妹に婚約者を奪われ、舞踏会で婚約破棄を言い渡された姉は、怒りに魔力を暴発させた。

克全

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3話

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 ボン!

 鈍い音を立てて人間であったモノがはじけ飛びます。
 たんなる肉片となって四方八方に飛び散ります。
 脳漿もぶちまけられます。
 人間の身体が水分でできているのがよく分かる床の状態です。
 血まみれの惨劇となっている床です。
 高価な大理石が敷かれた床が、血で真っ赤になっています。
 王太子だったモノは、血の液体と細かい肉片と骨片になりはてています。

「ヒィィィィ!」

 一旦暴走した魔力の勢いは、私に抑えることなどできません。
 一度決壊したダムを止める事ができないのと同じでです。
 王太子の側に侍り、偉そうに私を見下していた側近が、次々と弾けます。
 私を中心に、魔力が稲光のように光ながら飛んでいます。
 その稲光魔力に触れた人間が、次々とはじけていきます。

 もうどうしようもありません。
 会場の人間が死に絶えるまで、この魔力は止まらないでしょう。
 しかし私はなんの痛痒も感じていませんでした。
 もっと心が痛むかと思っていましたが、全然痛みませんでした。
 
 私は自分が人間に絶望していたのだと気がつきました。
 私が大切だと思ったのは、母上と兄とリュカだけです。
 ですがその全員死んでしまっています。
 特に母上と兄は、後継者争いの間に惨殺されています。
 見るも無残な殺され方だったと聞いています。
 幼かった私には記憶に残っていませんが、だからこそ大切なのです。

 顔も覚えていない母上と兄。
 それと血の繋がっていない、傅役で護衛でもあったリュカだけなのです。
 私を跡継ぎに定めたり、王太子の婚約者にした実の父など、まったく愛してはいませんし、大切だとも思っていません。
 生き残るために必要だから愛している振りをしていただけです。
 リュカに言われたから立てているだけです

「止めろ!
 もう止めるんだ!
 これ以上やるなら殺してでも止めなければならん」

 私の魔力に触れても爆ぜ飛ばない人間がいました。
 信じられません!
 リュカの膨大な魔力に触れても平気だなんて!
 常識外れにもほどがあります!

「ちぃ!
 魔力が制御できないのか?
 なんてこった!
 こんな暴走令嬢を怒らせるなんて、愚かにもほどがある!
 まさか、この事を知っていてアンナは王太子をけしかけたのか?
 なんて危険な事をやりやがったんだ!
 非常識にもほどがある!
 まあ今はそんな事を言っている場合じゃないな。
 俺が手伝ってやるから魔力を抑えろ。
 これ以上関係のない人間を巻き込むじゃない。
 ローズが殺すべき相手はアンナだ。
 それとアンナに手を貸した者たちだけだ。
 必要なら俺が復讐に手を貸してやる。
 だから無関係な人間を殺すんじゃない!」
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