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第4章:伊勢屋と共有田と金貸し
第51話:後始末
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博徒三百人の取り調べは苛烈を極めた。
単なる町人を襲ったのではない。
従五位上の官位と、地下とはいえ権禰宜の神職を持つ者を襲ったのだ。
枚岡鬼三郎は流石に普通の取り調べで自白したりしなかった。
加茂虎太郎の子分衆でも兄貴分の多くは口が堅かった。
だが、三下博徒の口は軽く、ほんの少し罪を軽くすると言われただけで、ぺらぺらとある事ない事自白した。
東海道筋の助っ人博徒はもっと簡単だった。
彼らは枚岡鬼三郎と加茂虎太郎の手際の悪さに激怒していた。
自分達が捕らえられ罪を問われるだけでなく、地元にいる親分にまで取り調べが及ぶと言われたのだから、虎太郎の関与を自供するのは当然だった。
そこまで共犯者の証拠と自供を積み上げてから、定之丞は江戸表に鬼三郎と自供しない連中の拷問許可を求めた。
柘植家の下忍が行う拷問は苛烈を極めた。
鬼三郎以下全員が罪を認めただけでなく、檜垣屋襲撃を黙認した外宮の神官家、山田三方年寄家、再び賄賂を受け取った大阪町奉行所与力同心の名を自供した。
外宮神官家の正禰宜は、度会常之以外全員強制隠居させられた。
悪事の関与を表沙汰にしない代償に、度会常之に近い血縁者を養嗣子に向かえなければいけなくなった。
博徒に手を貸した山田三方年寄家も、悪事を表沙汰にしない条件で柘植家の下忍平御師に御師宿や町家を譲る事になり、人目を忍んで山田から去って行った。
今回悪事に加担した山田三方年寄家が人目を忍ばなければいけない理由は、博徒に手を貸した事だけではなかった。
事もあろうに、人を雇って古市に五軒もの遊郭を営んでいたのだ。
御師として絶対に許されない穢れた行いだった。
五軒の遊郭も柘植家の下忍が表向き主人となり、実質は柘植家の物となった。
これでまた多くの分家や一族を雇う事ができる。
ただ、武勇に優れた者、定之丞や伝兵衛に血が濃い者には別だった。
従兄弟や又従兄弟は、大阪町奉行所の与力同心家の養嗣子となった。
今回の悪事を表沙汰にしない条件で、当主と嫡男が腹を切ったのだ。
二度も恥をかかされた大阪西町奉行興津忠通の怒りは、尋常一様ではなかった。
賄賂を受け取った当人への怒りだけでなく、それを見て見ぬ振りした全与力同心への不信感が激しかった。
西だけでなく東の与力同心家から養嗣子を迎える気になどならなかった。
いや、大阪城代や大阪定番加番、御船手組の与力同心すら信じられなかった。
そこに柘植家に頼まれた山田奉行大岡忠移から与力同心の推薦があったのだ。
柘植家の縁者に、腹を切らせた与力同心家を継がせるのは当然だった。
全ての裁きが終わって、柘植親子は酒を酌み交わしていた。
莫大な富が手に入ったので、酒肴に困らなくなっていた。
「両加茂神社の禰宜を処分できなかったのは腹立たしい事だが、それほど待つことなくお伊勢様の天罰が下るだろう」
柘植伝兵衛は、下忍に両加茂神社の禰宜を殺すように命じていた。
そうしておかないと、外の神職だけは何をしても裁かれないと思われ、再び同じような事が行われかねないのだ。
「虎太郎を逃したのは無念です。
陣吉達も不手際を何度も詫びておりました」
定之丞が父上の伝兵衛に陣吉達の失敗をとりなす。
「山田以外では人手が足りない。
まして陣吉達には伊勢屋の手代と言う表の仕事がある。
此方の役目に集中できないのは当然だ。
気にする必要はないと伝えておけ」
「はっ、ありがとうございます」
「それにしても、女達は可哀想だったな」
「はい、唐に売られる前に助けられたのは良かったですが、さんざん嬲り者にされた後で、乱心してしまっておりました。
御爺様と御婆様が女達の心を癒してくださればいいのですが」
博徒に誘拐された女達がどんな目にあわされたのか、大阪町奉行所の与力同心達に分からない訳がなかった。
実家に戻って心無い噂にさらされたら、せっかく助けたのに自害される恐れがあったので、噂の届く恐れのない江戸の屋敷に送ったのだ。
「我らは神でも仏でもない。
山田の支配組頭としてやれる範囲の事をするだけだ」
柘植親子の飲む酒は、他人が思うほど美味しくはない。
