魔力を失ってもいいんですか?パーティーを追い出された魔力回路師は気ままに生きる

夜納木ナヤ

文字の大きさ
20 / 42

解呪の前座

しおりを挟む
 カナの呪いと解くべく、宿の一室を借りた。
 
 俺はカナと二人っきりだ。
 決してやましいことをするのではない。
 カナはベッドにいて、上半身裸で、薄い布を纏っているだけだが、断じてやましいことをするのではない。
 その証拠に、左腕には治療に使う浄化器をつなげてある。

 それに、おかしなことがあれば、隣の部屋で待機している3人が飛び込んでくるはずだ。

 どうしてしつこく繰り返しているかと言えば、俺自身が理性を保つのに必死だからだ。
 あまり離れていてもおかしいので、ベッドの横に置いた椅子に座った。

「カナ、準備はいいか?」

 カナは頬を赤く染めると、俺から体を隠すように背中を向けた。

 おいおい、変にムードを出すのは止めてくれよ…。
 必死に抑えている理性がどうにかなりそうだ。

「回路師機関なんてはじめて聞いた」
「あ、ああ…そうだろうな。俺が見つけたんだから」

 カナに触る理由を説明するために、回路師器官の話はしてある。
 4人共半信半疑のようだったが、一応は信じてくれた…はずだ。

「どうして今までは見つからなかったの?」
「あーなんでだろな、契約書なんていちいち書かせるぐらいに俺が細かいからか?」

 大体のやつが、ギルドを通して契約している。
 個人で契約書を作っているのなんて俺ぐらいなもんだ。

「ねえ、聞いてもいい?」
「なんだよ」
「タエの呪いを治した人で合ってる?」
「そうだな」

 意図が分からず、ぶっきらぼうに答えると、カナの手が俺に触れた。

「すごい。私には出来なかった」
「そういえばタエには聞かなかったけど、あの呪いも魔王の部下に会った時からか?」

 うんうん、とカナは無言で頷いた。

「あのまま放っておけば失明していたからな。目に手を当てた時は嫌がられたけど」

 魔法10連撃の後に、タエに向けられたジト目は今でも忘れない。
 可愛い女の子じゃなかったら心が折れていたところだ。

「ふふふ…ビックリした。タエがあんなに楽しそうで」
「サクラとミサキにも言われたな。普段はどんななんだ?」
「一番のしっかり者。ちょっとした変化にもすぐに気づいてくれる」
「そうか…」

 いまだに信じられないが、3人が3人そう言うのならそうなのだろう。
 
「えーっと…先輩?先輩さん?先輩様?」
「いや別に、先輩って呼ばなくていいからな?」
「みんなそう呼ぶから趣味なのかと…」
「いや違うから」

 タエには俺から呼ばせたようなもんだけど、決して勘違いされる理由ではない。
 名前で呼びにくそうにしていて、兄ちゃんとか恥ずかしい呼ばれ方をされそうになったから、必死にひねり出しただけだ。

 さて、このまま話していてもどうにもならない。
 そろそろ始めたいところだ。

 カナも同じことを思っていたのか、触れている手が震えていた。

「怖いか?」
「うん。何もしないのはだめって分かっているけど、やるとなるとやっぱり怖い」
「そうだな…俺にできることがあったらいいんだど…」

 生憎俺は声をかけることぐらいしか出来ない。
 
「じゃあ一つお願いがある」
「なんだ?」
「私に回路の作り方を教えて?」
「いやいや、必要ないだろ」

 魔王の部下から逃げ延びることが出来るほどの回路を作れるんだ。
 今更俺がどうこう言って、感覚が狂っても困りものだ。

「貴方の回路はとても繊細だった。みんなのために私もそこに至りたい」
「そういうことなら…まあ、いいか」

 3人の笑顔が脳裏に浮かんで、断ることが憚られた。
 それに、それが彼女の勇気になるのなら悪くはない。

「分かった」
「それじゃあよろしくお願いします」

 タエはそう言うと、ベッドに仰向けになった。

「さて、やるか」

 いざその時が来るとドキドキしてくる。
 呪いと対峙することは問題ない。

 俺は今から女の子に触れるのだ…なんとか理性を抑えてきたがどうなるか…。
 触れる寸前で戸惑っていると、タエのジト目が浮かんだ。

 あーうん、やっぱりしっかり者だなあいつは。
 こんな時まで監視してやがる。

 指先に柔らかい感触が触れると、「あ」と小さな声が上がった。
 あえてその顔を見ないようにすると、無心で魔力をつなげる。

「コネクト」

 心臓の少し上、そこに回路師機関はあるはずだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...