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呪いの除去
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俺の意識は体から離れ、カナの体内…回路に溶けていく。
……見つけた。
多分あそこが回路師器官だ。
だが、真っ黒で本体が見えない。
心臓の形をした黒いものがあるだけだ。
そう言えば昔、心臓が2つある!と自慢していた魔力回路師がいたそうだ。
そいつは回路師器官に気づいていたのかもしれない。
なにせ回路師器官は、心臓を小さくしたような見た目をしているのだから。
「と、そんなことを考えている場合じゃなかった」
今やるべきことは、回路師器官から黒い光を取り除くことだ。
光はひとつひとつが細い糸になっていて、複雑に絡みついてる。
糸の数は100を超え、無理に引き抜こうとすれば、中にある器官を締め付けてお陀仏だ。
「ったく、誰だよ。こんな細かい呪いをかけたのは…」
糸と糸の間のわずかな隙間を通り、魔力を奥へと伸ばしていく。
よし、たどり着いた、本体だ。
機能は停止してはいないようだが、呼吸の度に糸がのめり込み、表面が傷だらけだ。
いつ穴が空き、中身が漏れ出してもおかしくない。
「さて、どうしますかねえ…」
糸が何本も腕に絡み付いたとき、肌を傷つけずに糸を引き抜くのは困難だ。
今のカナの回路師器官がその状況だ。
糸を取るにはハサミで少しずつ切るしかない。
「こいつは参ったな」
力加減を間違えれば、回路師器官まで切ってしまう。
なにか安全にやれる方法があるといいんだが…。
糸と器官の間に壁を作るか?
無理だ。そもそもそんな空間があるのならばハサミなんて必要ない。
燃やすか?
おいおい正気か?回路師器官まで燃えるぞ?
ダメだ、悪いイメージばかりが浮かぶ。
こういうときは、考えても答えは出ない。
意識の中で、スッと深呼吸をする。
「迷った時はやってから考える!」
いいのか?
死ぬかもしれないぞ?
って、今更だな。
散々カナを煽っておいて、俺が悩むのかよ。
「チューニング」
魔力でハサミを作り出すと、糸の束の表面を少しだけ切り裂いた。
糸のほとんどは絡まったままだったが、小さな破片がいくつか飛び、タエの回路に流れていく。
あまりに小さくて、放っておけばすぐカナの魔力に溶けてしまう。
それがどんな悪影響を及ぼすのか、今の俺にはわからない。
危険は出来るだけ減らしておきたい。
破片のひとつひとつを魔力の層で包み、体内で溶けないようにする。
そいつを左腕まで移動させると、つないである浄化器へと流し込んだ。
よし…。
少し、ほんの少しではあるが、カナの中から呪いは消えた。
「気が遠くなりそうだな」
糸を切っては破片を包み、浄化器へと流す。
その作業を延々と続ける。
単純作業だが気は抜けない。
ひとつでも間違えれば、どんな後遺症が残るのか想像もつかない。
「あー辛い…」
何十か、何百か、あるいは何千か。
同じことを繰り返し、ようやく糸の束が半分ほどになったところで、集中力が途切れてくる。
ダメだ。まだ早い。
まだ先は長いんだ。
同じことの連続で、作業よりも思考に意識が集中してく。
「俺はなんでこんなことをしているんだ?」
完全に思考が停止しかける。
あーもうだめだ…。
「頑張って、先輩さん!」
「ちょっと、失敗したら許さないわよ!」
「先輩、信じています」
いないはずの3人の声が聞こえる。
「あーそうか、そうだよな」
3人いるんだ。
だけどたった3人…3人しかいない。
ブリリアント4姉妹は4人いないといけない。
そうしないと本当の笑顔にはたどり着けない。
深呼吸をすると、作業を再開した。
それから数分後、いや数時間後だったのかもしれない。
黒い光は薄くなっていき、回路師器官の表面が見えてきた。
ここまでくればハゲかけのおっさんの頭と同じだ。糸と糸は絡むほども量がない。
一本、また一本と確実に摘み取っていく。
そして、無事にハゲが完成…じゃなかった回路師器官を覆っていた黒い光は消え去った。
