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第5章:内海船と北前船
第57話:隠蔽
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柘植家が内々に届出た薩摩の密貿易情報は、幕閣の動きを加速させた。
竹姫が薩摩に嫁いだ頃は吉宗公も健在で、数々の利権を薩摩藩に渡したが、それにつけあがった薩摩の厚かましさが、幕閣の怒りを買っていたのだ。
吉宗公が亡くなられて三年後、幕府は薩摩藩に木曽三川の治水工事を命じた。
隠居後も実験を握り続けた吉宗公が亡くなられ、家重公が政務の実権を握られた事で、正の遺産と負の遺産の両方と対峙しなければいけなかった。
その一つが薩摩藩との関係だったが、手のひらを返すような命令になったのは、それだけ薩摩が幕閣に怒りを買うような要求を繰り返していたからだろう。
そして今の将軍は家治公となっており、幕府老中は酒井忠寄を首座を務め、松平武元、松平輝高、井上正経、秋元凉朝という陣容だった。
この状態で密貿易の疑いが届出られたのだ。
その取り調べが熾烈を極めたのは言うまでもない。
幕閣は勘定奉行所から算術に明るい勘定や支配勘定を選んで越後に派遣した。
佐渡奉行にも命じて、将軍家から預かっている船を使って厳しく取り締まるようにさせた。
将軍家預かり船による取り調べを命じられたのは、大阪に本拠を置く大坂御船手組、佐渡奉行所、山田奉行所も同じだった。
もちろんお膝元である江戸の船手組も湊の取り締まりを厳重にして、江戸湾から抜け荷が入らないようにした。
そんな中で特に張り切る譜代大名家があった。
それは石見浜田藩の本多家だった。
石見浜田藩の第二代藩主本多中務大輔忠盈は、徳川四天王と言われた忠勝系本多家の宗家当主なのだが、父の代で一族の本多忠央が郡上騒動による連座で改易されたのに巻き込まれ、下総国古河藩から石見浜田藩に移封されていた。
手柄を立てて傷つけられた忠勝系本多家の名誉を回復したかった。
それが徹底した船改めに繋がった。
その一方で、亀のように縮こまっているのが越後長岡藩だった。
薩摩藩の抜け荷を見逃す代わりに、他藩の船よりも高い運上金を課して多くの利を得ていたのだ。
これが表沙汰になれば、譜代の名門牧野家と言えど、ただでは済まない。
表高七万四千石に対して実高十一万五千三百石、新潟湊と酒田湊の運上金と言う、他家が羨む長岡からの移封も考えられた。
越後長岡藩は薩摩藩に協力して抜け荷を隠そうとした。
長岡藩以外にも、薩摩藩の抜け荷で利を得ていた藩が、発覚して処罰されるのを恐れて抜け荷を隠そうとした。
薩摩藩が蝦夷の俵物で異国から手に入れていたのは、漢方薬と朱と阿芙蓉だった。
その朱を使って漆塗りを作っている、会津若松、加賀、能登、信濃などの諸藩が抜け荷の隠蔽に動いた。
特に重要な役目を担ったのが米沢藩上杉家だった。
どの大名家も勝手向きが厳しかったが、特に上杉家が借金で苦しんでいた。
関ヶ原の合戦後、百二十万石から三十万石に大減封され、末期養子を行った事で更に十五万石に減封されたのに、百二十万石時代の家臣六千人がそのまま召し抱えられていた。
同じように関ヶ原で苦杯を舐め、幕府の手伝い普請で借金を背負う事になった、薩摩藩に対する同情と仲間意識もあったのだろうが、何よりも金が必要だった。
そこで預かっている越後沖の粟島で抜け荷の受け渡しを行っていた。
量を減らした抜け荷を見つけるのは大変だ。
重点的に取り調べている越後の新潟湊や酒田湊ではなく、越後沖合の粟島、加賀の輪島湊、越中の富山湊で抜け荷が続けられる事になった。
薩摩藩の抜け荷が止むことはなかったが、その量は激減する事になった。
薩摩藩が買い集める事で高騰していた俵物の値が下落した。
徐々に安価になっていた朱塗りが再び値を上げ始めた。
その傾向は、石見浜田藩本多家が御公儀の許可を取り、石見沖と湊で積み荷改めを更に厳しく行う事で顕著となった。
これは越後に派遣された勘定奉行所の勘定や支配勘定の中に、柘植家縁の者がいて、御師手代が丁寧に集めた噂話を幕閣に伝えたからだった。
