魔力を失ってもいいんですか?パーティーを追い出された魔力回路師は気ままに生きる

夜納木ナヤ

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【タエ視点】複雑な心

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 魔力回路師ミキヤがカナの呪いを解いている同時刻、ブリリアント3姉妹は同じ宿の別部屋にて待機していた。

【タエ】

 先輩とカナが二人っきりになってから1時間以上があった。
 カナは裸で、先輩と二人っきり。

 呪いを治すためには仕方のないことだと分かっていても、やっぱりもやもやする。

「タエ、落ち着かない?」

 サクラは立ち上がると、窓から外を見た。
 
「サクラこそ、ずっとそわそわしてる」
「あはは、落ち着けって方が無理だよね」

 ミサキなんて拳を握りしめたままずっと無言で、手には爪の痕が出来ている。
 私は隣に座ると、そっと手を重ねた。

「ねえ、カナの調子が悪くなったのは魔王の部下と戦った後からなのよね?」
「うん」
「じゃあ、男を見て目の色を変えるようになったのって」
「関係あるかもね」

 ミサキは一度手を開くと、また握りしめようとする。
 私はそれを阻止するように手を滑り込ませると、手の平と手の平とが重なり、指が絡み合った。

「私…ずっと勘違いしてた。ううん、どこかで分かっていたわ。カナは嫌々そうしていた…そのはずなのに…」

 きつく当たっていたことを悔いているのだろう。
 心配ないよ。カナならわかってくる。

 元気づけようとして、体をくっつける。
 肩から伝わってくる感触が心地い。

「ありがとう」
「ううん」

 感謝するのは私の方だ。
 一人だったらきっと、カナを恨んでいた。

「先輩…」

 カナを心配しないといけないはずなのに、浮かぶのは先輩のことばかりだ。
 私はいけない子だ。
 先輩に知られたらきっと幻滅される。

「ぷ、先輩って」

 突然笑われた。
 気づけばサクラもこっちを見ている。

 あれ?もしかして口にしてた?

「深刻な顔で、アイツのことを考えてたの?」
「ふえ?」

 否定しようと思ったが、自分の気持ちを否定するようで嫌だった。

「ごめんね」

 私が謝ると、二人はさらに笑った。

「なんで謝るのよ、あーおっかしー。緊張してたのがバカみたいじゃない」
「ほんとだね」

 あれ?ここは怒るところじゃないの?
 どうしてカナの心配をしないんだーって。

「アイツのこと信頼してるんだ」
「それは…うん」

 私は一度、先輩に救われている。
 いきなり体を取り押さえられて、目に触られた時はびっくりした。
 そういう趣味の人もいるんだって…はっきり言ってドン引きした。

 けど、先輩は気まずそうな顔をすると、ごめんと言った。
 
 笑うことも、怒ることも出来ずに、私はただ見下したような目を向けることにした。
 
 目が治っていると気がついたのは、魔法を撃ち終わってからだった。

 きっと先輩は、カナのことも治してくれる。
 触れるのだって、呪いを消すためだ。

 分かっているのに…。

 ドクン。
 心臓の音が聞こえた気がする。

 呪いは回路師器官にかかっているらしい。
 その場所は…心臓の上と先輩は言っていた。

 呪いを治すために先輩は触れると言っていた。
 そう、つまりカナの胸に触れるのだ。

 ドクン。
 また心臓が高鳴った。

 あーもう…だめだ。

「また深刻そうな顔をしてるわね」

 今度は言い返せなかった。

「深刻と言うか…恋する乙女かな?」

 二人の顔を見られない。

 そうか、やっぱり私は先輩のことが好きなんだ。

 分かっていた。
 助けてもらって、別れたあの日から、再会を心待ちにしていた。

 魔力回路師は世界に5人しかいない。

 先輩の人となりを知るのは簡単だった。

 傭兵として活動し、パーティ参加時には契約書を書く。
 内容以上のことは一切しない。

 これだけ聞くと、融通の利かない人のように思えるが、評判はむしろ逆だった。
 悪い話を全然聞かない。

 改めて尊敬した。

 今度会った時は一緒にクエストをやりたい。
 ずっと抱いていた夢は叶った。

 出来ればこの先もずっと一緒に…。

「先輩はこの後、どうするんだろう…」

 ふと漏れた疑問に、二人は真剣に答えてくれる。

「そうね…約束はワーウルフまでで、その後のことは成り行きだったし、またどこかのパーティと契約するんじゃないかしら?」
「あはは…私もそう思う」

 うん、私もそう思う。

 先輩は、私なんかが引き留めていい人なんかなんかじゃない。
 それでも…やっぱり一緒にいたい。

 ☆☆☆

 それからしばらくして、カナが戻って来た。
 呪いがどうなったかなんて、顔を見れば一目瞭然だった。

 それよりも気になったのは…タエが幸せそうに触れている胸元だ。
 手の痕がある。多分先輩のものだ。
 はっきりと痕が付くぐらいに必死にその場所に触れていたんだ…ずるいなあ。

 何もなかったことは分かっている。
 それでも、気持ちは抑えきれない。

「先輩のところに行ってくる!」

 気が付くと部屋を飛び出していた。

「失礼しまーす」

 勢い任せにやってきたはいいが、いざ部屋に入るとなると戸惑う。
 そっと扉を開けると、先輩は眠っていた。

 汗だくで、服がぴったり張り付いている。
 このままでは風邪をひいてしまうかもしれない。

 一度部屋を出ると、濡れタオルを用意して戻った。

「失礼しまーす」

 そっと、先輩の服に手を忍ばせる。
 何度か抱き寄せられたことがあったが、こうして触れてみると、思った以上にガッチリしている。
 ふと、先輩の手が目に留まって、思わず手を重ねた。
 大きい。この手がカナの胸に…。

 気が付けば、自分の胸に先輩の手を重ねていた。
 眠っている。
 分かっているのにドキドキする。

 というかちょっと待って。
 私は何をしているの?

 今先輩が起きたらなんて言ったらいいの?

 イケないのは分かっている。
 先輩に幻滅されるかもしれない。

 それでも、どこかで、先輩に起きて欲しいと思う自分がいる。

「うーん…コネクトっ」

 突然の声に思わず手を離してしまった。

「なんだ、寝言か…」

 夢の中でも、カナを救おうとしているのだろうか。
 本当にすごい人だ。

 私だけじゃなくて、カナまで救ったんだから。
 それに男嫌いのミサキだって先輩を信用している。
 サクラだってそうだ。

「先輩はすごいです」

 もう止まらなかった。
 眠っている唇に、そっと口を重ねた。

 願わくば、今すぐに起きてくれることを祈って。
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