妹に婚約者を奪われ、舞踏会で婚約破棄を言い渡された姉は、怒りに魔力を暴発させた。

克全

文字の大きさ
5 / 18

4話

しおりを挟む
 あまりの出来事に終始狼狽してしまいました。
 いえ、その魅力に囚われてしまって、挙措がおかしくなったと言うべきですね。
 リュカ以外にこのような人がいるとは信じられなかったのです。
 自信があるのは分かりますが、人間を次々と爆発される魔力に恐れることなく立ち向かい、私を怒らせるかもしれないのに厳しく叱責してくれたのです。

「魔晶石の作り方は知っているのか?
 魔血晶はどうだ?
 材料は持っているのか?
 しかたないな、これを使いなさい。
 貸すだけだ。
 手伝ってやるから自分で集めて返してくれ」

 信じくれないくらい優しい人です。
 私の莫大な魔力を中和し封じながら、私の事を理解しようとしてくれました。
 私の事情を丁寧に聞いてくれて、できる事とできない事を確認してくれました。
 魔晶石と魔血晶の作り方は知っているものの、作るための材料を持っていないと言うと、材料まで貸してくれるというのです。

 そう、タダでくれるのではなく、貸してくれるのです。
 貸し借りを作らないという、貴族社会でとても大切な事を守ってくれるのです。
 しかも私が経験不足と知って、一緒に材料を集めてくれるというのです。
 普通の貴族なら、貸しを作っておいて搾取したり家を乗っ取りしたりします。
 それを、私を教え導こうしてくれるので。
 まるでリュカのようです。

 油断してはいけない。
 心を奪われてはいけない。
 そう心を叱咤しても、どんどん魅かれていくのが自覚できます。
 このままでは、この人ナシでは生きていけなくなってしまいます。

 長年一人で怯え緊張して生きてきたのです。
 安心してしまうと、この場に崩れ落ちて立てなくなってしまいます。
 この人に縋りついて依存してしまいます。
 自分自身に叱咤激励して、魅かれないように自制しました。

 次々と魔晶石を創り出すことができました。
 心の中で怒り狂ってモノが、この人に出会う事ができて嘘のように静まりました。
 魔晶石の材料に限りがあったので、羊皮紙に魔法陣と呪文を書き込んだ巻物、魔力を持った魔獣の皮をなめした魔皮紙に、魔力を込めながら魔法陣と呪文を書き込んだ巻物をたくさん作りました。

 破壊力の小さい、必要な魔力の少ない魔法は、羊や山羊や豚の皮から作られた羊皮紙でも作ることができます。
 ですが破壊力が大きい、必要な魔力が多い魔法は、その魔法に応じた強力な魔獣の皮で作られた魔皮紙が必要なのです。
 この人はその貴重な魔皮紙を大量に持っておられました。
 そして私にその魔皮紙を貸してくれたのです。
 つまりは魔獣を狩る手伝いをしてくれるというのです!

「お名前を教えてください!」

 私はどうしてもこの人の事が知りたくなったのです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?

当麻月菜
恋愛
次期当主になるべく、領地にて父親から仕事を学んでいた伯爵令息フレデリックは、ちょっとした出来心で領民の娘イルアに手を出した。 ただそれは、結婚するまでの繋ぎという、身体目的の軽い気持ちで。 対して領民の娘イルアは、本気だった。 もちろんイルアは、フレデリックとの間に身分差という越えられない壁があるのはわかっていた。そして、その時が来たら綺麗に幕を下ろそうと決めていた。 けれど、二人の関係の幕引きはあまりに酷いものだった。 誠意の欠片もないフレデリックの態度に、立ち直れないほど心に傷を受けたイルアは、彼に復讐することを誓った。 弄ばれた女が、捨てた男にとって最後で最高の女性でいられるための、本気の復讐劇。

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。 愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。 自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。 国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。 実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。 ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

醜いと虐げられていた私を本当の家族が迎えに来ました

マチバリ
恋愛
家族とひとりだけ姿が違うことで醜いと虐げられていた女の子が本当の家族に見つけてもらう物語

特殊能力を持つ妹に婚約者を取られた姉、義兄になるはずだった第一王子と新たに婚約する

下菊みこと
恋愛
妹のために尽くしてきた姉、妹の裏切りで幸せになる。 ナタリアはルリアに婚約者を取られる。しかしそのおかげで力を遺憾なく発揮できるようになる。周りはルリアから手のひらを返してナタリアを歓迎するようになる。 小説家になろう様でも投稿しています。

私を追い出したらこの店は潰れますが、本当に良いんですね?

真理亜
恋愛
私を追い出す? この店を取り仕切っているのは私ですが、私が居なくなったらこの店潰れますよ? 本気いや正気ですか? そうですか。それじゃあお望み通り出て行ってあげます。後で後悔しても知りませんよ?

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

処理中です...