薩摩家の抜け荷を隠して利を得るために、米沢藩上杉家、加賀藩前田家、富山藩前田家が協力していると言う噂を知った幕閣の怒りが、本多家を支援して強権発動の船改めを実現させた。
竹姫が薩摩に嫁いだ頃は吉宗公も健在で、数々の利権を薩摩藩に渡したが、それにつけあがった薩摩の厚かましさが、幕閣の怒りを買っていたのだ。
吉宗公が亡くなられて三年後、幕府は薩摩藩に木曽三川の治水工事を命じた。
隠居後も実験を握り続けた吉宗公が亡くなられ、家重公が政務の実権を握られた事で、正の遺産と負の遺産の両方と対峙しなければいけなかった。
その一つが薩摩藩との関係だったが、手のひらを返すような命令になったのは、それだけ薩摩が幕閣に怒りを買うような要求を繰り返していたからだろう。
そして今の将軍は家治公となっており、幕府老中は酒井忠寄を首座を務め、松平武元、松平輝高、井上正経、秋元凉朝という陣容だった。
この状態で密貿易の疑いが届出られたのだ。
その取り調べが熾烈を極めたのは言うまでもない。
幕閣は勘定奉行所から算術に明るい勘定や支配勘定を選んで越後に派遣した。
佐渡奉行にも命じて、将軍家から預かっている船を使って厳しく取り締まるようにさせた。
将軍家預かり船による取り調べを命じられたのは、大阪に本拠を置く大坂御船手組、佐渡奉行所、山田奉行所も同じだった。
もちろんお膝元である江戸の船手組も湊の取り締まりを厳重にして、江戸湾から抜け荷が入らないようにした。
そんな中で特に張り切る譜代大名家があった。
それは石見浜田藩の本多家だった。
石見浜田藩の第二代藩主本多中務大輔忠盈は、徳川四天王と言われた忠勝系本多家の宗家当主なのだが、父の代で一族の本多忠央が郡上騒動による連座で改易されたのに巻き込まれ、下総国古河藩から石見浜田藩に移封されていた。
手柄を立てて傷つけられた忠勝系本多家の名誉を回復したかった。
それが徹底した船改めに繋がった。
その一方で、亀のように縮こまっているのが越後長岡藩だった。
薩摩藩の抜け荷を見逃す代わりに、他藩の船よりも高い運上金を課して多くの利を得ていたのだ。
これが表沙汰になれば、譜代の名門牧野家と言えど、ただでは済まない。
表高七万四千石に対して実高十一万五千三百石、新潟湊と酒田湊の運上金と言う、他家が羨む長岡からの移封も考えられた。
越後長岡藩は薩摩藩に協力して抜け荷を隠そうとした。
長岡藩以外にも、薩摩藩の抜け荷で利を得ていた藩が、発覚して処罰されるのを恐れて抜け荷を隠そうとした。
薩摩藩が蝦夷の俵物で異国から手に入れていたのは、漢方薬と朱と阿芙蓉だった。
その朱を使って漆塗りを作っている、会津若松、加賀、能登、信濃などの諸藩が抜け荷の隠蔽に動いた。
特に重要な役目を担ったのが米沢藩上杉家だった。
どの大名家も勝手向きが厳しかったが、特に上杉家が借金で苦しんでいた。
関ヶ原の合戦後、百二十万石から三十万石に大減封され、末期養子を行った事で更に十五万石に減封されたのに、百二十万石時代の家臣六千人がそのまま召し抱えられていた。
同じように関ヶ原で苦杯を舐め、幕府の手伝い普請で借金を背負う事になった、薩摩藩に対する同情と仲間意識もあったのだろうが、何よりも金が必要だった。
そこで預かっている越後沖の粟島で抜け荷の受け渡しを行っていた。
量を減らした抜け荷を見つけるのは大変だ。
重点的に取り調べている越後の新潟湊や酒田湊ではなく、越後沖合の粟島、加賀の輪島湊、越中の富山湊で抜け荷が続けられる事になった。
薩摩藩の抜け荷が止むことはなかったが、その量は激減する事になった。
薩摩藩が買い集める事で高騰していた俵物の値が下落した。
徐々に安価になっていた朱塗りが再び値を上げ始めた。
その傾向は、石見浜田藩本多家が御公儀の許可を取り、石見沖と湊で積み荷改めを更に厳しく行う事で顕著となった。
これは越後に派遣された勘定奉行所の勘定や支配勘定の中に、柘植家縁の者がいて、御師手代が丁寧に集めた噂話を幕閣に伝えたからだった。
薩摩家の抜け荷を隠して利を得るために、米沢藩上杉家、加賀藩前田家、富山藩前田家が協力していると言う噂を知った幕閣の怒りが、本多家を支援して強権発動の船改めを実現させた。
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