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第1章
14話
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「心形刀流、練武館、伊庭殿。
神道無念流、練兵館、斎藤殿。
北辰一刀流、玄武館、千葉殿。
鏡新明智流、士学館、桃井殿。
一刀流、小野殿。
直心影流、男谷殿。
天然理心流、近藤殿」
江戸中の、いや、関八州の主要な道場主が次々と呼び出される。
各道場の主と代表者五人が上覧試合をするのだ。
その上覧試合に、続々と人が集まっている。
武芸が奨励されたことはもちろんだが、今迄とは違って、仕官がかなう可能性が高かったからだ。
しかも元々の地位や家柄を問わず、騎乗士になれる可能性すらあるのだ。
どの道場でも代表の座を巡って激しい争いが行われた。
幕府が、いや、尾張徳川家が認定した道場からは、道場主と代表者が上覧試合に参加できるとあって、雨後の筍のように道場が新設された。
だがそれは剣術道場に限らなかった。
尾張徳川家当主、徳川慶恕は鉄砲術、弓術、特に騎射の流鏑馬、犬追物、笠懸を重視し、その次に槍術に重きを置いていた。
だから困窮する諸藩は、猟師に郷士の資格を与え、江戸で行われる鉄砲術試合と弓術試合に参加させた。
一人でも二人でも蝦夷地に黒鍬衆として派遣されれば、飢饉のときに領民がそこを頼って逃げることができる。
江戸詰めや尾張詰めの三十俵徒士になれれば、家族は当然飢えなくてすむし、親戚縁者も尾張家家臣の下男下女に雇ってもらえる可能性がある。
諸藩はなりふり構わず家臣を上覧試合に参加させた。
それだけではなく、初戦や二回戦三回戦といった試合の会場に、自藩の上屋敷中屋敷下屋敷を使ってもらおうと尾張家詣でをした。
勝手向きの厳しい藩では、試合の見物代や飲食の販売代も馬鹿にできないのだ。
尾張家、徳川慶恕の影響力が徐々に広がっていた。
「兄上。
浪士隊、いえ、徒士組の編成と所属はいかがいたしましょうか?」
「基本は尾張家で召し抱える。
だが所属は実戦にあわせたいと思っている。
実戦になった時には、指揮能力のある者に任せなければならない。
徒士組の中に突出した者がいるなら、その者を騎乗役や物頭に任じてもいい。
いや、年寄りに任じても構わぬのだ」
「そのまでお考えでしたか」
「どんどん実戦形式の試合を行わせてくれ。
必要なら甲関八州に蔓延る博徒を討伐させて、実際に人を殺させてもいい。
実際に戦わせなければ、本当の実力、なによりも大切な胆力が分からん」
徳川慶恕は自分の事が分かっていた。
自分が戦国の荒武者でも名将でもない事をよく知っていた。
好く言えば財政家、悪く言えば金勘定しかできない算盤侍だと自覚していた。
命を賭けた最前線で、冷静な指揮が取れるとは思っていなかった。
だからこそ、信頼できる実戦指揮官、侍大将が喉から手が出るほど欲しかった。
神道無念流、練兵館、斎藤殿。
北辰一刀流、玄武館、千葉殿。
鏡新明智流、士学館、桃井殿。
一刀流、小野殿。
直心影流、男谷殿。
天然理心流、近藤殿」
江戸中の、いや、関八州の主要な道場主が次々と呼び出される。
各道場の主と代表者五人が上覧試合をするのだ。
その上覧試合に、続々と人が集まっている。
武芸が奨励されたことはもちろんだが、今迄とは違って、仕官がかなう可能性が高かったからだ。
しかも元々の地位や家柄を問わず、騎乗士になれる可能性すらあるのだ。
どの道場でも代表の座を巡って激しい争いが行われた。
幕府が、いや、尾張徳川家が認定した道場からは、道場主と代表者が上覧試合に参加できるとあって、雨後の筍のように道場が新設された。
だがそれは剣術道場に限らなかった。
尾張徳川家当主、徳川慶恕は鉄砲術、弓術、特に騎射の流鏑馬、犬追物、笠懸を重視し、その次に槍術に重きを置いていた。
だから困窮する諸藩は、猟師に郷士の資格を与え、江戸で行われる鉄砲術試合と弓術試合に参加させた。
一人でも二人でも蝦夷地に黒鍬衆として派遣されれば、飢饉のときに領民がそこを頼って逃げることができる。
江戸詰めや尾張詰めの三十俵徒士になれれば、家族は当然飢えなくてすむし、親戚縁者も尾張家家臣の下男下女に雇ってもらえる可能性がある。
諸藩はなりふり構わず家臣を上覧試合に参加させた。
それだけではなく、初戦や二回戦三回戦といった試合の会場に、自藩の上屋敷中屋敷下屋敷を使ってもらおうと尾張家詣でをした。
勝手向きの厳しい藩では、試合の見物代や飲食の販売代も馬鹿にできないのだ。
尾張家、徳川慶恕の影響力が徐々に広がっていた。
「兄上。
浪士隊、いえ、徒士組の編成と所属はいかがいたしましょうか?」
「基本は尾張家で召し抱える。
だが所属は実戦にあわせたいと思っている。
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徒士組の中に突出した者がいるなら、その者を騎乗役や物頭に任じてもいい。
いや、年寄りに任じても構わぬのだ」
「そのまでお考えでしたか」
「どんどん実戦形式の試合を行わせてくれ。
必要なら甲関八州に蔓延る博徒を討伐させて、実際に人を殺させてもいい。
実際に戦わせなければ、本当の実力、なによりも大切な胆力が分からん」
徳川慶恕は自分の事が分かっていた。
自分が戦国の荒武者でも名将でもない事をよく知っていた。
好く言えば財政家、悪く言えば金勘定しかできない算盤侍だと自覚していた。
命を賭けた最前線で、冷静な指揮が取れるとは思っていなかった。
だからこそ、信頼できる実戦指揮官、侍大将が喉から手が出るほど欲しかった。
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