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近づく別れ
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「ここはどこだっ!?」
目を開けると、ミノタウロスは倒れていた。
俺としたことはなんたる失態だ。
モンスターの出る場所で寝てしまうとは…。
ハイエナが来ていたら餌食になっていたところだ。
動こうとすると、左右から圧迫されていることに気がついた。
おまけにいい匂いまでする。
「おいおい、こいつはどんな状況だよ」
右を向けばサクラのポニーテール、左を向けばミサキの寝顔、下を向けばタエの頭がある。
これはあれか、両手に花ってやつか。花の名に恥じず、みんな可愛い。
さて、状況を整理しよう。
俺たちはミノタウロスと戦った。勝利の寸前に奴は進化して抵抗してきた。
そいつを倒したあと俺は気絶した。
そんなところか。
そういえば、来た時に倒れていたあいつはいない。
途中で目を覚まして逃げたのだろう。
「さて、早く動いた方がいいんだが…」
この時間が終わってしまうのは名残惜しい。
3人に囲まれているのがではない。
ここから出えば3人と一緒にいる時間は終わってしまう。
「あれ?先輩…?」
タエは起きたようで、寝ぼけながらも目をこすっている。
「おはよう」
「おひゃようごじゃいまふ」
そういえば、彼女には助けられた。
最後の魔法、あれはタエのものだ。
「助かったよタエ」
「ふえ?私は先輩の言ったようにしただけですよ?凄いのは先輩でふ」
頭の後ろを俺の胸元にくっつけ、目だけこちらに向けてくる。
目が大きく見開かれ、可愛らしい。
「それでも気が付いたのはタエだよ」
俺はあらかじめ、最悪の状況も想定していた。
サクラとミサキが魔力を使えなくなり、俺も戦闘不能になる状況をだ。
そうなったときに、タエには迷わずモンスターの弱点を攻撃するように伝えてあった。
「けど、どうして尻尾が弱点ってわかったんだ?」
「なんとなくですけど、先輩が見ていたものが見えた気がするんです」
「というと?」
「その…血液みたいなものでしょうか?その中心が尻尾にあるのは分かりました」
それが本当なら凄いことだ。
「もしかしたらタエは魔眼を使えるのか?」
魔眼。
魔力の流れを見ることが出来る力で、限られたものしか使うことが出来ない。
「分かりませんけど…先輩のお役に立てたなら嬉しいです」
タエは口を手で隠すと、欠伸を噛み殺した。
「そういえば俺たちはどれぐらいここで寝ていたんだ?」
かなりの精神力を使った実感はある。が、すでにほとんど回復している。
今すぐに戦うことも可能なはずだ。
「コネクト」
念のため3人の魔力回路を確認するが、もうぼろぼろだ。
だが、魔力は完全に回復している。となるとそれなりの時間寝ていたことになるな…。
そんなことを考えていると、地面が揺れ、何かが近づいてくる。
「せ、先輩?」
タエも気づいたようで、怯えたような声を上げた。
「いや、これは…大丈夫だ」
やってきたのは、冒険者ギルドの鎧の纏った集団だった。
彼らはギルド直属の騎士団で、戦闘に立つのは優秀と名高いエーミットだった。
「無事かっ、ミキヤ殿ーーーーー」
大声を上げるエーミットに手を振ると、しーっと口に手を当てた。
彼は、俺の隣で寝る少女たちに気が付いたようで、慌てて口を閉じると、他の連中にも静かにするように指示を出した。
「これは失礼した、お楽しみのところだったかな?」
「どうしたらそんな風に見えるんだよ」
「可愛い女の子たちと引っ付いていて、寝ている子もいると来た。さっきまで何かしていたと考えてもおかしくはないだろう?」
「そんなことばかり言っているからもてないんだぞ」
エーミットは、笑った時に見える白い歯がチャームポイントの好青年だ。
モットーは女のために生きる!らしい。
ちなみに彼女は絶賛募集中だ。
「しかしこれは…ブリリアント4姉妹と一緒とは…なかなかやりますな」
「偶然だよ。それよりもエーミットはどうしてここに?」
「どうしてもこうしても、ミキヤ殿が戻って来られないので様子を見に来たのです」
となるとサユリのおかげか。
「そいつは助かった。見ての通り動けないからさ、後処理を頼むよ」
「分かりました。解体班、準備をっ!」
すぐに集団は散って、ベヒーモスの体は部位ごとに分けられていく。
非常に手際がいい。あと数時間もすれば持ち運べる大きさになるだろう。
にしてもサユリの奴、解体班をよこしたのかよ。
まるで俺が負けるはずがないと思っているみたいじゃないか。
「ま、いいか」
丁度いい。
終わるまではここで休ませてもらおう。
