魔力を失ってもいいんですか?パーティーを追い出された魔力回路師は気ままに生きる

夜納木ナヤ

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目覚めのご褒美

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 目が覚めるとベッドの上にいた。
 寝る前の記憶では椅子に座っいるところで終わっている。
 何があったのだろうか?
 ベッドにいたはずのカナの姿は既になく、独り占め状態だ。

「おはようございます、先輩」
「あータエ、いたのか」

 いつの間にか、俺が座っていたはずの場所にはタエがいた。
 いつもよりほっぺたが赤くて、なんだか可愛らしく見える。
 いや、元から可愛いんだけどさ。

「カナはどうなった?」
「はい、呪いは無事取り除かれました。ありがとうございます」
「それは目で見て確認したのか?」
「はい」

 タエには魔眼がある。信じていいだろう。
 安心したら、起きたばかりなのに疲れがどっと来た。

「そういえば先輩にお聞きしたいことがるのですが?」
「なんだ?」
「随分とカナの胸にご執心だったようですね」
「は?」

 タエの目からハイライトが消え、初めて会った時のようなジト目を向けられる。
 あ、これはやばい…本気の奴だ。

 だが、心当たりが全くない。

「言っている意味が分からないんだが?」
「カナから聞きましたよ。呪いを解いている間、ずっと胸に触れていて、撫でるようにこね回していたと」
「まじか?」

 俺の意識はずっとカナの中にいて、外でのことなんて一切覚えていない。
 いや、いくら理性が崩壊寸前だったとは言え、そんな行為に及んでしまうとは…くそ、俺は魔力回路師の面汚しだ。あいつに文句を言えなくなる。

「途中で揉みしだいたとも…」
「そうか、それはすまなかった」

 無意識とは言え、そこまでしてしまうとは。
 謝って済むかは分からないが、きちんと伝えておかないと。
 彼女が望むのならば、結婚でも何でも受け入れよう。いやいや、結婚はさすがに不味いな。まずは付き合うところから…って、これだと好きな相手の事を考えてる痛い男みたいじゃねえか!

「…冗談です」
「はい?」
「ですから冗談です」

 タエはそう言うと、そっぽを向いた。
 待ってくれ。
 冗談にしては面白くないぞ?
 笑うどころか冷や汗もんだった。

「先輩にそのつもりがあったのか確認しただけです」
「そのつもり、とは?」
「エッチ」

 タエはさっきよりも顔を赤くすると、プイッとそっぽを向いた。
 それからチラチラ俺の様子をうかがうと、ため息をついた。

「少しはあってもいいんですよ?」
「はい?」

 それはつまり、俺にはカナを襲わせたかったのか?
 いやいや、それはない。
 タエ(脳内の)は、カナに触れる直前にジト目を向けてきたじゃないか。

「先輩って、実は女の子に興味がなかったりしますか?」
「それはない」

 付き合うなら女の子の方が良いに決まっている。

「そうですか」

 ボソッとした呟きは、どこかに嬉しそうだ。

 くそ、分からん。
 タエは何をしたいんだ?

「先輩」
「なんだよタ…」

 俺言葉を紡ぐ途中で、唇には柔らかい感触が伝わった。

「その…続きをご希望でしたらお相手しますよ?」
「……」

 キス、だよな?

 タエは顔を真っ赤にすると、顔をそむけた。

 何か言わないと…必死に頭を動かすと、脳内の思考回路がオーバーヒートを起こした。
 加えて、疲労が回復しきっていなかった頭は眠りを求めた。

「ごめんな、タエ」

 その言葉を実際に口に出来ていたのかは、俺には分からなかった。
 消えていく意識の中で、タエは優しく笑い、頭を撫でてくれていた。
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