝いてた。
「燃費が悪すぎて使ったことがないのとかあるんだけど使えるの?」
「ああ、大丈夫だ」
「近接系も?」
「いいけど、ミサキの魔力はそっち向けじゃないな。あーでも、ウルフ相手ぐらいなら大丈夫か」
警戒どころか、急に距離が近づきすぎじゃないか?
壁は無くなったどころか、俺の方にめり込んできているようだ。
「むー」
可愛らしいうめき声が聞こえ、背中に何かが当たった。
あーうん、タエ、だな。
「あのーミサキさん、それぐらいにしておかないと内紛が起こりますよ」
「え?あ、あ、あああ、ご、ごめんなさいっ、私ったらついテンションがあがりすぎてっ、ごめんっ、タエっ」
顔を真っ赤にすると、口をパクパクとさせながら離れていき、タエに向かって何度も何度も謝る。
しっかりしているように見えて、抜けていることもあるみたいだ。
「ふふふ、可愛いでしょ、ミサキ」
「そうだな…って、何を言わせるんだよ」
「思ったことを聞いただけだよ」
「それを言ったら、サクラだって十分可愛いぞ?」
見た目は凛としているのに、話してみると親近感がある。
「もっと堅物だと思っていたよ」
「そんなことはないよ。それに、私たちの中で一番しっかりしているのはタエだよ」
「嘘だろ?」
俺の目に映るのは、必死に謝るミサキの前で、ほっぺたを膨らませてそっぽをむくタエの姿だ。
「どこがしっかりしているんだ?」
首をかしげる俺に、サクラは笑顔を向けるだけだった。
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