その時が彼女たち、3人との別れの時だ。
目を閉じると、再び眠りに落ちるのだった。
目を開けると、ミノタウロスは倒れていた。
俺としたことはなんたる失態だ。
モンスターの出る場所で寝てしまうとは…。
ハイエナが来ていたら餌食になっていたところだ。
動こうとすると、左右から圧迫されていることに気がついた。
おまけにいい匂いまでする。
「おいおい、こいつはどんな状況だよ」
右を向けばサクラのポニーテール、左を向けばミサキの寝顔、下を向けばタエの頭がある。
これはあれか、両手に花ってやつか。花の名に恥じず、みんな可愛い。
さて、状況を整理しよう。
俺たちはミノタウロスと戦った。勝利の寸前に奴は進化して抵抗してきた。
そいつを倒したあと俺は気絶した。
そんなところか。
そういえば、来た時に倒れていたあいつはいない。
途中で目を覚まして逃げたのだろう。
「さて、早く動いた方がいいんだが…」
この時間が終わってしまうのは名残惜しい。
3人に囲まれているのがではない。
ここから出えば3人と一緒にいる時間は終わってしまう。
「あれ?先輩…?」
タエは起きたようで、寝ぼけながらも目をこすっている。
「おはよう」
「おひゃようごじゃいまふ」
そういえば、彼女には助けられた。
最後の魔法、あれはタエのものだ。
「助かったよタエ」
「ふえ?私は先輩の言ったようにしただけですよ?凄いのは先輩でふ」
頭の後ろを俺の胸元にくっつけ、目だけこちらに向けてくる。
目が大きく見開かれ、可愛らしい。
「それでも気が付いたのはタエだよ」
俺はあらかじめ、最悪の状況も想定していた。
サクラとミサキが魔力を使えなくなり、俺も戦闘不能になる状況をだ。
そうなったときに、タエには迷わずモンスターの弱点を攻撃するように伝えてあった。
「けど、どうして尻尾が弱点ってわかったんだ?」
「なんとなくですけど、先輩が見ていたものが見えた気がするんです」
「というと?」
「その…血液みたいなものでしょうか?その中心が尻尾にあるのは分かりました」
それが本当なら凄いことだ。
「もしかしたらタエは魔眼を使えるのか?」
魔眼。
魔力の流れを見ることが出来る力で、限られたものしか使うことが出来ない。
「分かりませんけど…先輩のお役に立てたなら嬉しいです」
タエは口を手で隠すと、欠伸を噛み殺した。
「そういえば俺たちはどれぐらいここで寝ていたんだ?」
かなりの精神力を使った実感はある。が、すでにほとんど回復している。
今すぐに戦うことも可能なはずだ。
「コネクト」
念のため3人の魔力回路を確認するが、もうぼろぼろだ。
だが、魔力は完全に回復している。となるとそれなりの時間寝ていたことになるな…。
そんなことを考えていると、地面が揺れ、何かが近づいてくる。
「せ、先輩?」
タエも気づいたようで、怯えたような声を上げた。
「いや、これは…大丈夫だ」
やってきたのは、冒険者ギルドの鎧の纏った集団だった。
彼らはギルド直属の騎士団で、戦闘に立つのは優秀と名高いエーミットだった。
「無事かっ、ミキヤ殿ーーーーー」
大声を上げるエーミットに手を振ると、しーっと口に手を当てた。
彼は、俺の隣で寝る少女たちに気が付いたようで、慌てて口を閉じると、他の連中にも静かにするように指示を出した。
「これは失礼した、お楽しみのところだったかな?」
「どうしたらそんな風に見えるんだよ」
「可愛い女の子たちと引っ付いていて、寝ている子もいると来た。さっきまで何かしていたと考えてもおかしくはないだろう?」
「そんなことばかり言っているからもてないんだぞ」
エーミットは、笑った時に見える白い歯がチャームポイントの好青年だ。
モットーは女のために生きる!らしい。
ちなみに彼女は絶賛募集中だ。
「しかしこれは…ブリリアント4姉妹と一緒とは…なかなかやりますな」
「偶然だよ。それよりもエーミットはどうしてここに?」
「どうしてもこうしても、ミキヤ殿が戻って来られないので様子を見に来たのです」
となるとサユリのおかげか。
「そいつは助かった。見ての通り動けないからさ、後処理を頼むよ」
「分かりました。解体班、準備をっ!」
すぐに集団は散って、ベヒーモスの体は部位ごとに分けられていく。
非常に手際がいい。あと数時間もすれば持ち運べる大きさになるだろう。
にしてもサユリの奴、解体班をよこしたのかよ。
まるで俺が負けるはずがないと思っているみたいじゃないか。
「ま、いいか」
丁度いい。
終わるまではここで休ませてもらおう。
その時が彼女たち、3人との別れの時だ。
目を閉じると、再び眠りに落ちるのだった。
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