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第4章:伊勢屋と共有田と金貸し
第40話:伊勢屋
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定之丞の勧めで設けられた伊勢御師の拠点は、檀家衆から伊勢屋と呼ばれるようになった。
最初は檜垣屋が自腹を切って借り受けた表店だったが、徐々にその存在は多くの人に知られるようになると、信心深い富豪が土地屋敷を寄進するようになる。
更に時が経つと、伊勢講が持つ共有林から材木を用意し、檀家衆が力を合わせて建て、共有田から維持費を捻出するようになった。
「さて、今年の伊勢参りだが、毎年参詣するのは庄屋さん所だけだ。
積立終っている家で今年参る家はどこだ」
とある豊かな村の伊勢講で参詣について話し合いが行われていた。
豊かなだけでなく信心深いこの村では、御師を頼って一律の積み立てをするのではなく、家の収入に応じて積立金が違うのだ。
だから毎年代表が参詣する庄屋のような家は他にないが、三年に一度、五年に一度家族の代表が参詣する家もあった。
更に参詣できない年でも、庄屋さんが建ててくれた伊勢屋に参り、一朱の金額と定めた酒肴を食べる決まりになっていた。
酒肴を愉しむのは、伊勢神宮に行けない者が伊勢屋に詣でる時だけではない。
伊勢参りに行く者には餞別を渡しているので、必ずお土産を買って来てくれる。
それを配る日に伊勢屋に集まり、酒肴を食べながら土産話を聞くのだ。
年によっては女衆だけで伊勢屋に参詣する事がある。
何時も忙しく立ち働く女衆のために、伊勢講で積み立てたお金で酒肴を整え、男衆に気兼ねなく愉しむのだ。
御師から渡される土産も、お世話になっている御師によって大きく変わる。
どの御師も檀家衆の歓心を買うために魅力的な土産を考えている。
農作業に使い勝手が良いように作られた伊勢暦や大麻はほぼ共通だが、それ以外の土産の良し悪しが、他の御師から檀家衆を奪う武器となっていた。
野間、小西、山原、岩城の四家は萬金丹という薬を土産にしていた。
小西家 では治効圓という小児薬を土産としていた。
はら屋は梅毒薬を土産としていたので、悪所通いの旦那衆を檀家に抱えていた。
兼業で御師宿を営んでいる家は、その仕事で作る物を土産としていた。
反物 、帯 、足袋 、油単といった衣類を得意とする家もある。
田丸箸や利久箸、黄楊櫛といった木工品を得意とすり御師宿もあった。
八日市場町の大主家は、見事な伊勢春慶塗を土産にしていたが、それだけ裕福な檀家を数多く抱えていた。
だが、お伊勢様を信心したい村が全て豊かとは限らない。
毎年お家参りに参詣できる家など一軒もない貧乏村もある。
それどころか、小さく貧しい村では、どれだけ頑張っても十年に一度も代表を送れない。
五年に一度、酷い場合は十年に一度近くの伊勢屋に参詣できれば良い。
そんな貧乏村もあるのだ。
村人が汗水たらして頑張っても、どうしようもない立地の村がある。
大雨の度に堤防を決壊してしまい、一年かけた稲が台無しになってしまう。
日照りが続けば水争いがおこり、力のない村は水不足で稲が駄目になってしまう。
どんなに努力しても、自然には敵わない。
あるいは日本住血吸虫病のような風土病、地方病に苦しめられる村では、若くして病を得て、苦痛と疲労にさいなまれながら農作業をしなければならない。
だがどれほど頑張っても若くして死んでしまう事になる。
伊勢屋は、そんな貧乏村に僅かな希望を与えてくれる存在だった。
特に病を得た者は、富豪に援助してもらってもお伊勢様までの旅に耐えられない。
そんな病人でも、伊勢屋までなら参詣する事ができる。
そんな事もあって、柘植定之丞が考えた御師の拠点は檀家衆に心から喜ばれ、栄えた城下町だけでなく、それなりの宿場町や信心深い町や村にも建てられた。
