妹に婚約者を奪われ、舞踏会で婚約破棄を言い渡された姉は、怒りに魔力を暴発させた。

克全

文字の大きさ
2 / 18

1話

しおりを挟む
 私ローズ・ド・マルタンは公爵家の長女です。
 名門貴族の長女に生まれ、大きな責任を背負わされました。
 長年子供のできなかった父上は、生まれたばかりの私を、新生児にもかかわらず、早々に後継者指名したのです。
 ですがそれが間違いでした。
 翌年に妹のアンナが生まれたのです。

 私の母親はマルタン公爵家の平民出身です。
 本来なら妾として愛されることはあっても、生まれた子供が後継者に指名されることなど絶対にないのです。
 貴族の慣習として、絶対に許されない事なのです。
 今回のように父上の、父上の血を受け継ぐ後継者がいない場合にだけ、渋々認められるだけです。

 でも普通は、両親ともに貴族家出身の親族の子供を養子に迎えるのです。
 半分平民の血が流れている私を後継者に選ぶことは、貴族社会では嫌がられることなのです。
 ですが父上は断行してしまいました。
 どうしても自分の血を引き継いだ子供にマルタン公爵家を継がせたかったのです。
 そのために、容姿年齢など関係なく、経産婦を強権的に自分のベットに引き入れて、無理やりにでも子種をそそいだのです。

 しかも私が生まれて一年も経たない間に、妹のアンナが生まれてしまいまいた。
 アンナの母親も貴族ではありません。
 マルタン公爵家に仕える陪臣徒士家の出です。
 純粋な貴族からの評価では、母親が平民出身であろうと士族家出身であろうと同じで、紛い物の貴族なのです。

 ですがアンナの母親や実家にとって重大事です。
 いえ、マルタン公爵家に仕える陪臣士族には重大な事なのです。
 彼らから見れば、私が後継者になるのは許し難いことなのです。
 私は命を狙われました。
 父上個人に忠誠を誓う家臣が護ってくれなければ、確実に殺されていました。
 大陸有数の魔法戦士だったリュカがいてくれたから、私は生き残れました。
 でももう今は、そのリュカもいません。

 父上も自分の考えが私の命を危険にさらし、マルタン公爵家を大混乱させたことを反省されたのでしょう。
 なによりも、自分の血を引き継ぐ二人の娘を、二人とも無事に生き延びさせたいと考えたのでしょう。
 殺しあう事がなくても、二人とも無事に成人できるかなんて、誰にもわからないのですから。

 父上は当時存命だったリュカに相談して、起死回生の策を取られました。
 私を廃嫡して第一王子の婚約者にし、妹のアンナをマルタン公爵家の後継者に変更したのです。

 とても大胆な方針転換でした。
 アンナを後継者に変更することで、家臣団の望みを優先しました。
 これには家臣団も大喜びしました。

 同時に私を第一王子の婚約者にすることで、王家との絆を強くし、マルタン公爵家の影響力を今以上に王家に及ぼすことができます。
 利用できる駒である私を、家臣団が自ら壊すことはないと考えられたのです。
 当初はその通りになりました。
 ですが、アンナの野望は普通ではなかったのです。
 父上が病に倒れ病床につかれたとたん、アンナは欲望をむき出しにしたのです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?

当麻月菜
恋愛
次期当主になるべく、領地にて父親から仕事を学んでいた伯爵令息フレデリックは、ちょっとした出来心で領民の娘イルアに手を出した。 ただそれは、結婚するまでの繋ぎという、身体目的の軽い気持ちで。 対して領民の娘イルアは、本気だった。 もちろんイルアは、フレデリックとの間に身分差という越えられない壁があるのはわかっていた。そして、その時が来たら綺麗に幕を下ろそうと決めていた。 けれど、二人の関係の幕引きはあまりに酷いものだった。 誠意の欠片もないフレデリックの態度に、立ち直れないほど心に傷を受けたイルアは、彼に復讐することを誓った。 弄ばれた女が、捨てた男にとって最後で最高の女性でいられるための、本気の復讐劇。

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話

真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう

さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」 殿下にそう告げられる 「応援いたします」 だって真実の愛ですのよ? 見つける方が奇跡です! 婚約破棄の書類ご用意いたします。 わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。 さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます! なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか… 私の真実の愛とは誠の愛であったのか… 気の迷いであったのでは… 葛藤するが、すでに時遅し…

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。 愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。 自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。 国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。 実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。 ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?

百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」 あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。 で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。 そんな話ある? 「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」 たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。 あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね? でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する? 「君の妹と、君の婚約者がね」 「そう。薄情でしょう?」 「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」 「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」 イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。 あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。 ==================== (他「エブリスタ」様に投稿)

私、今から婚約破棄されるらしいですよ!卒業式で噂の的です

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、アンジュ・シャーロック伯爵令嬢には婚約者がいます。女好きでだらしがない男です。婚約破棄したいと父に言っても許してもらえません。そんなある日の卒業式、学園に向かうとヒソヒソと人の顔を見て笑う人が大勢います。えっ、私婚約破棄されるのっ!?やったぁ!!待ってました!! 婚約破棄から幸せになる物語です。

処理中です...