「あとは回路師器官の傷を治して…って、もうダメだまた今度にしよう…」
俺の意識は、自らの体に戻っていった。
……見つけた。
多分あそこが回路師器官だ。
だが、真っ黒で本体が見えない。
心臓の形をした黒いものがあるだけだ。
そう言えば昔、心臓が2つある!と自慢していた魔力回路師がいたそうだ。
そいつは回路師器官に気づいていたのかもしれない。
なにせ回路師器官は、心臓を小さくしたような見た目をしているのだから。
「と、そんなことを考えている場合じゃなかった」
今やるべきことは、回路師器官から黒い光を取り除くことだ。
光はひとつひとつが細い糸になっていて、複雑に絡みついてる。
糸の数は100を超え、無理に引き抜こうとすれば、中にある器官を締め付けてお陀仏だ。
「ったく、誰だよ。こんな細かい呪いをかけたのは…」
糸と糸の間のわずかな隙間を通り、魔力を奥へと伸ばしていく。
よし、たどり着いた、本体だ。
機能は停止してはいないようだが、呼吸の度に糸がのめり込み、表面が傷だらけだ。
いつ穴が空き、中身が漏れ出してもおかしくない。
「さて、どうしますかねえ…」
糸が何本も腕に絡み付いたとき、肌を傷つけずに糸を引き抜くのは困難だ。
今のカナの回路師器官がその状況だ。
糸を取るにはハサミで少しずつ切るしかない。
「こいつは参ったな」
力加減を間違えれば、回路師器官まで切ってしまう。
なにか安全にやれる方法があるといいんだが…。
糸と器官の間に壁を作るか?
無理だ。そもそもそんな空間があるのならばハサミなんて必要ない。
燃やすか?
おいおい正気か?回路師器官まで燃えるぞ?
ダメだ、悪いイメージばかりが浮かぶ。
こういうときは、考えても答えは出ない。
意識の中で、スッと深呼吸をする。
「迷った時はやってから考える!」
いいのか?
死ぬかもしれないぞ?
って、今更だな。
散々カナを煽っておいて、俺が悩むのかよ。
「チューニング」
魔力でハサミを作り出すと、糸の束の表面を少しだけ切り裂いた。
糸のほとんどは絡まったままだったが、小さな破片がいくつか飛び、タエの回路に流れていく。
あまりに小さくて、放っておけばすぐカナの魔力に溶けてしまう。
それがどんな悪影響を及ぼすのか、今の俺にはわからない。
危険は出来るだけ減らしておきたい。
破片のひとつひとつを魔力の層で包み、体内で溶けないようにする。
そいつを左腕まで移動させると、つないである浄化器へと流し込んだ。
よし…。
少し、ほんの少しではあるが、カナの中から呪いは消えた。
「気が遠くなりそうだな」
糸を切っては破片を包み、浄化器へと流す。
その作業を延々と続ける。
単純作業だが気は抜けない。
ひとつでも間違えれば、どんな後遺症が残るのか想像もつかない。
「あー辛い…」
何十か、何百か、あるいは何千か。
同じことを繰り返し、ようやく糸の束が半分ほどになったところで、集中力が途切れてくる。
ダメだ。まだ早い。
まだ先は長いんだ。
同じことの連続で、作業よりも思考に意識が集中してく。
「俺はなんでこんなことをしているんだ?」
完全に思考が停止しかける。
あーもうだめだ…。
「頑張って、先輩さん!」
「ちょっと、失敗したら許さないわよ!」
「先輩、信じています」
いないはずの3人の声が聞こえる。
「あーそうか、そうだよな」
3人いるんだ。
だけどたった3人…3人しかいない。
ブリリアント4姉妹は4人いないといけない。
そうしないと本当の笑顔にはたどり着けない。
深呼吸をすると、作業を再開した。
それから数分後、いや数時間後だったのかもしれない。
黒い光は薄くなっていき、回路師器官の表面が見えてきた。
ここまでくればハゲかけのおっさんの頭と同じだ。糸と糸は絡むほども量がない。
一本、また一本と確実に摘み取っていく。
そして、無事にハゲが完成…じゃなかった回路師器官を覆っていた黒い光は消え去った。
「あとは回路師器官の傷を治して…って、もうダメだまた今度にしよう…」
俺の意識は、自らの体に戻っていった。
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