独自で伊勢屋を建てる事ができない町や村では、伊勢講の仲間で多少は裕福な家が、持ち回りで御師を迎える役を受け持っていた。
最初は檜垣屋が自腹を切って借り受けた表店だったが、徐々にその存在は多くの人に知られるようになると、信心深い富豪が土地屋敷を寄進するようになる。
更に時が経つと、伊勢講が持つ共有林から材木を用意し、檀家衆が力を合わせて建て、共有田から維持費を捻出するようになった。
「さて、今年の伊勢参りだが、毎年参詣するのは庄屋さん所だけだ。
積立終っている家で今年参る家はどこだ」
とある豊かな村の伊勢講で参詣について話し合いが行われていた。
豊かなだけでなく信心深いこの村では、御師を頼って一律の積み立てをするのではなく、家の収入に応じて積立金が違うのだ。
だから毎年代表が参詣する庄屋のような家は他にないが、三年に一度、五年に一度家族の代表が参詣する家もあった。
更に参詣できない年でも、庄屋さんが建ててくれた伊勢屋に参り、一朱の金額と定めた酒肴を食べる決まりになっていた。
酒肴を愉しむのは、伊勢神宮に行けない者が伊勢屋に詣でる時だけではない。
伊勢参りに行く者には餞別を渡しているので、必ずお土産を買って来てくれる。
それを配る日に伊勢屋に集まり、酒肴を食べながら土産話を聞くのだ。
年によっては女衆だけで伊勢屋に参詣する事がある。
何時も忙しく立ち働く女衆のために、伊勢講で積み立てたお金で酒肴を整え、男衆に気兼ねなく愉しむのだ。
御師から渡される土産も、お世話になっている御師によって大きく変わる。
どの御師も檀家衆の歓心を買うために魅力的な土産を考えている。
農作業に使い勝手が良いように作られた伊勢暦や大麻はほぼ共通だが、それ以外の土産の良し悪しが、他の御師から檀家衆を奪う武器となっていた。
野間、小西、山原、岩城の四家は萬金丹という薬を土産にしていた。
小西家 では治効圓という小児薬を土産としていた。
はら屋は梅毒薬を土産としていたので、悪所通いの旦那衆を檀家に抱えていた。
兼業で御師宿を営んでいる家は、その仕事で作る物を土産としていた。
反物 、帯 、足袋 、油単といった衣類を得意とする家もある。
田丸箸や利久箸、黄楊櫛といった木工品を得意とすり御師宿もあった。
八日市場町の大主家は、見事な伊勢春慶塗を土産にしていたが、それだけ裕福な檀家を数多く抱えていた。
だが、お伊勢様を信心したい村が全て豊かとは限らない。
毎年お家参りに参詣できる家など一軒もない貧乏村もある。
それどころか、小さく貧しい村では、どれだけ頑張っても十年に一度も代表を送れない。
五年に一度、酷い場合は十年に一度近くの伊勢屋に参詣できれば良い。
そんな貧乏村もあるのだ。
村人が汗水たらして頑張っても、どうしようもない立地の村がある。
大雨の度に堤防を決壊してしまい、一年かけた稲が台無しになってしまう。
日照りが続けば水争いがおこり、力のない村は水不足で稲が駄目になってしまう。
どんなに努力しても、自然には敵わない。
あるいは日本住血吸虫病のような風土病、地方病に苦しめられる村では、若くして病を得て、苦痛と疲労にさいなまれながら農作業をしなければならない。
だがどれほど頑張っても若くして死んでしまう事になる。
伊勢屋は、そんな貧乏村に僅かな希望を与えてくれる存在だった。
特に病を得た者は、富豪に援助してもらってもお伊勢様までの旅に耐えられない。
そんな病人でも、伊勢屋までなら参詣する事ができる。
そんな事もあって、柘植定之丞が考えた御師の拠点は檀家衆に心から喜ばれ、栄えた城下町だけでなく、それなりの宿場町や信心深い町や村にも建てられた。
独自で伊勢屋を建てる事ができない町や村では、伊勢講の仲間で多少は裕福な家が、持ち回りで御師を迎える役を受け持っていた。
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