妹に婚約者を奪われ、舞踏会で婚約破棄を言い渡された姉は、怒りに魔力を暴発させた。

克全

文字の大きさ
11 / 18

10話

しおりを挟む
「分かった、分かった。
 アルチュールを殺したのが余の命令だと、認めるしかないようだな。
 だがガブリエルとローズの結婚は認められん。
 テンプル公爵家とマルタン公爵家の同盟は絶対に認められん。
 大公国を建国するなど認めんぞ!」

「それは構いませんが、私はローズ嬢を弟子にすると約束しました。
 その約束を破る事はできません。
 国王陛下に逆らって結婚するとは言いませんが、ローズ嬢を弟子とすることは認めてもらいます」

 ああ、ガブリエル様と結婚できると思ったのに!
 国王のせいでダメになってしまいました。
 腹立たしいです!
 国王に憎しみを感じてしまいます!
 先ほどガブリエル様に教えていただいた呪いの術式で、国王を呪い殺してしまいそうです。

「ローズ嬢。 
 ローズ嬢には礼をしなければいけないな。
 出来損ないのアルチュールを殺してくれた礼を。
 愚かなアルチュールにより傷ついたローズ嬢には、代償として新たな王太子の婚約者となってもらう。
 第二王子ジュールの婚約者になってもらう」

「嫌です!」

 ああ、反射的に断ってしまいました。
 これは危険な事だと分かります。
 いまはギリギリの状況なのです。
 私の返答ひとつで、戦争が起こるかもしれません。
 それを回避するために、国王がこの場で、ガブリエル様と私を殺そうとするかもしれません。

 ですが嫌なのです。
 絶対に嫌なのです。
 今の私にはガブリエル様しか見えません。
 貴族の義務であろうと、政略結婚など絶対に嫌です。
 ガブリエル様以外と結婚するなど考えられません。
 ですが、ガブリエル様も貴族です。
 戦争を避けるために、私とジュール王子の結婚を勧めるかもしれません。
 ここはガブリエル様と国王を納得させるだけの理由を作らないといけません!

「私の心からは、王家に対する忠誠心も信用も失われています。
 このような状態で、また王族との婚約などできません。
 ジュール王子に、同じような仕打ちをされないかと疑っています。
 それに、ジュール王子には婚約者がいたのではありませんか?
 その令嬢と実家の恨みは、私が買うことになるのですよね?
 この婚約は、アルチュールを殺した私への報復ではないのですか?
 私を貴族に殺させるために、国王陛下が仕掛ける謀略ではないのですか?
 ガブリエル様はどう思われますか?
 ガブリエル様は私を見捨ててしまわれるのですか?」

「国王陛下。
 ローズ嬢はこう言われていますが、どうなんですか?
 私もジュール王子に婚約者がいるのを知っています。
 これが国王陛下の報復だという考えにも、うなずけるところがあります。
 私はさらに国王陛下に対する不信を持ちました。
 お答え願います!
 これはローズ嬢の対する報復ですか!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?

当麻月菜
恋愛
次期当主になるべく、領地にて父親から仕事を学んでいた伯爵令息フレデリックは、ちょっとした出来心で領民の娘イルアに手を出した。 ただそれは、結婚するまでの繋ぎという、身体目的の軽い気持ちで。 対して領民の娘イルアは、本気だった。 もちろんイルアは、フレデリックとの間に身分差という越えられない壁があるのはわかっていた。そして、その時が来たら綺麗に幕を下ろそうと決めていた。 けれど、二人の関係の幕引きはあまりに酷いものだった。 誠意の欠片もないフレデリックの態度に、立ち直れないほど心に傷を受けたイルアは、彼に復讐することを誓った。 弄ばれた女が、捨てた男にとって最後で最高の女性でいられるための、本気の復讐劇。

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。 愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。 自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。 国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。 実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。 ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。

醜いと虐げられていた私を本当の家族が迎えに来ました

マチバリ
恋愛
家族とひとりだけ姿が違うことで醜いと虐げられていた女の子が本当の家族に見つけてもらう物語

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

特殊能力を持つ妹に婚約者を取られた姉、義兄になるはずだった第一王子と新たに婚約する

下菊みこと
恋愛
妹のために尽くしてきた姉、妹の裏切りで幸せになる。 ナタリアはルリアに婚約者を取られる。しかしそのおかげで力を遺憾なく発揮できるようになる。周りはルリアから手のひらを返してナタリアを歓迎するようになる。 小説家になろう様でも投稿しています。

私を追い出したらこの店は潰れますが、本当に良いんですね?

真理亜
恋愛
私を追い出す? この店を取り仕切っているのは私ですが、私が居なくなったらこの店潰れますよ? 本気いや正気ですか? そうですか。それじゃあお望み通り出て行ってあげます。後で後悔しても知りませんよ?

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

生まれたことが間違いとまで言っておいて、今更擦り寄ろうなんて許される訳ないではありませんか。

木山楽斗
恋愛
伯父である子爵の元で、ルシェーラは苦しい生活を送っていた。 父親が不明の子ということもあって、彼女は伯母やいとこの令嬢から虐げられて、生きてきたのだ。 ルシェーラの唯一の味方は、子爵令息であるロナードだけだった。彼は家族の非道に心を痛めており、ルシェーラのことを気遣っていた。 そんな彼が子爵家を継ぐまで、自身の生活は変わらない。ルシェーラはずっとそう思っていた。 しかしある時、彼女が亡き王弟の娘であることが判明する。王位継承戦において負けて命を落とした彼は、ルシェーラを忘れ形見として残していたのだ。 王家の方針が当時とは変わったこともあって、ルシェーラは王族の一員として認められることになった。 すると彼女の周りで変化が起こった。今まで自分を虐げていた伯父や伯母やいとこの令嬢が、態度を一変させたのである。 それはルシェーラにとって、到底許せることではなかった。彼女は王家に子爵家であった今までのことを告げて、然るべき罰を与えるのだった。

処理中です...