だが、切り替えが早くなければ死ぬのが忍者というものだ。
どれほど後味が悪くても、酒肴を美味しくいただくくらいの胆力はあった。
単なる町人を襲ったのではない。
従五位上の官位と、地下とはいえ権禰宜の神職を持つ者を襲ったのだ。
枚岡鬼三郎は流石に普通の取り調べで自白したりしなかった。
加茂虎太郎の子分衆でも兄貴分の多くは口が堅かった。
だが、三下博徒の口は軽く、ほんの少し罪を軽くすると言われただけで、ぺらぺらとある事ない事自白した。
東海道筋の助っ人博徒はもっと簡単だった。
彼らは枚岡鬼三郎と加茂虎太郎の手際の悪さに激怒していた。
自分達が捕らえられ罪を問われるだけでなく、地元にいる親分にまで取り調べが及ぶと言われたのだから、虎太郎の関与を自供するのは当然だった。
そこまで共犯者の証拠と自供を積み上げてから、定之丞は江戸表に鬼三郎と自供しない連中の拷問許可を求めた。
柘植家の下忍が行う拷問は苛烈を極めた。
鬼三郎以下全員が罪を認めただけでなく、檜垣屋襲撃を黙認した外宮の神官家、山田三方年寄家、再び賄賂を受け取った大阪町奉行所与力同心の名を自供した。
外宮神官家の正禰宜は、度会常之以外全員強制隠居させられた。
悪事の関与を表沙汰にしない代償に、度会常之に近い血縁者を養嗣子に向かえなければいけなくなった。
博徒に手を貸した山田三方年寄家も、悪事を表沙汰にしない条件で柘植家の下忍平御師に御師宿や町家を譲る事になり、人目を忍んで山田から去って行った。
今回悪事に加担した山田三方年寄家が人目を忍ばなければいけない理由は、博徒に手を貸した事だけではなかった。
事もあろうに、人を雇って古市に五軒もの遊郭を営んでいたのだ。
御師として絶対に許されない穢れた行いだった。
五軒の遊郭も柘植家の下忍が表向き主人となり、実質は柘植家の物となった。
これでまた多くの分家や一族を雇う事ができる。
ただ、武勇に優れた者、定之丞や伝兵衛に血が濃い者には別だった。
従兄弟や又従兄弟は、大阪町奉行所の与力同心家の養嗣子となった。
今回の悪事を表沙汰にしない条件で、当主と嫡男が腹を切ったのだ。
二度も恥をかかされた大阪西町奉行興津忠通の怒りは、尋常一様ではなかった。
賄賂を受け取った当人への怒りだけでなく、それを見て見ぬ振りした全与力同心への不信感が激しかった。
西だけでなく東の与力同心家から養嗣子を迎える気になどならなかった。
いや、大阪城代や大阪定番加番、御船手組の与力同心すら信じられなかった。
そこに柘植家に頼まれた山田奉行大岡忠移から与力同心の推薦があったのだ。
柘植家の縁者に、腹を切らせた与力同心家を継がせるのは当然だった。
全ての裁きが終わって、柘植親子は酒を酌み交わしていた。
莫大な富が手に入ったので、酒肴に困らなくなっていた。
「両加茂神社の禰宜を処分できなかったのは腹立たしい事だが、それほど待つことなくお伊勢様の天罰が下るだろう」
柘植伝兵衛は、下忍に両加茂神社の禰宜を殺すように命じていた。
そうしておかないと、外の神職だけは何をしても裁かれないと思われ、再び同じような事が行われかねないのだ。
「虎太郎を逃したのは無念です。
陣吉達も不手際を何度も詫びておりました」
定之丞が父上の伝兵衛に陣吉達の失敗をとりなす。
「山田以外では人手が足りない。
まして陣吉達には伊勢屋の手代と言う表の仕事がある。
此方の役目に集中できないのは当然だ。
気にする必要はないと伝えておけ」
「はっ、ありがとうございます」
「それにしても、女達は可哀想だったな」
「はい、唐に売られる前に助けられたのは良かったですが、さんざん嬲り者にされた後で、乱心してしまっておりました。
御爺様と御婆様が女達の心を癒してくださればいいのですが」
博徒に誘拐された女達がどんな目にあわされたのか、大阪町奉行所の与力同心達に分からない訳がなかった。
実家に戻って心無い噂にさらされたら、せっかく助けたのに自害される恐れがあったので、噂の届く恐れのない江戸の屋敷に送ったのだ。
「我らは神でも仏でもない。
山田の支配組頭としてやれる範囲の事をするだけだ」
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どれほど後味が悪くても、酒肴を美味しくいただくくらいの胆力はあった。
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